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『めっちゃカメレオン』の1500万本ヒットから紐解く。「ネット的な原体験を持った新時代のクリエイターの台頭」について語ってみた

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いま、世界中で『めっちゃカメレオン』というゲームが話題を集めている。

自分の体にペイントを施し、周囲の景色に溶け込んで身を隠す──シンプルな「かくれんぼ」を軸にしたマルチプレイゲームだ。

注目すべきは、その背景にある数字だろう。開発したのはわずか2人、制作期間は約2か月。それにもかかわらず、リリースから間もなく販売本数は世界で1500万本を突破した。

一時は1日あたり100万本に迫るペースで売れ続けるなど──文字通り「ゲーム史に残る記録」である。

なぜ、たった2人が2か月で作ったゲームが、これほどまでに世界を巻き込んだのか。なぜこれだけ多くのプレイヤーを惹きつけたのか?

電ファミニコゲーマー編集長・TAITAIは、この現象を一過性のヒットとは捉えていない。むしろ「ゲームクリエイターの世代交代」を象徴する出来事として読み解いていく。

このヒットの背景には、制作規模や開発期間だけでは説明できない複数の要因がある。誰にでも理解しやすく、言語への依存度が低い「かくれんぼ」を軸に、基本モードの勝敗には直接影響しないポイントや口笛などを加え、「勝つこと」だけに遊びを収束させない。また、プレイ中に生まれる笑いや驚きが、そのまま実況やSNSで共有されやすい構造になっている。

本記事では、ゲームデザイン、世界的な流通環境、配信文化との相性という観点から、本作のヒットを分析する。その先に見いだすのは、“ネットで盛り上がること”をゲーム体験の一部として自然に設計する、新しい世代のクリエイター像だ。『めっちゃカメレオン』の何が新しく、それが業界に何を示唆するのか──多角的な視点から語ってもらった。

※本記事は、電ファミニコゲーマー編集長のTAITAIが、最近のゲーム業界で話題になっていることを中心に、さまざまなゲームの話題について自身の体験を踏まえながら語る番組「@fLAT」動画をベースにお届けします。動画もあわせてぜひお楽しみください。

『めっちゃカメレオン』独特の「バカバカしさ」を生んだのは、勝敗とは無関係な「ポイント」システム

佐伯:
今回お話しする『めっちゃカメレオン』は、自分にペイントで色を塗って景色に溶け込むかくれんぼゲームです。隠れる側と探す側に分かれて遊び、探す側は隠れた人をを見つけて銃で撃つという非常に分かりやすいルールのゲームになっています。

佐伯
今、めちゃくちゃ売れてるじゃないですか、このゲーム。

TAITAI
そうですね。先日のリリースで1500万本を超えたという発表もあって、本当に1日100万本ペースぐらいで売れていましたよね。『パルワールド』とかもすごかったですけど、下手したらそれを超えるぐらいの勢いで、ある意味ゲーム史に残る記録だと思います。

『めっちゃカメレオン』なぜ1500万本も売れたのか語ってみた。_001
▲発売からの経過日数と売上本数のグラフ

佐伯
一体なぜこんなに売れたんでしょうか。僕も今ゲームを遊んで面白いなと感じたんですが、ここまでのムーブメントになった理由を平さんから伺えたらなと思っています。

TAITAI
理由はいろいろあると思うので、一個の理由というよりも、いろんな角度から今日は話せればと思います。

TAITAI
『めっちゃカメレオン』には、鬼に見られたけど気付かれなかったら貯まっていく「ポイント」があるじゃないですか。あとは、口笛みたいなのでちょっと煽るみたいな機能もありますよね。

佐伯
そうですね。

TAITAI
その「ポイント」自体は全然勝敗に関係ないけれど、高得点を目指して頑張る人が出たりするじゃないですか。

TAITAI
勝敗に関係ないけどああいうポイントのシステムがあるっていうのは、ゲームデザイン的な観点からすると、若干噛み合っていないというか、ちゃんと組み込まれていないようにも思えちゃうじゃないですか。

