“eスポーツ施設”座談会──ソフマップ×LFS池袋×E-sports SQUAREが語るオフラインならではの体験やコミニティとは

  eスポーツが一過性のブームではなく、文化として根付いていくには、eスポーツに触れられる場所が必要であることは間違いない。プロ選手の技を研鑽する場所として、大会イベントを開催する場所として、eスポーツを観戦する場所として、そしてゲームファンが集まるコミュニティとしての場所としての施設が必要となっている。

 その一翼を担うのが、eスポーツ施設だ。

 しかし、そのeスポーツ施設も、多くの人には知られておらず、知っていたとしてもプロゲーマーなど一部の人たちだけが利用できる特殊な場所として認識されているのではないだろうか。加えてこのeスポーツ施設は、これまでなかった新しい施設として、法律や条例に関する問題、IPを利用して運営することによる許諾の問題など、多くの問題も抱えている。

 このような現状を、関係者はどう捉えているのだろうか──電ファミ編集部は、eスポーツの今後の展開を占うべく、現在eスポーツ施設を展開している3店舗の代表にお集まりいただき、今後のeスポーツについて、eスポーツ施設についての座談会を開くこととなった。

 参加するのは、e-sports SQUARE AKIHABARA店舗責任者・疋田力也氏LFS池袋esports Arenaを運営するE5代表取締役社長・長縄実氏eSports Studio AKIBA powerd by SOFMAPを運営するソフマップ社長・渡辺武志氏のお三方だ。

取材、文/岡安学

カメラマン/増田雄介

左から渡辺氏疋田氏長縄氏

各eスポーツ店舗の特徴とは

──最初にそれぞれの施設について教えていただけますでしょうか。まずはe-sports SQUARE AKIHABARAですが、eスポーツ施設の中でも老舗のイメージがあります。

疋田力也氏(以下、疋田氏):
 2009年に株式会社SANKO(株式会社RIZeSTのグループ会社)代表取締役社長の鈴木がテレビで「eスポーツ」のことを知り、「これは日本でも盛り上がるものになっていくのではないか」と衝撃を受けたことからeスポーツチームを発足。2010年にeスポーツ事業部を立ち上げ2011年にe-sports SQUAREを千葉県市川市にオープンしました。

 市川で2年間営業したのですが、当時は施設を運営することよりもeスポーツの発展と理解を目的としていました。その結果、eスポーツやゲームが好きな人がたくさん集まるようになり、スタッフもゲーム好きが揃いました。

  実は集まってきたゲーム好きの中には、eスポーツキャスターとして多方面で活躍している岸大河さんやFIFAの世界大会に出場しているマイキー選手など、現在eスポーツ業界で活躍している人が多くいらっしゃるんです。

──eスポーツ業界を牽引する人たちばかりですね。

疋田氏:
 市川の店舗は、今になって振り返ってみると、現在のeスポーツ業界の礎……とまでは言いませんが、源流のひとつであるのではないかと思っています。

 ゲームを好きな方々と触れ合っていたのもあって、「これからもっとeスポーツが流行ってくる」という考えが徐々に予測から決意に変わっていき、さまざまなメディアの発信基地である秋葉原への進出を決めました。

e-sports SQUARE AKIHABARA

  ただ、それで経営が上向きになったかというと、しばらくは苦しい状態が続きましたね。でも最近はeスポーツに興味を持っている企業がたくさんあり、イベントを開催してくれる企業も増えて来ていますので、ようやく軌道に乗った感じはあります。

  また何より、ゲーマーによるゲーマーのための施設として運営できているのが特徴です。

──「ゲーマーによるゲーマーのための施設」、と言いますと?

疋田氏:
 店長である私を含め全てのスタッフがゲーマー、だからこそ、ゲーマーに向けた付加価値が提供できる、そんな施設です。

  たとえば、店舗で開催されるイベントの1つであるコミュニティイベントに至ってはお店のスタッフも参加者も観客も主催者も全員ゲーマーなんですよ。
 そういったイベントの来場者が増えて、オフラインイベント需要が増えもっと開催されるようになればeスポーツ施設は各地に拡散すると思いますし、ゲーマーたちにとっても今よりもっと良い環境になり、裾野が広がっていくと思っています。

──ちなみに今のeスポーツのムーブメントは、客足にも大きく影響しているということでしょうか。

疋田氏:
 間違いないですね。来場者は2017年では年間8000人程度でしたが、2018年はもう1万人弱を数えています。またお客さんだけでなく、企業からの内見依頼が増えています。

  来られる企業の方々は全業界といってもいいほど多種多様で、eスポーツ関連の企業はもちろんのこと、eスポーツやゲームとは直接関わり合いのない企業もたくさん来ます。不動産業であったり、広告代理店であったり、映像制作会社も小売業の方々も来ました。
 企業だけでなく、政治家や地方自治体など官公庁の方々もいらっしゃるんですよ。

esports Studio AKIBA powerd by SOFMAP

──次に「esports Studio AKIBA powerd by SOFMAP」(以下、eSports Studio)ですが、そもそもなぜソフマップがeスポーツに取り組んでいるんでしょうか。

ソフマップ社長 渡辺武志氏(以下、渡辺氏):
 我々はパソコンを売っている小売業の会社なので、パソコンを販売しながらeスポーツに関わることを考えたとき、「eスポーツを体験できる施設があったほうがいいだろう」と考えたんです。

 そこで、まずeスポーツのさまざまな関係者にヒアリングし、「どういった施設にすればプレイヤーにとってメリットがあるのだろうか」と検討するところから始めました。すると、「プレイヤーたちが集まって試合や練習ができる場所がない」という意見をよく耳にしたんです。都度単位にしろ、月単位にしろ、どこか場所を借りるにしてもお金がかかってしまいますし、なかなか難しいと。

──すでにスポンサーがついているプロチームであればともかく、多くのeスポーツチームはオフラインで練習する場所を確保するのは難しく、作ろうとしても費用面で頓挫してしまう可能性はありますね。

渡辺氏:
 そういった意見と小売業という特性を合わせて考えたとき、プロeスポーツチームがイベントを開催できるeスポーツ施設と、その施設の横にチームのグッズを販売するスペースを設ければ、“グッズの収益”という形でチームへ還元できると思いついたんです。

