さて、突然復活した名企画「ベストセラー本“ホラー”ゲーム化会議」。
『ぷよぷよ』開発者でお馴染みの元コンパイル・米光一成、『アクアノートの休日』などの独創的なゲームを開発してきた飯田和敏、そしてチュンソフトで『かまいたちの夜』や『街』などの名作サウンドノベルのシナリオや監督を務めてきた麻野一哉の3人という豪華な顔ぶれによる、ベストセラー本のゲーム化の企画ブレストを記事にしてしまう企画である。
今回、『ベストセラー本ゲーム化会議』(以下、BGK)の著者3人に、電ファミニコゲーマー編集部がお願いしたのは、東村アキコさんの大人気作品『東京タラレバ娘』。
『東京タラレバ娘』東村アキコ(講談社・2014)
「Kiss」にて2014年5月号より連載中の、東村アキコによる大人気漫画。現在コミック5巻まで刊行しており累計110万部を突破と、飛ぶ鳥を落とす勢いのベストセラー。第6回an・anマンガ大賞をはじめ数々の賞を受賞するなど、漫画読みの間での評価も高い。
女性脚本家・倫子をはじめとする、いつも女子会を催している独身アラサー女子3人組が出会う一見良さ気な男たちが、次々とヤバイ男だったと判明していく展開は、まさに現代のホラー。
「アラサー女の使えるモノは貯金だけ」「回転寿司なら取り逃がした皿もまた回ってくるけれど現実の男はそうはいかない」などの思わず”グサリ”とくる名言も、現実の「タラレバ娘」たちの阿鼻叫喚を呼んでいる。
東村アキコさんは、文化庁メディア芸術祭でメディア芸術部門賞を受賞した『かくかくしかじか』や、能年玲奈主演で映画化された『海月姫』など、数々の人気作品を手がけてきた漫画家。そんな彼女が2014年から「Kiss」で連載している本作は、アラサー女子の婚活悲喜こもごもを描き、そのあまりに正確に心をえぐるリアリティに、各所から悲鳴が上がってきた大人気作品。「一見良さそうに見えた男が実は……」が繰り返される容赦のない展開に、「ホラー作品だろ!」とツッコミが入るのもしばしば。
そんな“取扱注意”の札が貼られた作品を、当にアラサーを過ぎたBGKのゲームクリエイター男子3人(既婚者)はどう調理してみせるのでしょうか……!
構成/稲葉ほたて
カメラマン/佐々木秀二
イラスト/negiyan
ノリにノッている東村アキコ
飯田和敏(以下、飯田):
東村さんって、今一番ノッてる漫画家さんでしょう。去年、『かくかくしかじか』が文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を獲ったときに、ご挨拶させて頂いたんです。着物もバッチリ決まっていて、全体的に良い意味で「ノッてるなあ、この人」って印象を受けました。
実際、今の彼女の作品は何を読んでも面白い。かつて女性漫画家のトップスターとして、岡崎京子がいて、安野モヨコがいたわけだけど、この2016年はまさに東村アキコがいる、という状態ですよ。
……で、ちょっとこういう評論家っぽいのはどうかと思いつつ、リアルな女性像を描いた漫画家の歴史を少し話したいんだけど、いいのかな?
