「子供や心の弱い人にはオススメできません」。北米で人気の謎のギャルゲー『Doki Doki Literature Club!』開発者にビジュアルノベル愛を訊いてみた

 突然だが、昨年9月にSteamなどで無料作品としてリリースされた『Doki Doki Literature Club!』(以下、DDLC)をご存知だろうか。

 タイトルを直訳すれば『ドキ♡ドキ文芸部』。アメリカのTeam Salvatoによって開発された同作は、日本のゲームメーカーが開発した美少女ゲームやギャルゲーのような外見を持つビジュアルノベル作品だ。

 ゲーム内容については後述するが、海外では発売からジワジワとプレイヤー間で人気が燃え広がり、昨年後半から今年にかけて国内外の複数のメディアにも取り上げられるようになった。
 そのため、この手のジャンルに詳しくなくても、作品を目にした読者は多いかもしれない。
 どれほど人気かと言えば、たとえばSteamでは発売から1月末までに7万5000件ものレビューが寄せられ、97パーセントのユーザーが好評を投じる事態となっている。

 さらに海外の大手エンターテイメントメディアIGNでは、昨年末に公表された2017年のゲームアワードにて、ノミネート作品として「ベストアドベンチャーゲーム」「ベストPCゲーム」「ベストストーリー」「モストイノベーティブ(革新性)」に名を連ねている。
 「ベストアドベンチャーゲーム」では受賞こそ逃したものの次点に選ばれ、また全部門においてユーザー投票枠では1位に選出。
 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『Cuphead』といった話題作に隠れたものの、無料PCゲームとしては異例の栄誉となった。

『DDLC』が2017年IGNゲームアワードにてPeople’s Choiceなどに選出されたことを伝えるDan Salvato氏

 さて、「では肝心のゲーム内容は?」と誰もが疑問を抱いたと思うが、残念ながらここで触れることは控えたいと思う。

 というのも、ここまで読んだあなたが、もし『DDLC』の存在を今までいっさい知らなかったのなら、それは幸運だからだ。
 そのままそっとブラウザを閉じてSteamのストアページへとアクセスすることを強くおすすめする。そしてレビューも、メディアの記事も、Twitterのツイートも、Wikipediaも、読むことはやめるべきだ。
  実際にプレイし始めてもしばらくは、単に日本のオタク文化に強くインスパイアされた美少女アドベンチャーゲームに思えるかもしれない。
 しかし、それでも本作は、“スタッフロールを見る”までのプレイが強く推奨されるゲームである。

ゲームスタート前には「このゲームは子供や心を乱しやすい人には適していません(This game is not suitable for children or those who are easily disturbed. )」との警告が出る。なお現時点で公式サポートされている言語は英語のみだが、開発チーム公認の日本語ローカライズも進行中となっている
(画像はDoki Doki Literature Club! 公式サイトより)

 そんな謎に包まれた『DDLC』を開発したTeam Salvatoの開発者は、いったいどのようなテーマのもと本作を開発したのか?
 今回はチームのリードデベロッパーであるDan Salvato氏にお話をうかがい、同作の開発の狙いが「ビジュアルノベルの素晴らしさを伝える点」にあったことや、本作の根底にあるテーマ性についてお聞きした。
 『DDLC』をプレイ済みのプレイヤーはもちろん、ネタバレという名の地雷原を踏み抜いてしまいプレイする気力を失った読者がもしいれば、今回プラスするSalvato氏の声に耳を傾けてみるのもいいかもしれない。

文/Nobuhiko Nakanishi
編集/ishigenn


下記インタビューでは、一部ゲーム本編の内容に踏み込んでいる部分があります。未プレイの方はお気をつけください。

──去年、『DDLC』はいくつかのゲームアワードにノミネートされました。このゲームがここまで早く評価されると予想していましたか?

Salvato氏:
 『DDLC』は私が想像していたよりもはるかに早く拡散して広がっていきました。こんなことになるのは想像していませんでした。
 何かのアワードにノミネートされるなんて考えたこともなかったです。ただ、多くの人がゲームを楽しんでくれているのは、本当に嬉しいです。

(画像はDoki Doki Literature Club! 公式サイトより)

──本作からは日本のギャルゲーの影響が強くうかがえますが、普段からプレイされていますか?

Salvato氏:
 実はあんまりギャルゲーはプレイしないんです(笑)。
 物語性の強いゲームが好きで、日本のギャルゲーにもそういうゲームがあるのは知ってるんですけど。英語版があまり出ていなくて。

──では、このゲームはどういう着想から作られたんですか?

Salvato氏:
 ビジュアルノベルは他のメディアではできない素晴らしいストーリーを提供できる方法だと思っています。ただ、アメリカでは人気がないんです。だからビジュアルノベルの持っている可能性とかパワーをきちんと証明できるゲームを作ろうと思ったんです。
 ほとんどの人がアニメやビジュアルノベルは可愛い女の子にフォーカスしすぎだと考えていて、けっして評判は良くない。だから『DDLC』は、それを逆手に取ったんです。

『Doki Doki Literature Club!』キャラクターアーティストSatchely氏によるサヨリ。

 『DDLC』は最初プレイヤーに、「これは可愛い女の子が出てくるくだらないギャルゲーだから、真面目に受け取らなくていいんですよ~」と語り掛けて油断させておいて、突然プレイヤーの心を壊すような強い衝撃を与える。
 するとプレイヤーはいつの間にか画面の向こうの彼女たちを本当に大切に思うようになるんです。

 私はビジュアルノベルは本当に素晴らしいストーリーを伝えることができることを、より多くの人に『DDLC』を通じて伝えたかったんです。それがこのゲーム作成の大きな動機ですね。

──なるほど。では、このゲームのメインテーマはなんですか?何をもっとも伝えたかったのでしょうか?

