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ゲームの面白さを生み、より高めるための法則とは?──『カービィ』『スマブラ』の生みの親・桜井政博氏による研究の集大成となる講演をWeb上に再現【若ゲのいたり・特別編】

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 「カービィ」シリーズ「スマブラ」シリーズをはじめ、数々の作品を手がけるゲームクリエイター・桜井政博氏(@Sora_Sakuraiは、国内外問わずゲーム開発者向けに講演を行なっている。

 そのテーマは……「ゲーム性について」

 この講演は、「1つでも多く、ユーザーに愛されるゲームが生まれて欲しい」という想いから、自身のゲームデザインのノウハウを惜しみなく伝えているもので、ゲーム開発に携わる人間なら、ぜひ会得しておきたい内容である。
 じつは『若ゲのいたり』第六回の取材時に、幸いにも田中圭一先生&電ファミ編集部は、桜井氏にご講演いただく機会を得ることができた。受講した我々は、「より深いゲームへの理解は、ゲーム業界の関係者だけでなく、我々ゲームプレイヤーにとっても有意義なことだ」と考え、その講演内容をここに公開することにした。

 最後に、この講演に関する資料を快くご提供いただいた桜井氏、ゲームメーカー関係各社に謝意を表したい。

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 さあ、間もなく、セミナーのはじまりです。それでは桜井さん、よろしくお願いいたします!(編集部)

※尚、本稿では、注釈は全て各ページの末尾にまとめて記載しております。ご留意ください。

講師
ゲームの面白さを生み、より高めるための法則とは?──『カービィ』『スマブラ』の生みの親・桜井政博氏による研究の集大成となる講演をWeb上に再現【若ゲのいたり・特別編】_002
桜井政博
1970年8月3日生まれ。ゲーム制作会社有限会社ソラの設立者で代表。「星のカービィ」シリーズと「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズの生みの親で、主にディレクションを手がける。
Twitter:@Sora_Sakurai
(イラスト/田中圭一)

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資料の作成:桜井政博氏

 前置きさせていただきます。
 この講義は、私がフリーになった2003年ごろに行い、2017年に刷新をしたものです。

 しかし、当時の公開はいままで海外を含む一部の講演のみ。ネットでの公開は控えていました。

 今回『若ゲのいたり』の取材を受ける際、田中圭一さんご自身から「マンガの面白さの本質とはなにか、方程式のようなものはないのかを研究している」というお話をうかがいました。

 

 同じように「ゲームの面白さ」に対する理論はないのかどうかを聞かれ、ちょうどよいテーマである今回の講義を、その場で披露しました。

 これを、電ファミさんの協力をいただくことで許諾の問題をクリアし、全面公開することになった次第です。まさかの機会とご協力に感謝します。

 ゲームを作る人なら、まず知っておいて損は無い内容なので、永久保存版になりえるかもしれません。

 

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 桜井政博です。『星のカービィ』【※1】『大乱闘スマッシュブラザーズ』【※2】などのゲームデザイナーです。
 結果的に任天堂の作品を多く作ることになりましたが、一応フリーです。
 よろしくお願いします! 

プロローグ:ゲームの面白さ=リスクとリターン?

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 今回のテーマは、「ゲームの本質」

 さまざまなゲームがありますが、その面白さについての本筋を捉えるためのお話をしたいと思います。
 もしも今回の話をものにできれば、ゲームの楽しさを織り込むことに対して力が上がることは間違いありません。

 

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 「ゲーム性」という言葉があります。
 これは一言で言えば、ゲームの面白さを端的に表した言葉なのだろうと思います。

 だけど「ゲームの面白さ」って、言葉で表現できるものではありませんよね。
 インターネットなどで「ゲーム性って、つまりなに?」という議論が始まったとしても、納得のいく解にまで持ち込めたケースを見たことがありません。

 「ゲーム性」という言葉は、ゲームの面白さそのものと同様、あまりよく解明されていないのです。

 

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 「ゲームが面白い」ということは、「ゲーム性が高い」と言われます。
 では普通に考えれば、「ゲームが面白くない」のは、「ゲーム性が低い」ということですね。

 じゃあ、「ゲームの映像が楽しい」場合は? たぶん「ゲーム性とは関係ない」でしょうね。でも楽しい。
 では練習モード、つまり「動かない敵を殴ったりして練習するのが楽しい」という場合は? これも「ゲーム性とは関係ない」が、楽しいようです。

 そろそろ定義が怪しくなってまいりました。

 では、操作だけ──たとえば時間制限がないまま、ただ「操作や運転をしているだけで面白い」ようなゲームは?

