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『ギ・クロニクルif』断罪a~怪物~End 06

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『ギ・クロニクルif』断罪a~怪物~End 06_001

「……日没。
 ヴァルメイヤの刻限(こくげん)です。
 
 皆さん、よろしいですね?」

「僕は大丈夫です」

「別にいい。
 最初から決まってるし。
 答えも。たぶん、結果も」

「……」

「静かに、ヨーズ。
 それでは、参りますよ。
 
 『ヴァルメイヤよ、
  ご照覧あれ!』

 
 血と肉と骨にかけて──
 
   みっつ!
 
     ふたつ!
 
       ひとつ!」
 ……

 実のところ、

 ビョルカさんとヨーズが
 『誰も犠としない』
 選ぶのは、読めてた。

 一方、
 読めなかったゴニヤだけど、

 ヨーズを指さしてる。

 明らかに、
 怒りと怯えの混じった目で。

「……どういうこと」

「……!」

「ゴニヤ……!」

「やめなさい、ヨーズ。
 本来『ヴァリン・ホルン』
 『理由』の表明など
 必要ないのですよ。
 
 必要なのは、結果だけです」

 結果……
 そうだ、結果だけだ。

 僕ひとりぶんの指名が
 決定づけた、
 結果だけなんだ……

断罪(a)

「こたび各々(おのおの)が指さされた数は、
 
 ヨーズ、2人。
 
 誰も犠としない、2人。
 
 候補たるヨーズを除く3名で、
 決選の儀を行います」

──僕の顔に視線が集中する。

 ヨーズの無表情な、だけど
 刺すような視線。
 そして、ゴニヤの熱い視線。

 このゴニヤの露骨なアピール、
 そして、まるで僕らの誰かを
 恐れるような態度を鑑みての、
 一手だったけど……

「なんで?」

「……こうして真っ直ぐに
 見つめられると、揺らぐ。
 
 僕はビョルカさんをうかがう
 ように見た。
 小さくうなずかれた。
 ……意を決して、口を開く」

「ヨーズは……今日一日、
 らしくなかった。
 
 どこか積極的で、
 誘導的に見えた。
 
 朝はやたら慎重だったのに、
 さっきは『儀』をしなくていい
 とか言い出すし……
 
 『儀』をされると困る……
 そう見えた」

「それを、ゴニヤは言えない……
 言うことを許されてないように
 見えた。
 
 余計なことを一切言うな、
 でないと怖いことになる、と、
 脅されてるみたいに。
 
 そんなヨーズを恐れて、
 とうとう逃げ出した……
 そんな感じに、思えたから……」

「……!」

「ふうん。
 それだけ?
 
 思えただけで。
 私を殺すんだ」

「……否定してくれよ!
 それで僕とゴニヤが納得して、
 決選で『犠としない』を選べば
 済むんだよ!
 
 ただ一言でいいから言ってよ!
 自分は『狼』じゃないって!」

「否定、かあ。
 
 んー、ん、ん、」


     む  り
             」

──その時、僕は見た。

 ヨーズの両の瞳が、
 捕食獣のように細まるのを。

『ギ・クロニクルif』断罪a~怪物~End 06_002

「じっさい、
 おまえの言う通り。
 陰謀とか。策略とか。
 性に合わない。
 
 らしくなかった
 おまえにそう見てもらえたなら
 
 それでいいや
 
 殺しなよ
 
 あ た し を」

 その瞬間
 それは ヒトガタを捨てた

 殺意と獣性をみなぎらせた
 ヨーズの声をした獣の怪物

 人間離れした笑みをひきつらせ
 長銃(ちょうじゅう)を放り捨てて
 鉤爪(かぎづめ)を振り上げる

 僕は動けない

 だって それは同胞だ

 変わり果てても 同胞だ──

『ギ・クロニクルif』断罪a~怪物~End 06_003

「──決選の儀です!
 
 血と肉と骨にかけて!
 ひとつ!
  ふたつ!
   みっつ!!」

 巫女の声にあわせ
 3本の指が
 吸い込まれるように
 怪物を指し示して

 僕は剣の柄(つか)に手をかけた

「しっ、
 
 『死体の乙女』よ!
 血と肉と骨にかけて、
 
 ……奪われし戦士の死体を、
 
 在るべき場所へと
    還したまえ──!!」

『ギ・クロニクルif』断罪a~怪物~End 06_004
『ギ・クロニクルif』断罪a~怪物~End 06_005
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(まあ、こうなる。
 
 ウルヴルの言葉を聞いて
 あたしは手に入れた
 夜限定。獣の力と残虐さ。
 
 昼に変身しても恰好だけ。
 禁忌も『儀』もやぶれない。
 考えるのがいっそう
 めんどうになるだけ。
 
 だから、これでいい。
 唯一の心残りは、
 
 ゴニヤが引き起こす惨事を
 見損なったことだ。)

「──きたい、してなよ──
 
 おもしろいことになるよ──」

『ギ・クロニクルif』断罪a~怪物~End 06_006

【ヨーズ死亡】

【2日目の日没を迎えた】

【生存】
フレイグ、ゴニヤ、ビョルカ

【死亡】
ヨーズ、ウルヴル、レイズル

怪物

『ギ・クロニクルif』断罪a~怪物~End 06_007

 あれから……
 埋葬を終えた僕らは
 野営に入っている。

 昨日みたいにバラバラには
 なってない。アレはヨーズが
 提案した方針だし。
 でも、顔が見えない程度には
 離れてる。
 みんな、互いに少し距離を
 とりたかったんだ。

 連日の強行軍(きょうこうぐん)で
 ひどく疲れてたうえに、
 『狼』の正体を見て、
 心が穏やかじゃない。

 気持ちの整理をするための
 静かな時間が必要だった。

 ……他の2人には。

 僕は実は、
 別の理由で悩んでる。

 あのヨーズの顔をした怪物が、
 最期、僕だけに聞こえる声で
 言い残した言葉。

『──きたい、してなよ──
 
 おもしろいことになるよ──』

「……どういうことなんだよ、
 くそっ……」

 誰にも聞こえないように
 悪態をついても、
 魔術のランタンの光は
 揺らぎもしない。

 ため息をついて、僕はまた、
 何度目かの無意味な思案に
 ふける。

 どうせ今日も眠れない。
 でも、深夜に嵐がきたら、
 また眠ってしまうような、
 そんな気がする……

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