 また、そういったeスポーツチームやプレイヤーをスポンサードしているPCメーカーやPCの周辺機器メーカーの商品もあわせて販売することで、eスポーツ全体に対してバックアップできる。そうすれば、eスポーツの裾野が広がっていくじゃないですか。

 eスポーツにとって一番なのはやはり裾野が広がっていくことだと思いますし、裾野が広がるにはやはりeスポーツチームが元気になっていくことなのではないでしょうか。

──それは小売業ならではのアプローチですね。

渡辺氏:
 我々は小売業なので、eスポーツを長く支援していくには、やはり本業をしっかり行うことが一番だと言う結論に至り、チームのグッズやスポンサーとなるメーカーのPCや周辺機器を売ることを目的としたんです。eスポーツ施設単体で収益を得ようとすると、難しくなってしまうんですよね。

 さらに言えば、秋葉原の一等地に店舗があるので、そのスペースに対する家賃やコストを考えてしまうと、賄うのはかなりハードルが高いわけです。物を売ることを目的にすれば、自社としても利益が出ると踏んでいますし、メーカーやチームへの支援にもなる。

 もちろん入場料で稼ぐ手段もありますが、2年後3年後には「こういったやり方があるんだよ」「正しかったんだよ」と言えるようになればいいなと思っています。

esports Studio AKIBA powerd by SOFMAP

──投資やマネタイズの方法はいろいろとありますが、何にしろ利益が出ないと続かないので、大変興味深い取り組みだと思います。

渡辺氏:
 単純にお金を提供するような投資になってしまうと、利益が出ないと辞めざるを得なくなってしまいます。そうならないようにするには、お金をちゃんと回していける環境を作るのが大事なわけです。売り場では売る物を自由に変えられるので、売れる物を売っていこうと考えています。

 小売業としては、スポンサーの商品を売ることで、スポンサーも売上が上がるのであればスポンサーしていこうとなり、スポンサーが継続されると当然チームが潤う──そういったエコシステムを作ることができるので、eスポーツに対して協力していけると思っています。

 またイベントなどを開催するときは、メーカーさんなどに出店してもらうことで、出店料をいただいています。それによりイベントは無料で開催できますし、無料だから人も集まり、その集客によりグッズや商品が売れ、それがチームへと還元されていくわけです。そういった施策がやりやすいように、そしてできるようにしたのがeSports Studioです。

──実際、そういった商品は売れているんでしょうか。

渡辺氏:
 チームのグッズの売り上げは結構あります。チームの人がショップに足を運んで店や商品の写真をSNSにアップすると、ファンの方が買いに来てくれたりします。

  チームグッズなどは日本全国どこでも購入できる状態にないので、わざわざ秋葉原のソフマップまで来て購入してくれているというだけかも知れませんが。
 プロ野球も球場に行ってチームのグッズを購入し、その売り上げが球団を支えていたりするので、eスポーツチームも同様だと思っています。

──となると、今後こういった店舗は増やされていくのでしょうか。

渡辺氏:
 大阪でも同じようなショップをオープンし、今後どんどん展開していきたいですね。

 大阪の店舗は、現時点ではショップのみの展開ですので、秋葉原のようなeスポーツ施設を併設するわけではないですが、イベントスペースはあるので、大会を開くことはできます。また、イベントスペースでは大学と協業を考えており、大学の部活やサークルなどの活動拠点として使えるようになっています。目的としてはeスポーツのコミュニティを作ることでして、上から意見を押しつけるより下から突き上げた方が文化は形成されると思っています。

──最後になりましたが、LFS池袋(以下、LFS)はいかがでしょうか。

LFS池袋

E5代表取締役社長 長縄実氏(以下、長縄氏):
 先ほど話にありました通り、「ゲーマーの方たちの遊べる場所が少ないと」というのは渡辺さんの意見とまったく同意でして、いわゆる子どもたちが遊ぶ公園のような存在がないわけです。そこを危惧しておりまして、まず入り口がないとeスポーツを楽しむ人たちの裾野が広がっていかず、人が育たなくなります。

 そういったことを懸念し、LFSではインターネットカフェのような感覚でオンラインゲームを遊ぶことができる場所として、一般の方々に開放しています。

 また箱貸しもしていまして、私自身が11年くらいeスポーツのイベンターをやっておりまして、その経験を活かし、会場のレイアウトや試合で使う機材構成などの提案をさせていただいているのが特徴です。

 そのため、企業の方が何もしなくても、すぐにeスポーツイベントを開催することができるようになっています。海外のeスポーツ大会では、選手はガラス張りのボックス席などに入ってプレイしていますが、それに似たようなシチュエーションを提供させていただいています。

──ではLFSは、施設利用による収益で運営されているわけですね。
 
長縄氏:
 運営としてはそうです。ただLFSの目指すところとしては、あまりハイエンドなゲーミングPCに触ったことのないようなお客様に、ハイエンドなゲーミングPCを触って欲しい、というのがありますね。

 ハイスペックなゲーミングPCを買おうとすると、最低でも20万円は必要になってきてしまうじゃないですか。でもeスポーツに興味があり、一番プレイしている人たちの年齢は16~24歳くらいで、彼らに20万円の高額なPCを購入するのは難しい。ただ、ここで実際に触ってもらって、ゲーミングPCを購入したいという希望を持っていただきたいんです。リフレッシュレートが240Hzのゲーミングモニターなどもそうですね。

 現状ではちょっと時代後れではありますが、導入した当時では最新のグラフィックボードGeForce GTX 1080 Tiであったり、他にもゲーミングチェアであったり、ゲーミングキーボードであったりと、ゲームをプレイするより良い環境を体験してもらいたいんです。

 私どもはPCメーカーなので、体験したハイスペックなゲーミングPCや周辺機器をできるだけ安く提供していきたいと思っています。ただ、ソフマップさんのようにPCを売るだけで収益を得るのは難しく、e-sports SQUAREさんのように施設を貸し出すことで収益を出さなくてはならないんです。その点に関しては、ソフマップさんと違って、売り場と直結している訳ではないので、LFSで触ったPCが直接売れるかどうかはわかりませんし、その場で買うこともできないわけです。

LFS池袋

──PCの啓蒙としてはソフマップと似ていますが、販売に直結していないので立ち位置はまったく違うわけですね。

長縄氏:
 親会社であるサードウェーブとは直結しているわけではありません。eスポーツの事業を行ったり、LFSのような施設を作っていたりする最大の目的は、文化を創ると言うことです。まずはゲーミングPCに触れてもらい、PCゲームと言うのに慣れ親しんで貰うことが重要なのです。

 他の同業他社であるPCメーカーや販売店など、ゲーミングPCを取り扱っている人たちとは、仲間だと思っています。文化を創ろうとする段階では、どこか一方だけが頑張ったところで盛り上がりは大きくなりません。なので、ライバルであるべき同業他社であっても足並みを揃えてゲーマーが遊びやすい環境作りをする必要があるんです。それが文化のスタートになると思っています。

