そもそも『東方』ってSTGなのになんで音楽文化が発達したの? 人気の音ゲー『Muse Dash』が『東方』とコラボしたので、ビートまりおとモリモリあつしに話を聞いたら濃ゆい東方楽曲アレンジ文化の歴史が出てきた

 ビビッドでポップなアートと横スクロールアクション風の独特なプレイフィールが人気の音ゲー『Muse Dash』が、『東方Project』(以下、『東方』)とのコラボを9月30日から開催すると発表した。

 今回のコラボにおける見どころは、霊夢魔理沙といったおなじみの顔ぶれが登場するだけでなく、『東方』の二次創作アレンジ楽曲が多数収録されていること。ネットで一世を風靡したあの曲やこの曲を音ゲーとして遊べてしまうのだ。

 『東方』コラボについては『東方』作中に登場する「文々。新聞」風のツイートや都内各駅でのデジタルサイネージ掲出など、事前告知の段階でもかなり力が入っており、ファンの反響も大きい

 なぜここまで力が入っているのだろうか? そもそも『東方』ってもとはシューティングゲームなのになぜ音楽や二次創作アレンジが人気なんだろうか?

 そんな疑問を覚えた電ファミ編集部では、『東方』文化と音ゲーに詳しく、『ナイト・オブ・ナイツ』などで知られる東方楽曲アレンジの第一人者・ビートまりお氏、そして同じく東方楽曲アレンジ作者であり、『Muse Dash』に多数の楽曲を提供しているモリモリあつし氏にお話をうかがった。

ビートまりお氏 (「東方と嫁が大好き系VTuber」としての出演となる。)
モリモリあつし氏

 『東方』楽曲アレンジ文化と音ゲー文化はいかに絡み合い、素晴らしいマリアージュとして成長し、ついには海を渡って中国に浸透するまでに至ったのか。

 音ゲーにのめり込んだ地方のゲーセン少年は『東方』と出会い、アレンジ楽曲を作った。もうひとりの少年はその楽曲に感銘を受け『バンブラ』で打ち込みを始め、自らも『東方』アレンジを作るコンポーザーとなった。そこで語られたのは、ひとつの文化へ至る歴史だった。

聞き手・文/葛西祝
編集/実存
取材協力/東方我楽多叢誌編集部

※この記事は『Muse Dash』と『東方』楽曲アレンジ文化の魅力をもっと知ってもらいたい、XD、PeroPeroGamesさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。

■「ZUNさんが『Muse Dash』を楽しんでた」のがコラボのきっかけ?

——モリモリあつしさんは『Muse Dash』にかなりの楽曲を提供されていますよね。あらためまして、どういう経緯で『Muse Dash』に楽曲提供する流れになったんでしょうか。

モリモリあつし氏:
 開発の最初期から、デベロッパーのPeroPero Gamesさんに「こういうゲームを作ってます」とお声がけ頂いたんです。「よければ、あなたの曲を提供してくれませんか?」というお話をいただきました。

 そういう話って、自分は音ゲー界隈で作曲している身としては、依頼としてたまに来るんですよね。特に、『Muse Dash』には当時から「これはすごい音ゲーになるんじゃないか」という雰囲気がありました。

 あまりにもクオリティが高かったから、最初から期待も大きかった感じですね。

——PeroPero Gamesさんはどういった楽曲を欲しがっていましたか。

モリモリあつし氏:
 自分の場合はオリジナルの楽曲でしたね。『Muse Dash』最初期の楽曲メンツも、ガチガチの音ゲーマーが好きなコンポーザーから、ちょっと外れてはいるけど絶対にハマるだろうキャスティングでした。「ちゃんと音ゲー文化を分かっている人のディレクションだな」というのはわかりましたね。

——今『Muse Dash』の収録曲のリストを確認しているんですけど、モリモリあつしさんはコンポーザーとしてはかなり多くの楽曲を提供していますよね。

モリモリあつし氏:
 8曲から10曲くらいの曲を提供しました。じつはこれって、『Muse Dash』の作曲陣のなかではわりと多めなんですよ。

 そのこともあって、「モリモリあつしは『Muse Dash』作ったところと仲がいいのかな」と思われたのかどうかはわかりませんが、企業さんなどから「『Muse Dash』を紹介してほしい」という話がたくさん来るようになったんです。

