ゲームエンジンを使って、10人ぐらいでアニメのTVシリーズを作ることを考えている
板野氏:
アニメ界は今、コロナのおかげで外国に頼れなくなったんです。飛行機も飛ばないし。だからゲームエンジンで7割を作って、3割を手作り風に加工して作るっていう、そういう3Dアニメのシリーズを作ろうとしているんですよ。
そうしないと人手も足りないし、予算も出ないから。300人のスタッフを10人にして、その10人がちゃんと生活できて、なおかつ良いものが作れる環境にするには、ゲームエンジンでアニメーションを作るしかないと思っています。
柏倉氏:
僕もじつは、もともとはその考え方だったんです。それでグラフィニカを辞めて、Unreal Engineを触ってみたくて、スクウェア・エニックスに行って。そのときの縁でいまはVRに移行したんですけど。
でも、今はゲームエンジンと呼ばれているものが、この先はアニメエンジンと呼ばれるようになってもいいんじゃないかと思っているのは、ずっと変わっていなくて。そういうものが出てくるのを黙って待っているよりは、自分たちで作るべきなのかなと。
ゲームエンジンでアニメを作る試みは、たしか『HELLO WORLD』【※】で実験的にやったんですよね?
板野氏:
そう、部分的にね。【※】
※グラフィニカの制作チームがUnityを用いて『HELLO WORLD』のシーンを再現する試みがUnite Tokyo 2019にて講演されている。
──ゲームエンジンでアニメを作るというのは、具体的にはどのような方法なんでしょうか?
板野氏:
『ガンダム』だって、作画監督の安彦さんがどれだけカッコいい修正原画を描いても、動画がヘタだとグニョグニョになっちゃうじゃないですか。
どんなに良い原画や作監修正があっても、動画がヘタだと台無しにされちゃう。でも3DCGだと、それがないんです。
だけどその代わりに、CG特有の固さや気持ち悪さがあるじゃないですか。それをいかに取っていって、日本のアニメーションのデフォルメを、どうやって3DCGで表現するか。
タイミングやポーズはデフォルメができて、中割を補完割りにしない。その方向性で、ありとあらゆるデータをゲームエンジンにディープラーニングさせて。
それで究極的には、「金田アクション」というボタンを押したら金田伊功さんの動きができて、「板野サーカス」というボタンを押したら板野サーカスができるような仕組みにしたいなと思っているんです。
柏倉氏:
それはスゴイなぁ。
板野氏:
そうなったら、それこそメインスタッフの10人ぐらいだけで、TVシリーズが1本できちゃう。
柏倉氏:
その10人で、大事なところにしっかりとクリエイティブを注ぎ込めるようなスタイルにして。
板野氏:
そう。作画監督がパソコンのお絵描きソフトさえ使えれば、最終的なレタッチを作監修正や特殊効果として乗っけて、それで作画っぽくすればいいようにして。
柏倉氏:
それを全部やるわけじゃなくて、一部だけでもやれば、平均以上のものが目指せるわけですよね?
