VRでいかに20時間超えのミステリーアドベンチャーを描くのか? 期待の新作『東京クロノス』の体験版がSteamで配信開始

 VRミステリーアドベンチャー『東京クロノス』の体験版がSteamでリリースされた。対応ヘッドセットはHTC ViveとOculus Rift。Oculus Go向けの体験版は現在のところ応募制になっており、3月15日まで受け付けている。応募フォームはこちら。製品版の発売はPC版が3月20日、PS VR版の発売日は7月の予定だ。Oculus Questへの対応もアナウンスされている。

 MyDearestが開発を手がける『東京クロノス』は、昨年のクラウドファンディングで目標金額は250万円のところ3.25倍になる800万円を超える金額を集め、注目されたアドベンチャーゲームだ。総プレイ時間は20時間に及び、コンソールゲームと同等のボリュームをVRで実現することを目指している。そのためストーリーの展開には力を入れているという。

 スタッフは『ソードアート・オンライン』の編集者として知られる三木一馬氏がプロデューサーを務め、『楽園追放-Expelled From Paradise-』でモーション監督を務めた柏倉晴樹氏が監督を、また小説『今夜、君に殺されたとしても』で知られる瀬川コウ氏がシナリオを手掛けている。

 体験版は、UIなどが製品版と比べて機能制限された第1章のみがプレイできる。本作は基本的にはビジュアルノベルであり、体験版ではAUTOPLAY機能が確認できた。ヘッドセット装着時に見ている“顔の向き”はゲーム中で展開される物語に強く関わってくるが、モーションコントローラーは使わない。基本的にはボタンを押し、周囲を見渡しながら文章を読むノベルゲームである。

 物語は、立体駐車場のような場所から始まる。主人公はどうやら部分的な記憶喪失のようで、自分の名前などはわかるが、なぜこのような場所にいるのかはわからない。呆然としていると、ロウと名乗る人物が現れる。名前のとおりトリックスターのようなキャラクターで、掴みどころが無く意味深なことばかり言う。どうやら、物語の鍵を握る人物のようだが、さっそうと姿を消してしまう。

 その後、主人公が外に出てみると、そこは渋谷のスクランブル交差点だった。だが不思議なことに人間が誰もおらず、電車も止まっている。途方に暮れていると主人公の元に、続々と同級生たちが現れる。しかし、なぜこのような場所にいるのか、なぜ自分たち以外の人間は消えてしまったのか、全員に記憶がない。

 「人類が滅んだのか」という物騒な考察も飛び交うなか、情報交換をすると、どうやら街の周りは鏡の壁のようなもので封鎖されているようだ。すると渋谷の巨大ディスプレイに、「私は死んだ。犯人は誰?」という謎のメッセージが表示される。

 第1章はここまでだが、キャラクターの軽妙なやり取りで、出だしながら、なかなか引き付けられる作品になっている。ここから高校生たち総勢8人で生き抜くためのサバイバルが行われるのか、それとも謎のメッセージから「犯人」からデスゲームのようなものが指示されるのか、今後の展開が気になるところだ。

 昨年登場した日本のVRアドベンチャーゲームでは、SIEとフロムソフトウェアの『Déraciné』、自転車創業の『星の欠片の物語、ひとかけら版』があった。どちらも、ヘッドセットでオブジェクトやキャラクターをさまざまな角度から見てインタラクションする場所を探すゲームという意味では共通していたが、『東京クロノス』はそこに重きを置いていない。ある意味、正統派のビジュアルノベルをVRで再現した作品であり、VRで長時間ゲームをプレイする敷居の高さを軽減する方向性で作られている。プレイのしやすさこそが売りのVRゲームといえるだろう。

 キャラクターの動作は作りこまれており、指や顔の向きで遠くを指し示すことがある。プレイヤーはキャラクターが指し示した方向を見て、遠くの場所にいる違うキャラクターにようやく気付くだろう。そして、アドベンチャーゲームでいうところの“立ち絵”は徐々にプレイヤーに近づいてきたり、後ろから回り込んでくる。従来、このような3Dモデルを使った距離感の表現は、ビジュアルノベルでは重要視されず省略されていたので、あらためて視覚的に表現されるのは新鮮だ。

 立ち絵と背景の組み合わせだったビジュアルノベルの空間が拡張されることによって、奥行きと高さと背後が加わっている。上を見上げれば建物の高さを感じることができるし、後ろから声をかけられると、思わずその方向に振り向きたくなる。キャラクターの演技性に空間という観点が加わっているのは、VRを活かしたならではの表現といえるだろう。

 ほかにも、プレイヤーのヘッドセット視点の向きによって、テキストウインドウは見やすい位置に自動的に移動するシステムがあり、一枚絵の表現は立ち絵のパートのまま、小さなウインドウとして表示される。こうした細やかな表現はビジュアルノベルに新しい風をもたらすに違いない。

 もしVRヘッドセットを持っており、興味が引かれたら、VRでミステリーアドベンチャーを描く『東京クロノス』の一端を体験してみてはいかがだろうか。

ライター/福山幸司

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ライター
福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman
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