人外美少女って、いいですよね!
普通の人間とは違った体質や見た目、ちょっとズレた常識。いろんな妄想がはかどる“萌え”。そんな可能性が人外には詰まっている……!
そしてここに、かわいい人外ヒロインを愛でながらホテル経営ができるゲームがあるらしい。
ムホホ…wと鼻の下を伸ばしながら、筆者は『ヨグ=ソトースの庭』の扉を開いた。のだが……、
あれ、なんか世知辛いな……??
『ヨグ=ソトースの庭』は、クトゥルフ神話をモチーフにしたホテル経営シミュレーション×恋愛アドベンチャーゲーム。主人公は借金返済のため、養父の遺産であるホテルを経営することになる。
このホテルにはさまざまな人外が集まってくるため、人造人間メイドや死神見習い、赤龍の女王、精霊を狩る剣士といった恐ろしくも可愛らしい少女たちを雇い、ホテルを切り盛りしていくのがメインのストーリーだ。
本作の魅力はなんと言っても、このヒロインたちの可愛さなのだが、ただかわいいだけでは済まされないのが本作の恐ろしいところ。法外な金利でふくらむ借金を背負っていたり、消えた家族の行方を追いながら働き口を探していたり……みんな何かしらの“世知辛い”事情を持ち、愛らしい見た目と超常的な能力の裏で、主人公と同じようにキズを抱えている。
そう、本作は「超常的な力を持った人外美少女が、“資本主義”によって追い詰められる」という一風変わった趣向をテーマとした作品なのだ。かわいい存在をいじめてアワアワしている様子を愛でる、いわゆる「可哀想はカワイイ」ジャンルにもさまざまな種類があるが、こう来たか……!
もちろん、本作は単に美少女をいじめて楽しむだけの趣味の悪い作品ではない。資本主義の荒波に揉まれ、世知辛さを共有した少女たちと主人公が支え合いながら進んでいく本作の物語に筆者は強く心を打たれたし、SAN値(正気度)と引き換えに利益をもたらす“神託”ギミックを活用したホテル経営部分も、実に面白い。
本記事では、世知辛い世の中で健気にがんばる少女たちとの交流が楽しめるホテル経営ゲーム『ヨグ=ソトースの庭』をプレイしてわかった作品の魅力について、紹介していく。
※本記事は『ヨグ=ソトースの庭』のネタバレが含まれます。「ネタバレNG」という方は、ご自身でゲームをプレイしてから、記事へ戻ってきてください!
※この記事は『ヨグ=ソトースの庭』をもっと知ってもらいたい松竹さんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
「人外美少女とキャッキャウフフのホテル経営」を夢見ていたら、プロローグから暗殺未遂だの、遺産の強奪だの……この世界、あまりにも世知辛すぎる!
まず、本作をプレイする前の筆者の認識を正直にお伝えしておくと、最初は完全にたかをくくっていた。
クトゥルフ×人外美少女×ホテル経営。この字面から想像したのは、安直な「人外萌え」だった。人外美少女を愛でたり、上位存在と危うい関係になっちゃったり……で、どうやってホテル経営を絡めるんだろう? みたいな。
記事冒頭でもお伝えしたように、そんな筆者の甘い考えはゲームを起動して早々に覆され、そのシナリオの思いがけない“重さ”に、面食らうこととなった。ここから、プロローグの流れを軽く紹介させてほしい。やや重い内容にはなるが、ここで主人公が苦しい境遇に置かれるからこそ、後に出てくる人外美少女たちの「世知辛さ」に対して、より自分事のように寄り添うことができるのだ。
本作のプロローグで描かれるのは、主人公の置かれた厳しい境遇だ。まず主人公は目ン玉が飛び出るような借金を背負って登場する。その額なんと2000万円。しかも学生ローンで。
いくらなんでも高すぎるし、この時点でかなり世知辛い。
その借金を返すために、養父である「教授」の遺産を相続しにオークション会場へと向かう。しかし、そんな道中を進むことすらままならない。というのもこの主人公、なぜか小さな「ネコの姿」をしているのだ。なんで!? いやかわいいけど!
ちなみに、そもそもなぜ「相続するはずの遺産」がオークションにかけられているのかと言うと、主人公の相続権がもうすぐ期限切れになるのと、オークション運営の想定では「主人公はもう死んでいる」はずだったから。
詳細は省くが、主人公の辛い境遇にはとある大企業が関わっており、なんとコイツら、主人公を暗殺して、宙ぶらりんになった遺産の換金を企んでいたのである!
それが大人のやることかよ!?