板野氏:
そうそう。全体の7割をゲームエンジンで作って、残りの3割のうちの半分ぐらいをレタッチでやって。
でも、いずれはレタッチの割合もどんどん減らしていきたいなと。TVシリーズはそういう方向で作っていかないと、良いものにはならないから。
『機動戦士ガンダム』のTVシリーズもダメだったけど、『マクロス』なんかもっとダメだったよ。【※】5本に1本しかマトモな回がなかったから(笑)。
それはやっぱりイヤだし、そんなものに自分の名前を出したくないよ。だからTVシリーズの作り方を変えたいと思ったのに、なかなか変わらないで、予算もずっと昔のまんま。それなのにキャラと内容だけがどんどん凝っていって、それで上手い人はみんな疲れ切って辞めていっちゃう。そういう状況がもう何十年も、ずっと続いているので。
※『マクロス』なんかもっとダメで
『超時空要塞マクロス』のTVシリーズでは、板野一郎氏をはじめとするメインスタッフが直接手がけた話数の作画は、当時のTVアニメのレベルを超えた圧倒的なクオリティとなっていた反面、その他の話数では作画に難のある回も少なくなかった。
柏倉氏:
そうなんですよ。それはCGの時代になってもありますね。
板野氏:
CGも最初は良かったのに、だんだん安くなってきて。今はCGの人たちも苦しくなってきている。
柏倉氏:
そうですね。
板野氏:
これだけやる人が減ったんなら、宇宙戦艦ヤマトよりも新造戦艦アンドロメダで戦おうと。ヤマトは人の力で飛んでいるけど、アンドロメダは艦長1人でいいんで。
柏倉氏:
そのほうがおそらく、演出家の意図でコントロールしやすいものが増えると思うんですよ。
板野氏:
演出家がちゃんと演出できる。そうじゃないと、演出したいのに演出ができない状態で、ただ処理をやっつけてるような状態になっちゃうから。とにかくTVで出せるところまで突貫工事で直すのに精一杯で。そんなものばかりが出回っていて、名前のあるごく一部ががんばっているだけなんだよ。
──板野さんぐらいキャリアのあるアニメーターの方だと、ご自身の技術だけでなんとかしようと考える人が多いと思うのですが?
板野氏:
「自分で描いたほうが早いよ」って人ばっかりですよ(笑)。
──それなのに板野さんは、他の人もまだ見たことのないような新しい技術もどんどん採り入れていこうという姿勢なので、スゴイなと。
板野氏:
先を見れば、もう人がいないですから。アニメの専門学校に来るのはみんな声優志望で……学生さんもアニメーターは食えないって、分かっちゃってるんで。
外国からも見学に来るんですけど、机の下でミノムシみたいに寝てるところを写真に撮って「ホントだ」って、笑いものにして帰っていく連中が多かったり。
アニメの将来を考えたら、少数精鋭で良いものを作っていかないと、中国にも追い抜かれちゃう。デジタル面では韓国に追い抜かれているし、いろんな面で追いつかれるどころか、あっという間に抜かれていく。
絵はだいぶ追いつかれちゃっているとはいいえ、お話を作ったり、演出したりというのはまだ、日本のほうが優位にあると思ってます。そういう日本の良いところを発揮できる演出家さんが育って、その演出家さんが少数精鋭で小回りが利く、良い作品を作れるようになればいいなと思っているんです。
『ブラスレイター』でアニメ脚本家としてデビューした、虚淵玄氏とのやり取りは?
──ちなみに板野さんご自身としては、今後VRの作品を手がけてみたいと思われますか?
板野氏:
VRがどうとかより、あんまり監督欲がないね。自分は今年(2021年)の3月で62歳になったんだけど、やっぱり若い人が次のレベルに一歩踏み出す、その背中を押す仕事が好きで。自分が作りたいってなると、『ブラスレイター』もそうだったんだけど、売れないものを作っちゃうんですよ(笑)。いいものを作っても、見てもらえないと売れないので。
『ブラスレイター』のときは、プロデューサーにも言われたんですよ。「アバンで裸を出せばもっと視聴率が取れるよ」って(笑)。でもそれよりは群像劇で、主人公1人が活躍するんじゃなくて、いろんな若者の苦悩を次から次へと表現してあげたかった。