 もちろん自社のPCを推したいんですけど、それよりはまずゲーミングPCに触れて貰うのが一番。ゲームをプレイする人の多くはスマホのソーシャルゲームであったり、据え置き型のコンソールゲームが中心であったり、日本においてゲーミングPCの環境を安く提供するのがとっかかりになるのかと。そういう意味ではあまり偏りがないようにしています。

渡辺氏:
 文化を創るという点は同意です。そういった意味ではソフマップでサードウェーブさんのガレリアを推していたりもします。サードウェーブさんはライバルでしたが、今は仲間になっています(笑)。

 eスポーツってまだシェア争いができる段階ではなく、市場ができあがっていないじゃないですか。市場の拡大が最重要課題です。この状態で「俺が俺がって」やってしまうと、うまくいかなくなるわけです。じゃあ「手を取り合って仲間意識をもってやっていこうよ」となりますよね。

 eスポーツが普及し、みんなが儲かり始めたら、そこで「俺が俺が」ってなればいいわけです。そのあたりはサードウェーブさんと共感しあって、「一緒にやっていきましょう」となりました。

 小売業って意外とフラットな立場なので、これを売ろうと思ったら何でも売れるので、秋葉原という土地もあり、賛同する方々が多く集まっています。ですから同業他社もメーカーも巻き込んでいろんなことをやっていきたいですね。とにかくeスポーツが盛り上がってくれればいいので。

eスポーツ施設におけるコミュニティ

e Sports Studio AKIBA

──みなさんは同じ志を持つ仲間ということですね。またお話を伺っていると、ゲームコミュニティの活性化も大切なテーマになってきそうですね。

渡辺氏:
 ええ。やはり企業が中心となってeスポーツを運営していくと、続くかどうかわからないんですよね。収支が悪くなれば簡単に撤退してしまい、プロ選手もスポンサー企業がいつまで支援してくれるかわからないですし、大会もいつまで続くかわからないわけです。

 スポンサーが付いている選手にしたって、来年また契約してもらえるかわからないんですよね。なので、我々が応援したいのはこういったコミュニティなんですよ。

 やっぱり素人の方といいますか、普通の人たちが「面白いよ」と言うようになれば、自然といろいろな人や企業が参加してくれると思います。特に若い人たちが興味を持って頂いて、プロゲーマーを目指してくれるといいですよね。

──「何か面白そうなことをやっているな」というところから始めるわけですね。

渡辺氏:
 かつてYouTuberは冷ややかな目で見られたりもしましたが、今では憧れの存在になっているので、プロゲーマーもそういった形になって欲しいですね。プロゲーマーを受け入れられる土壌というか文化を形成するには、裾野の人たちが楽しく遊んで、笑えているという状況が必要なんです。

 だから親が「これだったらやってもいいよ」というコンテンツがあればいいなと思いますね。戦争物はやはり刺激が強いので、拒否反応を起こしてしまう人も多いですし、自分が親の立場で考えると、やはりそういったゲーム以外のゲームで楽しんで欲しいというところはあります。

 将来的にオリンピックを目指すという話もありますが、オリンピックでドンパチやるゲームは種目にはなり得ないわけですし、コミュニティを育てることで裾野を広げ、多くの人にゲームやeスポーツというものを理解していただきたいんです。3年後とかに「やってよかったよね」と思えたり、「あの有名選手ってうちによく来ていたよね」と言えるようになると面白いなと思っています。

──関わったコミュニティ出身の人が有名になったらちょっとした自慢ですよね。

長縄氏:
 世界チャンピオンとかになったら、俺が育てたみたいなこと言ったりしてね(笑)。

 以前、私が開催していたLANパーティがあったんですけど、そこに引きこもりだった少年がやってきたんです。自分のパソコンを持ち込んで外に出たわけですが、その後その親御さんから手作りのお菓子をいただきまして。「うちの子を外に出していただいてありがとうございます」とお礼までされてしまったんです。

 ゲームってそういう側面があるんですよね。オンラインで繋がって家のなかだけで遊んでいるイメージもありますけど、それをひとつ超えさせることができるのがeスポーツ施設なわけです。LANパーティは常設ではないだけで、ある意味eスポーツ施設のようなものですから。

──それは美談ですね。

渡辺氏:
 ゲームをやっている人って、コミュニケーション能力が低いとみられがちなんですけど、オンラインゲームってチーム戦が多くて、横の繋がりが重要だったりするんですよね。

 確かにオンライン上だと顔が分からないので、仲間や対戦相手をディスったりすることもありますが、eスポーツ施設でプレイすると隣で顔を合わせてプレイしているので、しっかりとコミュニケーションをとらないとうまくいかないんです。

 そういう認識は、ゲーマーやプロゲーマーの活躍によって変わってくるでしょうね。その一端をeスポーツ施設が担っているわけです。あと、人に見られてプレイするという経験にもなりますね。

長縄氏:
 プロゲーマーの育成という面では、オフラインの現場慣れは重要ですね。現場に慣れていないと緊張感が高まって、本来のパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。LFS池袋としては、世界大会に繋がるような大会もやらせていただいていますし、そういう大会をやっている場所を使うことで、経験を体にしみこませてオンラインで何千人もが視聴しているような大会でも平常心で戦えるようになるわけです。その経験の入り口としてもLFS池袋が存在しているわけです。

オフラインならではの体験

e-sports SQUARE

──ちなみに施設を使う人たちって、もともと友達とか仲間うちで来るというイメージなのですが、バラバラで来た人同士が集まって一緒にプレイしたりするものなのでしょうか。また年齢層も気になります。

渡辺氏:
 コミュニティイベントをやるといろんなところから集まってきて、そこで友達になって以降は一緒に来てくれるようになるケースが多いですね。

疋田氏:
 e-sports SQUAREでは対戦格闘ゲームが人気ですが、タイトルによってプレイしている年齢や客層が全然違うんですよね。タイトルによってはすごく若い方々がいらっしゃいますし、それこそ中学生の女の子が親御さんと一緒にいらっしゃるケースもあります。

長縄氏:
 LFSは、上は60歳、下は8歳ぐらいの子が親と一緒に来ていますね。

全員:
 8歳!

