カドカワの社長退任や『シン・ゴジラ』の舞台裏、そして教育事業に賭ける情熱とは?──川上量生・特別インタビュー

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オンライン化によって改めて問われる学校の価値

──話は変わるんですが、コロナ禍の影響って、N高的にはどうだったんですか?

川上氏:
 一般的には恩恵を受けたところだと思われてますけど、今年の入学者数は予想よりも減ったんだよね。正確にいうと4月はじめの新入学生は多かったけど、途中からN高に転入してくる生徒が幅に減ったんですよ。なぜかというと、通信制の学校に転校する人って、それまでいた学校に行くのが嫌で転校する人が多いんですよ。でも、コロナの間は学校はやっていなかったから、きっと嫌になることも、なかったんです。

──なるほど。確かに、イヤになるキッカケもないかもしれませんね。

川上氏:
 なので、転校生の数は激減しました。学校が再開した7月ぐらいから増えてきて、8月〜9月はそれぞれ前年比の140%ぐらいまでいったんだけど、累計で前年比超えっていうのは、10月でやっと達成できそうなくらいですね。そういう意味では、いままで転入生は前年比150%くらいで推移してきたけど、今年度は着地が前年比の120%とかいけば御の字じゃないかな。

──ふむふむ。

川上氏:
 だから、転校に関しては打撃を受けたというのが正直なところでしょうね。ただ、来年4月の入学者数は相当増えると思う。

──それは、どういう見込みでそう思うんですか?

川上氏:
 単純に、資料請求の数ですよ。来年入学するための。中学3年生の資料請求率が前年比の200%ぐらいいってるんだよね。なので、転校生ではなくて、そもそもN高に行きたいという人がめっちゃ増えている。通信制の学校というのは、普通は転校が中心なんですよ。好んで行くわけではない人が多い。だから、新入生が少ないところが多いんだけど、N高の場合は、もともと半分以上が新入生なんですね。
 それが年々増えてきて、いまは7割ぐらいが新入生になった。だから、3割の転校生が伸び悩んでいても、そんなに大した影響はなくて。問題は中学3年生なんですよ。中学3年生の伸びが激増しているのは嬉しいですね。

──しかし、コロナウイルスの全世界的な感染拡大によって、否が応なくオンラインベースの教育のあり方や価値が問われているわけですけど、たとえば、アメリカの大学などでは、返金騒ぎなんかも起こったりしているじゃないですか。

川上氏:
 急場しのぎ的にオンライン授業とかやっても、正直なかなか難しいですよ。払った金額に相当するクオリティが担保できるかっていったら、かなり厳しいとは思う。

──授業の内容もあるんでしょうけど、それだけじゃなくて。たとえば大学の価値って、もちろん勉強そのものにもあるんだけど、そこで知り合う人たちとの人間関係だったり、将来的なコネクションみたいなものも、大きな価値だと思うんです。そういう学校のコミュニティ的な価値って、通信制の学校だと、なかなか持ててなかったりしますよね。

川上氏:
 N高は元々、ネット上に学校生活を再現するっていうのが最初のコンセプトだから。そこはむしろ根本ですよ。

──そのあたりの考え方って、川上さんが昔、ドワンゴでネットゲーム廃人たちを入社させて救ったような感覚とも通じるものがあるんですか? 才能はあるけど学校には行けなかった人たちへの救済というか。

川上氏:
 確かにドワンゴって、もともとそういうコンセプトで始めたものでもあります。MASAKI(※)とか、明らかに優秀なんだけど、コイツはどう生きていくんだ?っていうね。彼らは本当は能力があるんだけど、認められる場=活躍の場がないわけですよ。だから、彼らを認めてあげて、働く場所を作ろうと思って立てたのが、ドワンゴという会社を作った最初の動機のひとつでした。
 ただ……、いまふり返ると、あのときは務めていた会社がいきなり倒産して、気が動転してたってのも大きかったかな。正直、そんな理由で会社を作ったのは正気じゃない。気が迷ってたんだよね。

──えええ(苦笑)。

川上氏:
 うん、いま思えば、あんな人たちを集めて会社をやろうっていうのは、本当にどうかしてた(苦笑)。
 その後、当時の社員がほとんど辞めてしまったことも含めて、いろいろ失敗が多かったと思っています。反省材料ですよ。