米光一成(以下、米光):
どうぞどうぞ。
飯田和敏(いいだ・かずとし)
1968年生まれ。多摩美術大学卒。
卒業後アートディンクに就職、『アクアノートの休日』『太陽のしっぽ』を手がける。 その後、独立して有限会社バーラム(現・有限会社バロウズ)を設立、『巨人のドシン』を制作。
現在は立命館大学映像学部インタラクティブ映像学科教授。
飯田:
基本的には、岡崎京子、安野モヨコ、東村アキコという流れで見ると、女性の恋愛を巡る状況は悪化しているんだな、と感じるんですよ。
たぶん、岡崎京子はティーンの男女が恋や友情をインスタントに消費する「平坦な戦場」で、どういうテーマを見つけていくのかという問題を描いていた。一方でその弟子筋の安野モヨコは『ハッピーマニア』で、肉食系なんて言葉がなかった時代に、今で言うところの肉食系の女の子たちがどう幸せを見つけていくのかという問題を描いた。あの漫画は主人公も可愛くて、幸せになろうと一生懸命なんです。だから、ときに頭のおかしい行動もするんだけど、そこも含めて一種の“ヒーロー物語”として読めるんです。
それに対して、この『東京タラレバ娘』は、日々TVで見ているようなトピックが、あらかじめ織り込まれている世界です。めっちゃニュース性が高くて、我々の生きている世界との接続が強くなっていると思う。
米光:
安野モヨコさんの描く恋愛は「どうすればハッピーになれるのか」だったけど、『東京タラレバ娘』ではもう「悲惨な未来を回避するにはどうしたらいいか」という感じで、もっとサバイバルな状況になっている。しかも、年齢も『ハッピーマニア』の主人公より高くて33歳で、「オリンピックまでにパートナーを見つけなければいけない」というタイムリミットな感覚もある。
麻野一哉(以下、麻野):
俺の場合は、フリーランスになってから漫画雑誌を読む習慣がなくなってしまって、この漫画も今回の企画で初めて読んだのだけど……いやもう、久しぶりにこんな面白い漫画読んだ。
麻野一哉(あさの・かずや)
1963年生まれ。1987年にチュンソフト(現スパイク・チュンソフト)に入社。『弟切草』『かまいたちの夜』『街』などのサウンドノベルシリーズや、『不思議のダンジョン』シリーズといった、ゲーム史の転換点となる作品の礎を築いたゲーム開発者。
2002年にチュンソフトを退社した後は,フリーのクリエイターとして活動している。
しかも、作者が出演したテレビ番組の動画を見たら、もう「頭の中にあることを、ただイタコのように降ろしていっているだけ」と言っていて、うらやましかったね。
飯田:
まさに、それがノッてるってことなんですよ。
麻野:
しかもこの作品、本当に上手なんだよ。
例えば、いきなり一番はじめにオリンピックの話から始めて、東京タワーとスカイツリーをものすごく明示的に出してくるでしょ。2020年になったときの盛り上げを意識して、最初にゴールに据えてるんだよね。もちろん、この辺は編集者と相談して、やってるんだと思うけれども。
米光:
「2020年までにクリアできるか」みたいな設定で、ゲーム化もバッチリはまる。
飯田:
やっぱり『宇宙戦艦ヤマト』式に「オリンピック開催まであと何日」ってキャプションが欲しいところですね(笑)。今出版されている5巻の時点では何年経ってるのかが、あんまり明示されていないので。
しかも、3人が結婚をクリアしないといけない。誰かが途中で路線変更することも考えられるけれど、最終的には一人だけが幸せになるのではダメという。これはかなり難易度が高いと思います。
麻野:
ただ、この物語は「思い描いたとおりの結婚をしました」というわけにはいかないのが難しいね。
もちろん、彼女たちが結婚をすることで、現代の女性の生き方に合った「幸せの定義」をやり直すという展開ならわかる。でもさ、普通に結婚して“幸せ”になりました、という展開では読者が納得いかないんじゃないかな。
米光一成(よねみつ・かずなり)
1964年生まれ。1987年に専任の企画職としてコンパイルに入社。後に同社の看板タイトルとなる『ぷよぷよ』『魔導物語1-2-3』を監督。1992年にコンパイルを退社後はスティングに移籍。スティングを退社後はフリーランスに。
ゲーム制作以外にも、ゲームをはじめとするサブカルチャーやビジネスに関わるコラム・書籍の執筆、カルチャーセンターの講師など、幅広く活動している。デジタルハリウッド大学客員教授も務める。
米光:
先の展開を予想するのは野暮なんだけど、「思った通りの結婚じゃなかったけれども、今の状況から脱した三人三様のそれぞれの結末が描かれた」というところに落ち着くのが一番美しいと思う。
飯田:
でも、今のところの進捗はだいぶ絶望的ですよ。主人公の倫子【※】に少し希望があるかな、という程度ですね。
※倫子
『東京タラレバ娘』の主人公で、定期的に女子会を開く本作の「タラレバ娘」の一人。ドラマなどを手掛けるフリーの脚本家で、そのつながりでイケメンモデルのKEYと交流を持つことに。
麻野:
しかも、彼女たちが「いいな」と思う男たちって、俺らが目指してなれるものじゃないんだよね。服装を小ざっぱりしてどうこうという話ではない(笑)。あの脱サラして成功しているバーの店長だって、現実にいたら相当な男だからね。
飯田:
ちゃんとした会社員にだって、なるのは大変ですよ(笑)。
1巻で倫子とヤッちゃうモデルのKEYなんて、男にとっての女で言えば「メーテル」みたいなもんでしょ。それは“永遠の人”なのであって、現実にはいないも同然ですからね。
麻野:
まあ、身もふたもない言い方をすると、結局「タラレバ娘たちは望みが高すぎる」という話になっちゃうんだけどね。
米光「俺が最も感情移入するのはアイツなんです(笑)」
飯田:
さて、どう話していきましょうか。じゃあ……この3人の「タラレバ娘」たちの誰と皆さんは付き合います? この話の当事者だったら、誰ならば幸せにしてあげられそうですか。
麻野:
いや、俺個人としては「凜とした人は苦手だから、このメガネのお姉さんは厳しいかな……」と思ったりはするけど、その方向はあんまり話が発展しなくない? そんなこと俺たちが今さら言って、どうなんだって気持ちだよ(笑)。
飯田:
でも、やっぱりこの本の読者は、ここに出てくるテーマを“自分ごと”として捉えて面白がっていると思うんです。男性読者にとってさえも「女性が何を考えているか」のケーススタディになってるんじゃないですか。
例えば……やっぱり「パーマかけて」とか言うのは良くないな、とかね(笑)。
麻野:
あれは「ほっといたれよ」と思ったけどね。正直、気持ち悪いね。
米光:
あれはもう決定的にダメでしょ。
ただね、俺が最も感情移入するのはアイツでもあるんですよ(笑)。やっぱり、この作品で恋愛対象として出てきた男たちの中では、自分があそこに分類される自己認識はある。もちろん、そりゃ「髪型変えろ」とまでは言わないですけどね。
「髪型、ショートがいいなあ」とか言っちゃうのは罪なのか?
麻野:
聞かれたら言うかな。でも、俺の方から「ショートがいいね」とまで言うのは、ちょっと気持ち悪い感じがする。
飯田:
要は髪型でなくても、別の場面で、横にいる女の子の好みを無視して「『ダークナイト』はいいよね」みたいなことを言ってたりするんでしょ。僕は『ダークナイト』が好きなんで、あのシーンはだいぶ辛かったですけど(笑)。
ただ、ここで面白いのは、髪型をパーマに指定されること以外は、倫子は基本的に全部OKなんですよ。実際、彼と別れるかについては彼女も葛藤しているんですよね。
麻野:
だって、あんなふうに立派に飲み屋を経営していて、料理も上手いわけだからね。
でもさ、逆に俺らの前に現れた女性が、立ち居振る舞いも格好いいし、料理も上手いんだけど、会話がつまらなくて、なんか話が噛み合わなかったらどう思う?
飯田:
そもそも、あの男くらいの会話なら「面白い」の範疇だと思いませんか。
米光:
でしょ。飯田さんも腹を割って話そうよ、あの男に共感しない(笑)?
映画をいっぱい見ていて、色々薦めてくるのだって全然いい。しかも、映画に合った料理まで作ってくれるんでしょ。
麻野:
でも、髪型を指定されるんだよ?
米光:
俺は、髪型ぐらいすぐ変えちゃうかも。向こうが望むなら、アフロでもモヒカンでもしますよ(笑)。
麻野:
ただ、映画や髪型の件は単なるサンプルであって、要は会話が味気ないのが決定的なんだよ。だって、『ダークナイト』を見せられたときの倫子の目って、もう人生終わったような目じゃん。あの瞬間、きっと彼女は死ぬまで会話が空回りする予想をしたんだよ。だから、結局一つ解消してもこの問題はあらゆるところで出てくるわけで、根本的なことだと思う。
米光:
もちろん、そこは麻野さんが正しいんですよ(笑)。
でもさ、こういう話をすると怒られるかもしれないけど、彼女も自分が好きな『セックス・アンド・ザ・シティ』を持って行って、「見ようよ」と誘えばよかったんじゃない?