 そもそも「ゲームの面白さ」って、なんなのでしょうね? 今回は、それを定義しました。

 

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 ゲーム性という言葉を私なりに意訳すれば、「かけひき」。言い換えて、「リスクとリターン」と呼ぶことにしようと思います。

※海外では「リスクとリワード」と言っています。

 「リスク」とは、かみ砕いて言えば“プレイヤーに対するイヤなことやデメリット、触れるとミスになるような要素”です。

 「リターン」は、“リスクを排除できたり、先に進めたりするような、プレイヤーにとって利益になること、もしくはそれを得るための過程”です。

 

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 ここを突き詰めれば、さまざまなゲームの面白さを説明できます!
 いろいろなゲームを元に、解説していきましょう。

考察1. シューティングゲーム

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 まずは、シューティングゲームの場合。

 

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『スペースインベーダー』(タイトー/1978)
(C) TAITO CORPORATION 1978, 2017 ALL RIGHTS RESERVED.

 このゲームをご存じでしょうか?

 これは、『スペースインベーダー』【※3】です。

 1978年、もう40年前になろうとしていますが、日本で社会現象にもなった、シューティングゲームの始祖とも言えるゲームです。ちなみに私はこの時、7歳ぐらい。リアルタイムでプレイできていました。

 ゲーム画面は、こんな感じです。

 

 ゲーム画面下部にある青い凸型のものが「砲台」。これを左右に動かします。
 無数のインベーダーが左右に動きながら下りてきて、最下段に到達するまでにインベーダーを殲滅するという、シンプルなゲームです。

 下から少し上にある赤いものは「トーチカ」と言い、砲台やインベーダーの弾丸をある程度防ぐことができます。

 

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 ここで、アップにしてみます。

 

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 インベーダーと砲台は、縦にまっすぐビームやミサイルを撃つので、図のような状態にある場合、それぞれの攻撃が当たる可能性はゼロです。

 これを、状態としては「ノーリスク・ノーリターン」であると定義します。

 

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 そこで、砲台をちょっと右にずらして、インベーダーとの横軸を近づけてみる。
 砲台がインベーダーに近ければ近いほど、インベーダーの弾が砲台に当たる可能性が増えるわけです。
 なので、リスクは「増え」リターンは「得られる可能性ができる」ということになります。

 

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 さらに近づくと、もうインベーダーにやられてしまう! という距離に到達します。

 リスクとしてはかなり高まった状態にありますが、ここではじめて「敵をやっつけられる」というリターンを得ることができるわけです。
 リターンを得るため、リスクに足を踏みいれる必要がある、ということです。

 

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ここでいきなり結論!

 

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 リスクを冒して、リターンを得る!

 これがゲームの本質だ、ということです。
 かみ砕いて言えば、リスクを小さくする工夫により、リターンを上手に得ること

 ここが今回のもっとも大事なところなので、超でっかく書いてみました。
 よく覚えてください。

【ゲーム性】と【攻略】の関係

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 意味が似ているコトバがあります。それは「攻略」
 「ゲーム性」がリスクを抑えてリターンを得る楽しさのことならば、「攻略」はリスクを抑えてリターンを得る工夫のことを指します。
 上がシステム側の話。下がプレイヤー側の話。

 ……あくまで持論ですが、話を先に進めてみましょう。

 

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 それでは、先ほどの『スペースインベーダー』に見る攻略の例を、解説していきます。

 

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 インベーダーがこのように配置されている場合、インベーダーの攻撃範囲は、図のようになります。

 ビームはまっすぐ下に降りていくので、真下が攻撃範囲だ、ということです。
 トーチカの下が安全地帯になっていることにも注目してください。

 

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 ところが、インベーダーは横に動き続けているので、攻撃範囲は斜めになります。

 ビームが地面に到達するまでの間に、インベーダーが横にずれているからこうなるのですが、わかりますか?

