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「脚本家なんだから『ダークナイト』くらい見ろよ(笑)」 『東京タラレバ娘』でベストセラー本“ホラー”ゲーム化会議【麻野一哉×飯田和敏×米光一成】

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ゲーム化開始〜結婚相談所の神になるゲーム?

麻野:
 例えば、結婚相談所を運営するゲームとか、どうかな。

米光:
 33歳以上しか会員になれなくて、次のオリンピックまでしか運営しない。そこまで来たら諦めましょうみたいな(笑)。

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麻野:
 なぜかわからないけど、そういうルールの結婚相談所である、と。
 でも、女はいいけど、男の方は難しいんだよ。最近、51歳の漫画家と20歳のコスプレイヤーが結婚を発表してたじゃない。そういうことが起きるから、この話も男3人が主人公だったら切実にならないんだよ。

米光:
 男の場合は、結婚できない理由が年齢以外のところになりがちなんだよね。無職とか金がないとか……。

飯田:
 『ダークナイト』が好きとか……。

米光:
 まだ言うの(笑)。

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飯田:
 僕はもうそれに尽きますよ。『ダークナイト』は女性から見たときにイケてないのかどうか……。

麻野:
 もう、ええから!
 でさ、プレイヤーが結婚の神様みたいな立場で、この男とこの女を結婚させて幸せになるかを競うゲームは成立すると思う。

米光:
 正解を出すのが大変そうだなあ。

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麻野:
 普通に作ると、それこそストーリーを「男100人✕女100人」分とか作らないといけない。でも、それは作る方もプレイする方も面白くないと思うんだよ。
 そうじゃなくて、現実世界で本物の結婚相談所を運営すること自体をゲームにした方が、意外な結果が出て面白い気がするんだよね。
 例えば、「この相談所は、AIで、すべての相性をチェックして、もっとも合う相手を見つけます」とかいって、マッチングAIをウリにするの。でも、本当はAIじゃなくて、裏側で俺ら3人が適当なことを言っているだけ(笑)。それで、くっつけた連中が5年後どれだけ幸せになってるかで、3人の勝ち負けが決まるゲーム。

結婚相談所のAI

飯田:
 いいですね。33歳の女性限定とかで募集しましょう。

米光:
 意図が不明すぎるよ!

麻野:
 もう、詐欺師な上に他人の人生をもてあそんでるからね。そして、その事実を5年後に世の中に明かして、どれだけ世間にボコボコにされるかというホラーゲーム

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米光:
 なんでわざわざ現実世界のホラーを買って出るの(笑)。

飯田:
 いや……でも、やっぱり人が人のことを考える時点で難しいんじゃないですか。例えばサル山を観察しながら、サルの集団を改善するのであればやりようはあると思うけど。

麻野:
 確かに、牛や犬を交配させて、喧嘩に強い犬とかミルクが美味しい牛とかを作ったりするのは、普通に人間はやってるからね。

米光:
 つまり、『ダービースタリオン』をやろうってことね。

麻野:
 『ダビスタ』は交配の基準が「速い馬を作れるかどうか」で明確なんだよね。じゃあ、子供が早く結婚できるかどうかってのはどうだろう。より早く結婚相手を見つけられる家系を作っていく。16歳と1日で結婚できたら大成功

飯田:
 いや、もう16歳じゃなくてもいいですよ。生まれたときから結婚もできる。
 そうすれば、もう婚活の悩みも要らなくなる(笑)

麻野:
 というか、それは許嫁(いいなづけ)だね(笑)。

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結婚すると悲劇が待ち受けるサウンドノベル

麻野:
 ただ、真面目な話をすると、この作品はサウンドノベルに向いてると思う。ちょっと、順当すぎるくらい順当なんだけど(笑)、この物語そのものが「早坂さん【※】を選ぶべきか……」みたいに選択肢が続いていくからね。「A.ごめんなさい。B.付き合う」とかにして、選んだ段階で結婚して別の人生に移る。でも、何がバッドエンドなのか、が難しいんだよね。だって、誰かと結婚した時点でハッピーエンドになってしまうからね。

※早坂さん
倫子が23歳の時に振った相手。しかし10年経って良い男になっており、倫子自身は振ったことを後悔している一方で、倫子のアシスタントとの交際をはじめてしまう。

米光:
 もはや、結婚したらハッピーエンドって時代ではなくなってるから。

麻野:
 ああ、なるほどね。あのとき結婚していたら、むしろ不幸になっていたかもしれない、と。

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米光:
 あの映画の男と結婚してみると、もうセンスも悪いし、監禁されて毎日映画の話ばかりされたりとかして、地獄だったりする(笑)。