あっという間にあうんの呼吸でわかりあうのは無理だから。もちろん、あの男が頭ごなしに「あれ系は観ない」と言ってるのは、相当にひどいんだけど。
麻野:
本当にそうだよね。あそこは、せめて一巻見終えるところまで、一緒にいるべきでしょ。
ただ……そもそもこれって、付き合い始めにやるような会話じゃない気もするけどね。
米光:
まあ、そうなんだけどさ(苦笑)。
飯田「脚本家なんだから『ダークナイト』くらい見ろよ、と」
飯田:
僕としては、両方に注意したいですね。男の方には「お前は、映画版の2本だけでいいから、とりあえず『セックス・アンド・ザ・シティ』は見てくれ」と。その上で、あの作品にアリかナシかを言いなさい。そして、倫子には「お前も脚本家なんだから、『ダークナイト』くらい見ろよ」と。
一同:
(笑)
麻野:
『ダークナイト』なあ(笑)。こんなに『ダークナイト』が女性ウケ悪いって、俺は知らなかった。
でも正直に言うと、俺自身はどっちかといえば女性の気持ちに近いかな。あの映画をみんな褒めるけど、イマイチ乗れないんだよね。そんなにいいか? って。
米光:
『ダークナイト』大傑作ですよ! でも、一部の女性ウケが悪いのはさすがに知ってる(笑)。てか、見た瞬間にわかったよ。
飯田:
いやいやいや、俺は「みんな見ろ」と言いたいですね。「男も女もみんな見ろ」、と。
一同:
(笑)
米光:
東村さんがめちゃくちゃ上手いのは、倫子をちゃんとダメな脚本家として描いてるところだよね。すげえなあ、と思う。こういうときって普通は「実はデキる脚本家だったんです」みたいに書いちゃうんだけど、この倫子って人、そうじゃないもんね。
麻野:
俺なんかこんな酷い人、すぐに淘汰されるだろうと思っちゃうんだけど……いや、まさに物語の中で淘汰されつつあるのか。ともかく、この映画好きの男のシーンなんかの女性的な感覚は、なかなか男の作家には描けないね。
飯田:
こういうリアリティが面白いんでしょうね。僕は、あの男に自分を重ねてもう本当に反省しましたから(笑)。
同じように、女性もこの漫画を見て、「あ、自分もこのパターンに入ってる!」みたいに楽しんでるんじゃないかなあ。
麻野「”東京”という閉鎖空間でのホラー」
飯田:
僕がこの漫画を知ったのは、京都のバーだったんですよ。まだ2巻くらいしか出ていなかった頃かな。そこでカウンターのお姉さんが常連たちと盛り上がって、「これヤバイよねえ、うちらのことじゃん」みたいな感じで話してたんです。
米光:
“あるある”として盛り上がってる。
飯田:
地方在住の女性の方が、よりリアリティを感じながら読み込んでいる印象を受けました。東京という婚活最前線からのレポートとして、地方の「タラレバ娘」たちが夢中になってる。
僕はいま京都に住んでいるのですが、そこから見るとあらためて東京の密集感を感じる。ロケ現場で偶然会ったりするのも、東京ならあるのかなー、と思ってしまう。麻野さんの『428~封鎖された渋谷で~』も、なんか色んなことが偶然起きるじゃないですか(笑)。
麻野:
いや。俺、『428~封鎖された渋谷で~』は直接は関係ないから! 俺が作ったの、その前作になる『街〜運命の交差点〜』だから。みなさん、おぼえといてください(笑)。
まあ、どっちにしても、そういうコンセプトの物語だから、色んなことが偶然起きるわな(笑)。
でも、要は「東京だったらあり得るのかも」というファンタジー込みで楽しまれているということだよね。実際、東京は有名人と会うことも多いからね。
ただ、地方でも「タラレバ娘」になるもんなのかな。そっちではまだまだ結婚に「家に入る」感覚が強い印象があって、そういった結婚圧力が強すぎるから、「もう少し待ったら」とか「いい男さえいれば」というタラレバが少ない気がするんだよね。いや、2chまとめなんかを読んでいての印象だけども(笑)。
米光:
いやあ、地方だって、いろいろ変わってるよ、それは。
飯田:
昔は地方に限らず、フィクサーみたいな人がいたんですよね。双方の家から「こいつは上手くいかないんだよねえ」と相談されて、調整する人。もう男女の関係に限らず、人間同士の利害を調整していて「ワシに任せろ」みたいなね。
