電ファミ執筆陣の超めんどくさいオトナたち(岩崎啓眞、島国大和、hamatsu、TAITAI)が言いたい放題! 2017年歳末ゲーム大放談【特濃】

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 2017年の終わりに読むのにふさわしく、電ファミらしい記事とは何か? それはきっとご好評をいただいているインタビューや座談会の類ではないでしょうか。
 さらに濃密でハイコンテクストな話が語られればなおよし。それなら誰に語ってもらうといいのか? そう思案しながらサイトを顧みれば、適任者たちがゴロゴロいるじゃないですか。
 ……というわけで、今回は、日ごろ連載などで御寄稿いただいているゲーム業界の皆さん岩崎啓眞氏島国大和氏hamatsu氏)にお集まりいただき、編集長のTAITAIも交えて、2017年に気になったタイトルの気になったところを、いつもの感じで野放図に語っていただくことになりました。
 どなたも業界歴の長い、持論をたっぷりお持ちの(めんどくさい)オトナたち。
 「ゼルダ」や「マリオ」などの2017年大ヒットタイトルから『PUBG』やVRタイトルに到るまで、ひとつ語るにも、オトナならではの過去作との比較に始まり、作り手の立場に立った裏読み、ベテランプレイヤーとしてのワガママなど縦横無尽に語ってくださいました。
 切り取れば無責任に言い放っているようにも見えますが、咀嚼すればかなり一理あります。ぜひ賛同や異論反論を携えて、電ファミ宛にご意見いただければ幸いです。
 それから……めんどくさいオトナたちの特徴として、若干上から語ることもありますが、そこは年の功ということでご容赦を。

 さらに、じつは今回の記事に収めきれなかったテーマがこの座談会にはあります。それは何かというとスマホの話。岩崎氏、島国氏のおふたりは、スマホタイトルに現在直接携わっており、だからこそスマホ界隈に関する知見や意見など、かなり厚みのある話をいただけました。密かに後編として、年明けにスマホ編の公開を考えておりますので、こちらも何卒ご期待ください!

座談会参加者/岩崎啓眞島国大和hamatsuTAITAI
司会・構成・文/小山オンデマンド
カメラマン/佐々木秀二


『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』
(画像は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の公式サイトより)

論客が集まってゲーム語りをしたらどうなるのか?

hamatsu氏:
 1周目って始まりの台地のあとはどこへ行きました?

岩崎啓眞(以下、岩崎)氏:
 僕は「双子山なんて知ったことかいな」と言いながらウロウロしましたね。

hamatsu氏:
 僕は「とりあえずガノンドロフのところへ行くか」と思って向かったんですが、途中でガーディアンにボコボコにされて「やべえ」と引き返しました(笑)。

岩崎氏:
 そう、「とりあえずガノンの面を見に行くか」って試すと、「ホントに行けるのかよオイ!」ってなるよね(笑)。でもガーディアンのレーザーで確実に撃たれる(笑)。

岩崎啓眞氏

 いやあ、あのゲームには本当にびっくりして。僕、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(3月3日発売)は、けっきょく3周やっているんです。

hamatsu氏:
 3周(笑)。

TAITAI:
 それはスゴい。

岩崎氏:
 1周目のプレイで僕が興味を持ったのは、ものすごくプレイのインタラクションが考えてあること。できることがいろいろあるけど、それを知っているのと知らないのではまったくプレイが変わるじゃないですか。

がんばりゲージ……『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の主人公リンクが行動するときに消費する、一時的なスタミナゲージのようなもの。操作を止めると次第に回復し、「がんばりの器」を集めることで最大値を伸ばせる。画像は崖登りの様子
(画像はゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド 3rd トレーラーより)

 たとえば崖を登るとき、がんばりゲージ【※】のことを考えて、まずはとにかく直線的に登る。それでもゲージはあっという間になくなって苦労するわけです。でもゲームの後半になると、登る前にマップを見て、等高線を眺めて、「こう登ればまあ楽かな?」など、そういう思考にたどり着く。そういう知識がある状態で2周目をプレイしたらどうなるかにすごく興味が湧いたんです。

hamatsu氏:
 確かにそういうプレイヤーの成長があるゲームですね。

島国大和(以下、島国)氏:
 でも油断すると、2周目の最初は崖から飛び降りて落ちていくわけですね?

岩崎氏:
 そうそう。パラセールがあるのがあまりに当たり前になっていて、ポンと飛び降りてXボタンを押す。でも何も開かないから落ちる(笑)。

hamatsu氏:
 (笑)。僕も最近『Horizon Zero Dawn』(3月2日発売)で気にせず崖から飛び降りて、バタバタと墜落しました。

hamatsu氏

 『アサシン クリード オリジンズ』(10月27日発売)をやっていても、「そういえば……パラセールがないや」って(笑)。

岩崎氏:
 それで2周目を遊ぶときには、任天堂がある程度ガイドしていることはわかっているし、マップの構造を大ざっぱに理解しているから、彼らの期待するコースを正しくたどってみようと思ったんです。

──あー、皆さん。このままいくと『ゼルダ』語りだけで終わってしまうので、最初に本日の主旨をお伝えしておきます。

一同:
 (笑)。

──では。2017年の終わりに1年をふり返りたいと思いましたが、電ファミはニュース中心のサイトでもありませんから、普遍的な2017年を語るのはなかなか難しいだろうと判断しました。そこで、日ごろ御寄稿いただいている小難しい話がお好きな面倒くさい皆さまにお集まりいただき、2017年に気になったタイトルの気になったところを、いつもの感じで語り尽くしていただければと思ったわけです。

TAITAI:
 ふつうに語ってもおもしろくないから、「論客たる皆さんが集まってゲーム語りをしたらどうなるのか?」という好奇心で今回の座組となりました。皆さんたいへんに熱く語られる方ばかり。
 これをキャッチーに表したくて、たいへん失礼なんですが、“めんどくさいオトナのゲーム座談会”というような表現をさせていただきました。
 ともあれ、僕も“めんどくさい”の頭数に入れられていることがたいへん遺憾ですが……でもきっとまあ、いい意味ですよね? そういう趣旨で進められれば幸いです。

一同:
 (苦笑)。

『FFXV』から見える、箱庭と物語に生じる齟齬

岩崎氏:
 2017年はコンソール【※】のゲームがわりと幸せな年だったと思うんです。思い返しても、今年は本当にいい年だったなあ。浴びるほどゲームをやってるわ。

島国氏:
 そうですね。この先まで保証できませんが、今年のコンソールは幸せでした。

島国大和氏

※コンソール
家庭用ゲーム機のうち、据え置き機を指す。携帯ゲーム機はハンドヘルドとも呼ばれる。

──幸せというのは「売れた」ということですか?