佐伯
ある意味でちょっとしたおまけ要素に感じますよね。

TAITAI
おまけ要素だったり、ある種の自己満足として置いてある。でもやっぱその感覚こそが素晴らしくて。あれをゲームのシステムに組み込んで、ランキングがどうのとか、これで勝敗が決まるとかってやりすぎちゃうと、『めっちゃカメレオン』の独特の「バカバカしさ」みたいなものが薄れちゃうんですよ。

『めっちゃカメレオン』なぜ1500万本も売れたのか語ってみた。_002

TAITAI
『めっちゃカメレオン』って、いろんなシステムで硬いゲームにならないようにする工夫がすごく盛り込まれているじゃないですか。あの感じは本当に新世代というか、新しい感性を持ったクリエイターのなせる技なんじゃないかとすごく思います。

多分ゲームの本質が、わいわい盛り上がることじゃないですか。だから、勝敗でもないし、カチッとした競技的なものでもなく、とにかくわいわいするために必要な要素をいろんな角度から盛り込んでバランスを取っているんじゃないかなと思います。

しばざき
硬くならないような工夫っていうのは、他にどんな工夫があるんですか?

TAITAI
硬くなるとはちょっと違うけど、マップの更新がすごく早いとか。定石みたいなものが固定されて遊んでいる人が有利にならないようにするとか、そういう配慮だとは思いますよ。

しばざき
確かに、いつでも新要素があるから始めやすいですね。

TAITAI
バカバカしいところで言うと、見つかった後にすごく動いて逃げる人とかいるじゃないですか?

しばざき やったことあります……!

TAITAI
それも、かくれんぼゲーム的には少し変にも感じられるじゃないですか。でも、余白というか、そういうルールとしてカッチリしていないところも面白いと思います。でもやっぱり代表的なところは、ポイントだと思います。鬼の視界に入るとポイントが入るっていうのが、勝ち負けに関係ないっていうのが、まず大きく素晴らしいポイントなんですよ。

佐伯
そうなんですね。

TAITAI
対戦ゲームとかってだいたい収束していくんですよ、効率がいい勝ち方に。

例えばカードゲームとかだと、だいたい流行デッキっていうものが1個から多くて3個ぐらいあって、それをメタるデッキが1個2個あって、ひたすらやり合うみたいな流れなんです。カードゲームには何百種類っていうカードがあって、本当はもっと幅広く遊んでほしいはずなんだけど、その効率よく勝てる流行デッキに収束しちゃうんですよね。なぜなら、現代は攻略サイトなどがすごく充実していて、すぐにいちばん効率がいいものが普及しちゃうから。

『めっちゃカメレオン』は、対戦ゲームっていうほど対戦ゲームじゃないけど、そういうゲームの環境の中で「収束しない遊び」にしっかりなっているというのもすばらしいところですよね。

『めっちゃカメレオン』なぜ1500万本も売れたのか語ってみた。_003

佐伯
電ファミ編集部の中で、この視界に入ったポイントのことを「漢気ポイント」と呼んでる方がいるんですよ。このポイントが溜まると「漢気が高い、格の高い隠れ方である」という風になっていて。隠れきることが目的ではなく、「漢気を見せてやるぜ」みたいな方向性で楽しむこともできる面白さっていうのもあると思うんですよね。

TAITAI
勝ち負けを競うっていう一点だけだと、効率的な勝ち方に収束しがちなんですよ。例えばだけど、対戦型のFPSとかだと「キャンパー」みたいな言葉があります。いいポイントでひたすらスナイプすると効率がいいんだけど、めっちゃ嫌われるみたいな。要はそういう風に収束しちゃう。