長縄氏:
 家だとPCを2台並べて遊ぶ環境が作りにくく、ゲームを中心とした親子のコミュニケーションが取りづらいんですよね。そういった方々がLFSにいらっしゃって、「ほら、お父さんはこんなにゲームがうまいんだぞ!」って子どもと話をしていたりします。

 ゲームはコミュニケーションツールのひとつだと思っていますが、まずはオンラインで繋がって「この人は誰なんだろう」「この声の主はどんな人なんだろう」という興味本位からオフラインに入っていく。そこでLFSに来ていただいて実際にオンラインで会った人と直接会うことで、「ああ、このハンドルネームの人はこの人なんだ」と思うことで、さらに親和性が高まっていくわけです。

──実際に会ってみないと、人となりまではなかなか分からないですよね。同じ趣味を持っている人なので、会ってみると仲良くなりやすいとも思います。

長縄氏:
 ええ。そしてその次に重要になってくるのが、勝ち負けをどのタイミングで入れるかということです。「ゲーム自体を楽しめていれば勝敗はいいじゃない」という人もいますし、「いやいや勝ちたいし勝って世界の舞台へ出たい」という人もいます。そういう勝ちについての考え方が違う人たちが一緒に遊ぶ上で、どう線引きをしていくかが課題だと思っています。

 LFSはeスポーツ施設と謳っている以上、競技性の高いものを考えています。スポーツは体育ではなく、競技ということですね。そういう観点から、楽しむよりも競い合うことが重視されるので、施設としても食べ物はNGになっているわけです。飲み物も自動販売機で購入したキャップ付きで、こぼすことがないような物しか認めていません。営業時間も14時~22時と健全な時間帯のみの営業になっています。

 このように、スポーツの施設としてのコンセプトの元に運営しています。収益の面ではそれらを排除したことで上げにくくなっているんですけど(笑)。

LFS池袋

──なるほど、そういうコンセプトもあるんですね。

長縄氏:
 ただ難しいのは、ゲーマーたちがeスポーツに参加したときに、健全性を維持できるのか、ですね。つまりオンライン対戦の闇の部分である、勝敗を決した後の暴言であったり、死体撃ち(蹴り)をしたりする人たちを許容するのかどうか。我々サードウェーブ主催のゲームイベントのときは、死体撃ちをしたチームには一旦ゲームを止め、注意喚起をしています。

 その後試合を再開させましたが、スポーツとしての健全性を保つのは施設の役目だと思っています。ただ、通常営業の時は仲間うちでどうやって遊んでいてもかまいませんし、そこらへんは自由にしてもらっています。ゲーム=悪と言うイメージは施設としてはできるだけ消していきたいんです。昔に比べればかなり健全になっており、悪いイメージも払拭されてきていますが、潔癖な状態まで持っていきたいんですよね。

疋田氏:
 そういう意味では、e-sports SQUARE とはコンセプトが違いますね。うちの場合は、飲食ありですし、何でもやってみて、とりあえずeスポーツを楽しもうというのが大きなコンセプトですね。

 ですから練習以外にも勝敗にこだわらない遊び方をすることもあります。以前、e-sports SQUAREで開催した『リーグ・オブ・レジェンド』の大会では、1台のPCをふたりで操作する二人羽織的なプレイをしていて、すごく盛り上がりましたね。

 また暴言の話ですが、オフラインはオンラインに比べて暴言は出にくい環境なんですよね。ケンカ覚悟でないと暴言吐けないですから。
 そういう意味ではオフラインって、快適にプレイできる環境なんですよ。実際にオフラインの方がそういった意味で「楽しい」という意見を参加者から聞いています。

──eSports Studioの場合は、基本的に箱貸しの形になるのでしょうか。

渡辺氏:
 そうですね。形としては団体でなく、個人でも代表者ということで貸すことはありますが、ゲームセンターのように誰でもフラッと入ってきてプレイができる環境ではないです。e-sports SQUAREさんやLFSさんのように、施設がメインでやっているのではなく、あくまでもソフマップの一部のコーナーとなっているので、その場所にスタッフを常駐させておくわけにもいかないんです。

 そうなると、どこの誰だかわからない人に貸し出してしまうと、盗難などが発生することもあり、身分の分かる人のみに貸し出しています。

──そうなると、健全さは担保できそうですね。

渡辺氏:
 そうですね。ほとんど仲間うちで対戦しているので、知らぬ同士がぶつかるようなことはないです。面白いのが、プロ選手が本名で来たりしているんですよ。プロとして参加するといろいろな制約もあるみたいなので、本名を使って一般人として仲間うちや友達同士で対戦に参加しているようです。

 配信とかなければ、基本的に無料で貸し出せますので、プロの方もプライベートとして友達どうしで来ることはあります。

──eスポーツ施設ができて、ゲーム好きが集まる場ができたことにより、ゲーマーが集まるようにはなったと思うのですが、ハードにゲームをプレイしている人ではない層にとっては、eスポーツ施設はまだまだ入りにくいものであり、またeスポーツ施設の存在も知られていない場合もあると思います。そのハードルの高さの解消や認知を広げるための施策についてはどのように考えているのでしょうか。

渡辺氏:
 うちの場合は、施設はあくまでも店舗の一部のコーナーであるため、店舗に立ち寄って頂いた方は、そのまますんなりと見ることができます。入場料もとっていないので、なにか商品を物色しているついでに、フラッと見学していける手軽さがあるんです。

 面白そうなイベントでも入場料がかかってしまうと入りづらくなるので、そういう意味では一番入りやすいのかなと思います。パソコンショップなので、パソコンゲームをもっと知ってもらうというのもありますし、ゲームの発売日にイベントをやると結構人が集まってくれますね。

 ですからコンシューマー機でしかゲームを遊んだことがない人が、「こういうことができるのか」と感じていただけるようなことを、どんどんやっていきたいですね。LFSさんもそうですよね。基本PCゲームでの展開ですが、PS4とかも扱って裾野は広げられていますよね。

長縄氏:
 というよりも、LFSのユーザーにプレイしているゲームについて統計をとったことがあるのですが、思いのほか人気タイトルが集中してないんです。ですから、ものすごく範囲が広いんですよ。PCゲームをハードにプレイしている人もいれば、ブラウザゲームを楽しんでいる人もいます。また、ゲーム自体をやらずに『LoL』の動画を観ているだけの層も居ます。なので、施設として何か誘導していくのではなく、自発的に訪れ、能動的にこういうことをしたいという目的を持った方たちがほとんどですね。

──ああ、そうなんですね。

長縄氏:
 LFSは最高スペックのPCと場所を貸し出していますが、マニアな方ばかりが訪れているかというと、そうではなく、多くの人は普通の感じの方々なんです。カップルで来られる方も多いですし、大学の休み時間に来たとか、スーツ姿のサラリーマンとか、多種多様な方々が利用していただいています。