岩崎氏:
 そう。幸せになるためには、世界で売らないといけない。同時に、コンソールは日本での展開だけだと不幸せになるということも強く感じました。

 『NieR:Automata』(ニーア オートマタ/2月23日発売)などは世界規模のヒットだからものすごく幸せだし、日本では去年の『ペルソナ5』にしても、200万本以上売ったうち、150万本は世界での売れ行きですよね。

──どちらもコテコテに日本的な方法論を突き詰めたゲームですね。それらが海外でも評判だったと。

TAITAI:
 じつは僕らの考える以上にそういう傾向はあるらしく、E3などで『ダークソウル』や『デモンズソウル』について話を聞いて回ると、「あれはとても日本っぽいゲームだ」ってみんな言うんですよ。それがなおかつ全世界で評判になっている。

『ダークソウル』プレイ画面
(画像は『ダークソウル』公式サイトより)

島国氏:
 海外から見ると日本ぽいんですよね、あれ。

TAITAI:
 『デモンズソウル』は、北米では当初、アトラスのパブリッシングだったので、もしかするとローカライズやマーケティングに勘どころがあったのかも。

hamatsu氏:
 それはありそうですね。アトラスはローカライズが上手だということを聞きます。日本っぽいものをそのまま出したほうがニッチに売れるということをわかっていて、日本のゲームが好きな人にちゃんと刺さるように作ったのかもしれません。

──その日本ぽさの頂点たるゲームが今年は『ゼルダ』だったと。

島国氏:
 『ゼルダ』が頂点だったことに異議はないんだけど、俺は『Horizon Zero Dawn』がよかったと思ったから、「なんで『ゼルダ』と真っ向からぶつかんなきゃいけないんだ!」と思いましたね。ちょっと可哀想が過ぎた。

岩崎氏:
 あの制作のゲリラゲームスという会社は、本当に賞には縁のない会社だね。「KILLZONE」もいいゲームなのに、発売がいつも「どうしてコイツと……」というタイトルとカチ合う。

──前後の週まで含めたら、いつだっていいゲームは出ていますから(笑)。

岩崎氏:
 僕も『Horizon』はいい意味で引っかかったんですよ。箱庭ゲームの弱点に、「奔放にプレイしていると、カットシーンに入った瞬間に違和感を感じる」という問題があるじゃない。『Horizon』はそこにわりと斬り込んでいて、プレイとストーリーの違和感がなるべく少なくなるように四苦八苦しているのがおもしろい。

 あとは機械生命体の闊歩する世界観が強烈で。ああいう世界観のスゴさで魅せる作品が僕は大好きなんです。昨今で言えば『ファイナルファンタジーXV』もある意味同じで、強烈な世界観が楽しい。『XV』を遊んでいない人は、僕は不幸せだと思いますよ。

──昨年のタイトルですが、聞かせてください。

岩崎氏:
 いやいや、訳もなくクルマに乗って、他愛ないキャンプをして、モブを狩って、バトルして、たまにチョコボに乗ってというようなノリで、ストーリーに縛られずに遊んでいるとスゴく楽しいんですよ。大好きですね。

『FINAL FANTASY XV』ゲーム画面。
(画像は『FINAL FANTASY XV』公式サイトより)

 でもね同時に『FFXV』ぐらい、オープンワールドであることと、強いストーリーラインを持つことが生み出す問題点を如実に見せてくれるゲームはない。『XV』はいろいろな意味で勉強になるゲームなんです。

──具体的には?

岩崎氏:
 「ドラゴンクエスト」などでもそうですが、ストーリーとプレイヤーが乖離しちゃう問題がまずあって、『FFXV』はその極限形みたいなゲームなんです。
 「いい素材を見つけたから、キャンプしてメシを作ろう」なんてプレイすると、ゲームの中ではキャラクターたちが「うまい」なんて言いながら食べていたりする。

『FINAL FANTASY XV』ゲーム画面。キャンプをしている。
(画像は『FINAL FANTASY XV』公式サイトより)

 そんな風に気ままにしばらく進めていると、やることがなくなってきて、「じゃあメインストーリーをつぎに進めるか」と目的地へ向かうわけですが、着いた途端にノクティス【※】たちが「俺たちは帝国に対してどうしたらいいんだ」とか言い始めるわけですよ。

※ノクティス
『ファイナルファンタジーXIV』の主人公、ノクティス・ルシス・チェラムのこと。

──ああ……。

島国氏:
 さっきまで楽しそうにキャンプしていたのに(笑)。ドット絵のころの「FF」だったら、そんなところはゲームそのものの解像度の粗さの中に隠れていくんだけど。

hamatsu氏TAITAI:
 解像度?