『めっちゃカメレオン』は、この目的性みたいなものを、ポイントや口笛でうまいことバラしているんです。だって別に、隠れ続けるんだったら煽る必要ないじゃないですか。

佐伯
ないですね、全く(笑)。

TAITAI
だけど、なんか直前で煽りまくって最後にやられちゃうとかでも面白い。自分なりの楽しみ方を自然と各々のプレイヤーが見出せるように、ちゃんと設計されてると思いますよ。作り手のセンス含めて、「こういうゲームが楽しいよね」っていう判断がすごくあるんだと思います。

「人気ジャンル×たくさんの遊びやすい工夫」がしっかり噛み合ってヒットへ

TAITAI 見つかると探す側に回るモードもあるじゃないですか。あれも上手いと思っていて、「やられた側が暇で退屈な時間」が生まれないんですよ。人狼ゲームとかだと、初日吊りされると、もうすることないじゃないですか。

佐伯 そう!本当にそうなんですよ(笑)。

TAITAI 勝敗がはっきりあるゲームって、どうしてもそうなりがちなんですよ。そこを、やられても面白いし、今度は探す側でやることがあるみたいなのは、本当すごいとしか言いようがない。

『めっちゃカメレオン』なぜ1500万本も売れたのか語ってみた。_004

佐伯
『めっちゃカメレオン』はかなり遊びやすいゲームだなと感じました。カードゲームとかって、強いカードとかを理解するところから始まり、使い方とかコンボとかっていうのを覚えるっていう手順が必要だと思うんです。でも『めっちゃカメレオン』は、塗り方とポーズを教わったら、あとは「よーいどん」で誰でもできちゃうんですよね。

TAITAI
やっぱりルールのシンプルさと、世界中誰もが共通してやるであろう「かくれんぼ」っていうテーマが、遊びやすさにつながっていると思います。

そもそも「かくれんぼゲーム」はSteamなどで一定のシェアを持っている人気のジャンルですしね。あとは『PEAK』とかをはじめとした、協力型のマルチプレイゲームも今のトレンドですよね。

結果として、じつは今のゲーム市場のトレンドに完全に乗っかっているっていうのも、当然流行った理由のひとつなんですよ。

その中でも、シンプルで遊びやすいこと。先述した遊びやすい工夫が随所に盛り込まれているゲームであること。本当にいろんなものが噛み合って、ヒットしてるんじゃないでしょうか。
あとから振り返ってみれば、当たるべくして当たった要素がちゃんと組み込まれていて、素晴らしいなと思います。
しばざき:
本当ですね。

TAITAI
当初の目標は10万本とかってゲームウィズさんのインタビューで書いてあったので、まあそれが1500万本も売れるとはねぇ……。ただ全然、まだまだ伸びると思うし、場合によっては本当に今年のゲームアワードとかにノミネートして、インディーゲーム部門で大賞とかだって獲り得るんじゃないですか。

しばざき
全然関係ないのになんか緊張してきた! そわそわしちゃう。

佐伯
やっぱり『めっちゃカメレオン』は、見る人も楽しいし、参加しても楽しいっていうのがすごいと思うんですよね。

TAITAI
プレイの敷居が低いですよね。これまで出てたかくれんぼゲームは、オブジェクトに擬態してどっかに隠れるシステムが多かったのに対して、『めっちゃカメレオン』は自分でペイントして擬態するっていう、この一点が素晴らしく面白いですよね。

しばざき
本気でペイントして擬態する人もいれば、ちょっとふざけたペイントでネタっぽく遊ぶ人もいますよね。ペイントすることで自分のスキルが関わってくる点は、面白さの体験の幅を広げているなと思います。

『めっちゃカメレオン』なぜ1500万本も売れたのか語ってみた。_005

TAITAI
電ファミのインタビュー記事でももっと聞きたかった部分なんですが、画角とかカメラの位置って、なんか調整したんじゃないかなって感じもするんですよ。『めっちゃカメレオン』ってちょっと離れてると全然分からないけど、近づくと「ここにおるやん!」みたいなことありますよね。

