10月12日の夜、東銀座の新歌舞伎座横のビルにある電ファミニコゲーマー編集部に突如として届いた段ボール箱――。
その中身を空けるなり、にわかに編集部員はざわめきだした。というのも、その中にあったのは……。
PS VR!
PS VRについては、このサイトの読者には説明は不要かもしれないが、あえて書いておくと、正しくはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が今日10月13日に発売したVRシステム「PlayStation VR(PS VR)」のことだ。
「VR元年」と言われてきた今年、ついに満を持して登場した最注目のVRハードである。ローンチタイトルも、仮想空間の中で夏休みに女の子の家庭教師をするという身も蓋もない欲望の発露で話題になった 『サマーレッスン』や、あるいは「アイドルマスター」や「初音ミク」など人気のコンテンツが目白押し。予約開始時には、わずか1時間で予約終了した店舗もあったほどの人気ぶりだった。
が、このPS VR、もちろん編集部が注文したわけではない。
実はこれ、先日のホラーゲーム座談会などでお世話になっているSIEが編集長のTAITAIに送ってくれたものである。そう、つまりこれこそ、ゲームメディアの役得そのものである。
というわけで、さっそく東銀座の新歌舞伎座タワーでは、電ファミの編集部員とドワンゴのゲーマー連中の社員がざわざわと群がり、そして瞬く間に「朝までコース」でのVRゲーム大会の開催と相成ったのであった。
そこで、せっかくなので電ファミニコゲーマー編集部では、PS VRゲーム大会でプレイしたゲームたちのレビューをお届けしていきたいと思う。
というわけで、まずその記事の第一弾として今回のPS VRのレビューに協力してくれたのは、PS VR発売と聞いて居ても立ってもいられない、あらゆるVRゲームをプレイし尽くすドワンゴ社内の有志集団「VR部」だ。
Steamで配信されるVRゲームを上から順に片っ端からプレイするとか、あえて徹底的に気持ち悪くなるVRゲームを自作して「VR酔い」を研究するとか、思う存分VRゲームができる「VR部屋」を求めてマンションを引っ越したりするとか、よくわからない伝説を持つドワンゴVR部員たち。
というわけで、まずその記事の第一弾は、そんな彼らが発売初日にさっそく仕事をぶっちして職場でPS VRの仮想空間に思う存分浸った感想をレポートしてみたい。
ハードウェアとしては本当に◎
まずヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)の装着感が最高ですね。冗談抜きで本当に素晴らしいです。メガネをつけて普通に使えるのが最高です。
それは、ヘッドセットが頭の上に付けるベルトにぶら下がっている形になってるからですよね。ぎゅっと押し付けられないのでメガネもかけやすい。
基本的にヘッドセットにいきなりベルトがつながっていて、ヘッドセットとベルトで横から頭と目を締め付けるんです。
痛いし、重そうですね。というか、メガネのフレームが曲がりそう……。
マジックテープでつけるものも多いので、髪の毛を巻き込んだり(笑)。いや、ほんとに痛いんですよ。それがないというのが、まず本当に素晴らしいです。
あと、VRは遊び始めるまでが大変そうなイメージがあるんですが、セットアップはどうですか。
だいぶ楽ですよ。
だって、PCのVRは、壁にセンサーを付けて、ややこしいケーブルをちゃんとつないで、周囲にそれなりのスペースを用意して、定期的にWindowsやミドルウェアのアップデートも必要ですから。遊び始めるまでにまあ2日はかかりますよね。
最初の1日はセットアップで「ふぅ疲れた」という感じですよね(笑)。
私は2回セットアップしたんですけど、2回目でも1日ぐったりしてましたもん。
PS VRだとPS4があればできるじゃないですか。10万円くらいで揃えられます。PC系のVRハードだと20万円は必要という感じですね。
ただ、ケーブル周りの煩雑さはちょっとありますけどね。
いや、他のVR機器とそんなに変わらないと思いますよ。HTC Viveのセットアップと比べると、カメラの設置はありますけどそこまででもないです。
うーん、ただ自分の母親がセットアップできるかと想像してみると、たぶんできない。その点では、やはりゲーム好きのためのものだと思いました。
なるほど。じゃあ、セットアップして、頭に機器をはめて、次はゲームのプレイになるんですが、画面はどうでした? どうせへぼいんだろ、と思ってる人は多そうですが。
画面に「ツブツブ感」がないですね。VR機器はディスプレイが近いのでどうしても避けられない問題だったんですが、そこは上手く出来ています。
ピクセル同士のつなぎ目が網目のようになり、画素同士が独立してつぶのように見えてしまう感じですね。映像が滑らかでなくなるので、ここがうまく処理されていないと没入感がそがれてしまうんです。
いやあ、どうなのかな。若干、画面をぼかしてますよね。レンダリングでぼかしてるのかなあ。
たぶん、注目してほしいポイント以外をぼかすことで対応してるんですよ。そこは、スペックとも相談した落とし所じゃないかなと思います。
悪くはないですよね。むしろそれでフレームレートがこれだけ安定しているのは素晴らしいです。
細かい描画が必要ない周縁部や遠景をかなりうまくごまかしてあるし、ほとんど気にならないです。ハードとしての完成度は素晴らしいですね。
実際にプレイしたゲーム
まずはローンチタイトルを遊んでいるとのことなんですが、どうでした?
