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【新連載】「とある魔術の禁書目録」は”格ゲー”世代? 鎌池和馬が語るゲーム史がラノベ作家に与えた影響【ゲーム世代の作家たち】

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電撃ゲーム小説大賞はなんで「ゲーム」?

――とすると、そもそも電撃ゲーム小説大賞を受けたのは、やはりゲームが背景にあったんですか?

(※鎌池氏の出自である電撃小説大賞は、第10回まで「電撃ゲーム小説大賞」という名称だった)

鎌池氏:
 いやあ、私が出す頃には、特にゲームを重視している印象はなかったですよ(笑)。最初の頃は、確かにゲームっぽい作品が受賞していますけど。

三木氏:
 元々はそうでした。でも明らかに、何度も賞を続けていくうちに「ゲーム要素」はどうでもよくなってましたね。ただ面白ければ良い、という。当時新入社員だった僕ですら、その空気はわかりましたもん(笑)。

 「日本レコード大賞」みたいなもんですよ。レコード大賞とは言ってるけど、単純にレコードの売上げだけで決めているわけではない、という感じです。

――(笑)。

三木氏:
 そもそも、元々「マル勝スーパーファミコン」という雑誌があって、その後「電撃スーパーファミコン」というゲーム雑誌のブランドが立ち上がるとき、小説賞も作ろうという話になったんですよ。ただ、当時の電撃はゲーム雑誌が屋台骨だったから、そこから派生するようなゲームっぽい小説を求めていたんです。いわゆる「文芸っぽい」とか「アニメっぽい」ではなく、まさに「ゲームっぽい」作品を求めていたのだ、と……以前、佐藤辰男会長がドヤ顔で言ってました(笑)。

第24回電撃大賞ホームページ

一同:
 (笑)

――なるほど(笑)。ちなみに、当時の三木さんは応募してきた鎌池さんにどういう可能性を見いだしたんですか?

三木氏:
 応募してきた小説の中で、電車のドアが開くときに「炭酸の抜けたような音がした」というフレーズがあったんです。その言葉づかいを見て、「ああ、この人の話を聞きたいな」と興味が湧いて、ご連絡をしました。

 あと、「物質の要素を吸い取る」という不思議な設定のような、後に鎌池さんが「とある」でやっているギミックの戦いのプロトタイプも入っていたんですよ。しかも、最終的には主人公が死んでも死んでも立ち上がってきて、ヒロインに立ち向かって行くシーンもあった。当時はそういう熱血作品ってなかったんです。でも鎌池さんのは、泥臭くて、「俺はどうなってもいいからそいつを助けるんだ」みたいなマインドがあって……その熱さがビビッドだったんですよ。

――それって、まさに最初に話した「格ゲー」世代の特徴だったのかもしれないですね。当時の上の世代のラノベは、もっとほんわりしたのか、「ブギーポップ」シリーズみたいな引いた感じじゃないですか。

三木氏:
 そして新入社員の頃の僕は、全くそういうライトノベルに触れていなかった。強いて言えば、「ジャンプ」世代ですよ(笑)。だから鎌池さんの完成度が決して高くなかったこともあって、編集部の他の人たちの評価も良くはなかったけど、僕は「これは面白い」と思ったんです。それで、連絡を取って会ってみることにしたんです。

 でも、その後は大変でしたけどね。僕も編集者として新人で、鎌池さんも新人。2人とも編集者と作家のやり取りの仕方なんて、よくわかってなかった。その後、鎌池さんはデビューまで2年かかるんですけど、ずっとお互いに探り探りだった気がします。

 これは今だから、初めて話をすることなのですが、正直に言うと、編集者にとって作家の卵というのは、優先順位的には一番下になるものなんです。やっぱり利益を追求する営利企業で仕事をする以上、まず時間を割かないといけないのは、「売れている担当作家」で、その次は「そこそこ売れている担当作家」で……となってしまうんです。そして、最後に新人が来る。だから、当時は鎌池さんから「(原稿の読み込みは)まだですか?」という連絡をよくもらっていましたが、他の仕事を優先してしまっていましたね。
 今は……もちろん、今の鎌池さんの原稿は、何をおいても真っ先に読むべきものになっています。そして、作家の卵はやっぱり最後(笑)。でもそこは、担当編集者の目は二つしか無いし、脳みそも一つしかありませんから、そうせざるを得ないものなんです。