──そうなんですか? 「2ちゃんねる採用」とか、川上さんは、社会で居場所がない人の受け皿を作ろうっていうようなことを、ことあるごとにやっていた印象もありますよ。

川上氏:
 なんていうかな、ドワンゴでそういう人たちを雇ってはみたものの、彼らは「変でいることが自分のアイデンティティ」になっちゃっていたというか。だから入社した後も、いろいろなトラブルを引き起こす人が多かったよね。
 でも、これっていま考えると、学校教育の現場で起こってることと同じだったんですよ。生徒の面倒をちゃんと見る学校ほど、自分が心が病んでいるせいで面倒を見てもらえるんだと思い込んで、心を病むことが自分の拠り所になってしまうスパイラルが発生する可能性がある。

──それはなんか、ちょっと分かる気がします。

川上氏:
 そこで僕が思ったのは、「救う」という考えが間違いだった、ってことなんですよ。

──どういうことですか?

川上氏:
 つまりですね。世の中、ちょっとだけ外れてしまった、まだ「症状が軽い人」ってたくさんいるんですよ。「症状が軽い」たって病気みたいだけど、それにしたって世の中が勝手に決めつけているだけで、社会にちょっとだけ相性が悪い、ふつうの人間なんですよ。
 そういう症状の軽い人が不登校になりました。でも、本当は学校に行きたいんだけども行きたくない。それで、行けない自分を恥じている。そういう子たちが、「あなたたち不登校者向けの学校を作りました、どうぞ!」って言われて、行きたいってなるわけがない。
 
──確かに。

川上氏:
 だから、N高のコンセプトはなんなのかって言うと、そういう不登校の生徒も「普通の生徒」として受け入れるってことなんです。あくまで普通の人のための学校ですっていうのが、N高が掲げているコンセプトなんです。だから、ドワンゴ時代にやってた「おまえら廃人だから入れてやる」っていうメッセージ。出していたつもりはないけど、結果的には、そう受け取られてしまったのは、ちょっと失敗だったなと反省していて。

──まぁでも、初期のドワンゴがそういう人たちの居場所になっていたことは確かだと思うんです。

川上氏:
 それはそうかもしれないけど、「変でいることがアイデンティティ」になっちゃうと、やっぱりいろいろ歪んじゃう。そうじゃなくて、ただ普通に接すればよかったんです。だからN高というのは、あくまで”ネット上で普通の学校をやる”んです。学校生活だってネットで代替できる。ネットでできることは全部ネットで再現しようと。

──N高は、Slackでいろんな形のコミュニティが形成されているのが、他の通信制学校にない大きな特徴ですよね。クラスに部活、趣味のチャンネルまである。

川上氏:
 そのあたりは、まさにN高というか、ドワンゴの得意なところですよね。

──というか、ドワンゴは社内Slackも割とフリーダムですもんね。僕も始めて見たときは、「これはオンラインゲームのチャットルームか?」と見紛うような感じでしたし(苦笑)。

川上氏:
 TAITAIさんもそうだと思うけど、僕らは現実よりもネットにこそ居心地の良さを感じてきた人間だったじゃないですか。

──ニコニコも、革新的なネットサービスである以上に、居心地の良い場所としての側面が強かったと思います。

川上氏:
 うん。ニコニコもまさにそういう場所として機能していたよね。

──以前はネットが、現実社会で生きづらい人たちの逃避先として機能していた背景もありますし。

川上氏:
 匿名とかっていうのも、現実逃避の場だったんだよね。とくに2ちゃんねるとかはそうだった。だけど一方で、筋金入りのネットユーザーって、コテハン(※)つけたりするじゃないですか。あれって、ネット側にアイデンティティを求めた結果だと思うんです。

※固定ハンドルネームの略。

──そうかもしれませんね。

川上氏:
 ネットで人生のやり直しみたいなことをやるか、それともネット世界を現実世界のように扱うか、ネットに向き合うスタンスは2つあると思うんだけど。真性のネットユーザーは、どちらかというと、ネットが現実に置き換わるほうが可能性が広がると、僕は思っていて。

──そっちのほうがいいということですか?