岩崎氏:
 この人はシステムや物語を含め、ゲームの表現しているもののトータルなレベルや細かさを、解像度という言いかたをするんですよ。

島国氏:
 (笑)。ですから『XV』のレベルまで表現力があると、物語とプレイのギャップについて、誰もが気になり始めますよね。

岩崎氏:
 そう。昔「グランド・セフト・オート」を遊んでいるときにその問題を本格的に感じたんですよね。街中で、信号待ちをしている兄ちゃんにいきなり銃を乱射して、クルマを奪って「ヒャッハー!」と逃げて乗り捨てて。

 また街へ戻ってきて、何かのハズみでストーリーが始まると、キャラクターが真顔で「……俺はどうすればいいと思う?」みたいなセリフを言い始めるんですよ。「キャラクターが違うだろ!?」となる(笑)。

島国氏:
 たぶん、ゲームに向いたお話というものがあるんですよ。向かない話を形にするのは、ひと工夫やふた工夫が必要で。
 『ゼルダ』はその解消法も教科書的で、「はい、これは全部過去のことでーす。記憶をほじりまーす」と、プレイと物語を断絶させたのが、うまい解決方法だったなと。

岩崎氏:
 あれは昔起こったことを語るという設定だからできる、エンバイロメントストーリーテリングという手法だよね。

 でも、物語を過去のことにできないゲームもいっぱいあるわけで。『FFXV』は現在進行形の話だから、それに当たるわけです。

TAITAI:
 それを考えると、『FFXIII』って、じつは1本道であることと、アクションのフォーマットや演出のあいだで、けっこう整合性が取れているんですよね。

 当時はけっこう叩かれていたけど、ちゃんとそのへんに配慮して作っているんだと思いましたね。

岩崎氏:
 うん。『XIII』もそのへんがよくできてるよね。そもそも『FFX』のとき、僕はびっくりしたんですよね。完全な1本道ゲーだったから。

hamatsu氏:
 ちょっと幅が広めの道でしたが(笑)。でも、『X』はプレイステーション2で見せる「FF」としては、最適な形をしていたと思いますよ。

TAITAI:
 さらに言うと『FFXIII』は、マップの作りやそこでイベントが発生する様子など、その当時の最先端だった、たとえば『ギアーズ オブ ウォー』などレールアクション【※】の文脈を取り入れていて、「ああなるほど。『ギアーズ』をこう解釈したのね」という感じはありました。

※レールアクション
遊園地のレールの上を進むライドのように、ルートやイベントにほぼ分岐がなく、つぎつぎと物語や戦闘の山場などが現れるタイプのアクションゲームを指す言葉。

島国氏:
 たぶん「FF」って、デザイナーの思い入れがあちこちに残ったまま、いろいろなゲームの再解釈が入り込み、磨くというよりは入り交じった形で出てくる。

※動画はHDリマスター版

 だから「どこから食べればいいんだろう、これ?」となる。そういう戸惑いを毎回僕は感じるんです。それを楽しめばいいんですけどね。

──hamatsuさんは『FFXV』は、いかがでした?

hamatsu氏:
 僕はグラフィックが気になりました。最近のゲームって、グレーカードやカラーチェッカーなどを使用して素材を撮影して、現像してテクスチャを作成することが基本になりつつあって、それでグラフィックにリアルさが出るんですが、『FFXV』の場合は、基本的に日本で素材を撮影していますよね。

『FINAL FANTASY XV』ゲーム画面の串焼き。『XV』の食事は「実写にしか見えない」と話題になった。
(画像は『FINAL FANTASY XV』公式サイトより)

 結果、それらを搔き集めると、どうしても日本っぽい絵になっちゃうんですよ。同じようなことは『グランツーリスモ』とかでもやっていたりしますよね。『グランツーリスモ』は実際にドイツのサーキットに取材していたりしますが。

一同:
 あー。

島国氏:
 『リッジレーサー』の1作目とかも、あからさまにナムコの近くの質感ですもんね。

hamatsu氏:
 だからPVが発表されたときに、「舞台が群馬みたいだ」と言ってからかわれていましたが、あれは意外と当たっていて。
 先日、プライベートで国内の地方にいく機会があって、ちょっと眺めのいい場所なんかで写真を撮っていたんですが、「あれ? これ『FFXV』じゃね?」、「あれ? これ『FFXV』で見たぞ」みたいな思いに駆られたんですね。日本の国道感をリアルに表現してしまってるんじゃないかというか。もちろんすべてが国内だと感じたわけじゃありません。

国道沿いの風景。写真は国道50号沿い、茨城県水戸市大塚町・水戸バイパス分岐点付近
Image by 小石川人晃. Licensed under the terms of cc-by-sa-4.0.)

 ただ現世代レベルに表現力が上がった状態でとことんリアルにやりたかったら、スタッフが海外に飛んで素材撮りを重ねないと厳しいんじゃないかと思うんです。ですが、きっとそれだとお金がかかりすぎるんですよね。

岩崎氏:
 そうだね。『FFXV』の宮殿のライティングはそのまま新宿だよね。最初に旅立つところの、宮殿の道のテクスチャーや光りかたが、都庁前のビルの光とまったく同じですよ。僕は新宿で仕事をしているので、よくわかります(笑)。

hamatsu氏:
 (笑)。PS4クラスの表現力があれば、光の表現もかなり現実に近い状態を再現できるのですが、そこまで本格的にやろうとすると、参考にするものがついつい取材しやすい身近なものになっちゃうんですよ。そう考えると新宿を登場させたのは、やはり素材として使いやすいからなんでしょうね。

──作り始めのときは、スクウェア・エニックスが新宿西口側にありましたね。

hamatsu氏:
 グラフィック面からもうひとつ言うと、あの主人公クラスのハイエンドなキャラクターを画面に表示すると、一度に相当な描画能力を使っているはずなので、その残りでできることって、だいぶ限られてくるはずなんです。とくに高品質な透過処理が求められる髪の毛の表現は相当厳しい調整が求められたはず。
 でも『FFXV』を見ると、キャラクターたち全員の髪がサラッサラじゃないですか。過去作では帽子をかぶらせたり、ある程度の半透明対策をしていたのに。

岩崎氏:
 サラサラなうえにバネの入った髪ですからね。“バネボーン”で動かしている。たいへんなことですよ。
 (動画を見ながら)このサッズの髪の毛もいいですよね。