佐伯
ありますね。

TAITAI
絶妙にカメラが遠いことが重要なんだと思うんですよね。っていうことを踏まえると、たまたまそうなったのか、そこに何か工夫があったのかとかは気になる。でも2ヶ月で作ったから、そんなに試行作業も長くはなかったのかもしれないけど。そういうところも絶妙ですね。

「勝っても負けても楽しい」誰も置いていかない幸せなゲーム

佐伯
本作は、隠れきられた時の「やられた〜」っていう感覚が、必ずしも“敗北”じゃないと感じます。他のゲームであれば「クソー!」っていう悔しさがこみ上げてくることが多くあると思うんです。でも『めっちゃカメレオン』の場合は、バカ笑いしながら「そこいたのかよ!(笑)」となって、全く憎しみが起こらない。個人的な感想ですが、すごい幸せなゲームだなと思ってます。

TAITAI
それで言うと、対戦ゲームには「勝った人は嬉しいが、負けた人はつまらない」という根本的な課題があって、昔から議論されているんですよ。

これまでのゲームでは、マッチングシステムで上手くバランスを取るとか、近年だったら人間のふりをしたBotで溜飲を下げるとか、3回負けても1回勝てばポイント的にはランキングが上がるシステムにしてみるとかいろんなやりかたで工夫しています。対戦ゲームには、勝てない人をどうサポートしてあげて取りこぼさないかという難しさがあるんです。

よくよく考えてみれば、『めっちゃカメレオン』はそこもクリアしてるなという。勝っても負けても楽しいですよね。話せば話すほど、これは流行って当然だよなぁっていう感じですね。

「世界的なプラットフォーム×言語不要」により世界へ届いた

佐伯
『めっちゃカメレオン』は日本にとどまらず、世界中で広まっているところがすごいことだと思います。ゲーム内で言語を介さなくていい点が影響しているんでしょうか。

TAITAI
それは間違いなくそうでしょうね。もともとゲーム産業の黎明期で、日本のゲームが世界を席巻した時期があったわけですけど、ノンバーバルであるっていうところは大きなポイントだったんですよ。

佐伯
『スーパーマリオブラザーズ』とかもそうですもんね。

TAITAI
それが、言語や文化的な要素が入っていくにしたがって、各地の地域にマッチした作品が売れるようになっていきました。“世界的なヒット”は、そういう意味では出づらくなっていくっていうのが流れとしてはありましたね。

ただ、最近だとSteamのように世界的なプラットフォームが出てくることにより、世界的に流行るっていう力学も生まれています。『めっちゃカメレオン』は、世界的なプラットフォームで、言葉や文化を介さずに楽しめる。この2つの噛み合わせの爆発だと思います。

「ネット的な面白さ」をゲームに落とし込めるクリエイターの世代が台頭してきた

TAITAI
『めっちゃカメレオン』には、作り手の文脈みたいなものが、すごく色濃くあるなと思っていて。

しばざき
文脈ですか?

TAITAI
クリエイターには何かの原体験などがあって、それを自分なりに作り手としてやりたい気持ちがあり、大人になってからやるわけじゃないですか。

例えば、ゲームで言うと、小島秀夫さんだとか、『オウガバトル』を作った松野さんとかは、どちらかというと、当然ゲームが子供の頃にある世代ではありません。ですから原体験が映画や小説、ドラマなどにあります。それを「自分なりにゲームで表現したい」などいろんな理由からゲーム業界に入り、ゲームを作る際、「自分がいいと思うもの」というものをベースにした時に、自然とその原体験がそのクリエーターのベースになるんですよ。

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TAITAI
『エルデンリング』を作ったフロムソフトウェアの宮崎さんであれば、むかし彼が遊んでたゲームブックであるとか、洋ファンタジーみたいなものがやっぱり彼の中のベースにあります。それが『エルデンリング』とか『ダークソウル』になるわけじゃないですか。

では『めっちゃカメレオン』って、どういう文脈のクリエーターだったり、ゲームとして生まれてきたのか。本作はレモリオンさんとハガネイロさんのおふたりが作られたわけですけど、このふたりは元々『フォートナイト』のゲーム作る機能っていうか、クリエイティブ機能みたいなところからその出自があります。年齢的にもまだ20代でお若いですよね。