――なるほど。

三木氏:
 ただ、鎌池さんの凄いところは、そこで諦めず、遅い打ち合わせのあと指摘をされたとしても、何度も何度も直してきたことです。
 僕は自分のポリシーとして、原稿打ち合わせが停滞したとしても、絶対に作家を自分から切ることはしないんです。だから向こうが来る限り何度でも打ち合わせるんですけど、いなくなる作家さんもやはりいました。

鎌池氏:
 まあ、そこは当時、親にバイトしながら書いてダメだったら諦めるか家から出てけと言われて追い込まれていた……とかあるわけですよ(笑)。

三木氏:
 でも当時の原稿から、鎌池さんは「すごいの書いてやるぜ!」感はありましたけどね、もちろん良い意味です。

――そうなんですか(笑)?

鎌池氏:
 いやあ(苦笑)。

三木氏:
 いや、原稿の中身がですよ!? 本人が調子に乗ってたわけじゃないです(笑)。
 でも、これはめちゃくちゃ大事なんです。作家さんがいかに現実世界で大人しかろうが、静かな性格だろうが、原稿だけは絶対に調子に乗らないとダメなんですよ。だって、そうでないと読者が「この人の本カッコイイぜ!」とは思ってくれないんです。

鎌池氏:
 ただ、当時から私は原稿をファミレスとかで書けなかったんです。
 というのは、原稿を書いているときの顔を誰にも見られたくないから。自分で泣けないような文章は、他の人も泣いてくれないんじゃないかなと思っているんです。

――泣けるシーンでは泣いて書き、笑えるシーンでは笑いながら書く、みたいな?

鎌池氏:
 そうそう。もちろん、私が泣いていたから、向こうも泣いてくれるとは限らない。でも、作者が泣いていないようなものを、読者が泣くことなんてあるんだろうかと思ってしまうんです。

――……なるほど。鎌池伝説にまた新しい話が(笑)。

©鎌池和馬/アスキー・メディアワークス/PROJECT-INDEX II
(C)鎌池和馬/アスキー・メディアワークス/PROJECT-INDEX II

2週間で文庫1冊の初稿を書き上げる

――ちなみに、鎌池さんの伝説と言えば「執筆速度」も有名ですよね。あれも事実なんですか? 17日間で書き上げたものもあるとか(笑)。

鎌池氏:
 今はもっと短いかもしれないですけどね(笑)。本当に早い時は第1稿は1~2週間くらいで書き上げることもありますから。

三木氏:
 ほらっ! これが鎌池和馬ですよ! 僕が言ってる内容は嘘じゃなかったでしょう!? そんな感じで、今なんと、連続毎月刊行を20ヶ月続けてます。
 しかも、その合間にいきなりまた別の新作を書いてきたりしますからね。あと、何も言ってないのに「ゲームの企画書とシナリオ書いてみたので読んでください」とか。しかも三本くらい……。フルマラソンの最中に、「俺、走ってる間暇だったから料理作ったわ」とか言われてるような気分で、もうよくわからないですよね(笑)。世の中のプロデューサーの人には、100個言って1個成就すればいいやみたいなノリで人にものを頼む人がいますけど、鎌池さんにそれをやると2週間後に本当に100個の具体案が上がってきますので、みんな、鎌池さんには気をつけた方がいいですよ(笑)。

――それって、何かの感覚を身につけたからなんでしょうか。以前に、Wordでネタを整理しているという話を聞いたりもしたのですが。

鎌池氏:
 ああ、設定の箇条書きを書き留めたWordファイルをいくつか作成しているんですよ。
 結局、新しい話がパッと思い浮かんだとしても、最初に書くのはやはりワンシーンであって、その前後を繋げていって、一個のみんなで共有できる話にしていく必要があるんです。実は、そのやりたいネタとネタの連結に時間がかかるのですが、だったら必要になったときにはあらかじめ答えがあるようにしておけば悩まないだろう、と。

――なるほど。合理的ですね(笑)。

鎌池氏:
 箇条書きなので大したことは書いてないんですけどね。というのも、あくまで思いつきを書くのが大事で、むしろこの時点でしっかりネタを考えてしまって、悩むのに時間を使うべきではないと思ってるんです。
 そうして、とにかく武器だとか、ドレッシングの瓶の形だとか、興味の湧いたものはすべてWordファイルに、自分で思い出せる程度の3行程度で書き留めて、[ファンタジー][武器]みたいにタグをつけておくんです。別に五十音順に並べる必要もなくて、単に使うとき検索をかければいいだけなので楽チンです。