『FINAL FANTASYXIII』に登場するサッズ・カッツロイ
(画像は『FINAL FANTASY XIII』公式サイトより)

hamatsu氏:
 (笑)。ちょうどいい落としどころですね。ですが、主人公然としたような髪型を見ると「うわあ、切れば楽なのに……」となります。もう少し剃った頭のキャラが増えていたら、作り手はもっと楽だったかもしれません(笑)。

──そこが箱庭と物語の齟齬の悩ましさと同様、リアルなキャラクターと表示限界の関係にも付いてまわるんでしょうね(笑)。

VRはとにかく『FARPOINT』に百億点

岩崎氏:
 考えてみたら、『バイオハザード7 レジデントイービル』(1月26日発売)も今年だね。

 僕、これもびっくりしたんですよ。すばらしい出来です。感動したのは、アクションに寄っていたゲームを完全にお化け屋敷に戻したこと。

一同:
 あー。

hamatsu氏:
 『バイオ』は『4』で、一度TPSに振りましたもんね。

岩崎氏:
 しかも『バイオ4』はTPSを再定義するっていうくらい感動的な完成度でしたね。そのせいで以降は引きずられて、けっきょく『バイオ4』のカリカチュアのようなゲームが作り続けられたわけで。

hamatsu氏:
 海外の『ギアーズ オブ ウォー』なんかのフォロワータイトルのほうが『バイオ4』をそのまま発展させた感じはありますね。ほかには『Dead Space』が『バイオ』の正統後継作と言ってる人もいたりして。

岩崎氏:
 その気持ちはよくわかる。僕は昨年の電ファミのホラー特集でも書いたんですが、『Dead Space』は怖さを作るのに困ったあげく、エアロックで区切られたエリアは狭いわ、惨劇が起こるところにはでっかい窓がついてるわという、いかにもな構造ができてしまった。ですが『バイオ』の感覚を受け継いだ恐いものにはなっていたんですよ。

 同様に『バイオ7』は、スタートするといきなりいかにもな狭い小屋へ入る。「この汚い狭い小屋のままでゲームが終わるわけ……終わった……」みたいなところがあって。

──(笑)。クリアまで何時間くらいなんですか?

岩崎氏:
 20時間かからないと思いますよ。 慣れると7~8時間じゃないですかね。ちなみに、操作性には問題がありますが、PSVRでプレイしたほうが圧倒的におもしろいです。

TAITAI:
 VRは酔っちゃってダメでしたね。

島国氏:
 僕も5分超えると眼球がボロボロになった。

岩崎氏:
 ああ、僕はぜんぜん平気でした。ゴーグルを外して遊んだら、一気にプレイアビリティが上がってすごく簡単になって、ぜんぜん怖くなくなっちゃったんですよ……。

hamatsu氏:
 なるほど(笑)。

岩崎氏:
 ただVRは、廊下の角で止まって首だけ角から出しながら、そーっと覗き込めるのが最高。「誰もいない。いないよね? よし!」みたいなプレイができるのが圧倒的によかった(笑)。

島国氏:
 リアルだ(笑)。俺は目線と関係ないところを撃っても敵に当たるのがすごくよかった。あのへんがもうちょっとお手軽になるといいんですけどね(笑)。

岩崎氏:
 それを言うなら『FARPOINT』(6月22日発売)でしょう。僕は感動しましたから。

島国氏:
 そう、『FARPOINT』はすばらしい!

『Farpoint』ゲーム画面。
(画像は『Farpoint』公式サイトより)

 すばらしいけど、PSVRを買ってさらに専用のシューティングコントローラーやマイクを買わないとそこまでの臨場感が得られないとすれば、誰もあんなセットは揃えられない(笑)。あとからじゃ手に入りづらいし……。

岩崎氏:
 僕は発売日に用意しましたよ。『FARPOINT』は、VR時代のFPSを変えたと思います。島国さんいわく、FPSというのは「自分が回転して敵を真ん中に置いて、ボタンを押して撃つゲーム」なんです。
 つまりもっと一般化すると、「ボタンを押す位置によって得点が変わるゲーム」という定義。まさしくそのとおりなんですが、ところが『FARPOINT』は……。

島国氏:
 変えたんですよね! 目線と違うところを撃てるんです。

岩崎氏:
 銃を持って正面を見ているとき、視界の隅で何か動いたのを捉えた瞬間に、とにかくそっちに銃を向けて撃てるんですよ。これが最高にヤバい。振り向きながらとにかく銃を撃って、撃ちながら位置を調整して当てるということができる。

TAITAI:
 なるほどね。

島国氏:
 あれは本当に気持ちいいですよね。『FARPOINT』にはいろいろ雑なところもあるけれど、そこだけで百億点あげていいかなという感じでした。でも岩崎さんみたいにVRに強くないと、5分も続けられないという……。

岩崎氏:
 それからパッと銃を上げて視界の外へ追いやると、銃がガチャッと切り替わるんですよ。これがまた気分がアガること!

 よくぞあのアクションを作ったと。リアルの見た目はただのプラスチックのコントローラーが、VRの中では超かっこいい銃になる(笑)。それから、コントローラーがちゃんと銃の形をしているから、照準が意味を持つのが感動的でした。

hamatsu氏:
 ああ、昔ゲーセンにありましたね。サイトを覗いてキチンと撃つようなやつ。

島国氏:
 VRはこれまでだったらスカートの中を覗く程度しかできなかったんですが、射撃が視線と別に向けられるようになったことで一気に遊びの幅が広がっています。ただ、もうちょっと安くなって、早くみんなが遊べるようになるといいのになと思います。あと、処理をちょっとだけ軽くしてほしい……。

──(笑)。では結果として、VR元年と呼ばれた2016年に続いて2017年のVRは……。

岩崎氏:
 VRがスゴかったか、スゴくなかったかというなら、僕はスゴい年だったと思います。

島国氏:
 作り慣れてくると今後もっとスゴいものが出てくると思いますし。
 いまは遠距離のものは全部ぼんやり描かれていて、そういうものを必死で目を凝らして見ようとして疲れちゃうんですよね。ああいう処理は、作り手が手慣れてくればだいぶ変わるんじゃないかと思います。