 そのなかで、「『東方』とPeroPero Gamesさんと繋げられないかな」という話がありました。そこから『東方』と『Muse Dash』のコラボのきっかけになった感じですね。

ビートまりお氏:
 あそこからどうなったんだっけ? ZUNさんと一緒に『Muse Dash』を遊んだときに、すげー楽しそうにしてて「じゃあ『Muse Dash』に『東方』の曲が入んないかな」と思って知り合いに相談したのが最初だった気がします。

モリモリあつし氏:
 PeroPero Gamesもオタクの集まりなので、そういった話は乗り気になるなと思っていました。実際に話しかけてみたら、本当にみんな『東方』大好きで、「ぜひやりたいです!」という話になって、最初はそこから進んだ感じですね。

——今回のコラボの流れって、モリモリあつしさんとPeroPero Gamesさんの繋がりから意外な形でお話が繋がっていったかたちなんですね。

モリモリあつし氏:
 そうなりますね。僕がZUNさんサイドとPeroPero Gamesさんを繋ぐお手伝いをしたかたちです。

——今人気の『Muse Dash』と『東方』のコラボですけど、実際はかなり気軽な感じで決まっていったんですね。

モリモリあつし氏:
 でも実際、スマホの音ゲーで『東方』の楽曲が入ることってめったになかったんですよ。だからこのコラボはけっこう歴史的な一歩に近いというか、音ゲー界隈にずっと携わっている身としてはすごい取り組みだと思いますよ。

ビートまりお氏:
 これまで『東方』の楽曲が入ったのって、主にアーケードの音ゲーだったもんね。

■音ゲーコンポーザーにとっての『Muse Dash』の魅力

——あらためて『Muse Dash』というタイトルの魅力ってなんでしょうか。

モリモリあつし氏:
 『Muse Dash』は音楽ゲームの形として、いわゆる『beatmania』のように縦からノーツ【※】が流れてくるのではなく、横からノーツが流れてくるゲームなんです。

※ノーツ
音ゲーにおいてリズムを合わせてボタンを押すための記号のこと

 音楽ゲームにありがちな複雑な操作がなく、シンプルなのも特徴です。押すボタンは基本的にふたつだけで、すごくとっつきやすいんです。

 そして何よりもヴィジュアルですね。目を引くかわいいポップな絵柄など、音楽ゲームとしてはとっつきやすさが段違いなんです。そうしたキャッチーさが魅力ですね。

——確かにキャラクターデザインや、ドット絵で描かれた2Dアクション風のグラフィックには魅力を感じますね。

モリモリあつし氏:
 いわゆる音楽ゲームって難しくて、コアな音ゲーマー向けのゲームばかりなんですけど、『Muse Dash』は近年では一番、一般層にも広がったタイトルだと思います。 

ビートまりお氏:
 音ゲーってだいたい音ゲー然としたノーツが降ってくるのが多かったじゃないですか。そうじゃなくてこのゲームは「音によってキャラクターが動く」ので、独特なゲームだなー、と思ってやっていました。

 かと思いきや、しっかり音ゲーとしても気持ちよくって。俺、ゲームって爽快感がないとダメなんですよ。

 『Muse Dash』は音に合わせてボタンを押すだけでも、効果音のなるタイミングが「ボン! ボン! ドドドン!」って観ているだけでも気持ちいいゲームなので、すごく印象がよかったですね。

モリモリあつし氏:
 このゲームはアクションゲーム×音楽ゲームっていうコンセプトがあるんですよね。だから右から敵が降ってきて、左の自キャラが敵を倒すみたいな絵面がちゃんとあります。

 ノーツも叩くだけじゃなくて、敵の攻撃を避けるみたいな特殊なモーションがあるので、観ていて楽しいし、爽快感もありますね。

ビートまりお氏:
 向かってくる敵によって自キャラのモーションが変わったりするのも「へぇ~」と思って。音ゲーの可能性を感じたよね。

モリモリあつし氏:
 ああいうのは珍しいですよね。いわゆるリズムゲーではなくて、ちゃんと音ゲーしていて。

——先ほど「PeroPero Gamesさんはめちゃめちゃオタク」との意見がありましたが、実際に日本のオタク文化にものすごく詳しいというのは感じられますか。

モリモリあつし氏:
 (感じ入るように)めちゃくちゃすごいですね……たとえば『Muse Dash』でもパロディが多いし。課金して楽曲を追加する要素があるんですけど、その名前のひとつに「MUSIC快楽天」とか、「かわいいは正義」とかがあって(笑)。

——ワニマガジン社の成人向け漫画雑誌と、漫画「苺ましまろ」のキャッチコピーじゃないですか(笑)!