Salvato氏:
 一番強いメッセージは「互いに対するリスペクトや思いやり」だと思います。みんなそれぞれ自分の物語を持っていて、人生の中で苦しみを感じています。ナツキ(Natuki)ユリ(Yuri)はお互いに対する敬意を知り、モニカ(Monika)は“このゲーム”に対するリスペクトを知ります。
 いろいろな人がいて、それぞれが幸せになるために必要なものも、またそれぞれですよね。それを理解することは大切なことだと思います。

左からナツキ、ユリ、そしてモニカ
(画像はDoki Doki Literature Club公式サイトより)

──モニカが本当に生き生きとした魅力的なキャラクターで、すごく好きなんですけど。モニカ、好きですか? 誰がクラブの中で一番好きですか? モニカですよね?

Salvato氏:
 モニカがそう言わ“せ”たんですか(笑)。一番好きなキャラクターは選べないですね。それぞれのキャラクターといろいろな形で繋がってるので。あと、私が好きなキャラクターを選ぶと、それぞれのキャラクターのファンに「自分の推しと違う」って怒られちゃいますから(笑)。

──ビジュアルノベルがお好きなようですが、あなたにとってオールタイムベストゲームは何ですか? 理由も教えてください。

Salvato氏:
 ちょっと奇妙に聞こえるかもしれませんが、一番好きなゲームは『Riven』です。なんの情報もなく不思議な土地に送られたプレイヤーが、誰とも会話することなく探索や観察をしながら物語を発見していくゲームです。同じような理由で『Portal』『ゆめにっき』も好きです。ビジュアルノベルで一番好きなゲームは『月姫』ですね。

1993年にリリースされた一人称視点のパズルアドベンチャーゲーム『Myst』の続編『Riven』。『Myst』は当時としては真に迫るクオリティだったグラフィックと、複雑な仕組みを有した謎解き要素が評価を浴びた。『Riven』は『Myst』以上にクリアが難しい作品として知られる。
(画像はSteamより) 

──私も『Riven』は好きなゲームなんですが、人に勧めるのは難しいですよね(笑)。ただそれを聞くと、一見真逆に位置するゲーム『DDLC』と『Riven』ですが、根底に流れる共通項がある気もしてきます。

Salvato氏:
 『Riven』のような古くてあまり人気のないゲームを知っている方がいて嬉しいです(笑)。そうですね、ゲームならではのインタラクション性に類似性がある気がします。

 たとえば最近のゲームの多くは、「カットシーンからゲームプレイへ、そしてカットシーンへ」という構造を使ってストーリーを語ります。
 それはそれでわかりやすくて楽しいのですが、『Riven』や『Portal』や『ゆめにっき』、そして『DDLC』が特徴的なのは、わかりやすいカットシーンではなく、ゲーム内のプレイそのものがストーリーすらも生み出してるような感覚を与えてくれることじゃないかと思います。
 私はそのゲームならではのユニークな経験が好きなんです。

──日本の『DDLC』ファンや、今後のこのゲームをプレイする人たちにメッセージをください。

Salvato氏:
 私は人生で日本のビジュアルノベルから多くを学び、『DDLC』も影響を受けました。なので日本人のゲームファンが『DDLC』を楽しんでくれたら、それは最高の成功ですし、何よりもうれしいことです。
 ビジュアルノベル市場がこのままアメリカでも成長していき、お互いの素晴らしい物語を共有できるようになっていけば嬉しいです。日本のファンの方々にも感謝しています。本当にありがとう。

(画像はDoki Doki Literature Club! 公式サイトより)

 なおSalvato氏によれば、年内にも公式から日本語サポートが実施される予定だという。日本語のフルボイス化については難しいようだったが、「日本で人気がすごく出たら考えます」と伝えてくれた。
 このほか、コンソール版の開発にも興味があり、今後も関連して何かをやっていきたいと考えているという。ただし次回作は、『DDLC』とはかけ離れたものになるそうだ。

 今回のインタビューでもっとも興味深かったのは、Dan氏のオールタイムベストゲームが『Riven』だった点だ。
 『DDLC』とゲーム性がまったく違うゲームがベストゲームであることに困惑したと同時に、ずっと引っかかってた何かがストンと腹に落ちたのも感じた。まったく異なるゲームでありながらも根底の部分で共通点を見つけることができる感覚は、なかなか得られない。
 個人的なこのゲームの感想は、ゲームファン全てがこのゲームをプレイしたあと、誰もいない場所で独りごちることにしようと思う。

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インタビュアー・著者
Nobuhiko Nakanishi
大学時代4年間で累計ゲーセン滞在時間がトリプルスコア程度学校滞在時間を上回っていた重度のゲーセンゲーマーでした。 喜ばしいことに今はCS中心にほぼどんなゲームでも美味しく味わえる大人に成長、特にプレイヤーの資質を試すような難易度の高いゲームが好物です。
編集
ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
Twitter:@ishigenn
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