化け物になっても自分の生き方を貫こうとするんだけど、世間がそうさせてくれないっていうのが、『ブラスレイター』だから。化け物になったほうが人間らしくて、人間のほうが悪いヤツで。
プロデューサーから毎回「温泉回はまだか」「プール回はまだか」って言われるから、「ちゃんと出しますよ」って。それで、マレクと海に行ったアマンダの写真が冷蔵庫に貼ってある(笑)。
柏倉氏:
写真だけ出すっていう(笑)。板野さんは、『ブラスレイター』の脚本を書いた虚淵玄さん【※】の話を交えて、そのあたりをよく、“毒饅頭”に例えるじゃないですか。
※虚淵玄
ニトロプラスのシナリオライターとして『吸血殲鬼ヴェドゴニア』『沙耶の唄』といったアドベンチャーゲームのシナリオを執筆。
2008年に『ブラスレイター』でTVアニメの脚本家としてデビューし、『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS』や『仮面ライダー鎧武』、劇場アニメ『GODZILLA』三部作などのシナリオを手がけている。また、小説『Fate/Zero』などの小説も執筆している。
板野氏:
そう。自分が作るものは誰が見ても毒饅頭で、「食べたらお腹をこわすよ」って、誰も手に取ってくれないんです。それに対して虚淵君が作るのは、“毒スイーツ”で(笑)。
見るからに美味しそうで、食べても美味しいんですよ。「このスイーツは美味しかったね、また食べたいね……ウッ!」って、時間差で毒が回ってくる(笑)。
柏倉氏:
そういう話もあるんだなと(笑)。
板野氏:
やっぱり昭和の頑固親父は毒饅頭しか作れないんですよ(笑)。今の若い人にウケるスイーツは作れない。虚淵君はそういうところが上手いから。
『ブラスレイター』のとき、虚淵君はアフレコにもダビングにも全部来て、他の話数のシナリオも全部読んでくれたので、こちらも一通りのことを全部見せてあげて。
『ブラスレイター』にはアニメーションのシナリオライターを呼ばないで、『ウルトラマン』の太田愛さん【※1】と『仮面ライダー』の小林靖子さん【※2】と、虚淵君の3人で全部作ったの。
アニメのライターだとどうしても、漫画の原作のその話数だけを読んで、セリフをそのまま引っ張ってくる人が多かったから。やっぱり自分が『仮面ライダー』を見た時に「この回はいいな」という人、自分が『ウルトラマン』をやっていたときに「このライターさんはいいな」という人に声をかけて。
※1 太田愛
『ウルトラマンティガ』で脚本家としてデビューし、『ウルトラ』シリーズやTVドラマ『相棒』シリーズなどの脚本を執筆。現在は『幻夏』『天上の葦』などの小説や、エッセイなどでも活躍している。
※2 小林靖子
実写特撮『特捜ロボ ジャンパーソン』で脚本家としてデビュー。『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー電王』といった特撮作品から、『進撃の巨人』『ジョジョの奇妙な冒険』などのTVアニメまで、幅広く脚本やシリーズ構成を担当。
2020年に『岸部露伴は動かない』が実写ドラマ化された際も、脚本を担当して話題となった。
そこにゲームを作っていた虚淵君が入って、アニメとゲームの違いも教えてあげたり。
ゲームは好きにできるけど、アニメは尺もカット数も、動画の枚数まで決まっちゃってるから、ゲームみたいにずっと戦ったりできない。同じセリフは2回言わないで、逆に間を詰めちゃう。そんなふうに、ゲームほど自由じゃないんだと。
あとは、「演出がこのシーンを削っちゃったんだけど、ここのセリフを同じ意味を持ったまま短くしよう」って、アフレコ現場で虚淵君に考えてもらったり。シナリオの字が間違ってないかをその場で確認してもらって、声優さんに伝えたりだとか、そういうこともしてもらった。
柏倉氏:
『ブラスレイター』の17話だったと思うんですけど、空中戦をやりながら、アマンダとヘルマンの物語を別でやるじゃないですか。
あのとき板野さんに「立体感ってこういうことだ」と教えてもらったのをよく覚えてます。
板野氏:
ひとつの場面が終わるのを待っていないで、同時進行させるから立体感が出るんですよ。
