偽
「……このままだと破滅する……
僕らの中に潜む、
アイツのせいで……
そんなことを、
警告したいってわけ……?」
「……は。
何いってんの?」
「とぼけるなよ、ヨーズ……
お前……
お前も、知って……
……え?
知って……」
「……
とうとう脳と口が腸になった。
こわ。距離おこ」
いつの間にか、
ヨーズはいなくなっていた。
僕は、
滝のように出てくる汗と、
記憶に、圧倒されている。
なんだ、これは。
僕は知ってるぞ。
これから僕らは全滅する。
何度でも、何をやってもだ。
「おっと、そいつは
『虫の知らせ』
ってやつかもなあ、
お二人サン……っと、
お前さんだけか、フレイグ。
知ってるか?
捕まってる時、
看守どもから聞いたんだが……」
「……『狼』……
敵の……
『聖域』にひそむ……
『黒の軍勢』の追っ手で……
僕らに寸分たがわず化けて……
夜に……僕らを殺す……
内側から……
ばらばらにしてしまう……!!」
「へーぇ。
『よく知ってる』なァー。
ただ、それだけじゃ駄目だ。
お前ひとりじゃ、な。
残念ながら、失敗する」
「……何を、言って……
レイズルさんは、
何を……知ってんですか……」
「いや~、これ難しいとこでな。
俺には言えること、
できることが相当に限られる。
しかも『今回』が最後……
最初から、賭けなんだよ。
相当に分の悪い、な。
ま、やれるだけやってみな。
お前にゃ期待してるぜ?
頭で考えて人に説くのは、
結局お前が一番だからな」
「分からないっつってんだよ!
ちゃんと説明してくださいよ!
でないと全員に話すぞ!
レイズルさんがこんな、
ワケわかんないことを
言ったって!
それで困るなら──」
──胸倉をつかまれた。
レイズルさんは笑顔だ。
でも、目が笑ってない。
「そうそう、そうやって、
エゲツなく頭を回すんだよ。
お前らだけで目覚め、
お前らだけで
『祈祷』の奇跡を
つかみ取れ。
それしかねーんだ。
『5回』ギリギリで、
お前ただ一人が『目覚め』た。
これでも望外(ぼうがい)の幸運でな。
これ以上は『鍵の言葉』が──」
「……5回やって、
『目覚めた』……?
……6回目が今回で、
最後、ってことか……
失敗したら、どうなるんです。
7回目はないってこと?」
「──以上だ、以上。
あとはうまくやれよー。
ったく、ヨーズどこ行った?
残る仕込みは
アイツだけなんだよ。
手ェ焼かせやがって……」
……そうして、レイズルさんは
僕を残し、どこかへ行った。
どうやら、
僕は、
地獄みたいな『5回分』の
記憶を持て余しながら、
手がかり一つない
『解決』を、
たった一人で目指せと、
そういうこと、らしい。
時はさくさく進み……
【日没を迎えた】