 また、LFSが主導となると色がついてしまう懸念もあります。例えば、あるタイトルのゲーム大会を開催した場合、それを起点にコミュニティが形成されてしまいます。

 ユーザーが自発的に形成したコミュニティであれば、ユーザー次第となりますが、LFSで行われた大会から発足したコミュニティだと、そのコミュニティやそのゲームタイトルが、LFSのイメージになる可能性があるわけです。そうすると、そのイメージが付いたタイトル以外のゲームを楽しんでいる人にとって、入りにくくなってしまう。

 ですから基本的には自由に使って欲しいので、LFSで何かをやっていくというのは考えていません。

──施設のカラーはあった方がいい気もしますが、かといってそれが強すぎると、たしかにそれ以外のタイトルのファンは入りにくくなってしまいそうですね。

疋田氏:
 e-sports SQUAREの場合は、開催イベントの質を高めることで、ネット上などで観た方たちが「オフライン会場って楽しそうだな」と思って実際に来たくなるように、普段のイベント作りを愚直に頑張っています。

 例えば、「Fighter’s Crossover -AKIBA-」という毎週水曜日に開催しているイベントがあり、主催者、ゲーマー、店舗が一所懸命に運営しています。その結果、2017年は週平均70名だった参加者・来場者が、2018年は週平均90名くらいまで増えました。少しずつですが、コミュニティの輪は広がってくるのを目の当たりにしています。

 つまり特別なことをするのではなく、日々の業務の質を上げて行くことで、徐々に来てくださるようになると考えています。

著作権や風営法に対する取り組み

──ところでeスポーツ施設を運営するにあたり、問題点もあると思います。IPを取り扱う以上、避けて通れない著作権問題や、店舗を運営するにあたり必要な風営法問題などがあります。ただ現状では、どちらも曖昧な部分があります。その点に対して各店舗の方針や解釈などをお聞かせいただけるでしょうか。

渡辺氏:
 ソフマップでは物販イベントとしてやっているので、特に法律に関わる部分はありませんが、イベントをやるときはメーカーにお伺いを立てて、許可を取っています。私どもが主催となって何かをすると、許可を取ったりするのにいろいろな手順や手間がかかるので、難しいですね。

 やはりIPホルダーであるゲーム会社が、そういった面を解放していかないとeスポーツの普及はなかなか難しいものがあるのではないかなと。今のままでは中々やりにくいですね。そこら辺はある程度認めて貰わないと、市場自体が縮小しかねない。

 ゲーム会社にとっては、取り締まった瞬間は利益が出たり、利益の流出を防ぐことはできたとしても、将来的には市場自体が縮小してしまうかもしれません。そのあたりは一考して欲しい部分ではあります。

疋田氏:
 eスポーツ施設を運営している側としては、IPの許諾については障壁のひとつであることは間違いありません。コンソールマシンやソフトなどを自分で用意し、それを自由に使えるのであれば、もっとイベントもやりやすくなりますし、お客さんの裾野を広げることもできると思います。もっともっと面白いこともできると思うのですが、やはり難しいところですね。

 また、個人のお客さんからこういったイベントをやりたいと提案されるのですが、それも難しい場合があります。私たちはeスポーツイベントの企画運営会社なので、さまざまなメーカーとのパイプや繋がりがあるので許諾を得られますが、お客様個人にIPの許諾がおりることはまずありません。コミュニティにとっても、それが大きな障壁になっています。

長縄氏:
 LFSはゲームセンターではないので、風営法には引っかかってはいないのですが、施設の方針として、風営法に準じた運営を行っております。LFSを貸し切りで借りた企業が営業時間を延長してプレイした場合で、23時やひと晩中やるということになると、それは風営法の基準に則って運営するようにしています。

 版権についてですが、施設に置いているPCには基本的にゲームが入っているわけではありません。いくつかの許諾を得たタイトルは入っていますが、LFS池袋に来て遊んでいる方々が、自分で購入したエンドユーザーライセンスのタイトルをその場でダウンロードして、プレイしているわけです。なので、版権の侵害には当たらないと判断しています。

──メーカーが許諾に関するレギュレーションを作ったり、包括的に契約する方法などは難しいのでしょうか。それをeスポーツ施設側からメーカーに提案するのは、やはりハードルが高いものなのでしょうか。

長縄氏:
 無料オンラインゲームに関してJOGA(日本オンラインゲーム協会)に加入しているメーカーの中には、包括的に管理している会社があります。ネットカフェでオンラインゲームが無料で遊べるようになっているのは、そのおかげです。なので、包括的に契約する方法はあります。

──ではeスポーツタイトルでも、包括的に契約できるシステムを作るのは難しいのでしょうか。

長縄氏:
 そうですね。ゲームはすべてが流行るわけではないじゃないですか。そのシステムを定義付けて、テンプレートを作って当て込んで行っても漏れてしまうタイトルが出てくるわけですよね。そうすると結局、都度都度に確認作業が必要となるので、スキームがどうしても大きくなってしまいます。リスクも大きくなりますし、煩雑にもなってしまうので、いち施設がやるには手に余る感じですね。

 もしやるのであれば、施設を取りまとめる団体や協会を作り、それらが動いてくれるのであれば、変わるのかなと思います。

──そのような動きをJeSUではやっていただけないのでしょうか。

長縄氏:
 いろいろやることが多すぎるみたいですし、こちらとしては「まだかな~」と待つしかないですね。とても期待していることなので、もうちょっと急ぎ足にしてくれると助かります。

──著作権絡みですと、大阪のゲームバー問題がありますよね。あの事件のキーとなったのは、上映権だったと思いますが、上映権の項目にある映画の著作物に関しては、ゲームが当てはまるかどうかは、実際に裁判してみないとわからない部分があるわけです。その点に関しては、法律や条令でクリアしてもらうような動きは考えていないのでしょうか。また自分たちで変えないまでも、変えて欲しいと思っているのでしょうか。

渡辺氏:
 まず私たちは物を売るという商売をしているので、メーカーとケンカしてしまうと困ってしまうわけです。例えばゲームやPCの発売日にイベントをやることに協力してもらったりもしているので、対立するわけにはいかないですね。

長縄氏:
 サードウェーブとしても推奨PCというものを出していますので、メーカーとはいいパイプが作れていたりします。なので、対立するというよりは、良い落としどころがあればとは考えています。

 今、全世界で行われているeスポーツのゲーム大会は、7割くらいがIPホルダー主催の大会なんです。それ以外の3割くらいは、自主的に行っている団体などの大会です。その現実を考えると、そこを変える必要があるのかなとも思います。