 地面に着弾する時には、インベーダーはさらに横に移動しているわけです。

 

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 アップにしてみます。インベーダーが右から左に動く時、インベーダーの攻撃範囲は図のようになります。

 攻撃範囲に砲台が重なる時、やられるリスクが生じます

 

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 この場合、インベーダーを右から追うように迎え撃つと、砲台と攻撃範囲が重なる位置は、図のようになります。

 リスクが重なっても、インベーダーに対する距離が足りないため、リスクが高いままインベーダーをやっつけることはできません。

 

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 しかし、左から迎え撃ってみると。砲台と攻撃範囲が重なっている面積は、ほぼ右と同じ。

 つまり同程度のリスクですが、見事にインベーダーに弾を当てられることがわかります。

 インベーダーは追いかけず、迎え撃つのがよい攻略です。

 

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 つまり!

 リスクを決めるための砲台の横の長さは、ゲームバランスのキモです。
 単純にデザインだけではなく、ゲームの面白さに深い意味を持たせる距離なのです。

 

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 同じように、リスクを変えるシステムも、ゲームバランスのキモです。
 この場合、トーチカが砲台の右をすっぽり隠すことにより、一方的に相手を攻撃することができます。

 リスクを工夫で抑えてより有利に進行するこれが“攻略”です。

 

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 ……だから、『スペースインベーダー』のルールと敵で、ただ弾を3方向に撃てます、というのは、一見派手だけど考えられていないゲームデザインなのです。
 もちろん、敵も斜めに弾を撃ったり、弾数制限があれば別ですが。

 ゲームを作る側ならば、「リスクとリターン」をしっかり考えて、ゲームの面白さを演出するバランスを磨きましょう。

リスクコントロール:リスクとリターンのバランスを取る

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 他にも、『スペースインベーダー』には、昔のゲームとは思えない驚異的なバランス取りがなされています。

 一部をご紹介しておきましょう。

 

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 たとえばインベーダーの数が減っていくと、インベーダーの移動速度が早くなるのですが、これはゲームが進むたび、リスクが高まっていくことになります。

 

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 また、インベーダーは下のほうが“得点が低く”、上のほうが“得点が高く”なっています。
 これらは実は横幅、つまり攻撃の当たりやすさも異なっており、低得点のインベーダーのほうがやられ易くなっています。

 先ほどの速度関係なども含めて考えれば、ただ上の方にいるから得点が高い、ということではなく、リスクに見合った得点づけであることが伺えますよね。

 

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 他にも、『スペースインベーダー』には非常に多くの優れた点が見受けられるのですが、仔細はざっくり省略します。

 今回のプレゼンを振り返りながら、『スペースインベーダー』の奥深さを節々から感じていただければ幸いです。

名古屋撃ち:最大のリスクと最大のリターン

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 ところで、左右に動きつつ下に降りるインベーダーが、画面のもっとも下まで降りることを「侵略」と言います。

 これは、一撃でゲームオーバーになるので、もっとも危険な障害です。

 

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 で、かつてこういうテクニックがありました。

 インベーダーが画面の下まで降りてきて、侵略寸前。ピンチ!
 こういった時、画面のもっとも下、つまり侵略寸前になった状態のインベーダーの弾が、なぜか砲台をすり抜ける、というものです。

 これを、「名古屋撃ち」と言います。
 インベーダーが侵略、つまり最下方まで降りると、残り砲台数がいくらあっても、いきなりゲームオーバーになります。

 つまり侵略寸前にあるということは、ものすごく大きなリスクを抱えた状態にあると言えます。
 が、そこでビームに当たらなくなることで、砲台自身が持つリスクはいきなり大きく軽減されます。

 

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 つまり「名古屋撃ち」は、最大のリスクと最大のリターンが重なっている状態なのです!

 ひとつ間違えれば“侵略”。でも“無敵”。
 これはかなり鋭い仕様だと言えますよね。

 

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 ゲーム中最大のリスクと最大のリターンが紙一重になっているのがスゴイ。
 「リスクとリターン」はゲーム中に変動させつつバランスを取らなければなりません。

 もう40年近く前のゲームなのに、これは凄まじいことですよ。社会現象になるのも、それなりの理由がありますね。
 なお、当時は『スペースインベーダー』のコピー品もいっぱい出回りましたが、名古屋撃ちができない仕様のものは、やはりその分面白くなかったです。

 

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 なぜ名古屋撃ちができるのか、という説明もしておきます。
 実は名古屋撃ちって、バグだと思われます。

 インベーダーが弾を発射する。その時、普通、弾はこの位置から呼び出します。そりゃあそうですよね。
 が、よーく観察すると、そうではなかった。インベーダーの弾の呼び出し位置は……。