 技術的にも、たとえば「右目に反射して入る光と、左目に反射して入る光は違うよ」なんてリフレクションマッピング【※】を真面目に丁寧にやると、本当にそれっぽく見えるので。「これとこれはVRによく効く。これとこれはよく効かない」というノウハウがもっと積まれて、みんなが手慣れて精度が上がれば、表現は一段も二段も上がっていくでしょう……あと何年かかかりそうだけど。でも、それこそいまの最先端のものを見ても、「こんな手があったのか」というものがいっぱい出てきているので。

※リフレクションマッピング
3D表現において、周囲の環境の映り込みをテクスチャー上に反映する技法。クルマに映る周囲の景色や、瞳に映ったロウソクの灯りなどはすべてこれに当たる。

岩崎氏:
 ARもMR【※】も、結局はVRと同じ。ゲームのかなりの部分は最終的にこの形に行きつくんだろうなと思います。

──VRは現在知見が業界に蓄えられている段階で、先へ行って大輪が開くはずと。

※MR

Mixed Reality(複合現実)のこと。VR(Virtual Reality: 仮想現実)に現実世界の情報を取り込むことで、現実と仮想が相互に影響し合うような複合的世界をつくりだす技術のこと。将来的にはエンターテイメントの領域だけでなく、科学研究、医療、商品開発、設計、製造業、旅行業などのさまざまな領域で活躍すると期待され、いまも世界各地でさらなる開発が進められている。

シューティングの問題点が淘汰されて『PUBG』にたどり着いた

──FPS、TPS界隈なら、『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(3月24日アーリーアクセス開始)も高評価じゃないんですか?

岩崎氏:
 『PUBG』は傑作だと思うなあ……! よくあんなことを考えついたと思うほど。

hamatsu氏:
 『バトル・ロワイヤル』【※】から思いついたって言いますね。

※バトル・ロワイヤル
2000年に公開された、深作欣二監督による映画。高見広春の同名小説を原作としている。中学生たちが殺し合いを強いられるという過激な内容のため、R15+指定とされた。

岩崎氏:
 そういう小説や映画などいろいろなところから、あのアイデアは来たんだろうけど、ゲームとしてああいう形で落とし込んだのはエラいなあ。

hamatsu氏:
 『PUBG』はどのへんが面白いんですか? 僕はじつはやっていないので。

岩崎氏:
 簡単に言うとね、倒し合って100人のうち最後のひとりにならなきゃいけないゲーム。ということは99人が負けるわけだから、自分がやられることがあんまり痛くないんですよ。そういうよさがあって新しい。

『バトロワ』をゲームで体験? 早くも2017年ベストの声上がる『PUBG』を語り尽くす。Steam史上最大同接数を記録した、いま世界的人気のゲームで君も「ドン勝」三昧へ!?

 さらに、どんどんみんなうまくなっているから、だんだん通用しなくなるだろうけど、運が悪くない限り、チキンなプレイをすればけっこう生き延びられるんです。

──『バトル・ロワイアル』の映画もそうでしたね。弱者は弱者なりの生き延びかたがあるという。

岩崎氏:
 ええ。そうすると何が起こるか。チキンじゃないバカが死ぬわけですよ。「また死にやがった。バーカめ」と言いながら倒しているうちに自分も倒されるんだけど(笑)。それまではそれなりにプレイできているから、参加即敗退ということもなく、不満が残りづらい。

──ああ、悔しさも紛れるわけですね。

岩崎氏:
 いままでこの手のゲームって、最初の『Unreal』のころは、ひとりずつ撃ち合いをやって、腕の差がそのまま勝負になってしまい、スポーツFPSとしてはいいんだけど、広がりを考えたときにいろいろツラくなってきてしまっていたわけです。
 だからそのつぎはマルチプレイでチーム戦になっていった。だけどやっぱり同じようにいろいろツラくなってきたから、そのうちチームのクラスタがどんどん大きくなって多人数対多人数になり、最後は『バトルフィールド』に行き着いた。けれど、やっぱり勝ち負けがあって……という問題があったところに、『PUBG』は現れたわけです。生き残れる奴をたったひとりにすることで、勝つことが基本的にできないという代物が。

島国氏:
 ところが日本人はなかなか納得してくれないんですよね。「俺はランボーみたいに活躍したい」と思って100人の中のひとりになるのが当たり前でみんなやってくるものだから、たいがい最後のひとりになれなくて「チクショウ」となっている。

 麻雀だって4人で打ったら3人が負けます。100人だったら「そんなの負けるに決まってるじゃないか」というのに、日本人はFPSで負けるのを嫌うというか、納得していない感じはあります。

岩崎氏:
 シングルゲームの伝統が長かったからかな。

hamatsu氏:
 ここまでそういうゲームが登場しなかったのは不思議といえば不思議ですね。

TAITAI:
 僕はこうしたシューティングは、もっとCo-op(協力プレイ)に寄っていくのかなと思ったんですよ。対戦の問題点については岩崎さんが仰るとおりで、どんどん排除していく構造になっていたから。

島国氏:
 「Wiki読んでこい」ってヤツですね。

TAITAI:
 そうそう。そのためサービス開始から時間が経つほど参入しづらくなる縮小再生産のループに入っていきがちですけど、そうならないようにするには、誘ったり手伝ったりする協力プレイが妥当なのかなと思っていたわけです。それで『Left 4 Dead』などのほうに向かうのかと思いきや、ここで『PUBG』が出てきて、なおかつ対戦がちゃんと成立しているのはすごくおもしろいんですね。

島国氏:
 開発の立場としてはサービスを続ける限り、リソースをどんどん追加しなければならないというサイクルが辛すぎてやっていられないので、「最後はプレイヤーどうしで勝手に対戦していてほしいな」というのがFPSはとくにありますからね。