疋田氏:
 e-sports SQUAREでもメーカーとは付き合いがあり、いろいろなイベントのときに協力してもらっていますので、条文を持って対立するようなことは考えていないのですが、eスポーツを盛り上げたいと思っているひとりの人間からすると、許諾や法律の障壁がないほうが各地で盛り上がるようなイベントもたくさんできるのではないかと思っています。

 IPホルダーがeスポーツイベントを企画運営していることが多いのですが、日本全国を網羅できるだけの体力があるわけではありません。そこは地方のコミュニティの力を借りれば、IPホルダーができないこともできるようになってくると思います。そういう意味でも障壁は可能な限り取り除いていきたいですね。

──なぜ今回こういった話をしているかというと、先ほどお話したゲームバーのような問題があると、ユーザーたちは安心してそういった施設を利用できないと思うんですよ。それはeスポーツ施設も例外ではないと思いまして。

長縄氏:
 LFSとしてはIPメーカーとコンセンサスを取っているので、心配することはないと考えています。ハードメーカーのイベントがあったときも、ゲームメーカーにはちゃんと話をして許諾を取っています。

疋田氏:
 IPホルダー以外の企業や個人がeスポーツイベントをやろうとすると、許諾以外にも機材を揃えるという高い障壁があるでしょう。同時に多くのプレイヤーが参加するゲームの場合、その同時プレイ人数だけのパソコン、モニター、ソフト、机、テーブル、コントローラー、マウスなどを用意しなくてはなりません。

 50人同時対戦の場合、50台ずつ用意するというのは、現実的ではないですし、そこはかなりの障壁になります。そこでeスポーツ施設を利用して貰うのがいいのですが、そこ自体が先ほど言ったような許諾などの障壁があると、IPホルダー以外はイベントを立てにくくなってしまう問題はありますね。

渡辺氏:
 すべてのタイトルがダメというわけではないんですよね。日本のメーカーは結構厳しいですけど、海外だと大丈夫なタイトルもある。

長縄氏:
 海外のeスポーツシーンを観て「日本でもやりたいね」という話になりますが、具体的にどうやってやれば良いのかわからないんですよね。

 というのも、日本のeスポーツ施設に来ても、eスポーツを楽しむことはほとんどできなくて、自分たちが持ち寄ったゲームを遊んでいるだけになっているのが現状です。そのあたりの垣根が取れれば、eスポーツを体験できるようになると思いますし、eスポーツが文化として早く形成されるのではないかと。

──アジア競技大会でもIPの関係で、すべてのタイトルが日本で観られるわけではなかったわけですが、放映権についてもクリアしないとオリンピック競技になるのは難しいですよね。

長縄氏:
 昔ながらのパッケージゲームと、オンラインゲームはプロモーションの仕方が違いますよね。パッケージは3ヵ月くらいの間にどれだけ売れたかですが、オンラインゲームは従量課金がメインでいかに延命していくかが重要なわけです。

 eスポーツの多くはオンラインゲームであって、eスポーツイベントはその延命措置のひとつだったりするわけです。最近はパッケージソフトもソフト内課金ができるようになって、eスポーツタイトルとして扱われるようになりましたが、こちらもその分延命措置が必要になってくるわけです。

 そうなってくると、全体的にeスポーツを盛り上げていくことで、そのタイトルの延命ができてくるわけです。なので、IPホルダーとか、eスポーツ施設とか、コミュニティとか、みんなが足並み揃えて延命をしていこうというのが一番良い形だと思います。

──さらに言えば、eスポーツは話題になっているものの定着したものではないと思いますので、波が去った後に許可をされてもという部分はありますよね。

渡辺氏:
 それはすごく感じます。現時点でeスポーツをやりたいと相談されることが多いのですが、そのたびに「儲かりませんよ」と言っています。では、何故やるかと言うと、今やることで数年後に花が開くかも知れない、という程度なんですよね。やれば見返りがあるんだろ、という感じでやってしまうと、うまくいかないと思います。

 例えば、eSports Studioに来るeスポーツチームもいろいろあって、ちゃんとチーム運営を考えてグッズを売ったり、ビジネスとして考えたりするところもあれば、サークルのように仲間うちで集まって楽しんでいるだけのところもあります。

 投資という観点で考えれば、やはりちゃんと取り組んでいるところにしたいですし、そういったチームを育成していかなくてはいけないとも思っています。今あるコミュニティを少しずつ大きくする感じで、いきなり大きいことをしても長続きしないのではないでしょうか。

疋田氏:
 確かに多くの企業や行政の方々から「eスポーツって盛り上がっているんですか?」とよく聞かれます。こちらとしては実情をしっかりお伝えしているのですが、質問をいただく方々はバブルのようなイメージを持たれていて、実際よりも大きなものを想像していらっしゃるケースがあります。そういう現状に対して確かに不安はあります。

 ただ、大きく評価していただいている分、市場には多くの資金が集まっているのも事実です。その資金を実のある使い方ができるか、効率の良い使い方ができるかを考えますね。

──実際の市場と新規参入したいと思っている企業や自治体との温度差があるわけですね。また、簡単に手が出せそうという印象もありそうですね。

渡辺氏:
 新規参入してくる”ゲームを知らない”人が主導権を握ってeスポーツ事業をやっても、プレイヤーの多くはついて行かないと思います。ゲーマーが尊敬しているのはプロゲーマーなどのトップを走るゲーマーたちなんですよね。そういった方々がeスポーツのビジネスにおいても牽引していかないと、うまくいかない。

 我々、お金を出す立場の人間としては、そういったプレイヤーの方々がやりやすい環境を整えていくのが一番発展していくのでは、と考えています。なので、自分たちが主導していくのではなく、応援していく形が理想なのではないかと思っています。ただ、選手もビジネスの経験はないですし、それどころか社会人経験がない人もいるので、スポンサーや支援者に対する対応の仕方ができていなかったりもします。

──実際、そういう問題は度々起こっていますもんね。

渡辺氏:
 例えば企業広告で使おうと思っても、何かやらかしてしまうのではないかという懸念があったり、社会人としての佇まいがなかったり、そういうことによって無礼なことを働いてしまうのではないかという恐れもあるわけです。そういった社会常識のようなものを教える人が必要なんですよね。

 でも我々を含め、ビジネス側の人間に言われたところであまり響かないわけです。やはり現役、引退を含め、トップゲーマーの方々に言って貰うのが一番聞いてくれるわけです。そこをクリアしないと、ゲーム業界以外の企業や行政が支援しにくくなります。あまり儲からないうえに、リスクだけあるというのであれば、eスポーツが定着する前に波が引いてしまうかもしれません