川上氏:
 そっちがいい。現実空間っていろいろなものが制限されてるでしょう。とても窮屈なんですよ。でも、ネット上で別の人格や役割があれば、それは現実の制約とは無関係でいられるじゃないですか。

──でもいまって、そういうネットとリアル(現実)の垣根がなくなっちゃったじゃないですか。TwitterとかFacebookもそうだけど、ネットの人格は、もう現実と地続きのものとして扱われるし、むしろ実社会よりも不特定多数の人の目にさらされてしまうから、不用意な発言もできない。自由さよりも不自由さの方を強く感じられるようにもなってきましたよね。

川上氏:
 ニコニコ超会議を最初にやった頃って、ネットはネット、リアルはリアルで分断されていた、最後の時代だったじゃないですか。最初の超会議って、ネット文化をリアルに出現させる、ネットがリアルを侵食するんだ!って、そういうコンセプトでしたよね。

(画像はニコニコ超会議2020、入場券&ブース情報を発表!|ニコニコインフォより)

──そうそう。まさに日陰者だったネット民が、日の目を見るためのイベントだったと思うんです。だからこその熱狂みたいなものがあった。どの時代も日陰者って一定数いると思うんです。そして日陰者は、日陰に居場所を求めるじゃないですか。じゃあ、ネットというものがメジャーで日の当たる場所になったいま、日陰者ってどこに居場所があるんでしょうね。

川上氏:
 いまのネットはそれがすごく見つかりづらいよね。日向と日陰が混ざってしまっている。純粋な日陰の場所ってのはそうないんですよ。いまはかろうじてTwitter。あとは、それこそネットの奥深くだよね。

──LINEのグループだったり、ゲーマーだったらDiscordだったりするんですかね。

川上氏:
 オンラインゲームとかも、そういう場所として機能しているかもね。

──オンラインゲームって、いろんな人たちがゲームっていう軸を持つことによって仲良くなりますよね。たとえば、オンラインRPGのギルドの中には、めちゃくちゃ偉い会社の社長もいれば、中学生や高校生もいる。性別だってバラバラだけど、でも同じギルドで戦っている。そういう視点で見ると、N高というものが、コミュニティを形成するひとつの軸にはなり得るんですかね?

川上氏:
 コミュニティって、なにかテーマがあれば成立するんだよね。テーマは何でもいい。それこそ趣味で集まったりとかでもいい。でも、いまや趣味で集まるのも結構厳しいと思っていて。とくに若い子にとってはそうだと思うんです。なぜなら、もういまのネットの世界ってさ、趣味の世界もかなり濃い世界になっちゃってて、一見さんお断りみたいになってるじゃない。
 
──たしかに。
 
川上氏:
 そうすると、そこに対してN高っていう軸は、より入りやすい初心者用のコミュニティとして機能しう得ると僕は思っているんです。それに高校って、最後はみんな卒業するじゃん。つまり、古参が強制的にいなくなる。新陳代謝があるコミュニティなんです。だから若い人にとって最適なコミュニティがN高で作れるんじゃないかと。まあ、まだそこまでうまくはいっていないんだけども、ある程度はその目論見は成功していると思うのね。
 
──N高の、たとえば部活だったり、趣味のSlackのチャンネルがあったとしても、それも卒業したら卒業生はアカウントもなくなって、出ていくんですか?
 
川上氏:
 そうそう。
 
──なるほど。オンライン上のコミュニティとしては、それは珍しいかもしれないですね。オンラインコミュニティで適切に入れ替えが起こるものって、実はほとんどないというか、少なくとも僕は見たことがない。
 
川上氏:
 そう。それは大きいんじゃないかなと思ってます。
 
──コミュニティが衰退する理由って、ほとんどがメンバーが固定化してタコツボ化するところからですしね。
 
川上氏:
 承認欲求がとくに強いのは10代だから、そのときにタコツボ化していない新鮮なコミュニティが用意できるっていうのは、結構意味があるかなと思っています。ただ、そこでN高生がみんな盛んなコミュニケーションをやっているのかというと、そうでもない。ROM(※)のほうが多数派です(笑)。まぁでもネットコミュニティってそういうもんだし、一定数の人には、それなりに居場所は作れていると思う。

※ROM:「読むだけの人」を意味する和製英語「Read Only Member(リードオンリーメンバー)」の略。

──「居場所を作る」というのは、ドワンゴでの取り組みやニコニコにも通じる、川上さんの中のテーマなのかもしれませんね。

N高に麻生太郎を招く意味。自分の学校のことを外で話せるようになってほしい

──しかし、また話は変わりますが、N高って本当にいろんな分野の講演者を招いて、話題作りをしていますよね。

川上氏:
  そうですね。ちなみにTAITAIさんは、どうしてあんなことをやってると思います?