多分ですけど、彼らの原体験って映画や小説というよりは、もうちょっとネット的なものがあると思うんですよね。『フォートナイト』もまさにそうじゃないですか。『フォートナイト』の拡張機能で遊んでいたところからクリエイターになるっていう、そういう流れも含めて、「ネット的な面白さ」を表現するというのが、彼らの中のクリエイティブとしてすごく自然。っていう世代が作ったゲームが、まさに『めっちゃカメレオン』だと思っています。

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TAITAI
視点を変えると、例えば『パルワールド』もネット的な面白さの表現を感じます。『パルワールド』だったり、海外のゲームだと『PEAK』などかな。マルチでみんなでワイワイ遊ぶみたいな、ああいったゲームが今世界的に人気なのって、そういうインターネット的なワイワイ感みたいなものをゲームに落とし込めるクリエイターの世代が台頭してきたっていうことの現れだとも思うんですよね。

今回『めっちゃカメレオン』が1500万本売れたというのは、インディーとか日本のゲーム産業的にもすごくエポックで。作り手の世代っていう目線で見ても、まさに世代交代の象徴的な出来事とも言えるんじゃないかという話が今回したかったんですよ。

佐伯
デジタルネイティブ世代から特異点が現れたというか、何かこう、とてつもないものが生まれたっていう感覚ありますよね。

TAITAI
現代でウケるコンテンツの大体は、ネット的な盛り上がりってものを内包してるじゃないですか。例えば、アニメなら『ジークアクス』とかも、ちょっと年上世代を狙っているところもあるかもしれないけど、すごくネット的な盛り上がりを内包したアニメ作品で。あの盛り上がりとセットでリアルタイムで楽しむことと、やっぱ終わった後にあれを見ることって、多分体験が違うじゃないですか。リアルタイムで見るっていうことが、ひとつの面白さにつながってますよね。

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TAITAI
手前みそだけど、『人のゲームカセット』などを作ってきた「第四境界」を見ていても、ネット的な感性を非常に持っていると感じます。ゲームに限らず、今流行るものって、≒ネットで話題になるものという側面を欠かせない。だから自然とそういう世代が今、台頭してきつつあるのかなという感覚はありますよね。

「今やらねば」と思ってもらうことが大事

佐伯
僕、面白そうなゲームを見つけて買いたいなという気持ちにはなるんですが、「後でいいや」ってなっちゃうことがよくあるんです。

でも『めっちゃカメレオン』は「買わなきゃ!」っていうタイミングが何度もあって。それが伝播していって、身の回りの友達がもう持っている状態になっていて。「みんなやるならやろっか」っていうことで今回買ったんですね。やっぱり『めっちゃカメレオン』って、人を巻き込むパワーがありますよね。

TAITAI
それは明確にそうだと思います。現代で流行るもの、売れるもののひとつの要素として、「今やらねば」と思ってもらうことって結構大事なんだと思うんですよ。

今っていくらでも、過去の名作小説や映画が見られる。例えばNetflixいけば、何万件って映像があるわけでしょ。それらを押しのけてまで、今やらねばならぬ新しいコンテンツってなに?って話なんですよ。

しばざき
難しい!

TAITAI それも、シンプルに考えると、今やらねばならない「時代的なもの」とか「ムーブメント的なもの」。やっぱ『ジークアクス』とかは今見る価値がある作品だったんですよ。ネットで盛り上がっていて、今見るのが楽しい。

『めっちゃカメレオン』をはじめ流行っているマルチプレイゲームも、友達の中で今流行ってるだとか、世間で今流行ってるだとか、うまい同調圧力というか空気みたいなものが生み出されています。これも結果論かもしれないけど、これだけ売れた理由のひとつだとは思います。