モリモリあつし氏:
 PeroPero Gamesのみんなはそういうのが本当に好きなんだなと伝わってくる感じですね。

ビートまりお氏:
 あとあれだよ、『Muse Dash』は起動した時のちょっとエッチなの困るよね!?

モリモリあつし氏:
 たまにエッチなんですよね(笑)。

ビートまりお氏:
 たまにエッチなんだよ。(ささやき声で)「ぺろぺろげ~むす」みたいな。やめてやめて~と思いながら(笑)。

モリモリあつし氏:
 あれ電車でやってたら終わりますよね(笑)。

——なんとなく『Muse Dash』のキャラ作りの源流が見えてきた気もします。モリモリあつしさんは実際に彼らと交流してみて、オタク趣味がかなりコアだなと感じたエピソードはありますか。

モリモリあつし氏:
 PeroPero Gamesの皆さんは作曲者を大切にしてくれるんです。
 自分はよく彼らと交流しているんですけど、以前いきなり自分のメールに連絡が来て、「霍青娥(かくせいが)」の抱き枕が送りつけられたことがありましたね(笑)。

——いきなり濃いグッズが来たと(笑)。

モリモリあつし氏:
 グッズとか、折に触れて送ってくれるんですよ。(後ろの棚に手を伸ばして)今日もここに置いているんですけども、『Muse Dash』 グッズをめちゃめちゃ送ってくれるんです。

ビートまりお氏:
 『Muse Dash』専用のコントローラーも送ってもらわなかったっけ?

モリモリあつし氏:
 送ってもらいましたよ。ちょっと待ってください……(別の部屋から取りに行く)

——この専用コントローラー、すごいですね! 『Muse Dash』のアーケード化すら妄想させるクオリティですよ。

■そもそも東方ってシューティングなのに、なんで音楽文化が発達したのか?

——『東方』ってもともと同人シューティングですよね。あらためてなんですが、どうしてシューティングなのにこれだけ東方アレンジ楽曲が一大ジャンルになって、いろんな音ゲーに楽曲が使われるようになっていったんでしょうか。

ビートまりお氏:
 同人音楽というジャンルがコミックマーケット(以下、コミケ)にはあるのですが、そのなかでも二次創作アレンジという文化があります。例えば絵描きさんの場合、推しのキャラをイラストで描くファンアートって文化があるじゃないですか。それと同じように、同人音楽アレンジも好きなゲームのファンアートみたいなものなんですよ。

——なるほど、PixivやTwitterに好きなアニメのキャラのイラストを上げるみたいな。

ビートまりお氏:
 同人音楽は東方が流行るもっと前から存在していまして、例えばLeafやKeyといったエロゲー音楽のアレンジだったり、PCMMOの『ラグナロクオンライン』のBGMアレンジなどで賑わっていたんです。

 自分は2000年くらいからずっと同人音楽をやっていて、Leaf、Key、ラグナロクオンラインなどのアレンジもしていたのですが、2003年ごろからコミケ界隈でも『東方』が盛り上がってきまして、その最初期に自分も『東方』のアレンジ楽曲を作り始めましたね。

 『東方』は弾幕シューティングゲームとしても最高なのですが、それに加えてゲーム内のBGMもめちゃくちゃ良くて、アレンジを作ってみたくてしょうがない、作らずにはいられない作品だったと思います。まさかこんなに長く続くとは思ってなかったんですけど(笑)。

 『東方』の音楽アレンジは一種のファンアートとして広まっていったわけですね。そこからなんで音ゲーに繋がっていったかは、俺もよく覚えてないんですけど……。

モリモリあつし氏:
 たぶん『ミュージックガンガン! 』【※1】に東方アレンジ楽曲が入ったのがきっかけじゃないですかね。

 そういう意味では、一番最初に「東方の曲が音ゲーに入るぞ!」みたいなインパクトが大きかったのは『SOUND VOLTEX』【※2】かもしれないです 。

あのへんから、東方楽曲がいろんな音ゲーに入っていった印象です。

※ミュージックガンガン!
タイトーが開発したアーケードの音楽ゲーム。2009年稼働。ガンコントローラーを使用した操作を特徴としている。2010年のアップデート版である『ミュージックガンガン! 曲がいっぱい☆超増加版!』にて、『東方』のアレンジ楽曲が商業で初めて採用された。