麻野:
 それで「見とかないと殴るぞ」とか言われて、毎日映画の感想文を書かされる(笑)。それは確かにホラーだね。

監禁されて映画の感想文を書く

飯田:
 結婚したら即バッドエンドとか、強烈かもしれないですね。

麻野:
 サウンドノベルのバッドエンドって、だらだらやるとダレるしね。

 いや、実はここ数年、俺は実生活で不幸な目に遭ったときに、あえて「もしあのとき別の選択をしていたら、もっと不幸になっていたかもしれない」と想像することにしてるんだよ。
 みんな、わりと不幸なときに、自分が幸せな場合を基準にして考えてしまうんだけど、「実はあのとき選択を変えていたら、もっと不幸なことになっていたぞ」と考えてもいいと思うんだよね。そうすると、なんか生きていく勇気が湧いてくるんだよ。

米光:
 なるほどね。もっと悲惨な人生はあり得たかもしれないぞ、と。

飯田:
 その思考法はめっちゃ「人生がときめく魔法」ですね(笑)。現状を肯定できる魔法。

麻野:
 ……まあ、ずっとゲームでバッドエンドばっかり作ってきて、ロクでもない結末を考えるのがクセになってるのかもしれないけど(笑)。
 例えば、主人公が実際に結婚してみた選択肢は、もう全部ホラー展開なの。DVされて片腕がなくなってるとか、もうひどいのばっかり(笑)。「こんなんだったら3人で女子会してた方が幸せだった」みたいな。

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米光:
 じゃあ、ハッピーエンドは「結婚せずに延々と3人で話している」のがいいのかな。東京オリンピックを迎えても、まるで「終わらない文化祭」みたいに部活のように女子会をずっとやっていて、たまり場でお酒を飲んでる時間がいつまでも続いていく……。

飯田:
 2020年のオリンピックの日、それでも私たちは酒場でお酒を飲んでいた。これでいいのだ――。
 まるでクドカンのドラマみたいですね。

麻野:
 で、ときどき20代の若い男のモデルと酒飲んでエッチする。失業しても、アシスタントの子も凄く親切にしてくれる。いや、文句ないよね。

 もし俺が仕事で責任持って「この作品をゲーム化しろ」と言われたら、この「サウンドノベル化」案でいくかなあ。
 例えば、早坂さんを選んだら結局浮気されてしまって、相手は別のストーリーでは脚本家デビューしていくあのアシスタントの子だった……みたいにすれば、原作を読んでいる人からしても普通に面白いゲームになると思う。

米光:
 ファミコンの『AKIRA』並みにバッドエンドだらけで、それをくぐり抜けていく。
 サウンドノベル案でピッタリなんじゃないかな。ホラー要素についても、この漫画がたどりそうなルートはある意味ほとんど“ホラー”だしね。

飯田:
 かなり強力な案だと思いますね。しかも原作の良さを一つも壊さずに作れる。これでいいんじゃないでしょうか。

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米光:
 ただ、ちょっと真っ当すぎるか……。

飯田:
 あと、このクドカン的な部活動コミュニティって、それがあるせいで共依存してるのはあるんですよね。

米光:
 そう。本人たちが心から楽しめていればいいんだけどね……。
 それこそ2巻の6話の最後に、「私達の乗ったレーンは一方向に進み続ける」という絵があるでしょ。回転寿司に乗せられて未来へ進んでいく感覚。ここが一番怖かった。

麻野:
 結局、結婚相手の選択権が彼女たちにあるから辛いというのもあるけどね。そういう意味でいうと、昔みたいに見合いがあったらよかったんだけどね。

米光:
 でも、そこには別の意味での辛さがあるんじゃないかな。見合いで全員結婚したのはいいけど、東京オリンピックの日、私たちは酒場に旦那の悪口を言うために集まっていた……とかね(笑)。

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麻野:
 じゃあ、もう3人で2020年にはオリンピックに出場したらどう?

一同:
 (笑)

麻野:
 で、マラソンかなんかで金・銀・銅をもらって表彰台に立って、みんな納得する。

米光:
 なんの納得なんだよ(笑)。

飯田:
 マラソンでメダル独占はちょっと強すぎますね。

米光:
 じゃあ、ボブスレーとか……いや、ボブスレーも難しいけど、そういう問題なの(笑)?

麻野:
 「金・銀・銅、占拠しました! タラレバ娘!!」みたいなね(笑)。俺がサウンドノベルにするんだったら、そのルートは入れると思うな。(次回「ハーバード白熱教室講義録」編に続く

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