プロモーションを動かすリュウズオフィスの組織とは
梶田氏:
というわけで、このインタビューは人材募集の企画でもあるので、そろそろリクルートっぽいことをお聞きしますが(笑)。
リュウズオフィスは最初、小沼さんお1人でやられていたわけですが、社員を雇い始めるようになって、今の社員数は何人ぐらいですか?
小沼氏:
17人ですね。プランナーやコンサルタントと我々は呼んでいるんですけど、そういうプロデューサー的な人間が1人あたり数タイトルを担当して、その人間をサポートするために、制作のチームが紐付いているという感じです。
我々が欲しているのは、そのプランナーです。お客様と相対してその悩みを聞いて、ゲームを手に取る理由を作り上げて、それを実現に移す人ですね。
会社の組織を図解したほうがわかりやすいと思うので、ちょっと書いてみましょうか。
まず企画と呼んでいるチームが、お客様に対応します。営業とも言いますよね。次のWEBは、システム開発からサイトの制作まで、WEBに関する全てを担当します。
次のグラフィックには、マンガも含めています。なぜなら担当が同じだからです。
山中氏:
そうですね(笑)。
小沼氏:
それから動画と番組と、大きくはこういうチームに分かれています。原則として企画の人間が1つのタイトルにつき1人、あるいは2人ついて、そこにそれぞれの部門の専門家がアサインされていくという形になってます。
梶田氏:
動画と番組は別なんですか?
小沼氏:
動画はCMとかPVといった映像作品ですね。生放送の番組とは、似てはいますけど違うものなので、分けています。
山中氏:
ウチの会社で今、いちばん多いのがWEBのチームですね。それから動画のチームが何人かいて、番組が……いないんですよ。他部門との兼任ですね。
小沼氏:
これが今、課題になっていまして。
──採用的には狙い目ということですね。
山中氏:
WEBチームにも1人、媒体と兼任がいて。
小沼氏:
媒体というのは広告代理業です。要するにWEBバナーですね。
梶田氏:
山中さんは今、企画のほうにいらっしゃるんですよね?
山中氏:
そうですね、グラフィックと企画の兼任です。僕が入った時は本当に人が少なくて、その時は、他にWEBと動画もやっていました。
──制作というのは外注に出したりするのでしょうか?
小沼氏:
社内クリエイターが直接担当することもあります。しかし、メンバーの多くはプロデューサーとディレクターなので、実制作の多くは、外部パートナーと共に行っています
梶田氏:
これはたしかに、人を増やさないとダメですね(笑)。
小沼氏:
かつてはこれを僕が1人でやっていたんですよ。
梶田氏:
それはスゴい(笑)。そういう意味では、こうやって会社を組織化して分業できるようになったとは言えるんですね。
小沼氏:
そうですね。しかも喜ばしいことに、WEBに関してはもう僕がほとんど見なくても、ちゃんと回るようになったので。最初の企画のすりあわせだけをやっておけば、あとはそのままゲームの発売日が迎えられるようになったんです。
梶田氏:
最高責任者の小沼さんは、この組織全体を統括しているわけですよね。でも俺は、小沼さんと直接メールをやり取りしたりもしていますけど、それは小沼さん自身でも番組を担当したりしているということですか?
小沼氏:
そういうことです。梶田さんと僕がメールをやり取りしていたのは、僕が担当だったからです。
梶田氏:
社長が直接担当しているんだ(笑)。
──プレイングマネージャーですね(笑)。
梶田氏:
ということは、フリーの時にお1人でやられていたお仕事は、今でも全部やっているわけですか?
小沼氏:
WEBからはやっと離れられた感じですね。動画も昔よりは離れています。ただ、番組からはあまり離れられていないので、本当に面白い番組を作りたい人に来てほしいなぁと、心の底から思っています。
梶田氏:
『FGO』の生放送みたいな番組を作りたい人は、ぜひ来てほしいと。
小沼氏:
そういうことです。
梶田氏:
でも、社長自身が自分たちと同じ立場の仕事をしているから、これから入ってくる人も安心ではありますよね。社長が自分たちの苦労を全部分かっているので。
小沼氏:
そうですね。自分がやったことのない仕事はほとんどやらせていないので。マンガの編集はやったことないですけど。
梶田氏:
マンガ編集の経験者は、今は山中さんだけですか?