佐伯
フェスとかお祭りに近いような感覚ですよね。

TAITAI
まさにお祭りですね。今の若い世代にとっては、ネットで話題にならないようなものをそもそも作りたいとはあんまり思ってないんじゃないかな。面白いもの=みんなで話題にするものみたいな。それが自然に思えてる人たちに僕は見えてます。いろんな批判もあるけど、例えば『パルワールド』を作った溝部さんとかポケットピアとかも、そういう感性はすごく感じますし。

『めっちゃカメレオン』なぜ1500万本も売れたのか語ってみた。_009

TAITAI
あとは、最近国産のインディーゲームで話題になったっていう意味でいうと、図書館の本を片付ける『司書のお仕事』っていうゲームもありますね。あの作品も、話題性からの逆算的な「こういうものを作ったらみんな面白いんじゃない?」というような感覚をすごく強く感じます。

佐伯
やっぱりこういうゲーム見てると、プレイヤーさんが楽しんでくれるのを信じてくれているような感覚があります。

TAITAI
それももちろんありますし、プレイヤーさんがこう盛り上がるだろうとか、あるいはゲーム実況で盛り上がることそのものも含めて「面白い」っていう感覚なんじゃないですかね。

ゲーム実況されるのが前提のゲームデザイン。「理不尽な死」がむしろアリになる

しばざき
今のクリエイターには、面白いもの=みんなで話題にするものという感覚が自然にあるというお話でしたが、今では、ゲーム実況はされる前提でゲームを作るようになっているんでしょうか?

TAITAI
そこも結構ポイントですね。ちょっと言い方は悪いですが、僕も含めた古い世代の人なんかは、ネットでウケるものをゲームに取り込もうみたいな話をするときに、ゲームの面白さの本質とはまたちょっと別軸で話をしがちです。こういうものがウケるとか、こういう見せ方をするといいよね、みたいな話をね。

これに対して、今のクリエイターはもっとピュアというか。当然動画でも遊ばれるし、実況されるし、それを見てみんなワイワイするしっていうのを、「ゲームってこう遊ばれるよね」っていう当然の概念として捉えている

例えば、シングルプレイ用のゲーム、ストーリー重視のRPGだと、別に実況を意識して作ってはいないじゃないですか。あるいは、実況前提の作りじゃないじゃないですか。

昨今流行っている協力型マルチプレイゲームや実況映えするようなゲームは、「実況で遊ばれる」環境そのものが、すごく自然に前提としてあるゲームなんじゃないかなと思います。この感覚は、ひとつふたつ前のゲームの作り手も含めた世代とは意外と違うんですよ。

しばざき
そうなんですね。

『めっちゃカメレオン』なぜ1500万本も売れたのか語ってみた。_010

TAITAI
ちょっと難しい例で言うと、ゲームの作り方も全然違うと思うんですよ。UUUMっていうYouTuberの事務所があるじゃないですか。あそこでもゲームを作っているんですよ。そこでゲームを作っている方たちに話を聞いた時、「なるほど」と思ったことがありました。

普通、ゲーム中に「理不尽に死ぬ」ってダメなことじゃないですか。いわゆるクソゲーですよね。予備モーションもなくいきなり罠にはまって死ぬとか、初見殺しありまくりで死んじゃうとか。

しばざき
イヤですよねぇ。

TAITAI
実際、シングルプレイのゲームデザインとしても 、理不尽に死んじゃうみたいなものはご法度とされています。攻撃をする前の予備モーションがあり、ちゃんと見極めれば避けれる。しんだ時に、やられた理由がちゃんとプレイヤーさんに伝わって、もう一回頑張ろうと思える。これらが良いゲームデザインとされています。

ところが、UUUMの方々が作るゲームには、理不尽な罠がシステムとしてたくさん盛り込まれているそうです。なぜかというと、そのほうが実況が盛り上がり、視聴者が喜ぶからです。