──それは正直、面白いプロモーションを考えるな、ぐらいの見え方はしちゃってました。相変わらず話題作りが上手いなと。

川上氏:
 それは、ちょっと心が汚れてるな(苦笑)。

──ええええ。

川上氏:
 僕がそんな単純なプロモーションとかやるわけがないじゃん。

──む。じゃあ、どういう目的があるんですか?

川上氏:
 いや、プロモーションという意味では間違ってないんだけど、それは外向きじゃないんですよね。N高のプロモーションは、外に対してプロモーションしているつもりは一切ない

──え、外にプロモーションをしない??

川上氏:
 要するに、N高のプロモーションって、実は全部内向きなんですよ。

──あ、もしかして、生徒のためということですか?

川上氏:
 そう。生徒自身が「うちの学校に●●が来たんだよ!」と言えるように。目的が違うんですよ。実際、統計調査もやって調べたんだけど、学校の選択って、人生の一大事じゃないですか。そういう人生の選択とも呼べるものを、テレビで紹介されていましたとか、何かの雑誌の記事で見ましたとか、そんなことで入学したいと思う生徒なんか、ほとんどいないんです。そんなことでは人生の決断はしない。
 もちろん、知ってもらうことで興味は持つ、資料の請求はするかもしれないけれども、そんなことで決めるわけではない。じゃあ、最終的に何で決めるかといったら、口コミなんです。たぶん、教育(学校)は全部そうなんですよ。

──なるほど。

川上氏:
 口コミ以外にありえない。だから、生徒が自分の学校のことを話題にできるようにする必要がある。生徒から発生する口コミを増やすべきなんです。その目的のためにプロモーションをやっているので。僕らがやっていることっていうのは、単純に生徒の満足度を上げて、生徒の口コミで増やそうと思っていて。口コミをしやすくするために世の中の話題を作っているだけなんですよ。
 
──それって、高級時計とかのCMの打ち方とまったく同じ構造ですね。たとえば、スイスの高級腕時計ブランドの「HUBLOT」って、直接時計を売るために宣伝するんじゃなくて、自社の時計を持っているユーザーさんが「話題のあれ、持ってるんだよね」って言えるように広告を打つらしいんです。そういう視点で掲載する媒体を選定するって話を聞いて、面白いなと思ったことがあります。
 
川上氏:
 そうそう。まさにそういう話なんだよね。
 
──自分の学校に対して、プライドを持ってもらうっていうか。
 
川上氏:
 N高でよかったねって言いたいし、言われたい。やっぱり、自分の学校のことって言いたいじゃないですか。だけど、通信制の学校って、普通は恥ずかしくて言えないんです。
 
──そうですねぇ。全部がそうではないんだろうけど……。
 
川上氏:
 だからN高では、あの人が来て教えてくれるんだよって、生徒が言えるようにしたいと思っているんです。最悪、愚痴だっていいです。「うちの学校、ほんと訳わかんないことばっかりやってすみませんw」って生徒から世の中に謝らせてあげれればいい。学校のことを外で話せるってことが、生徒のプライドを高めて、口コミを促進すると思うんですよね。

──それは生徒は喜びますよね。実際、自分の学校にプライドを持てない人って、世の中にはいっぱいいると思いますし。

 川上氏:
 だから僕らは、生徒の満足度を高めるために、プライドを高めるために、頑張って世の中での話題作りをしているわけですよ。

──なるほど……。

 川上氏:
 最初からN高に入りたいって、来てる生徒さんもたくさんいますけど、一方では、元いた学校になじめなくて、転校してくる人たちもいるわけじゃないですか。だから、なおさら自分が通わざるをえなかった学校というものに対してコンプレックスを持ってる子も多いと思うんです。そういう人たちが胸を張れるような環境を作るっていうのは、本当に大事なことだと考えているんですよね。

──とはいえ、そこで麻生太郎副総理を呼ぶっていうのも、なかなかユニークですよね。そもそも、麻生太郎さんはなんでN高に来てくれたんですか?