山中氏:
そうですね。僕だけです。
梶田氏:
じゃあ、編集の経験者も来てほしい感じですか?
山中氏:
うーん、経験があればというか、やりたければやればいいかな、という感じです。
もちろん作家さんとコミュニケーションを取れる方が入ってくれると、お客様に提供できる企画の選択肢が増えるのでありがたいですけど、そこは別にあまり気にしていないです。マンガに限らず、何にでも興味を持ってくれる人が来てくれると嬉しいですね。
優れたゲームを送り出すためのあらゆる手伝いをする会社
梶田氏:
それにしても、なんとなくゲームのPRをする会社なのかな? というぐらいの認識でしたけど、かなり多岐に渡っていろんなことをやられているんですね。
山中氏:
僕も最初、この会社に入ろうとした時に、何をやっている会社なのか、ぜんぜんわかんなくて(笑)。入ってからようやくわかったっていう。
結局、この会社の仕事のいちばん本質的なところは、お客様の課題を聞いて、こういうふうにアプローチして、こういうふうに話題にしていきましょう、という組み立てをご提案させて頂くことなんですよ。
これってじつは編集者の時にやっていたことと近くて、本を作って、話題にしていくこととよく似ているんです。なので僕としては、それまでやってきたことでそのまま適応できたというか、経験をコンバートしやすかったかなという気はしています。
梶田氏:
何度かお話に出てきているんですけど、リュウズオフィスという会社の理念的な部分としては、数あるゲームの中でユーザーさんの手に取ってもらえるようにする、というのがいちばん根幹になるわけですか?
小沼氏:
それは会社としての理念の先というか、次にあることですね。この会社の理念は「優れたゲームを世に送り出すためのあらゆるお手伝いをする」ということですから。
父がゲームのマーケターをしていたので、僕は当然ながらゲーム少年として育って、ゲームクリエイターを目指したこともありました。
父の経済的な事情もありましたけど、結局はゲームが好きだからこの世界に飛び込んだというのが大きいんです。
だからやっぱり、ゲームを作ってみたかったんですね。で、実際ある時、ゲームを作ってみたんですよ。ところがこれが、仕事としてぜんぜん面白くなくて。売れない。クレームが来る。炎上する。
喜んでいる人より、怒っている人や、辛い思いをしている人の方が多い。こんなに辛い仕事はないなと思って。本当に心を病む寸前までいって、その結果、30代の終わりぐらいで仕事自体からもう引退しようと考えるまでに至ったんです。
梶田氏:
30代の終わりで引退するのは、さすがに早すぎませんか。
小沼氏:
そんな時に出会ったのが、のちにディライトワークスを立ち上げることになる庄司顕仁さんだったんです。
庄司さんといろんな話をした時に、「自分でゲームを作るのは辛いけど、素晴らしいゲームを作った人の手助けをすることには喜びを感じている」ということを、つい口を滑らせて言っちゃったんですね。
そうしたら「であれば、そういう会社にするべきだ」と。庄司さんと問答をしているうちに自分の理念が明文化されてしまい、その通りに進もうとしたらこうなった、という形ですね。
そういうわけで、「優れたゲームを世に送り出すためのあらゆるお手伝いをする会社」というのが弊社の理念です。
そのためには、数あるコンテンツの中からその優れたゲームを手に取ってもらう理由作りが必要だし、理由を作ってストーリーを作ったら、そのストーリーを実行しなければいけない。そのために、ああいうチーム編成になっているんです。
梶田氏:
小沼さんの場合、ずっと1人でフリーランスとしてやられていたわけじゃないですか。こうやって会社を作って、社長として人の上に立たなきゃいけないというのは、やはり戸惑いや苦労があるんじゃないかと。