「ネコの姿」というのも、大企業から暗殺されそうになった主人公が、「ネコキング」なる森の精霊と契約して一命をとりとめた結果なのだ。そう聞くと、いかにネコ好きと言えど、別に羨ましくはない。
お気楽な「人外萌え」を思い描いていた頭に、開幕から世知辛く、ハードすぎる現実が流れ込んでくる。おかしい。かわいい女の子を愛でに来たはずなんですが……。
ホテルごと売られた人造メイドに働けば働くほど借金が増えていく死神など、安直な「人外萌え」に留まらない不憫なヒロインたちとの絆が、世知辛い世界に“あったかさ”を与えてくれる
そんな過酷な境遇を背負わされた主人公だが、なんとか遺産の相続に成功し、ホテルを経営していくことになる。いよいよ、待ちに待ったヒロインたちの登場だ。
本作におけるヒロインたちはこのホテルの従業員であり、ビジュアルひとつとってもわかるように、この子たちがまあかわいい。非常にかわいいのだが──付き合いが深まるにつれ、彼女たちも彼女たちで、結構いろんな事情を抱えていることがわかってくる。
たとえば、ホテルの裏方を一手に引き受ける人造メイドの小葉。実はこの子、オークション会場にたどり着いた主人公がホテルと一緒に相続した存在である。競売の最後の品となり、危うく落札されるところだった。
「人造」という出自や固い物言いから、てっきりクールで無機質なタイプかと思いきや、かわいいものを前にすると感情がダダ漏れになるし、主人公への愛はとにかくまっすぐ表現してくれて、一緒にいるだけで楽しい。それが小葉だ。
小葉と過ごしていると、彼女がアイデンティティの悩みや葛藤を抱いているような様子が垣間見える。ネットに接続できるから知識は豊富なのに、存在としてはまだ生まれたてで、世界とどう向き合っていいのか、彼女自身まだ掴みきれていないのだ。「俺が導かなきゃ……!」という気持ちになる。
赤龍の女王・エヴナは、高飛車で、大胆で、ガサツで、感情的。しかもなんと、冒頭で起きた主人公暗殺未遂の実行犯ご本人ときた。ハッキリ言って、第一印象は最悪の部類だ。でもやたら距離が近く、蠱惑的なオッドアイとセクシーすぎる“スプリットタン”で迫られると、思わずたじたじになってしまう。
人外としてもかなり高位の存在のはずなのだが、どうも何か事情を抱えていそうな素振りを見せる。冒頭でのオークションを取り仕切っていた大企業「オーロラグループ」との因縁があるようで、何やら弱みを握られている様子。冒頭の暗殺未遂もオーロラグループの指示によるものらしい。
こんな上位存在でも大資本の手に絡め取られているのかよ……! とやるせない気持ちにもなるが、そんなしがらみに囚われながらも、彼女自身の真心で主人公と接してくれる瞬間が、これまたかわいい。
料理上手で“九州弁”が特徴の斬霊師・零は、このホテルの貴重な常識人枠。斬霊師とは、代々受け継がれてきた特別な刀を用いて、悪霊の類を狩る存在だ。ホテルの料理長を担当できるほどの料理の腕前で、テキストからもおいしさが伝わってくる。料理上手の方言少女……最高!
しかしその背景には、「家族や一族が一夜にして消えてしまった」という重すぎる過去がある。突如天涯孤独の身となってしまった彼女は就職先にも困っており、主人公が営むホテルへと流れ着いたのだった。
普段の明るさと、時折のぞく動揺。この落差は、かなり胸にくる。
最後に紹介するのが、死神見習いのトリポカ。無表情で、小さくて、強い。三拍子そろった完璧な布陣だ。かわいい。
しかし、彼女には返さなければならないものがある。彼女が所属する“死神塔”への借金、その額「9999オンス」の魂……。
ちょっと人間の尺度だとピンとこない数字だが、どうやら死神にとってもかなりの額らしい。
別に派手に散財しているわけでもないし真面目に働いているのに、負債額は膨らんでいく。主人公も借金に苦しんでおり、まったく他人事に思えない。
大企業との契約。就職難。法外な金利。そして自身がオークションの商品として扱われるという……。人外だろうが、上位存在だろうが、この世界では経済的な制約から逃れられない。なんて資本主義。
でも、だからこそ、同じようにままならない事情を抱えた者同士が肩を寄せ合ううちに、このホテルは少しずつ「俺たちの家」になっていく。世知辛い世界の中で、彼女たちと絆を深めていく時間が、すごくあったかい。
本作は、かわいい女の子を眺めて「人外萌え」するだけのゲームではなかった。世知辛い世界を、彼女たちと生き延びていくゲームだったのである。





