柏倉氏:
板野さんから絵やモーションについて教えてもらっていることは、お話や演出についても似通っているんですよ。根底に流れている考え方は同じ、みたいなところがあって。
それを応用すれば、いろんな分野に活かせる気がしますね。
板野氏:
だからCGの人でもメインでやる気がある人間は必ず、アフレコかダビングかカッティングか、必ずどっかに見学に来てもらって。
そうした現場だと、ケンカ寸前ぐらいの緊張感もあったりするからね。プロデューサーがアフレコ現場に来て、弁当を食って寝てると、「みんな徹夜でやってるんだよ、この野郎!」って、追い出したり。そういうのも見てもらって(笑)。
柏倉氏:
僕は、それは見ませんでしたよ(笑)。
ハリウッドに勝てる自信があるかどうかはともかく、同じ土俵で戦うことはできる
柏倉氏:
アフレコの現場は『楽園追放』のときにも連れて行ってもらいましたけど、すごく勉強になりましたね。
板野氏:
だから「自分はこの仕事だからここだけでいい」じゃなくてね。他の現場も見て、何をやってるか分からなくても、一生懸命にやっているその情熱、魂を込めているってことは伝わるんだよね。だから見たほうがいい。
柏倉氏:
板野さんのその考えがあるから、グラフィニカでは作画の人たちも撮影の人たちも、部署に関係なく交流していて。
板野氏:
CG部も作画部も同じビルにいて、お互いに聞きに行ったり確認に行ったりできるから。『楽園追放』のときは、それがいちばん良かったよね。
柏倉氏:
ふつうのスタジオではみんな仕事が忙しすぎて、ディレクター以外は他人と顔を合わせたり、コミュニケーションを取ったりしないんですよ。でもグラフィニカでは板野さんが週一ぐらいでゲーム会を開いてくれたり、「飯を一緒に食おう」と声をかけてくれたりして。
板野氏:
「打ち合わせ室が空いてるんだったら、昼の1時間ぐらい、食事する場として開放してくれ」って頼んで。そうすると編集も来るし撮影も来るし、「ここが大変です」「ここがこうなったらいいですね」という意見を、飯を食いながら聞ける。それを聞いてマズイなと思ったことは、制作進行にも伝えるし。
それと「板野さんが『マリオカート』をやろうって待ってます」って伝えてね。ゲームで勝った、負けたと言いながら一緒に飯を食って、その中で意見を聞く。プロデューサーや社長がいる席でミーティングをやって「意見を言え」って言っても、誰も何も言わないでしょ。
「そうじゃなくて現場の意見を拾おうよ」ということで、打ち合わせ室でご飯を食べていいという許可をもらって。それでみんな、おにぎりとかサンドイッチを買ってきたり、カップラーメンを作ったりして食べて、「どうよ?」っていう。
それをやることで、部署を乗り越えて横の関係で、確認しに行ったり意見を聞きに行ったりできるようになったの。
柏倉氏:
あの当時、ゲームはPSPの『機動戦士ガンダム 戦場の絆ポータブル』を、めちゃくちゃやってましたよね。
板野氏:
みんなはコストの高い機体を買うんだけど、自分はザク。安い機体でガンダムをやっつけるのが、すごく気持ちいい(笑)。
柏倉氏:
そこも板野さんの精神が表れている感じがするんですよ。
板野氏:
TVシリーズの精神だね。予算もスケジュールもないけど、いいものを作るっていう。その精神で戦うとザクでも勝てるよって(笑)。
柏倉氏:
板野さんが以前、「ハリウッド作品と戦えるかもしれない」という話をしていて。たしかに同じ映画館で上映して、お客さんは同じお金を払うなかで均等に選ばれているわけだから。
板野氏:
何かのインタビューで「ハリウッドに勝つ自信はありますか?」と聞かれて、「勝つんじゃなくて戦うことはできる」と答えたことがあるね。
同じ映画館で、同じ土俵で戦うことはできると。でも、予算もスケジュールもみんな負けてるんで。CGの『キングコング』とか見せられたら、あんなの勝てない。こっちはゼロ戦で向こうはステルス機か、ってなっちゃう。
──パイロットは勝てる気がしますけど。
板野氏:
パイロットはみんな田舎に帰ったりしていなくなって、ジリ貧になっていくから。