オレもフリーだから分かるんですけど、フリーのほうが気楽じゃないですか。会社になってみて良かったこと、フリーのほうがよかったこと、いろいろあると思うんですよ。
小沼氏:
人生どちらが幸せかといったら、社長よりフリーのほうが幸せかもしれません。正直言って、会社を立ち上げてからは後悔の連続で。仕事は増える、食わせていかなきゃいけない人間も増える。
それでもタイトルのプロモーションは続くので、どんどん忙しくなってしまって、些細なミスで大きな失敗をしてしまったり……。
他人の手助けをするために会社を立ち上げたはずなのに、社長としてうまく社員の力を発揮させられない日々が続いてしまい、他人の足を引っ張って、頭を下げてお金をもらっているという状況が、最初の頃にちょっとあって。
でも、それは採用した人間の責任だし、指示をした人間の責任なので、全部僕の責任なんです。ただ、仕事のクオリティが下がっていくことには、どうしてもガマンできなくて。忙しいとか儲からないとかはガマンできるんですけど、提供しているもののクオリティが下がって、仕事をくれた人に迷惑をかけるのは、本当に耐えられなかったですね。
梶田氏:
理念に反していますからね。
小沼氏:
なのでその時に、社員の採用の仕方や仕事の教育の仕方というのも、いろいろと考えました。自分の理念にちゃんと向かうことができる会社をつくろうと、固く決めたんです。
リュウズオフィスが求めている理想の人材とは
梶田氏:
ここだけの話、会社としての調子は年々上がっているんですか?
小沼氏:
そうですね、毎年、増収増益ではあります。労働時間は反比例して、減っていますね。
梶田氏:
素晴らしい! 今時珍しいホワイト企業ですね。
山中氏:
入った当初はえらいトコに来たと思っていましたけど(笑)。むちゃくちゃ忙しかったので。
小沼氏:
2年くらい前はあんまり胸を張れなかったんですけど、今はようやくそうなりました。
梶田氏:
こういう人材に来てもらいたいというのは、具体的にありますか?
小沼氏:
ゲームが好きなことは当然だと思うので、そこは省略しますけど、まず我々はサービス業ですので、だれかのために何を出来るかを考えられること、そして、そこで成果を出すことに喜びが感じられること、というのが第一だと思います。
人のために何かをやって、それで喜んでもらえたらそれが嬉しい人、ですかね。
梶田氏:
自分の考えた企画がクライアントに受け入れられて、ゲームの力になれたらそれに喜びを感じられる人、ということですか。
そういうことをやりたいと漠然と思っている人は、けっこういると思うんですよ。
でも、どういう会社に行けばいいのか、分からないというだけで。リュウズさんがそういう人の受け皿になってくれれば、いいですよね。もちろん、その人が有能であることは前提でしょうけど。
山中氏:
何か一本、筋が通っている人は向いているんじゃないかと思います。WEBでもいいし動画でもいいし。僕の場合は、そんなにえらそうに言える実績があるわけではないんですが、出版です。
何か一本、自分の中で背骨になるジャンルを持っている人で、人のために役に立ちたいという人にはやりがいのある職場かもしれないです。そういう背骨がたまたま、ゲームの宣伝の役に立つこともあるので。僕は入社して2日で、そういう形になりましたし。
小沼氏:
マンガの編集をできる人が来たから、じゃあマンガの編集や出版をアイテムに加えてしまおうとか。じつは最近、音楽業界から転職してきた人間がいるので、じゃあ今後は音楽も提案に入れようとか、そんな感じですね。
梶田氏:
要するに、自分の持っているスキルを積極的にアピールしてくれと。
小沼氏:
そうです。
梶田氏:
それは面白いですね。ちなみに今いらっしゃる社員の方は、以前からゲーム関係に携わられていた方が多いんですか?