※SOUND VOLTEX
『BEMANI』シリーズの音楽ゲーム。主にネットで活躍する同人音楽系のオリジナル楽曲やリミックスを採用したセレクトが特徴)

——ZUNさんがかつて所属していたタイトーの音ゲーだったからこそ、すんなりと実現したのかもしれませんね。

モリモリあつし氏:
 それはあると思います(笑)。あと、ニコニコ動画の存在も大きいと思っています。

 ニコニコ動画では昔から音楽ゲームの曲を使った音MAD動画の文化がありまして、そこでも東方アレンジ楽曲と音ゲー文化の繋がりが生まれたと思っています。同じネットで盛り上がった者同士、シンパシーがあったというか。

——音ゲーとして東方アレンジ楽曲は、定期的に新曲が出てくるのが大きいとも聞きますね。

モリモリあつし氏:
 あとはやっぱり、まりおさんの存在も大きいと思いますね。昔から音ゲーが好きですし、作る楽曲も音ゲーっぽいところがあります。
 だから、まりおさんの東方アレンジ楽曲は音ゲーに親和性が高いんですよね。『ナイト・オブ・ナイツ』なんか、ほとんどの音ゲーに入ってるじゃんと(笑)。

ビートまりお氏:
 あの頃のニコニコ動画は大きなきっかけですね。同じものにオタクが群がって、みんなで盛り上がってアニメとかゲームを祀り上げるみたいな。
 『ハルヒ』とか『けいおん!』とかあの辺もそうですよね。そんな感じで『東方』の曲もみんな知ってて当たり前になっていったんです。

——往年のニコニコ動画のムーブメントは大きかったんですね。

ビートまりお氏:
 あの頃、『東方』と言ったら「みんなが追ってる作品」だったんですよ。ニコニコ動画があったから追うことが出来たのかもしれません。

 普通はなかなか難しいことなんですけど、アニサマ(Animelo Summer Live)みたいな大きいフェスに同人音楽サークルが出られたり。あの頃はそれくらい『東方』の熱狂はすごかったんだな、と今改めて感じますよ。

 たまたまだとは思いますけど、『ナイト・オブ・ナイツ』がそういうみんなが知ってる東方アレンジ楽曲になれたというのはありがたいですね。

——モリモリあつしさんが作曲を始めたきっかけも『東方』ブームの流れを受けていますよね。

モリモリあつし氏:
 そうですね。僕はNintendo DSの『大合奏!バンドブラザーズDX』(以下、バンブラ)で、東方アレンジ楽曲の作曲を始めていました。

 というのも、当時『東方』の楽曲は音ゲーには入ってなかったんですが、『バンブラ』では自分で打ち込んだ楽曲で音ゲーができたからなんです。
 「自分で東方アレンジ楽曲を打ち込んだら、そのまま東方の音ゲーできるじゃん!」と思って(笑)。

(画像はAmazon | 大合奏バンドブラザーズDX | ゲームソフトより)

——ああ、自分で音符などを置いて作曲したものが、音ゲーとして遊ぶときそのままノーツになるゲームでしたよね。

モリモリあつし氏:
 岡崎体育さんが代表的ですけど、『バンブラ』って当時熱中していた人がいまプロになっているケースが多いんです。任天堂さんはクリエイティブな才能を引き出すのがめちゃめちゃ上手いんですよね。

 さすがに自分みたいに、もともと東方アレンジをやりたくて始めた人は少なかったと思うんですけど(笑)。

 そこで中学1年生ぐらいのときに、自分で初めて打ち込んだのがまりおさんの『最終鬼畜一部声』という曲なんです。

ビートまりお氏:
 思い出した。2003年くらいのときにBMS【※】で自分の東方の曲、途中まで作ったわ。当時、1998年くらいからBMS界隈にいたんですけど、2003年に作った『東方紅茶館「STG-FOP」』というアレンジ曲を、音も譜面も切ってBMSで作ってましたね。