じゃあグラフィニカでいいものを作ろうとなった時に、どれだけいい人材が残っているか。だから薩長連合みたいに、柏倉君のように他の会社に行った人たちと、目標が同じなら二社で協力して作ろうじゃないか、と。
そうやって移った先の会社でグラフィニカと波長が合うものがあって、目標が同じだったら、一緒に作れるんじゃないかというのはあるよね。そういう機会が来たらみんなで連合軍になって、お互いの利点を出し合えるパートを担当して作っていけば、ハリウッドと戦えるものが作れるんじゃないか、という話はしている。
柏倉氏:
「戦える」っていうのは本当にその通りで。僕も、片手で数えられるぐらいのメインスタッフでVRの作品を作っていて。VRのゲームはアメリカの企業が多くて、お金もかかっているんですけど、みんなけっこう似たようなものを作っているんですよ。
これと同じ土俵に上がるには、自分たちの何が勝っていて、何で戦えるんだって考えた時に、それはやっぱり物語やキャラクターなのかなと思って。
それでまずは、自分の武器である刀を捨ててみようと思って。相手が銃を持っているとしたら、それに対抗するのは刀じゃないんだなと。
ふだん使っている武器じゃなくて、いったい何を使えばいいのかを模索するところから始めたんです。そういう考え方の根底にあるのはやっぱり、板野さんの教えですよね。
──柏倉さんは現在、『東京クロノス』や『アルトデウス: BC』で監督という立場になられたわけですが、いざ監督になってみて、『ブラスレイター』の時の板野さんの気持ちが分かるようになりましたか?
板野氏:
そりゃ、なったでしょう(笑)。
柏倉氏:
分かるようにはなる……んですけど、それと同時に「板野さんならこうするだろうな」「板野さんならこういうだろうな」という声が、僕の頭の中で響いていて。
その声に恥じないように生きようと思うんですけど、なかなかそういうふうにはいかないという自覚もたくさんあって。どれぐらいまでいったら板野さんの気持ちになれるのかは、僕にはまったく分からないですね。
それはあくまで僕の心の中の支えとして、基本的な教えとしてあるものなんですけど、その先は、僕が自分でちゃんと考えなきゃいけない問題であって。
自分がやりたいことをしっかり見つめて、こうしたほうがいいんじゃないかと自分で考えて、たとえば「VRならこうだから」みたいな固定観念には縛られないようにしたいとは思います。形は違えど、板野さんの考え方の根っこは受け継いでいるつもりですから。(了)
1980年代に『ガンダム』はもとより『イデオン』『マクロス』『メガゾーン23』といった作品で、ハイスピードに展開される「板野サーカス」に心を躍らせていた、筆者のようなアニメファンは決して少なくないだろう。
だが、1990年代にリリースされたOVAや劇場アニメを経て、2000年代以降のアニメでは、板野一郎氏の後継となる人々による「板野サーカス」を目にすることは多くても、板野氏自身はどういった活動をしていたのか気になっていた人もいるはずだ。今回の取材は、そうした板野氏の「現在」を伝えるものでもある。
手描きのアニメという「伝統技術」にこだわる人々も多いなか、かつてその最先端を切り拓いていた板野氏は、いち早く3DCGに移行したばかりか、自身が表舞台に立つのではなく、後進の若いスタッフを育成することに力を注いでいる。
さらに、ゲームエンジンを利用したTVアニメ制作過程のオートメーション化といった分野にまで関心を広げている板野氏の現在の姿は、アニメやゲームといった日本のカルチャーが今後、産業としてさらに先へと進んでいく上で、ひとつの指針になるものだ。
そんな板野氏の薫陶を受けた柏倉晴樹監督をはじめとする、MyDearestのスタッフたちが今、VRというデジタルメディアの新たなジャンルを切り拓く作品を作っているのだから、非常に興味深い。
そこにあるのは「こうあるべき」という常識の枠に留まることなく、新たな表現を、そして新たな媒体を開拓していくパイオニア精神だ。かつて「板野サーカス」によってアニメや特撮の映像を世界的に変革したその精神が、今度はVRでどのような変革を生むことになるのか、大いに注目していきたい。