TAITAI:
 僕はもともとRTS【※1】をスゴく遊んでいたんです。めちゃめちゃシビアなゲームで、一手間違えたら負けるんですが、これが『WarCraft3』以降、ほかのプレイヤーと戦う前に野良のモンスターを狩ってレベルを上げるというような作業が入るようになり、これが対戦以前にけっこう楽しかったわけです。
 その仕組みを洗練させたのがDotA系【※2】で、これは対戦のハードさをかなり中和してくれているシステムだと思います。

※2 DotA系……ブリザード・エンターテイメントによるRTS『Warcraft III』のMODである『Defense of the Ancients』(略称は「DotA」)に似たシステムをもつゲームの総称。画像は続編『Dota 2』のもの。
(画像は『Dota 2』公式サイトより)

※1 RTS
Real Time Strategy(リアルタイムストラテジー)の略。戦略シミュレーションに属するジャンルのゲームで、ターン制ではなく、リアルタイムで変化する戦況を捉え、リアルタイムでユニットを操作するタイプのものを指す。

 RTSだったらそういう方向に向かうのだけれど、その仕組みをFPSに導入したのが、たぶん『PUBG』で。
 先ほど出たチキンプレイだとか、何かゴソゴソ探して手に入れているだけで楽しいという感覚やあの行程がすばらしいと思います。

hamatsu氏:
 なるほど。

岩崎氏:
 『PUBG』はそこがよくできてるし、どんなにうまくても運が悪ければどうしようもないので、ちょっといじれば、日本人にもなんとかうまく合うようになるんじゃないかなと思うけどね。僕は麻雀くらいの勝率になればいちばんいいと思っているんです。

麻雀の様子。
Image by yui*. Licensed under the terms of cc-by-sa2.0.)

 麻雀の勝ちは、おそらく実力3割、運7割くらい。そのくらいの比率になればみんなが長く楽しめるゲームになるのではないかと思う。

島国氏:
 ときどき素人がバチョーンと当てて、強い人が吹っ飛ぶのがないとやっていられないと(笑)。『バトルフィールド』も『3』あたりまでは、チーム戦で負けても「自分のせいじゃない」と思えたので、「うまい回避だな」と思っていたんですよね。

画像は『バトルフィールド 3 PlayStation®3 the Best』ゲーム画面。
(画像はプレイステーション® オフィシャルサイト ソフトウェアカタログより)

 でも、うまい奴がうまいように振る舞わないとやがて怒られる(笑)。

岩崎氏:
 チーム戦もチーム戦の立ち回りみたいなものができてきて、そうするとシステマティックになっていくからね。

TAITAI:
 「バトルフィールド」のチーム戦は、自分が役に立っている気がしなくて……。それが悲しくて辞めました。

岩崎氏:
 わかります。

島国氏:
 後ろから電極を持って仲間に着いて歩いていくと、すごく役に立った気がするんですけどね。「ハイ、生き返らせました!」と(笑)。

TAITAI:
 (笑)。『オーバーウォッチ』でもAIMの技術が絶対的に負けているので、けっきょくトンカチを持ってタワーをずっと設置していたんです(笑)。あとはメディックをひたすらやるとかね。

岩崎氏:
 そういう問題に対して新しい答えを出してきた『PUBG』はスゴいと思います。

hamatsu氏:
 さっそくスマホで類似のタイトルが出ていますが、あれもけっこうおもしろい。

knives out……中国・網易から2017年11月にリリースされたスマートフォン用ゲーム。『荒野行動』とも呼ばれる。『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(『PUBG』)に酷似しており話題を集めている。画像は『knives out』紹介画像。
(画像は Google Playより)

岩崎氏:
 網易の『knives out』ですね。もう『PUBG』そのもの。中国のほうでは類似タイトルを3つくらい見ましたよ。

島国氏:
 早い……!

TAITAI:
 FPSもそうだし、ほかのジャンルも全部そうですが、違う視点で層を広げるタイミングというのはつねにありますよね。個人戦(Free for All)の『DOOM』や『Unreal』、チーム戦の『カウンターストライク』、Co-opの『Left 4 Dead』、そして『PUBG』という流れなんですけど。ただよくできている、というだけじゃなくて……。

hamatsu氏:
 いまはそういう拡大のターンというか……。

TAITAI:
 そうそう。

島国氏:
 なるほど。『ストリートファイターII』でみんなが対戦しているところに、『バーチャファイター』で「操作系をガサッと変えたから、みんなもできるかもよ?」とか、『バーチャロン』で「ガサッと変えたからできるかもよ?」とか、違う広がりがあったということですよね?

TAITAI:
 そうそう。「なんかそういうタイミングにヒット作が出るんだな」というのは、あらためて思いましたね。

hamatsu氏:
 もうスマホでは出ていましたが、『PUBG』がヒットしたということは、PCでもこれから類似タイトルが出てくるということなんですかね。

TAITAI:
 もう、類似タイトルだらけです(笑)。

岩崎氏:
 安心してください。Steamにもいっぱいあって、『PUBG』を作ったところが「お前らもうコピーすんじゃねえぞ、訴えるぞ」みたいなことになっているから(笑)。

hamatsu氏:
 (笑)。

島国氏:
 私は「これいいな」と思うととりあえずパクリネタを考えて書き止めておくんですけど、今回は「たぶんどうせいっぱい出てるし……出てたー」って感じでしたね(笑)。

一同:
 (笑)。

TAITAI:
 でも、そういうコピーに耐えうるフォーマットって、相当な発明ですよね。

島国氏:
 新しいジャンルが出てきたときって、皆がいっぱいネタを出し尽くしてジャンルを滅ぼすんですよ。遊ぶ側にも「こんなゲームまで出たら、このジャンルは滅びるな」とわかる。だから「けっこう耐えるなあ」と思っているうちは、まだまだ大丈夫ということになりますね。

──逆説的に、『PUBG』はまだまだイケるというわけですね(笑)。

PS4版の『ドラクエXI』が突き当たった壁

──皆さんのエンジンも暖まってきたようですので、そろそろ大本命を……。

島国氏:
 その前にちょっとだけ『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(7月29日発売)を語っていいですか?