麻野:
そういう人がいると助かる場面ってあるんだよね。この辺ばかりは、昔のご隠居さんみたいな世界に憧れるときはある。「あの人の言うことは、ちょっと嫌でも聞いておかないとな」みたいなね。仲人さんなんかは、それに近かったんだろうね。
米光:
でも現代の恋愛で、外部の人間が入ってくるのは難しいと思う。
だって、おせっかいババア、おせっかいジジイが嫌で、そこから解放されたくて頑張った結果が現代なんだから。もちろん、「タラレバ娘」はその結果登場したものだけど、ある種これが楽しいとも言える。怖いことではあるけどね。
麻野:
でもさ、本当は33歳って若いんだよ。途中で地方に行って、「お姉ちゃん、若いねえ」みたいに言われるシーンがあるでしょ。「あんたみたいに若い人がシナリオなんて書いてるのかい」とかって。俺も50歳超えてるから、年齢的には言う側に回ってるからね。33歳は若いとしか思えない。
飯田:
あのシーンは面白いですよね。実は東京から離れると、価値と誇りを回復できる。東京から脱出しさえすれば、また別の世界が広がっているという。
米光:
東京の外に出れば、恋愛のスタイルそのものが変わっちゃうのはある。そのリアリティをないがしろにしないのは凄い。そういう意味では、地方のWebドラマの脚本を頑張ろうと仕事の仕方を変えた倫子が復活する流れはあるかもしれない。
麻野:
実際、33歳でそれなりに綺麗な女性だったら、アメリカやヨーロッパならこんなこと考えなくて済むと思うからね。結局、この物語をホラーとして見るなら、いわば東京という閉鎖空間の中での恐怖でしかない。
その意味では、この作品に描かれている東京って、ゾンビ映画におけるショッピングモールみたいなものかもしれないね。つまり、そこに留まれることによって「いつまでも死ねない」という怖さ。だって、「第◯出動!」【※】なんて20代の前半だったら楽しいに決まってて、いつまでもやり続けてたいよ。でも、それが本当に続いてしまうとむしろ辛くなってしまう。
※第◯出動!
タラレバ娘たちが女子会を開く際の隠語のこと。暇だからなんとなく飲みたいときは第1出動、仕事のグチを聞いてほしいときは第2出動、誰かの悪口をブチかましたいときは第3出動、そして緊急に男がらみの相談があるときにのみ発令されるのが第4出動となる。
飯田:
僕が京都のバーで会った女性たちは、「我が事としてシャレにならなくて、泣く」と言ってましたからね。そういう意味では、ちょっと介入したくなりますよね。女性たちには「君たちも不毛な女子会はその辺にして……」と言い、男には「君もパーマとか言うのはやめなさい」と言い(笑)。
麻野:
俺なんかは「死人ギリギリで生きている人っていいなあ」って思うところもあるよ。いつまでも死ねない彼女たちに、「まだ夢を持ってるだけいいじゃん、いいよなあ若さって」って。だって、結婚なんかしても幸せになれないじゃん……。
一同:
(笑)
米光:
ここの人間はもうすでに全員結婚を経験してる。飯田さんに至っては、近所のブルガリで盛大に理想的な結婚パーティーをしたのに……そのあとこそ××××××(笑)。
飯田:
本当だよ! やめてよもう、フラッシュバックしてきた。シャレにならない(笑)。
もうね、それをかいくぐってきた人間にとっては、こんなのはまだホラーといっても序盤にすぎない。まだ夢があるわけですよ。
米光:
そうね、未来がまだまだある。
麻野:
生きてる人のホラーだからね。
そもそも、もし俺が20代でまだ結婚の経験もなくて、それこそ童貞だったりでもしたら、こういうところで喋っていても、「何もわかってないくせに」と言われるだけの話だと思うのよ。でも、今の俺なら、「そんな感想はダメじゃん」と言われたとしても、「だって俺、実際にダメだったから仕方ないよ」と開き直るしかない(笑)。それが、俺が安心してこの作品を笑える理由なのかな、と思うね。草葉の陰で笑ってるというか……。
俺なんて、もうゾンビだから……というところで、そろそろゲーム化しよう(笑)。