 俺も「『東方』の曲で音ゲーで遊びたい」という気持ちがあったので、懐かしいですね。結局そのBMSは完成までいかなくて、世に出なかったですけど。

※BMS
Be-Music Scriptという音楽フォーマットを利用した、PCで動作するフリーの音楽ゲーム。

モリモリあつし氏:
 (しみじみと)出してほしいなぁ~。

ビートまりお氏:
 あんまり面白くならなくてお蔵入りした(笑)。

——実際に音ゲーでノーツを組んだりするとき、どう面白くするかなど考えていましたか。

ビートまりお氏:
 俺は譜面に対してはうるさいマンですよ(笑)。「譜面をどう面白くするか」というところでずっと勝負してきて、一度は天下取った自負があるんで(笑)。

 音ゲーの曲の良さって、譜面も込みなわけですよ。叩いていて気持ちいい譜面であればあるほど、「この曲って楽しいな」ってみんな思ってもらえる。いい譜面の場合は絶対にみんな楽しいから遊んでくれるし。

 聞くだけでも曲の良さってわかりますけど、やっぱり面白く譜面を叩けた感覚って、「楽しい!」っって感情を強めるじゃないですか。そこって音ゲーの醍醐味でもあると思うんです。「この曲すげえ楽しいじゃん!」が「この曲いいよね」になるんです。

 音「ゲー」というように、やっぱり大事なのはゲーム部分なので、譜面と音楽は直結してるんです。そこをヌルくしないほうがいいですね。

 俺は「自分で曲を作って、自分で譜面も作る」というBMS界隈にずっといたので、何度も何度も自分の曲で気持ちよく遊んでもらうことを大事に考えて譜面を作っていたということもあって、そう思いますね。

■同人音楽の作り手が音ゲーに捧げた青春時代

——おふたりがこれまで遊んできた音ゲーについてうかがってもよろしいですか。

ビートまりお氏:
 俺は1998年の『beatmania 2nd MIX』からですね。ビートまりおの “ビート”は『beatmania』のビートなので。

 当時は高校生だったんですけど、山のうえの学校に通っていて、授業が終わったら山をガーッと下って、30分かけて麓の駅前のゲーセンに行って、『beatmania』と『Dance Dance Revolution』(以下、DDR)ずーっとやるっていう生活でしたね。

 音ゲーの順番待ち時間にシューティングをやったりして、ゲーセン三昧の青春でしたね。東京に出てからは忙しくなっちゃってゲーセンに行く機会は減っちゃったんですけど。

——90年代のその頃って、音ゲー自体がけっこう珍しいジャンルでしたよね。

ビートまりお氏:
 そうですね。今でこそ当たり前になったジャンルですけど、当時は本当に出始めで珍しかったので。田舎だったもんで、特に『DDR』なんか遊ぶだけでも勇気が必要でした(笑)。

モリモリあつし氏:
 音ゲーはそうなんですよね(笑)。

ビートまりお氏:
 逆に言えば、やってると目立てるゲームだったので(笑)。面白かったですね。

——モリモリあつしさんはいかがでしょうか。

モリモリあつし氏:
 自分は小学生の頃に『太鼓の達人』で音ゲーにハマりましたね。アーケードでも家庭用ゲーム機でもめちゃめちゃ遊んでいました。

 『東方』を知ったのも、じつは音ゲーがきっかけで。ネットに『Dancing Onigiri』というFlashの音ゲーがあって、そこに東方アレンジ楽曲がいくつか入っていたんです。

 自分はそこでどぶウサギさんの『メイドと血の懐中時計』のアレンジを知って、そこから『東方』にもハマるようになって、ニコニコ動画でもいろんな音MADやPVを見るようになって。それが小学校5、6年生くらいのときですね。

 高校生の頃には、まりおさんと同じく学校帰りにゲーセンに寄って、『pop’n music』や『beatmaniaIIDX』をやりこむ音ゲー三昧の生活でした。ちょっと遠出して、近所のゲーセンにはなかったコナミさんの音ゲーをやりにいったりもしたり。

——おふたりとも、音ゲーに青春時代を捧げていたんですね(笑)。ところで、音ゲーをやりこもうとするとけっこうお金がかかりますよね。そこはどう工面してましたか?