最初にプレイしたのは、SIE製作の『PlayStation VR WORLDS』に収録された『Scavengers Odyssey』だっけ。
ハードを作った会社が、「こういうゲームが遊べるよ」と作ったタイトルたちの一つですね。
ロボットを操作して廃墟となった宇宙船を探索していくだけで、オーソドックスなんだけど、操作が快適。ゲームとしては普通におもしろかったです。
ローンチタイトル、しかも5本セットに同梱された1本にしては、あり得ないクオリティだと思う。最高。みんなロボットを使ったVRゲームなら、「これはやりたいよね」というネタが散りばめられている感じだしね。
VRとしての技術の凄さ
ローンチタイトルって、そのハードで何が出来るかを示すものだと思うんですが、ドワンゴの「VR部」的に「ここはすごい!」とかありました?
VRゲームによくある特徴として、視線を下に向けると肩や腕にあたる部分が視界に入り込むのがあるんです。でも、これは諸刃の剣で、頭を少し動かしただけで身体を描画しているポリゴンがそのまんま見えることになりがちで。
ところが、PS VRはそれがないんですよ!
前に進むとちゃんとゲーム内の身体も前に行って、肩や腕の動きもちゃんと反映されている。
そうそう。下を見ながら前後に動いても、頭の位置に応じて胴体をずらしてくれます。肩や腕の位置はそれらしく、自分が筋骨隆々な主人公に乗り移った感じになりますね。
というか、他のVRってそこができてないんですか(笑)。
思いっきりポリゴンが見えるゲームもありますからね(笑)。
VRゲームだとどうしてもプレイ中に身じろぎしたりのけぞったりしてしまうんですけど、そういうときに身体のポリゴンが見えると一気に興ざめするので。そういうのがないのは本当に感動しました。
本当にVR向けに丁寧に作ってありますよね。
「酔い」は未体験の行動で起きる
丁寧に作られてるのは分かったんですが、僕は3Dゲームやってても酔うタイプで……ぶっちゃけVRって酔いそうなんですが。
やっぱりVRはどうしても酔いますよ。
乗り物酔いと一緒ですよ。人間は現実の身体が動いてないのに視界が動くと酔うんですね。VRも、やっぱり自分がゲーム内で移動しているときに酔うんです。
ただ、「いつもゲームで酔いやすい人」というのは、実はいないんですよ。実はゲームごとに、酔いやすい人と酔いにくい人がいるんです。
たとえば、私はグライダーの経験があるので、他の人がよく酔うという飛行機ゲームはまったく酔わないんです。「こういうときはきっとこうなる」という予測ができるので、脳が正常に情報を処理してくれるんですね。実体験があると、脳が五感を補正してくれるんですよ。
だから、このゲームだと壁を走ったりするステージがあるじゃないですか。それはVRとしては間違いなく面白いんですけど、同時に酔いやすいんです。だって、私たちは壁を走った経験なんてないから(笑)
VRで不快にならないというのは大切です。嫌な気分になるとHMDを外してしまい、二度と遊ばなくなっちゃうので。
ただ、このPS VRは、とにかく不快にならないような工夫がたくさんしてあるんですよ。
そうだよね。
例えば、空間をジャンプするときに軌道が表示されますね。ジャンブ軌道が見えないとけっこう酔いが厳しいはずです。
空中移動は慣れると爽快感あるんですよね。気持ちいいんですよ。ただ酔いとのバランスは問題になるんです。