──eスポーツ界隈もビジネス界隈も、お互いに理解しあう必要がありそうですね。

理想のeスポーツ施設像とは

──いくつか課題も出てきましたが、現状での理想のeスポーツ施設像についてもお聞かせいただけるでしょうか。

渡辺氏:
 海外ではスタジアム級の大きな施設もあると思いますが、今後はもっと小さな規模で展開していくのではないでしょうか。場所も取れないですし、人を集めるのも難しいと思います。それこそLFSのような規模で、しっかりと動画配信も行い、プロの実況、解説がついて。目の前で数百人単位が観られるような感じですね。

 そういったクラスの施設が増えていくと思いますし、巨大なアリーナは頻繁に使えるというわけにはいかないのではないでしょうか。世界大会や日本一を決める大会など、大きなイベントではそういったアリーナを使うこともできると思いますが、毎日の試合やイベントでそのクラスの施設を使うのは無理があるのかなと。

 ですからどちらかというと、配信や放送の方に力を入れていくのではないでしょうか。今、いくつかのスポーツが有料配信を行っていますし、eスポーツも月額制であったり、ペイ・パー・ビューのようなイベント単位での支払いであったり、そういった形で発展していくと思います。

疋田氏:
 私も同じような意見で、施設は大きくても数百人程度のお客さんが入る規模のものがメインになるのだと思います。その代わり、地方各地にもたくさん施設がつくられ、野球でいえば草野球ができる球場のようになるのではないでしょうか。

 目先10年以内は地方では会議室を借りてeスポーツのオフラインイベントを行うといったことがメインになるかもしれません。ただ、そういったスペースでもオフラインの楽しみがオンラインメインのプレイヤーたちにも伝播していけば、大きな大会の需要が増え野球のスタジアムのような会場が地方に作られることもあるかもしれません。

──そこは、ライブハウスから始まり、コンサートホールを経て、スタジアムまで膨れ上がった音楽ライブに近いものがありますね。新人バンドがいきなりスタジアムでライブしても客席は埋まらないでしょうし。

長縄氏:
 LFSというのはeスポーツに触れるとっかかりの場所です。そこからの展開として、ある種理想論として言わせていただくと、アリーナのような大きなものから、公民館のような小さなものまで、さまざまな場所でeスポーツができるようになるというのが理想の形ですね。

 過疎化したような地方の町の公民館でも、おじいちゃんやおばあちゃんが対戦をしているとか。年齢やターゲットを絞っている分、集客は減るのでそこを広げていきたいですね。

 リアルなスポーツと違って、eスポーツというのは、身体的なハンディがあっても戦える環境にあるわけです。老若男女、フィジカルな能力の高さを問わずできるということを広げられるかが鍵ですね。そういう意味では、施設としてはチャンスがいっぱいあるのではないかと思っています。

 つい最近、海外の動画で観たのですが、『ロケットリーグ』の大会でお父さんと息子が一緒に大会に出て2on2をしていたんです。ファミリー大会でしたが、ゴールを決めるごとに、親子でハイタッチしている。これを観てeスポーツは年齢の差がないんだなって思いました。そういう組み合わせもあるわけです。

──親子でプレイするのは良いですよね。野球で言えば親子でするキャッチボールみたいな感じで。

長縄氏:
 eスポーツの大会もプロクラスの人のみが集まるようなものだけでなく、さまざまなレギュレーションの大会が組めるのではないかと思います。そこはリアルスポーツにはないものですね。少し話は戻りますが、小さな会場でも大会が簡単に開けるようになるかどうかは、IPホルダーさんにかかっているわけですけど。

──現時点だと多くのeスポーツ施設は、選手が集まってプレイするというイメージが強く、興行的に大会を観客が観に行く状態までにはなっていないと思います。観客席にスペースが取れていないわけです。数百人単位で入る施設ができれば、そこも解消されると思いますが、劇場タイプの施設に関してはどうお考えでしょうか。

渡辺氏:
 私たちが現状で理想としているのは、池袋にあるニコニコ動画のオープンスタジオ(ニコニコ本社)ですね。ラジオでいえば渋谷のスペイン坂スタジオみたいな感じです。

 道行く人に動画配信やラジオ放送の様子を観てもらえるように、eスポーツの試合の様子を観てもらえればと思っています。eSports Studioはスタジオを名乗っているように、配信をメインとして考えています。なので、その場にいて生で観られる人もいれば、家で動画配信を楽しむ人もいる。どちらでも映像として楽しめるようになればいいなと思っています。そこが、先ほど言った映像中心になるという部分ですね。

 場所的に有名な選手が来てしまうと、店の中の小さなスタジオなのでパンクしてしまうので、まだまだこれからな人たちが、コミュニティとして集まって、プレイしている方も観ている方も楽しんでいただければと。先ほども言いましたが後々有名になって、eSports Studioを巣立っていってくれれば良いよね、といつも言っています。

疋田氏:
 興行的に考えるとeスポーツに限らず、ファンが重要であると思っています。e-sports SQUAREとしては、ファンを大事にすると同時にプレイヤーがどれだけ楽しめるかというのも重視しています。プレイヤーのやる気を削いでしまうようなことになってしまうと、イベント自体がつまらないものになってしまい、それを観たファンも楽しめないのではないかと思っています。

渡辺氏:
 まだファンや観客のためのeスポーツ大会を開けていないという状況は、プレイヤーが専業のプロとして活躍できるようになっていないということですかね。

 現時点では、プロゲーマー専業で稼げている人は、ごく一部です。ほとんどが、学生であったり、何かしらの仕事を持っていたりしています。学生も学生でいる間は、そこそこゲームに注力できますが、いずれは就職し、仕事を持つこともあるわけです。

 タイトルによっては社会人になると同時に引退するのが当たり前のようなものもあります。グローバルで大会が開かれているようなタイトルだと、兼業でプレイしている限りでは世界レベルの腕に到達することは難しくなります。腕がともなっていないと、ファンを魅了するだけのプレイもできないでしょう。世界で戦えるようになれば、ファンも自ずと付いてくるようになって、ファンに対する対応もできてくるのかもしれません。

 私たちとしては、専業でも生活できるようにそのチームに収益を上げられるような体制をつくり、支援していきたいと思っています。そこは我々小売業がeスポーツに参入している意味なんです。

 スポーツでもそうですけど、やはりスター選手が出てこないと世間から注目されないですし、ファンも付かないですよね。いかにスター選手を育てていくのかというのも支援する意味のひとつですね。