 基本的にはそれだけで、ネタ探しについて「仕事と食事と睡眠以外は執筆の調べ物をしている」という話は、やや誇張かなと思います(笑)。何をしているときでも、頭の中で創作に使えるかどうかの判断をして、そうやってメモを取っているという程度のことです。
 実際のところ、「何日までにこの問題をクリアしよう」と思ってアイディアが出せたら、そりゃ天才ですよ。ホントのスランプの中でそんなことできる訳ない。そういう意味のない時間を割かないために、普段からこの作業をやってるわけです。

「とある」シリーズは様々なスピンオフ作品としても展開され、人気を博している。
(C)鎌池和馬/冬川 基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN II

――この驚異的な執筆速度がどうして成り立つのか疑問だったのですが、そういう合理的な執筆フローの構築から出来あがっていたんですね。ただ、アイディアを発酵させる時間は必要な気もするのですが……。

鎌池氏:
 でも、「とある」シリーズの場合は、“同じことを絶対に繰り返さない”という鉄の掟は課しているけど、それだけなんですよ。なので、創作スタイルのクセが自分の中についてしまえば、そんなに辛くはないんです。

――毎回あとがきに「今回はこれを試してこのように実現しました」と、書いてありますよね。

鎌池氏:
 最初は複数のシリーズを同時に出せる立場になれるなんて思わなかったから、とりあえず『とある魔術の禁書目録』というベースの中に全部ぶち込めるようにして、自分の欲求をいつでも吐き出せる大きな箱にしていったんです。まあ、最初のほうはヒロインも毎回違ったし、そういう感じですよね。

 ただ実際の作業のプロセスとしては、書いている最中に「あー、今回は明るいテイストだから、グロいの書けないじゃん!」という不満が溜まっては、それを次の作品で解消するという波みたいなのはあります。こうやって書いているうちに何も不満やストレスを感じなくなったら、終わりなんだろうなあと思うんですよ。不満やストレスは言ってみれば欲求の裏返し、やってみたいことがまだまだあるって訳ですから。でも、今は感じ続けている、じゃあ続けよう、と。

――でも、それで70冊出していくのは凄いですよね。一体、モチベーションはどういう部分にあるのでしょうか?

鎌池氏:
 必ずしもキャラクターだけとは限らないです。
 だって、ぶっちゃけた話、別にヒロインが必ずしも必要とは思ってないですもん。必要なら1億人のヒロインを1冊の中に書けばいいし、不要ならオジさんだけでいい(笑)。男の子の主人公が一番モチベーションが上がるのは何だろう、と思うと自然に必要になるだけです。

 むしろ気にするのは、1本のお話としてギミックやどんでん返しが上手くできたか、ですね。そうですね……あと強いて言えば、「課題は外側、たとえばヒロインや事件などから持ち込まれ、主人公が最後に答えを決める」という鉄則だけは踏襲していて、そこは私のフェティッシュかもしれません。ヒロインが最後まで決定して、何もしない主人公を引っ張っていく展開を望んでいるわけではない、という。

――三木さんはご自分の本で、作家の性癖を発見することの重要性を語ってましたよね。鎌池さんはどうなんですか?

三木氏:
 そういう心配すらいらない作家、という感じですかね。だってもう、勝手に原稿がドンドン上がってきてしまうんで(笑)。デビュー当時から自分なりに書きたいものが決まっていて、その信念のもとに書いて結果を常に受け入れてきた人、という感じです。
 だから、鎌池さん自身が「今書く意味がない」と思ったら、何回打ち合わせをした完成原稿だろうと、「いや、これはもう出さないことにしました」と言われたことが何度があります。僕も「めっちゃ時間と労力かけて何度も打ち合わせしたのに!」と思うんですけど(笑)、そこは良い意味で鎌池さんが読者に媚びていないところです。
 これだけの量をこなしているのに、別に出すことが目的化しているわけじゃないんですね。

©鎌池和馬/冬川 基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN
(C)鎌池和馬/冬川 基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN

「崖の深さがわからないこそ、飛び込めた」

――そろそろ時間なのですが、最後に一つ聞いてみてもいいでしょうか。鎌池さんって最近のラノベをどう思われていますか? ゲーム業界なんかも黎明期は好き放題だったけど、今は……というのがあるじゃないですか。ラノベの方はどうなんでしょうか。

鎌池氏:
 デビューしたあとに何が待っているのかが、検索で見えてしまう時代というのはありますよね。そのときに、見たくもなかったものが見えてしまうこともあるわけで、そこで尻込みをしてしまうこともあると思うんです。もちろん、膨大な情報が役に立つこともあると思うんですけど。崖の底が見えてしまっている、というのは感じます。

 私の場合は、やはり崖の深さがわからないからこそ、飛べたところはあるんです(笑)。
 アニメや映画、あるいはハードカバーの小説だったら、崖の深さがわかってしまう。でも、「電撃ゲーム小説大賞」なんて、まだまだ難易度をイメージできない、何でもできそうな感じがあったじゃないですか。しかも、当時はインターネットでは募集要項がわからない新人賞も多くて、必然的にライトノベル系のものが目に付いていたのはあると思います。説明が丁寧で入りやすかった。

――それに、ゲームという言葉の持っていた身近さを「電撃ゲーム小説大賞」という名前は上手く使っていた気もするんですよ。

鎌池氏:
 ちなみに、私がゲームを子供の頃に作りたがっていたのも一緒ですよね。やっぱり目の前でピコピコ動いているゲームが、まさかあれだけの数の人間がセクションに分かれて制作するようなものだとは思わなかった。
 やっぱりアニメや映画が明らかに1人では作れなさそうなものだという一方で、ゲームや小説は無謀にも挑戦できそうな気がしてしまうんですよ。それは逆に、完成までの道筋がよくわからないからだと思うんですけどね。逆に、映画が好きすぎる人は「とにかくカメラを回すんだ」と自主製作の世界に飛び込んでいけるじゃないですか。底の深さが分かっても飛んじゃうあの感じは、それはそれですごいと思います。

三木氏:
 ただ、本当は今でも飛び込みやすいんですよ。
 だって元々、文章さえ書ければデビューできる業界なんです。しかも、昔はパソコンを持っていないとか、プリンターがないとかで応募できない人もいたわけですよ。そういう意味では、今はスマホでテキストを書いてアップすることだって可能ですし、応募のハードルはむしろ下がっているんです。

――確かに、そうですよね。

三木氏:
 かつてのラノベは、少ないパイの読者に少ない作品を供給して、一定の利益をいかに上げていくかという発想でやっていた市場でした。でも、今は違う。昔よりメジャーになっていて、良くも悪くもアニメとかでもてはやされて、有象無象の作品が山ほど出てきた。
 まさにちょっと前のゲーム業界のように、色んな業界の人たちが参入してきて玉石混交になっているとても面白い状況だと思うんです。しかも、エンジェル投資家やパトロンに当たるようなメーカーさんたちの意向もあって、むしろ昔よりずっと入り込みやすい。だから、そこは尻込みしないでほしいんです。

鎌池氏:
 ただ、これも良し悪しだと思うんですけれども、メディアミックスによって、既存の小説大賞系のライトノベルって、大体やれることがわかってしまったと思うんですよ。どれくらいの投資をすればどれくらい成功するのか、あるいはどれくらいコケてしまうのか――底が見えてしまった。
 その結果、プレステ2末期のゲームみたいに、「高い費用をブチ込まなければ成功しない!」みたいに考えが固まり始めている印象はあります。例えば「何百万部売れました」みたいな帯がないと話題にならない、と言いますか。

三木氏:
 確かに、その盛り上がりに比例してマーケットが広がっているわけではないんです。だから、飛び込んだ先の戦いは昔より厳しくなってはいます。

――オイシそうだなと思って飛び込んだら、「おいおい!」みたいな……。

三木氏:
 こう、“食虫植物”のような怖さがある世界にはなってますよね(笑)。

鎌池氏:
 その意味では、「Web小説投稿サイト」のような新しいメディアでは、そういう印象はまだないですね。もちろん、何千万PVみたいな帯もあるだろうけど、決して重要ではない。ジャンルがファンタジーRPG系に寄りすぎているのは不安要素ですが、そこさえ打破できればまだまだ伸びると思うんです。