──どうぞどうぞ。

島国氏:
 『XI』は本当にバトルの練り込みがハンパなくスゴいなと思っていて。

TAITAI:
 バトルの練り込み?

島国氏:
 ええ。やっていることとしては昔から変わらないんですけど、「適正レベルだと何ターンぐらいでケリがつくか」みたいな調整の練り込みです。

画像は『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』公式サイトトップのスクリーンショット。
(画像は『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』公式サイトより)

 その想定ターンの中で、「ねむる」とか「誰かが倒される」とか、イレギュラーなことが必ず起き、そのイレギュラーを回復していれば絶対負けないというバランス取りです。

──堀井さんから伝わる秘伝のタレみたいなものでしょうか。

島国氏:
 堀井雄二さんが『ウィザードリィ』が好きで好きで最初に作った1作目の『ドラクエ』から、ずっと守り続けているタレですね。シリーズの途中からは「何パーセントの確率で100%ダメージカット」のようなガードも入ったりしていますが、「ドラクエ」は、そういう普通は入れないものをポロッと入れて、それでもまったく馴染んでいる。

画像はPlayStation4版『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』バトルシーン。
(画像は『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』公式サイトより)

 そうしたバトルまわりの作りが本当によくできているのが『XI』。けれども何も考えずに真似しようとすると絶対につまらないゲームができちゃうんですよね。「さすが本家、わかった練り込みをしているなあ」と思うわけです。どこまで堀井さんが関わっているのかわかりませんが。

hamatsu氏:
 それができるのは「ドラクエ」だからなんですかね。

島国氏:
 でしょうね。4対4や5対5で相対して、敵がこちらのひとりを集中攻撃したら即座に倒されるわけですが、そうするとこのゲームは成り立たないので、敵は攻撃をうまくバラしてきます。つまり敵のAIもそうならないようになっている。
 そのうえで、バラの攻撃と範囲攻撃を同時に喰らうとマズかったり、さらに運悪く一発攻撃を喰らうとさらにヤバくて死んでしまったり、死んでも生き返らせられるけど、それは「2分の1の確率でこのターン数かかかります」だったり……。
 そういう細部のバランスがスゴく考えられていて、「誰がこんなところまで練っているんだ?」と思ったんです。

TAITAI:
 確かに。今回の『ドラクエXI』はそうですね。

岩崎氏:
 でもね、僕は今回の『XI』では、「ドラクエ」の話の作りかた、とくに主人公がしゃべらないという縛りと、いまのゲームの画像がまったく合わなくなっているという、島国さんの言う「ゲームの解像度」をスゴく感じたんですよ。

──岩崎さんはPS4版でプレイされたと。

岩崎氏:
 どちらもやりましたが、ニンテンドー3DSの2Dモードにしてプレイすると簡単に乗り越えられるところが、PS4でやると気になって。だから「これは記号時代のゲームなんだな」と思ったんです。

ニンテンドー3DS版『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』では、3D表示か2D表示を選ぶことができる。
(画像は『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』公式サイトより)

 「FF」は『VII』あたりから解像度の問題がツラくなり、『VIII』で主人公に声がないとムービーのバランスが悪くなっているという壁に強烈にぶつかり、『IX』でもその問題が残り、その結果、『X』で全員がしゃべる方向にシフトしていった。でも「ドラクエ」はシフトされないままPS4までやってきた。

島国氏:
 そこをうまくやるのかなと思ったら、2ハード同時発売の整合性の問題か、PS4版は解像度だけ上がって、何と言うか、4コママンガでやる話を劇画でやったみたいなことが発生したと。

TAITAI:
 僕もどっちも楽しんだんですが、最終的には3DS版だけクリアしましたね。

島国氏:
 PS4版も作りの丁寧さはハンパないんですけどね。さすがの練り込みで。あと、シナリオはやっぱり本当にスゴいなと。誰でもやりそうだけど、「「ドラクエ」じゃないと、こんなに面白がれないよな」というところを突いてきたので。

岩崎氏:
 いやー、よくできてますよ。本当によくできてるんだけど。

島国氏:
 「ドラクエ」って、16×16のドット絵で描かれた死体に意味が持たされている世界なので、わりと簡単に仲間が生き返ったり、お父さんのオルテガ【※1】がカンダタ【※2】のグラフィックだったり、多少大雑把でも話が通る。
 ところが解像度をガッと上げてしまうと、死体はリアルに死体じゃなければならないし、起きると言われることは全部リアルに起こらないといけない気がするんだけど……みたいなものがゲームの表現の中で揃わないんでしょう。

PlayStation4版『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』のにぎやかな街の様子。
(画像は『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』公式サイトより)

※1 オルテガ
『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』に登場する主人公の父親。火口に落ち、死んだと伝えられていたが……。登場時のグラフィックが後述するカンダタの色違いだった。

※2 カンダタ
『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』に登場する盗賊の親玉。パンツ一丁に覆面マントで手斧を持つ荒くれスタイル。

TAITAI:
 記号的なもののほうがいいのって、たとえば歯科衛生士さんは美人に見える理論ですよね。マスクを着けているとみんな美人に見えるというやつ。人間の想像力の強さによって欠落を埋めさせたほうが、じつはその人にとってのベストなものになるわけで。逆に100%すべて見せちゃうと、自分が思い描く100%とのあいだに違和感が生じるんでしょうね。

島国氏:
 同じことがテキストでも起きるんです。たとえば「へんじがない。ただのしかばねのようだ」にどれだけの意味が含まれるか。あれはメモリ制限によって長セリフが入らないから、きゅうきゅうに詰めてあるわけで、それでも最低限は伝わる単語を抜群なセンスで選んだ結果、プレイヤーが勝手に補完して、スゴいセリフに感じているというところがある。