小沼氏:
ゲーム業界の内部を経験したのは私だけですね。あとは、広告業界、音楽業界、出版業界、WEB開発業界、映像業界と、メンバーの前職は本当にバラバラですね。
梶田氏:
学歴とかは問わないんですか?
小沼氏:
学歴は問いません。日本語の読み書きができないとちょっとツラいですが。
梶田氏:
それはまず、会社までたどり着かないでしょう(笑)。
──服装とかを拝見しても、自由な感じですね。
小沼氏:
服装は自由ですね。社会人としてのルールさえ守れるのなら、特にうるさいことは言わないとは思います。
山中氏:
企画チームはお客様の前に立つことが多いので、髪を染めたりするのは難しいですけど。
梶田氏:
眉毛のない人でも大丈夫ですか?
小沼氏:
うーん(笑)。お客様が不快に感じなければ、いいんじゃないですかねぇ。
梶田氏:
そこは一瞬、悩むんですね(笑)。
小沼氏:
さすがにいきなり来たら、ビックリするとは思いますね。
梶田氏:
まぁでも、門戸はだいぶ開けていますよ。これでヤバいヤツばっかり来たら面白いなぁ(笑)。
小沼氏:
ただやっぱり、本当に神経を使う地味な仕事なので、コツコツできる人が向いているとは思います。
梶田氏:
逆に、有能でもこういう人は難しいというのは?
小沼氏:
やっぱりチームでの作業ですので、他人とコミュニケーションを取りたがらない人は難しいですね。企画として活躍していくことを目指すのであれば、社外のコミュニケーションに加えて、上司や他部署に対する根回しができるかというのも重要ですから。
さらに言うと、お客様との間で、何かトラブルが起きることもあるので、そういう場合でも、粘り強くコミュニケーションできるかどうかは大切ですね。
──問題解決能力よりは、コミュニケーション能力が大事ですか?
小沼氏:
顧客とコミュニケーションがきちんととれる人。そして、一緒に働く社内・社外の仲間たちともきちんとコミュニケーションがとれる人。率先して誰かの助けになりたいと思える人。そんな人が向いていると思います。
萌えはすべて、ロジックに変換して理解する
梶田氏:
プロモーションのお仕事を進めていく上では、ネットでの流行やサブカル業界の流れといったものは、常に追いかけているわけですか?
小沼氏:
自分の場合はまったく追っていないですね。僕が高校生の時に、初めて北朝鮮からミサイルが飛んできたんですけど、僕はそれを1週間ぐらい知らなくて。
「お前、遅いよ」って言われたんですけど(笑)。それぐらい世の中の動きには疎いんです。
ただ、そんな僕の手元にも届いてくる情報というのがあって、これはつまり、相当にバズっているものなんですよ。情報を自分から一切求めていない情弱にまで届いている情報なので、これこそがまさに潮流なんです。
梶田氏:
ある意味、小沼さんがちょうどいいアンテナなんですね。
小沼氏:
自分から追い求めてしまうと、どうしても好みが出てしまうので。ゲームの情報で言うと、僕が個人的に好きなゲームの系統は本当に偏っていまして。
いちばん好きなシミュレーションゲームが『Crusader Kings II』【※】だったりするんですよ。そのへんの情報は1人でずっと追いかけているんですけど。
梶田氏:
追っかける情報あります?
小沼氏:
あとは『シヴィライゼーション』の最新作の情報とかは、必ずゲットしますね。TAITAIさんがボードゲームの情報をツイートしているのを見て、いいなぁって思ったりとか。
梶田氏:
洋ゲーがお好きなんですか?
小沼氏:
和ゲーも好きですよ。『A列車で行こう』とか。
梶田氏:
徹底的にシブいですね。
──もしもParadox Interactive【※】からプロモーションの依頼が来たら、受けるんですか?