 なんかその柔らかい部分には「ああ、羨ましいな」と思いますね。

 新しいものが出来てから、それが冷えて固まるまでのサイクルは確実に早くなってるんです。だから、なんにしても新しいものを面白がって、自分でも提案してみるし、他人から飛んできたときにはちゃんと受け止めるのが、個人としては大事だと思ってます。
 そんなふうに「面白がる心」をみんなで持ち続けられれば、いつまでも冷えて固くならない気がするんです。これからもずっと崖の深さがわからなくてみんなが飛び込める――そういう環境でラノベがあり続けられる気がしているんですよね。(了)

©鎌池和馬/冬川 基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN II
(C)鎌池和馬/冬川 基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN II

 「デジタルネイティブ」という言葉があるように、クリエイターにも「ゲームネイティブ」とでも言うべき世代、あるいは価値観があるのではないか? というのが、本企画の最初の出発点であった。
 漫画家がコマ割を考えるときに映画の印象的なシーンをイメージしたりするように、作家が何かを考えるときに、ゲームのシーンやプレイしたときの感触をイメージしたりはしないのか? これだけ「ゲーム」と呼ばれるものが溢れる現代において、その影響が少なかろうはずはない。本取材を通して、それを具体的に解き明かしてみたいと思っていた。

 今回、鎌池氏へのインタビューを終えて改めて感じたのは、「ゲームの影響は確かにある」とそう思える一方で、それが分かりやすい表面的な感動体験というよりは、むしろもっと深いレベルで——例えば、面白さを感じるまでのプロセスそのものや、その生活スタイルにまで――影響があるのではないか? ということであった。

 インタビュー中、鎌池氏は、プレイステーションのゲームを「箱庭的」だと指摘し、その世代の想像力もまた箱庭的なのではないかとした。ソーシャルゲームに慣れ親しむ世代に対しては、「雰囲気さえあればよいという発想がある」と言い、カジュアルにコンテンツを消費していく現代の風潮を捉えてみせた。
 その分析の切れ味には驚くが、そんな鎌池氏の作品の驚異的な量産を支える、最適化された執筆フローなどの話も、大変に興味を引かれる。その徹底的にコスパを切り詰めた創作の日々は、日本一ソフトウェアのゲームを愛する「やりこみ派」たる氏のゲーマーぶりにも一脈通じる気もする。

 もちろん、このインタビュー取材一つをもって、様々なものに「ゲームの影響がある」と言い張るつもりはない。だが、これからさらなる取材を重ねていくなかで、コンテンツ産業のなかでゲームが果たしてきた役割、さらにはゲームの誕生によって人々の意識がどう変わってきたかなどを、徐々に明らかにしていければと思う次第である。
 ——とまぁ、そんな大仰なことを思ったりもしながら、基本的にはただ興味の赴くままに。じっくりと腰を据えて取材を行っていくつもりなので、続く記事もぜひ楽しみにして頂ければ幸いである。

鎌池氏の最新作であるぶーぶー2巻が7月9日に発売される。本稿で語られていたように、氏の制作手法が盛り込まれている最新作でもあるので、ぜひ手に取ってみて欲しい。
鎌池氏の最新作であるぶーぶー2巻が7月9日に発売される。本稿で語られていたように、氏の制作手法が盛り込まれている最新作でもあるので、ぜひ手に取ってみて欲しい。
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鎌池先生の担当編集、三木一馬さんからメッセージ!

 『ぶーぶー』シリーズは、もし鎌池さんが、『異世界転生モノ』を書いたら、きっと一筋縄ではいかないだろう!
 そんな、ぱっと見はベタかもしれないけど中身は個性的な作品をお届けしたい!をコンセプトにしています。「レベルカンスト」とあるように、この世界では、最高レベルまでキャラクターを「育てて」から勝負!
 果たして最強同士の対決はどのようなバトルになるのか。そして、イベリコオーク「ぶーぶー」は、見た目はアレなのに、なぜここまで主人公としてカッコ良いのか!?
 そのあたりを楽しみにしていただきつつ、この鎌池流ファンタジー世界にハマッてみてもらえると、嬉しいです! よろしくお願いいたします!!

この記事への感想・コメントを、ぜひ電ファミニコゲーマーまでお寄せください。

関連サイト:

鎌池和馬OFFICIAL WEBSITE

鎌池和馬10周年!公式サイト

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