モリモリあつし氏:
 自分の場合は、毎日のお昼ご飯代500円を切り詰めて頑張ってました。昼食をわけのわからない190円の激安ラーメンにすれば、300円は残るんですよ。「3クレジットできるぞ!」と(笑)。

——いいエピソードですね(笑)。自分も学生時代に似たようなことをしていました。

モリモリあつし氏:
 毎回わけのわからないラーメンだと辛いので、たまにちょっと豪勢な焼肉丼を食べたりして(笑)。それでもやっぱり音ゲーをやりたいから、自由に使えるお金は全部音ゲーにつぎ込んでました。

 それで高校2年か3年生ぐらいのときに、「『SOUND VOLTEX』に東方の曲が入るぞ!」っていう大ニュースが舞い込んできて。
 「あの『ナイト・オブ・ナイツ』や『Grip & Break down !!』が遊べるんだ!」と友人と一緒にめちゃめちゃ盛り上がって。そのときは学校が終わったらダッシュでゲーセンに駆け込みましたね(笑)。

——ビートまりおさんは『SOUND VOLTEX』をはじめ、自分の作品がはじめて音ゲーに起用されたときってどういうお気持ちでしたか。

ビートまりお氏:
 いま当時を思い出そうとGmailの履歴を見てるんですが……(チェックしながら)うーん、残ってなかった……。

モリモリあつし氏:
 たしかまりおさんが第一弾じゃなかった気がします。うろ覚えですけど『チルノのパーフェクトさんすう教室』とかだったような。

ビートまりお氏:
 いつ頃からかはちょっと覚えてないんですけど、ゲーセンの音ゲージャンルで『東方』っていうジャンルが確立された感がありますね。

 たぶんですけど、『東方』はメーカーへのしがらみがないというのも大きかったんじゃないかと思います。
 だからコナミの音ゲーにも入るし、セガの音ゲーにも入るし、タイトーにも、バンナムの『太鼓の達人』にも入ってます。そんな感じで、『ナイト・オブ・ナイツ』は各メーカーを制覇しています(笑)。

——ところで『ナイト・オブ・ナイツ』っていったい何個の音ゲーにも入ってるんですか?

ビートまりお氏:
 いやぁもうわかんないです(笑)。けっこう入ってんじゃないかなあ。『DDR』にも入ったし、『SOUND VOLTEX』に入って……数えんのも大変だな。

モリモリあつし氏:
 途中からわかんなくなるんですよね(笑)。

ビートまりお氏:
 わかんなくなる(笑)。俺もさ、連絡をいただいたら「どうぞどうぞ」って別に許諾を断ったこともないからね。何にどれが入っているのかわかんないんだよ。

——気が付いたらいろんな音ゲーに入っていた感じなんですね。

ビートまりお氏:
 そうですね。だから俺はもともとただの音ゲーキッズだったところからスタートしていて、別に「音ゲーに曲を提供する人になるぞ!」と思ってやってきたわけではなくて。
 ただ自分は東方アレンジが好きだからやっていたら、結果としてゲームセンターに俺の曲が入ることになっただけで。

 俺はずーっと自分の好きなことしかやってこなかったんですけど、「ゲームセンターが最近、勢いがない」みたいな話を聞くなかで、「ビートまりおの曲があるので行ってきた」みたいな話を聞くと、ひとつ恩返しできたんだなと思いますね。

——それこそ、モリモリあつしさんはまりおさんの曲をゲーセンで遊んだ育った世代ですもんね。

ビートまりお氏:
 『太鼓の達人』に『ナイト・オブ・ナイツ』が入ったときは、地元の親戚からも連絡が来ましたね(笑)。『太鼓の達人』のポップには入っている曲の一覧があるんですが、そこに載せてくれていたので。

 『太鼓の達人』はほかの音ゲーと違ってちっちゃい子でも遊びやすいので、「甥っ子や姪っ子がやってたよ」みたいな話を聞きましたね。よく紅白歌合戦に出ると、アーティストの地元が盛り上がるみたいな話があるんですけど、ちょっとそれに似てました(笑)。

——『太鼓の達人』が音ゲー界の大晦日みたいなものだったと(笑)。

ビートまりお氏:
 『太鼓の達人』ってゲーセンだけじゃなくスーパーのちょっとしたゲームコーナーとか、どこにでもあるので。「こういうこともあるんだな~」って思ってましたね。

——余談ですけどモリモリあつしさんもいずれ、『太鼓の達人』に自分の楽曲が入ったらいいな、と考えていることはありますか。

モリモリあつし氏:
 もちろんありますよ。一番最初に触った音ゲーなので思い入れも深いです。こちらとしてはオファーが来るのを待ち構えるしかないですが(笑)。

 「ここでバチッと新規アーティストを呼びたい!」みたいな時が来たら、名前を挙げてくれると嬉しいなと思っています。いつかタイミングが合えば最高なやつを作るので、何卒よろしくお願いします(笑)。

■『Muse Dash』は『東方』の楽曲をどう “解釈”してくれそうか?