※Paradox Interactive
スウェーデンのゲームパブリッシャー。中世ヨーロッパが題材の『Crusader Kings』だけでなく、15~18世紀の植民地時代を舞台にした『Europa Universalis』、20世紀の世界大戦を扱う『Hearts of Iron』など、硬派な戦略シミュレーションのシリーズを次々と送り出し、日本でも熱狂的なファンが存在している。
小沼氏:
すごくお手伝いしたいですけど…うーん、僕たちでは力不足かな(笑)
梶田氏:
「そこはオレらが何とかしてやるぜ!」とはならないんですか?
小沼氏:
自分たちの力の限界は分かっているので(笑)。
──オレらの力を持ってしても、Paradoxのゲームを日本で売ることはできないと(笑)。
梶田氏:
医者が匙を投げるようなもんですけど、大丈夫ですか(笑)。いやあ、リュウズオフィスの社長の知られざる一面が明らかになりましたね。最高ですねぇ。
小沼氏:
もともと、ファミコン時代からRPG自体は大好きです。ですが、いわゆるキャラクターを理解する力は、どちらかというと後天的に身に着けたスキルです。
それを自分に教えてくれたのが、新納一哉さんと宇田洋輔さん【※】なんです。
「萌えは全部、記号に分解すれば誰にでも分かる」と教えてくれて。それを聞いた瞬間から分かったんですよ。すべてのキャラクターが全部、文字列として見えるようになって。
※宇田洋輔
アトラスで『ペルソナ3』、『世界樹の迷宮』などの広報を務めたのち、イメージエポックで『最後の約束の物語』、『ぷちっと★ろっくしゅーたー』の開発プロデュースを担当。その後はふたたびアトラスで、広報とペルソナチームのビジネスプロデュースを担当している。
梶田氏:
なるほど、萌えをロジックに変換して理解するタイプなんですね。いかにもシム系が好きな人の発想ですね。
小沼氏:
なので、言語化して理解できると、たまにどハマりはします。2017年に『けものフレンズ』が話題になったじゃないですか。
なんかよく名前を聞くなぁ、ぐらいで半年以上放置していたんですけど、ある日、急に見たくなって、徹夜して一気に見ましたね。
梶田氏:
『けものフレンズ』も情報に疎い小沼さんまで届きましたか(笑)。それはハマったということですか?
小沼氏:
アルパカさん可愛いですね(笑)。
梶田氏:
さっきまでカッコいいことを言っていたのに、完全に愛に飢えていることが判明しているじゃないですか(笑)。
これからやってくる人によって、リュウズの今後の仕事が変わる
梶田氏:
先ほど、「RPGの担当が多い」というお話が出てきましたが、リュウズオフィスは業界的に、RPGが強い会社として受け取られているんですか?
小沼氏:
たぶんそうだと思います。アクションゲームが本当に分からなくて、仕事として受けてしまうとご迷惑をかけてしまう可能性があるので、ゲームメーカーさんに「どんなゲームがお得意ですか?」と聞かれても、「アクションは苦手です」と答えているんですね。「RPGやシミュレーションが好きです」と言っているので。
梶田氏:
それはある意味、すごく誠実な態度ですけど、でもアクションゲームのプロモーションができないというわけではないですよね?
小沼氏:
できるとは思うんですけど、我々より上手な方が他にいると思うんです。
梶田氏:
スゴイですねぇ……! それはちょっと誠実すぎませんか?
小沼氏:
個人的に『The Last of Us』【※】が大好きで、3回ぐらいクリアしていますし、『バイオハザード』のシリーズも全部クリアしているんですけど、でもそれらのタイトルをどう売るのか? と聞かれたら、よく分からないんですよ。
それこそ萌えのように、アクションゲームを言語化する方法を持っていればできるんでしょうけど。
──RPGやシミュレーションのように文脈のすごく強いゲームが得意で、その文脈に深い理解をしたあとに、そのプロモーションを立案するという形ですか?
小沼氏:
そうですね。
梶田氏:
たとえば、アクションゲームにめちゃくちゃ強い人が入社してきた場合は、その人がいるからアクションゲームの仕事を受けるということになるんですか?