 川上氏:
 ああ、そのへんのキャスティングの話も、できれば少し話しておきたいですね。というのも、一部では、ドワンゴの取締役に麻生大臣の親族がいるから(現在はいない)、呼べたんだろうと。そう思っている人がいるようなんだけど、まったく違いますからね。

──身内のラインからお願いするのって、むしろ一番難しいですよね。

 川上氏:
 そうなんですよ。ある程度、キャスティングやブッキングをやってきた人なら常識だと思うんだけど、身内から行くのって、近いようで一番遠いんだよね。なんでかっていったら、みんなが出演してほしい人っていうのは依頼が殺到しているわけで、基本的にはそれを常に断っている状態なんです。そういう中で、身内や仲のいい人から「どうしても」って頼まれる話って、ただただ筋の悪い話でしかないからです。

──分かります。ただ、そうなると、余計に「じゃあ、なぜ麻生太郎さんがわざわざ出向いてきてくれたのだろうか?」というところが気になるわけですが。

川上氏:
 なぜ麻生太郎さんが受けてくれたのかは、正直わからないですが、たぶん、複数の理由があったでしょう。政治家がああいうときに何を気にするのかっていったら、まず大義があるかどうかですよ。その意味で、僕が可能性があると思ったのは、高校生に向けて説明するのって、罪がないじゃないですか。とくに偉い人ほど若い人のためになにかをしてあげたいと思っているから、N高だけじゃなくって、「全国の高校生に向けて講演してください」っていうお願いは、麻生さんの興味を引く可能性があるだろうなとは思っていました。

──なるほど。だからYouTubeなどでもオープンに放送する形だったんですね。ちなみに麻生さん向けの提案資料って、どういうものだったんですか?

川上氏:
 見ます? 特別なことは書いてないですけど、推敲に推敲を重ねて、この企画書だけで二か月以上掛かってます。こういう提案だったら受けてくれるんじゃないかとコンセプトを決めて、実際に資料に落としてみて、これじゃダメだと何回も修正をして。資料が完成してから、はじめて麻生太郎事務所に連絡をして、勝負を仕掛けたわけです。

──二か月ですか。でもまぁ、麻生さんを呼ぼうと思ったら、そのくらいの労力はかけるべきですよね。

川上氏:
 このくらいは普通のレベルですよ。それに、この手のキャスティングでは、いちばん最初に出る人がとても大事なんだよね。最初に誰が出るかが、その後のキャスティング全部に影響があるから

──ああ。それも本当にその通りですね。僕も「ゲームの企画書」という連載を始めるにあたって、いちばん最初に誰に出てもらうか?に拘って、企画自体を2〜3年寝かせましたからね。

川上氏:
 あれも、一番最初にポケモンを作った田尻智さんっていう、普段なかなかメディアに出てこない人が出てくれたことに、大きな意味があったんだよね。

──そうなんです。そうすると、二回目以降のキャスティングが、あの田尻さんが出てるんだったら自分もって、受けてもらいやすくなるんです。

(画像は「ゼビウス」がなければ「ポケモン」は生まれなかった!?———遠藤雅伸、田尻智、杉森建がその魅力を鼎談。ゲームの歴史を紐解く連載シリーズ「ゲームの企画書」第一回より)

川上氏:
 まさに。1回目っていうのは、できるだけみんなが納得する、この人の後だったら自分が出ていいって思える人を選ぶ必要があるんです。それもね、話が面白い人、ちゃんと勉強になるようなことを言ってくれる人で選ばなければいけないわけで。政治家でいうと、それが麻生太郎さんだった。現職の大臣ですしね。
 政治家ということでいえば、最初に野党の大物とかが出ると、たぶん2回目は与党の方を呼ぼうとしても、難しくなってしまうし、自分のほうが格上だと思っている人を呼ぶのも難しくなる。

──やっぱり、結構な手間暇をかけて、正面玄関から打診をしているんですね。

川上氏:
 そりゃそうですよ。みんな、仲がよかったら付き合いで出てくれるだろうと安易に考えるんだけども、そんなわけないんですよ。これには意義があって、本人も興味がありそうなテーマにして、なおかつ、それをやるリスクがありませんと言わないといけないんですよね。

──そうですね。

川上氏:
 あとさぁ、たとえば、麻生さんとかを呼ぶと、すぐにドワンゴは自民党寄りだのなんだのって言いたがる人がいるんですけど。そもそも、本当に公平にキャスティングをすることって、めちゃくちゃ難しいんですよ。

──自分のつながりがない人も呼ばないといけませんし、さっきの話じゃないですけど、いろいろな人間関係の力学に配慮しながら声をかけないと、そもそも成立しないですもんね。

川上氏:
 で、与党と野党のどっちが難しいかというと圧倒的に与党のほうが難しいわけです。
 そりゃ、頭の中だけで、まず与党からは安倍総理が出て、次の野党の枝野さんが出て──みたいなことを考えることは簡単だけど、じゃあそれをどう実現するんだよって話で。実際は、自分が持ってるつながりや縁の中でやりくりするしかないんです。

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