——『Muse Dash』と『東方』のコラボ楽曲がいくつか発表されていますが、セレクトについてはどう感じられますか。

モリモリあつし氏:
 すごく手堅い選曲で、めちゃめちゃいいなと思っています。いちファンとしてはやはり手堅く攻めてほしかったので、そこは嬉しいですね。

ビートまりお氏:
 でもEastNewSoundさんの『緋色月下、狂咲ノ絶』が入るのって珍しくない?

モリモリあつし氏:
 いやでも、大ヒット曲ですよ。

ビートまりお氏:
 そうだね、つよつよ曲だね(笑)。でも、音ゲーで入ってるイメージはあんまりなかったから。

モリモリあつし氏:
 いや、だからこそですよ。海外の方から見た「この曲を入れたい」って気持ちがすごく伝わってきて、それがめちゃめちゃいいんです。

——もし今後も『Muse Dash』と『東方』のコラボが続くとしたら、こういう楽曲がきてほしいというのはありますか。

ビートまりお氏:
 俺だったら、モリモリあつしのリミックス版『ナイト・オブ・ナイツ』を入れるな。

モリモリあつし氏:
 僕の『ナイト・オブ・ナイツ』なんですね(笑)。

ビートまりお氏:
 俺はモリモリあつしの曲はやりたいですね。入るでしょ? 話来てるんじゃないの?(笑)

モリモリあつし氏:
 いえ、まだ来てないです(笑)。

 だから今後コラボが続くとしたら、手前味噌で申しわけないんですけど、いままで『Muse Dash』に提供していたコンポーザーによる東方アレンジ楽曲がやってみたいですね。

 そうなると、より文化的な繋がりも増えると思いますし。

 第一弾は『東方』畑でのアンセムとなる手堅い楽曲が揃っているので、そのあたりを期待しています。

——あとはコラボステージでどういう演出があったら嬉しいとかありますか。

ビートまりお氏:
 (間髪入れず)弾幕! 弾幕!

モリモリあつし氏:
 『Muse Dash』って、たまにボス敵が現れて弾を投げてくるみたいな演出があって、ノーツの形が変わったりするんですけど、そこで急にリリー・ホワイトが出てきて、バーッて弾を出してきたりしたらめちゃめちゃ面白いですね。

——そこで『東方』ならではの弾幕シューティングらしさを見せてくれ! と(笑)。

ビートまりお氏:
 ほかには、『Muse Dash』はリズムにあわせてパンチやキックしたりしますけど、そのセクションでリズムに合わせるだけで弾幕を避けるみたいなのがあればいいですね。『Muse Dash』はクオリティの高い演出が多いので、そこは楽しみですね。

——やっぱり「PeroPeroGamesならきっと何とかしてくれる」感がありますか。

ビートまりお氏:
 オタクが求めるものをちゃんとやってくれそう(笑)。

モリモリあつし氏:
 それはありますね。前に『Muse Dash』が『グルーヴコースター』(以下、『グルコス』)とコラボしたときのステージが、『グルコス』感にあふれててめちゃめちゃよかったんです。

 判定画像でも『グルコス』の絵を使ってたりして、世界観をしっかりと持ってきた素晴らしいコラボでした。なので、『東方』のコラボもそんな感じだったらめちゃめちゃ嬉しいなと。

——ところで『東方』って二次創作ごとに、キャラの解釈も少しずつ違ってくるじゃないですか。その点で、PeroPeroGamesさんの『東方』解釈はどうでしょうか。

モリモリあつし氏:
 今の印象を見るだけだと、パッと見るだけでも熱が伝わってくるというか、すごく大切にしてるのがバチバチに伝わってきますね。
 「愛がある」っていうのは本当にいいですよね……(しみじみと)