小沼氏:
ぜんぜんあり得ると思います。僕自身はアクションゲームのロジックが分からないので、企画を構築することはできないんですが、それをビジネスやプロモーションとして成立させるためのアドバイスはできますから。
そこの感覚器官を持っている人が入社してくれば、自然とそういう仕事が来るようになるでしょうね。
──ではリュウズオフィスの今後の展開は、この記事を見てどんな人が来てくれるかにかかっているわけですか?
小沼氏:
そうですね。自分としてはこの会社を、可能な限り多くのお客様にとって不可欠な存在にしていきたいと思っているんです。ただ、今できる範囲は限られていて、得意な分野もある程度限られているので、その範囲でしかやらないようにしているんです。
新しい人が入ってくることによって、我々の得意な分野が増えていって、より多くのお客様にとって必要不可欠な存在になることができれば、それは願ったり叶ったりですから。
個人事業時代も含めると、今年で15年になるんですけど、法人化して10年、人を集め始めてからはまだ4年なので、会社の体力は意外とあるんです。10年分の蓄えがあるのに、スタートアップみたいな感じで(笑)。
山中氏&梶田氏:
強くてニューゲームだ(笑)。
──ハモってるじゃないですか(笑)。
小沼氏:
強くてニューゲームをやっている最中でもあり、社長としても人を使うのはまだ4年ですけど、今はとにかく一緒に働いてくれる仲間がほしいんです。
仲間として集まった人たちのやりたいことによって、会社の細かいところがかなり変わっていくんだろうなと思っています。
編集者が入ったからマンガをやりました、音楽に詳しい人が入ったから音楽もやっていきます、みたいな。本当に入ってきてくれた人によって、これから大きく変わる会社だと思っています。
梶田氏:
いやあ、入社希望もいっぱい来るだろうし、お仕事もいっぱい来ちゃいますよ。
山中氏:
残念ながら今回は採用の募集で、企画の依頼は承っていないんです…。人が増える前に仕事を増やしてしまうと、たいへんなことになるので。
梶田氏:
この記事が掲載されたあと、どんな人が来たのかお話を聞くのを、楽しみにしております。ヤバい人がいっぱい来たら面白いなぁ。(了)
さて、いかがだっただろうか。『FGO』や「カルデア放送局」、そして「マンガで分かる!FGO」の裏側で繰り広げられているエピソードもたいへん興味深いものだったが、ここで注目すべきはやはり、この10年間でリュウズオフィスが確信をもって提案してきたプロモーションの戦略だろう。
『ペルソナ3』から『FGO』まで、リュウズオフィスがさまざまなタイトルで携わってきたプロモーションは、雑誌やTVといったマスメディアから、よりパーソナルなメディアであるWEBへ、そして個人が不特定多数に向けて発信するSNSへと、明確に舵を切っている。
このように小沼氏が時代の流れを鋭敏に察知して、大胆に提案することができたのは、リュウズオフィスがゲームのマーケティングを専業にしていることと、無縁ではないだろう。
インタビュー中の話題にもあったように、個人の嗜好がより強く消費行動に反映されるゲーム市場では、不特定多数ではなく、あくまで特定のファンに向けたアピールを行わねばならない。
その結果、ポイントを絞った話題作りでコアなファンに“着火”させて、そこから一気に拡散していくというSNS時代ならではのプロモーション手法が生み出されているのだ。
最初にお伝えしたように、この記事はリュウズオフィスの求人募集の役目も担っている。ある意味、時代の最先端とも言えるゲームのプロモーションを、今度は自分の手で動かすことができるというわけだ。
WEBコミックや生放送の配信番組といったメディアの先に、いったいどんなアイデアが生み出されるのか。それはこの文章を読んでいるあなたが考えるものかもしれない。
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奈須氏は、実は『スパロボ』シリーズの大ファンだということで、奈須氏の『スパロボ』に対する「愛」が随所にほとばしる、熱気あふれるものとなっています。