【堀井雄二インタビュー】「勇者とは、諦めない人」――ドラクエが挑んだ日本人への“RPG普及大作戦”。生みの親が語る歴代シリーズ制作秘話、そして新作成功のヒミツ

 だけどゲームの解像度が上がると、言外の意味なんて別になくなり、みんなが饒舌にしゃべると、さらになくなる。そういう効果でPS4版の『ドラクエXI』は弱くなっていてもったいないなと。

TAITAI:
 逆に、いまの世代のゲームで、わざと間引いて想像力をうまく刺激しているゲームって何がありますか?

hamatsu氏:
 それこそ『ゼルダ』じゃないですか? 『Horizon』を遊びながらいつも思うんですんが、『ゼルダ』のデフォルメ具合は爆裂にうまいですよ。
 斧で立木を斬ると、パッと枝打ちされますが、あれに僕らはとくに疑問を持たないじゃないですか(笑)。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』で木を切っている様子。
(画像はゲームセンターDX 「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」より)

 製材された状態でボーンと落ちてくる。「よくそれにオーケーを出したな」と思うんですけど、狙いどおり、遊んでいてぜんぜん気にならないですもんね。

島国氏:
 すごいわかりやすい説明だ! 料理もとんでもなかったですけどね。鍋に放り込んで踊っていたらできちゃいますもんね(笑)。

hamatsu氏:
 獣を撃つと肉がボンと出るのとかも。
 そういう意味では「ドラクエ」もシリーズのデフォルメのよさを失わない形で本格的な3Dフィールドを『VIII』で導入して、それをさらに発展させた『XI』も、かなりよくできていると思いましたね。

岩崎氏:
 フィールドの完成度はものスゴく高いですよ。いま僕が話をしている解像度の違和感も、いままでの「ドラクエ」をずっとプレイしてきているから感じるものであって、いまの人はもしかしたら感じないことかもしれないんですよね。

TAITAI:
 それ、メカニックデザイナーの出渕裕さん【※】も仰っていたことですね。「アニメの中に3Dをぶち込むと、違和感を感じますよね。でも、子どもは最初からそれがあるものだと思っているから、違和感を感じない可能性がある」という話をされていたんですね。
 「振り返ってみてください。昔のセルアニメだって、背景とキャラクターがぜんぜん違う絵で、違和感がある。でも、みんなそれが当然のものとして受け入れていた。だからいまの日本のアニメの職人が3D化の流れの中で、一生懸命「セル画チックに」とか、「キャラクターと3Dのロボットの違和感がないように」とかやっているけど、それに意味はあるのかな?」ということを仰っていて。スゴくそのとおりだと思ったんです。

※出渕裕
1958年生まれのメカニックデザイナー。『闘将ダイモス』の敵メカデザインでデビューし、スーパー戦隊シリーズや「ガンダム」シリーズ、「パトレイバー」シリーズなどのメカニックデザインを手がけている。近年では『宇宙戦艦ヤマト2199』の総監督を担当。

島国氏:
 それはいい話ですね。

hamatsu氏:
 僕はPS4版も3DS版と交互に遊んで、遊べちゃっています(笑)。逆に2Dだと『VI』くらいがいちばん好き。『XI』のドットは気になっちゃって。

岩崎氏:
 それはもうロストテクノロジーですよ。いまでも当時のドッターで残っている人はいると思うけど、その人々を集めてあのドットを打たせている時間やコストは、いくら「ドラクエ」と言えどありませんよ。

TAITAI:
 いまってとにかくコンテンツがあふれていて、お腹がいっぱいの時代じゃないですか。「どうお腹を減らすか」という技術がもっとあっていいんじゃないかと。

島国氏:
 また難しいことを言う。

TAITAI:
 どんなにすばらしいものでも、みんなもうお腹いっぱなんですよ。そのうえステーキを出されてる状態。千利休はお茶を飲ませる前に、暑いところを歩かせた。客人は最後に涼しい小道をくぐって、フウとひと息ついてお茶を飲む。これが最高にうまい。

千利休
(画像はWikipediaより)

 そういう行程を含めたコンテンツがあってもいいと思うんです。いまはそれが許されなくなっているんだけど、いろいろな作法や環境や文脈でその行程が許される時代もあればいいなと。

hamatsu氏:
 『ゼルダ』もそうだったんですかね。「なんでこんな遊んじゃったんだろう?」と、僕はずっと考えています。夢中になって遊んじゃったな……。

島国氏:
 いまはステーキを最初から乱れ撃ちにしていかないと、最初を耐えてくれないんですよね。翌日継続率【※】命なんで。「いかに辞められないようにするか」のために、「何を仕掛けるか」という戦い。たまに茶漬けを出してみたいですね。

※翌日継続率
その日にログインしたプレイヤーが、翌日何パーセント再ログインしたかを表す数値。サービスが飽きられていないか、見限られていないかの指針となる。

岩崎氏:
 僕がよく意識するのは、ステーキを出すことではなくて、1分後にやらなくちゃいけないこと、1時間後にやりたいこと、1日後にやりたいことを、ちゃんと道筋として見せて、それがプレイヤーに伝わっていれば、基本的には辞めないということです。

島国氏:
 UX【※1】に極端な差をつけないというか、「順番にくるよ」ということを、どれだけ先に設計してあげているかですよね。

 「つぎにこれをしたら何がもらえるの?」という動機を保つためのご褒美を考えることがじつはいちばんたいへんで、これを全部インベントリ【※2】にした『ゼルダ』はやっぱりスゴいなと。

※1 UX
User eXperience(ユーザー体験)の略称。サービスや製品などで顧客が味わう体験そのものを指す。

※2 インベントリ
英語の“inventory”のことで、目録や棚卸しを意味する。転じてゲーム用語としては、手持ちのアイテムが一覧できるような画面や、装備・アイテム欄そのものを指すことが多い。

──「ドラクエ」の問題は、当事者であるスタッフの皆さんも当然気付いていたからこそ、解像度の異なる2ハードマルチ展開となったんですかね。だとすれば『XII』があるなら、その一手が注目されますね。

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