要は、プレイヤーさんが理不尽な罠にハマったのを見て「ぎゃはは」と笑ったり、ハマった本人が「ふざけんじゃねぇ!」と怒ったりする。こういったやり取りそのものが面白いコンテンツになるわけです。だから、ゲーム実況においては「むしろ理不尽なほうがアリ」なんですって。

しばざき
どちらもリアクションしやすいですよね。

TAITAI
そうですそうです。ゲームデザインの視点も、シングルプレイのゲームで良いとされているものと、実況を前提としたゲームで良いとされるものって違っているんですよ。おそらく『めっちゃカメレオン』とかは、実況を前提としたゲームデザインの感覚を自然と持っていると思うんです。

TAITAI
そもそもゲーム実況って、世界的なムーブメントじゃないですか。なぜ動画時代にゲーム実況がこれほど世界的なムーブメントになったのかというと、リアクションが取りやすいメディアがゲームだからなんですよ。

YouTubeなどの配信って、必ずしも情報価値があって学びになる動画だけが価値があるわけじゃないですよね。その人自体が好きで見てる場合だと、やっぱりその人のリアクションそのものがコンテンツになるわけでしょ。そう考えた時に、一番お手軽にいろんなリアクションを自然に生み出すものが、ゲームであり、ゲーム実況だったわけですよね。

スポーツ中継とかだと、いろんな権利が絡んで画面を映せないなどの制約もあります。いっぽうでゲーム、特にインディーゲームとかであれば、何の気兼ねもなくそれができるわけじゃないですか。それは流行りますよね。

佐伯
ゲームの懐が広いっていう部分もありますよね。他のコンテンツに比べて。

※「UUUM」
YouTuberが多数所属する国内大手の芸能事務所。ゲーム制作も手がけている。

ゲームを売ろうとすると売れないのか?──面白さの純度とバランス感覚

佐伯
本作を開発したレモリオンさんは他のインタビューで、お金を稼ぐ目的を意識しながらゲーム作っても、面白いものはできないし売れもしないって思っていると仰っていました。やはりゲームって売ろうとしたら売れないんでしょうか。

TAITAI
これは別にゲームに限らずですけど、前提として、面白さの純度が高いものほど面白かったり素晴らしかったりするじゃないですか。お金を稼ぐ目的のマーケティング志向がなぜダメかというと、その純度を曇らせるからなんですよ。

自分はこういうものが素晴らしいと思って作ろうと思ってるのに、「いやいや、最近の売れ筋はこうだから」と余計な角度とか邪念が入ると濁っちゃいますよね。濁るような作り方をすると良くないし、売れなくなるよねっていうのはその通りで、変に意識せずに作るべきだとは思います。

ただ、どうしてもゲーム会社で商業的に大規模な予算を使って制作する以上は、売れないといけないので。いろんな人の横やりや意見が入って来ることもあります。そのなかで自分が面白いと思うものの軸を守り、ぶらさずにやることそのものがとてつもなく難しいので、なかなかできないことではあります。『めっちゃカメレオン』はその軸を守ってやり切った。やり切った結果、面白いものができて、面白いものだからちゃんと流行ってっていう現象は自然なんですよ。

『めっちゃカメレオン』なぜ1500万本も売れたのか語ってみた。_011

佐伯
大規模なゲームを作る開発スタイルよりも、個人のクリエイターが「自分の信じた面白さ」を高めたゲームの方が、面白い純度が上がってくっていうことなんですか?

TAITAI
それはひとつのやり方ではあります。ただ、そのいっぽうで「大規模であること」が面白さとか価値につながるゲームもあるわけですよ。AAAタイトルとか、一番最近の分かりやすい事例でいうと『GTA6』とかかな。それは大規模に作っているとんでもないゲームであることが価値になり、みんなが期待してるわけじゃないですか。

だから必ずしもインディーゲームだけが面白いゲームを作る方法ではないとは思いますよ。

しばざき
「自分が面白いと思うゲームを作れば売れる、というわけではない」みたいな話も、何度か聞いたことあります。売れる売れないの差というのは、「自分だけ」が面白いと思っているか、「みんな」が面白いと思うものなのかという部分の目線が違うってことなんでしょうか。