 ただ曲を入れるだけじゃなくて、「ちゃんと好きなゲームだからこそやろう」としているというのが、ひしひしと伝わってくるんです。ビジネスライクだから入れるという雰囲気がまったく伝わってこないので、すごくいいです。

ビートまりお氏:
 告知の出し方も凝ってますもんね。射命丸文の「文々。新聞」を入手したみたいな載せ方で。やっぱりワクワクを提供することは大事だと思ってます。

——確かにそうですね。

ビートまりお氏:
 PeroPeroGamesさんは中国の開発会社ですよね。中国もいま『東方』が激アツなので、日本とは違った高い熱量は期待できると思います。

モリモリあつし氏:
中国はビリビリ動画が強いから、いまだにニコニコ動画のノリが長く続いていて(笑)。けっこうビリビリ動画の二次創作動画をよく見るんですよ。

 最近だときめぇ丸がきめぇ丸っぽくなった飯綱丸に月餅を渡すみたいな動画があって、中国語のコメントでも、漢字の雰囲気から「こういうこと言ってるんじゃないか?」と思えるようなものや「いま令和やぞ」的なコメントがあったり(笑)。

 たぶん僕らが思うよりもずっと『東方』が好きなんだなというのは感じますね。

——中国の『東方』シーンもすごくコアな文化になっていそうですね。最後に、今回のコラボの見どころというか、プレイしどころを教えてください。

モリモリあつし氏:
 スマホの音楽ゲームで東方アレンジ楽曲をここまで大々的に遊べるゲームは、『グルコス』や『東方ダンマクカグラ』など一部を除いてほとんどなかったので、この機会にぜひプレイしてみてほしいですね。

 『東方』好きな人には『Muse Dash』をやってほしいし、『Muse Dash』好きな人には東方アレンジ楽曲を遊んでもらって『東方』を好きになってほしいです。そんなふうに、好き-好きの関係が生まれたらめちゃめちゃ嬉しいなと思っています!

ビートまりお氏:
 『ナイト・オブ・ナイツ』っていろんな音ゲーに入っているんですけど、この曲を音ゲーの譜面にするのは「大喜利」みたいなところがあるんです。

 誰もが知ってる楽曲だからこそ、「この音ゲーではこう言う譜面で、こういうシステムなんだな」というのをわかりやすく説明する、チュートリアルみたいな立ち位置になってくれたりしたんです。
「このゲームはやったことないけど、『ナイト・オブ・ナイツ』はやってみよう」というような感じで。

 だから『Muse Dash』でも『ナイト・オブ・ナイツ』がどんな譜面が出てきて、どんな叩かせ方をするのかすごく楽しみですし、やったことがない人でも「なるほど、こういう感じなのね」というのがすぐわかると思います。

 知っている曲をやると、「他の音ゲーではこんな叩かせ方だったけど、『Muse Dash』だったらこんな見せ方なのか」みたいに、同じ曲なんだけどゲームによって全然見せ方が違ってくるのがやはり面白かったりするので、それを楽しんでほしいですね。


 『Muse Dash』と『東方』とのコラボについて語るはずが、ビートまりお氏、ならびにモリモリあつし氏からは音ゲー文化や『東方』アレンジ楽曲文化の歴史に関する貴重な証言をいくつも得られるインタビューとなった。

 ゲームセンターからコミケへ、そしてコミケからニコニコ動画へ。地方のゲーセン少年たちがのめり込んだ音ゲー文化と『東方』が混ざりあったムーブメントは、いまや海を超えて中国にまで到達した。

 そして、中国のゲーム会社・PeroPeroGamesがその影響の流れのもとに『Muse Dash』という音ゲーを開発し、日本でも人気を博した結果、そのルーツとコラボするに至ったというわけだ。

 モリモリあつし氏がビートまりお氏の曲を遊び、自らコンポーザーとなったように、ここには非常に好ましい形での文化の継承、そして再生産のサイクルが生まれているように思える。

 今回のインタビューを踏まえつつ、『Muse Dash』と『東方』のコラボに触れてみれば、そこにはきっと音ゲーと『東方』文化が織りなす歴史の息づきを感じられるはずだ。

ライター
ジャンル複合ライティング業者。ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代アートから文学、格闘技といったジャンルを越境するテキストを書き続けている。
Twitter:@EAbase887
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