 

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  本当はココなのです。けっこう下から。

 

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 なので、砲台が最接近していると、弾の呼び出し位置が当たり判定の下に出てしまい、すれちがう、ということです。

 仮にバグであったとしても、「この時代にこういう鋭い仕様が入った」というところが、また面白い。

パワーアップアイテムとボム:リスクとリターンを応用する

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『グラディウス』(KONAMI/1985)【※4】
(C)Konami Digital Entertainment

 「リスクとリターン」の考え方の応用で。パワーアップ型のシューティングは、パワーアップを取ることにリスクを設けています。

 この画面写真では、上の方の赤い砲台がパワーアップを持っているわけですが、これを倒しに行くにはいかにもリスクがありそう。でも、パワーアップして今後が楽になるリターンもあるかもしれません。

 地形が無いシューティングよりも、地形にぶつかるシューティングの方がスリリングに感じたり、パワーアップしきった時より、パワーアップ“している最中”の方が楽しく感じることも、「リスクとリターン」に密接な関係があります。

 

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『ダライアス外伝』(タイトー/1986)【※5】
(C) TAITO CORPORATION 1986, 1994 ALL RIGHTS RESERVED.

 それと、いわゆるボム【※6】があるシューティングで、ボムを残してやられたことは多々あると思います。
 むしろ、常に使い切る人は少数派かと。派手に使うと、本当にピンチの時に使えないですからね。

 ボムは、回数制限と強力な脱出機能で構成された、賭けごとだと言えます。

 いかに使わないで済むか。
 ギリギリまで粘る行為と攻略によって、リスクコントロールがなされています。

※1 星のカービィ
HAL研究所が開発し、任天堂が1991年に発売した横スクロールアクションゲームおよび、そこから続くシリーズを指す。桜井政博氏が生み出したシリーズである。食いしん坊の主人公カービィによる、吸い込み・吐き出し、コピー能力(1993年発売の2作目『星のカービィ 夢の泉の物語』より)などのアクションを特徴とする。親しみやすさと低難易度で幅広い層に人気を博し、「スーパーマリオ」シリーズ、「ポケットモンスター」シリーズに並ぶ任天堂の主力タイトル。

※2 大乱闘スマッシュブラザーズ
桜井政博氏が世に送り出した、対戦型アクションゲームのシリーズ名。任天堂の歴代ゲームシリーズの代表的な人気キャラクターが一堂に会し戦う。HAL研究所が開発し、1999年に任天堂が発売したNINTENDO64用ソフト『ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』がその第1作目。「スマブラ」の愛称で親しまれる国民的ゲーム。

※3 スペースインベーダー
株式会社タイトーが1978年にリリースしたアーケードゲーム。隊列を組んで攻めてくるインベーダーを自機で撃ち落とす、シューティングゲームの元祖となる作品。1970年代後半に社会現象となるほどの一大ブームを巻き起こし、日本にコンピューターゲームが定着する礎となった。

※4 グラディウス
1985年にKONAMIからアーケードでリリースされた、右方向へ進む横スクロールシューティング。自機ビックバイパーの対空と対地のミサイルを使い分け、敵編隊を撃破してパワーアップアイテムを入手。アイテム取得ごとに切り替わる任意の能力をパワーアップボタンで決定し、能力を駆使して敵軍を撃破していく。各ステージの最後には、各面独特の敵や攻撃とともに大型母艦のビッグコアが待ち受ける(終盤のステージを除く)。ファミコンはじめさまざまな機種への移植作や続編が登場している。

※5 ダライアス外伝
1986年にタイトーから発売されたアーケード用横スクロールシューティング『ダライアス』の3作品目。「ダライアス」シリーズは、モニターを横に3つ並べた専用の筐体の使用、ルート分岐により難度が変化するシステムなど、シューティングゲームには珍しいアイデアがプレイヤーを惹き付け、長らく続くシリーズになった。ボスに相当する巨大戦艦は、シーラカンス、イソギンチャク、ピラニア、シュモクザメなど水棲生物をモチーフにしている。コンシューマーにもたびたび移植されているが、1画面に収まるように構成をアレンジされているものが多い。

※6 ボム
シューティングゲームにおける特殊攻撃。発動することで広範囲に攻撃ができたり、敵の弾をかき消すことができたりするが、弾数には制限があることが多い。

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