TAITAI
そのへんもよくある話ではあります。仮に、電ファミ編集部で記事を作ろうって話があるとするじゃないですか。「自分が面白いと思うもの」だけでやると、それはもしかしたらニッチかもしれない。かといって、「みんなが面白いと思っていて自分が全く興味ないこと」を記事にしても、面白い記事にならないし、面白い記事にならなければ誰にも読まれないじゃないですか。

しばざき ですよね。

TAITAI
プロとして何かを作るとか世に出すってことは、そこの接点を探すってことなんですよ。「自分が興味あって強い」とか「自分が得意である」っていう領域と、「みんなが興味があるであろう」っていう領域の接点みたいなところを探してやるのが、一番勝ち筋があるわけです。編集部の記事でさえそういう視点で作っているんですよね。

しばざき
自分たちに関係あることだった!

佐伯
要は、バランス感覚ってことですね。

TAITAI
ただ、自分は興味ないけど今の売れ線に合わせてヒットを作っちゃう器用な人もなかにはいますけどね。

「作品をどう見せれば面白そうに伝わるか」インディーゲームが目立つために必要な考え方

佐伯
『めっちゃカメレオン』の売れたきっかけとか原因とかっていうのを踏まえた上で、今インディゲームを作っているクリエイターの方っていうのは、作品が売れるために何を意識したらいいんですかね?

TAITAI
さっき『めっちゃカメレオン』のレモリオンさんが「売れることを目指さないで作った」みたいな話があったじゃないですか。そのように、本来売れなくてもいいものがインディゲームでもあるはずなんですよね。売れなくてもいいからこそ自由にやれるっていう側面もあるので。

もちろん『めっちゃカメレオン』などの成功事例を参考にしたいとか、これに勇気づけられてっていうのは大事だと思います。しかし、じゃあこれを真似すればいいかっていうと、そういう話じゃないと思うので。やっぱり各々が作りたいもの、作れるものを作るしかない。

ただ、今勝ちぬくならばという視点でいうなら、「作品をどう見せれば面白そうに伝わるか」を考えることは大切だと思います。インディーゲームは話題にしてもらわないと目立ちようがないのも事実じゃないですか。こんなゲーム出したらみんな面白そうって言ってくれるかなみたいな、「反応からの逆算で物事を考える」っていうのは結構重要だし、何気に多くの人ができてないことかなと思いますかね。

例えば電ファミやってても、インディーゲームのクリエイターさんからリリースが送られてくるじゃないですか。だけど、なぜ電ファミがそれを取り上げねばならぬのかっていう視点って多分あんまりないものが多いですよね。「頑張って作りました」でもそれだけだと、 客観的に見て取り上げようがないじゃない?

しばざき みんな頑張ってるしな……。って思っちゃいます。

TAITAI うん、そうそう。みんな当然頑張ってるし。

TAITAI じゃあ「何を切り口に話題にしてもらうんだい」っていうところを考えないと、難しいんじゃないかなと思います。純粋なクリエイティブの能力や才能とはまた少し違うセンスなので、なかなか併せ持ってやっている人っていうのは少ないんですけど。「こういうゲーム面白そうでしょ」っていう想像力や演出、切り口ができてるかが大事ですよね。


しばざき 面白かったです。『めっちゃカメレオン』やりたくなってきました!

佐伯 やりたくなってきましたね。編集部でやりましょう。

TAITAI 編集部で一回みんなで集まってやってみたいですね。

しばざき 平さんも呼んでいいんですか?

TAITAI いいですよ。ド下手ですけど(笑)。

ライター
何気なくプレイしたNieRオートマタによってゲームの魅力に完全に取り憑かれてしまった。
オープンワールド大好き。
FPSと他ジャンルを反復横跳び。
いいものはなんでも人に紹介したくなっちゃう。 ちょっとこれ見てみて!

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