──よしもとクリエイティブエージェンシーが、渋谷にeスポーツ施設のヨシモト∞ドームをオープンさせましたが、そこではeスポーツのイベントによしもと所属の芸人が司会をするなど、興行としての展開をみせようとしています。
 そういう形もeスポーツとして、eスポーツ施設としてありなのかもしれないですね。

「ヨシモト∞ ドーム」
(画像はヨシモト∞ドームより)

疋田氏:
 eスポーツをイベントとして捉えたときの課題のひとつが、そのイベントで使われているゲームタイトルを知らない人が観ても何が楽しいかわかりにくいところだと思います。そこをどう面白く発信していくのか、そこはヨシモト∞ドームさんがこれからやっていくのかなと思います。

長縄氏:
 ファンというか、オーディエンスを重視することについては、現状だとプレイヤー=ファンという状態なんですよね。なので、選手もオーディエンスも大事にしているということでもありますけど、そこまでしか広がりがないとも言えます。まだ純然とした観客がいないわけです。

 今後、プレイヤーが友達や恋人、家族などプレイヤー以外の人を連れてくるようになると、純粋な観客となるわけですが、そこへのフォローは現状ではできていません。そういう意味ではまだ選手を重視すべき時期なんでしょう。

 バンドのライブで、MCが「今日、友達や家族に連れられて来た人~」と聞いたとき、結構な数が手を挙げたりするんですよね。将来的にはそういう状態になっていくんだとは思いますが、「徐々に」、でしょうね。

──野球とかサッカーも興味がないのに付き合いで球場に赴くという話は良く聞きます。eスポーツ観戦もそんな感じになれば、定着した感がありますね。

疋田氏:
 今、オーディエンス=プレイヤーとなっている理由のひとつは、視聴するゲームタイトルをプレイしていないと、その面白みがイマイチわからないから、です。その中でも対戦格闘ゲームは、わかりやすい方で、画面を観ただけでどっちが勝っているか、どっちが攻撃をしているか一目瞭然です。なので、一度もプレイしたことがなくても、観戦していてある程度の面白さは伝わってきます。

 それが『リーグ・オブ・レジェンド』になってしまうと、まったく何をやっているのか、どっちが優勢なのかまったくわからないという。

長縄氏・渡辺氏:
 わからないよね。

疋田氏:
 それでも多くの人に観て貰うとなれば、スター選手が出てくる、もしくは、ゲームの内容自体がわかりやすく、多くの人がハマる新たなeスポーツタイトルが登場するしかないと思います。

 eスポーツタイトルは移り変わりが激しいので、そういった面がないと辛いですね。『PUBG』もいきなりガッと流行って、そうこうしているうちに今度は『フォートナイト』が出てきて。本当に目まぐるしく移り変わります。

──試合が長いというのも観ている方は辛い部分もありますね。『LoL』だと試合内容もそうですが、最初のピック(キャラクター選び)も楽しみだったりしますが、チャンピオン(『LoL』でのキャラクターのこと)のことを知らないと、どうしてそれを選んだのかわからなくて楽しめない。

疋田氏:
 そうなんですよね。チャンピオンは100体以上いるので、全部を覚えるのだけでも大変ですし、ゲーム的にも奥が深すぎて初心者には難しく、新規勢が入りにくくなってしまっています。

渡辺氏:
 戦略性が高いので、のめり込んだ人が強くなる。課金を多くした人が強くなると言うわけではないんですよね。

今後、eスポーツ施設はどうなるのか

──最後に、eスポーツ施設は今後どうなっていくのか、個人レベルのeスポーツ施設の運営はできるのか、できるのであれば、どうすればいいのかというのをお聞かせいただけますでしょうか。

渡辺氏:
 施設は継続していくと思います。eスポーツは伸びていく産業だと思っていますので、しばらくは廃れることはないでしょう。今後はゲーマーから施設を運営したり、店長をしたりする人がたくさん出てくると思います。プロゲーマーのセカンドキャリアのひとつとして定着するのではないでしょうか。

 現在だと実況やストリーマーへの道がセカンドキャリアとして存在していますが、施設運営にも伸びていくのではないかと踏んでいます。プロゲーマーになれなかった人たちや引退した人たちが、次に働ける場として施設がたくさんできればいいですし、そこは支援していきたいです。まだ施設は儲かる段階にはないですので、そこで儲けが出て仕事として確立できれば、eスポーツ業界もよくなっていくわけです。

疋田氏:
 私もeスポーツ施設は、今後も存続できると思います。e-sports SQUAREもなんだかんだ言って8年も存続できていますから。これからeスポーツ自体は盛り上がっていくと思いますので、一緒に施設も伸びていくと思います。

 また、今後日本で新しいリアルスポーツが現状のスポーツの人気競技並に流行るのは難しいと思います。一方でeスポーツであれば、爆発的に人気を得るタイトルが出てくる可能性はあるのではないでしょうか。そういう未来展望も含めて、施設は十分に残っていけるでしょう。

 ただeスポーツ施設は設備にお金がかかり、これから始めようとするには初期投資が必要になります。主にPCやディスプレイですね。アイデア次第ではできることはあるはずですので、難しいとは思いますが、施設運営はやろうとすればできなくはないと思います。

長縄氏:
 例えばカードゲームの対戦ができる20畳くらいのスペースで施設として運営が成り立つかどうかと言われると、成り立つと思います。あと飲食をつければ大抵のことはできると思いますので。

 扱うゲームをその人なりの愛やこだわりを見せていれば、そのタイトルのファンは自ずと集まってきます。カードゲームの話をしましたが、実際にカードゲームをプレイできるショップなどは、カードゲームに対してのこだわりが店舗に出ており、そこがお客さんやファンに刺さっているわけです。

 ただ、こだわりが強いとそのタイトルと心中することになるので、そのタイトルのサービスが終了してしまったり、人気がなくなってしまったりすると、そこはちょっと危うくなってしまうわけです。

──まだまだ個人店を出すというにはハードルが高そうな感じですね。みなさん、今日は長い時間、貴重なお話をしていただきありがとうございました。(了)


 eスポーツは、プロの活躍の場の拡大や賞金の問題など、少しずつではあるが解決の道筋が見え始めてきている。しかし、eスポーツ施設に関しては、まだインフラが整っておらず、先が見えない状態だ。

 eスポーツの楽しみのひとつとして、オフライン大会の開催、試合の観戦がある以上、eスポーツ施設の問題は避けられない。法的な問題などもあり、個人レベルではどうしようもないので、国や自治体、IPホルダーや施設運営など、eスポーツに関わるすべての人たちの協力が必要となる。
 とくにIPホルダーのレギュレーションの制定や規制の緩和を期待したいところだ。

 

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