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“IPコラボ”ってなんなんだ? 『ワンピース フィルムレッド』×「Ado」のコラボは何が凄かったのか? コラボ企画を実践してきたプロと共に、その方程式を徹底議論してみた

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『ONE PIECE FILM RED』と『君の名は。』のアーティストコラボは、いったい何が違うのか

――でもさっきの計算式って、消費型のコラボとしてはこれで十分なんだけど、共創型のコラボだと言うには、まだ係数が足りていない気がするんですよ。

横田氏:
 ミームの話とかはまぁ、共創型の要素として説明がつきそうかなっていう気がしていたんですが、確かにこの計算式そのものがそうかと言われると、「うーん」と思いますよね。

 この計算式の結果として出てくるアウトプットが、そこから独り歩きするかどうかっていうのが一個、あるかなっていう気がするんですよ。

 この掛け算によって生み出されたものが、単体の作品とか、あるいはネタとかミームみたいなものとして、世の中に広がるかどうかっていう話のような気がします。

 ゲームのコラボで言うと、そのゲームをやってる人たちの中だけで消費されたり、あるいは「そのゲームとコラボしている」っていう情報を摂取した人だけが知っている、みたいな話だけで終わったら、たぶん消費型だと思うんですけど。

 それに対して「こういうことをやっている」っていう事象自体だけでも知ってる人がめっちゃいっぱいいる状況を作れたら、それは共創型みたいな感じが若干あるかなって。

佐藤氏:
 「バズっている」というか「広がっている」ということですよね。お互いのファン層以外にも広がってるってことだけでも、すでにひとつの共創になってるじゃんっていう。たしかにそれはあると思います。『シャドバ』×『ちいかわ』コラボなんてある種、それ自体から何か生まれた気もしますし。

横田氏:
 『ONE PIECE FILM RED』もそれだと思うんですよね。実際、僕が映画館に行ったのも、僕の子どもたちが「見たい」と言ったからなんですけど、子どもたちは『ONE PIECE』を読んでもいないし、TVアニメを見てもいないんです。さらにはAdoさんに関しても、子どもたちはそんなに意識して音楽を聴いてはいないんです。

 ところが、それでも子どもたちは「映画に行きたい」ってなって、それで実際に行ったら、『ONE PIECE』にもAdoさんにもどハマりしてるんです。それを見ていて「この掛け算が結果的に、ここまで届くんだ」とは思いましたね。

――計算式としては、掛け算して出たアウトプットに対して、さらに何かの係数がかかっている感じですかね?

横田氏:
 まさにそういう話です。ただ、それを一言で表すのは、めっちゃ難しいですよね。僕が今言った話も、ひとつのパターンでしかないと思うので。

――ちなみに横田さんのお子さんは、何がきっかけで「『FILM RED』を見たい」と思ったんですか?

横田氏:
 それこそTVCMだったり、あとはちょっと地域性の話なんですけど、僕は映画館の近くに住んでいるので、映画館に『FILM RED』のPOPがドーンと出てるじゃないですか。あとはYouTubeとかで、Adoさんがウタとして歌っているMVを見たりとか。

佐藤氏:
 僕はそれがいちばんのキーかなと思っていますけど。「新時代」ってAdoさんじゃなくて、あくまでウタというキャラクターが歌っている形のMVなので。それ自体がもうコンテンツなんだと思うんです。

 しかもそれが、アニメじゃないですか。つまり子どもでも消費できるコンテンツになっている。で、Adoさんが『ONE PIECE』とまったく関係なく「新時代」を作っていたとしたら、横田さんのお子さんもそうはなっていないと思うので。「ウタが歌っている」というのがめちゃくちゃデカいことだと思うんです。映画に直接つながるというか。

――横田さんからお子さんに「これはこういうものだよ」って説明したりは?

横田氏:
 まったくない。

――アニメ映画と楽曲の掛け算で『FILM RED』の前に成功したのって、例えば『君の名は。』のRADWIMPSなどだと思うんですよ。

横田氏:
 でも『FILM RED』はそれとはまったく違う印象なんですよ。『君の名は。』は普通のアーティストコラボとして、マーケティング戦略の一環としてやるよね、というものでしたけど。

――でも、それこそ「世界観の調和」という点では、かなり踏み込んでいたようにも感じましたけど。

佐藤氏:
 あれも素晴らしいコラボレーションではありましたけど。ただ『君の名は。』の時点では、「前前前世」のMV自体はRADWIMPSのMVとして作られていたんです。だから外への広がりという意味では、RADWIMPSはどちらかというとRADWIMPSのファンに向けて消費してしまって、『君の名は。』は『君の名は。』のファンで消費するっていう形になったような気がします。

横田氏:
 この流れで言うと、SEKAI NO OWARIの「Habit」って分かります? かなりヒットした曲ですけど、あれも映画の主題歌なんですよ。

佐藤氏:
 あっ、それは知らなかった。

横田氏:
 CLAMP先生のコミックを実写映画化した『ホリック xxxHolic』の主題歌として書き下ろしているんです。だからアーティストコラボの形としては、『君の名は。』や『ONE PIECE FILM RED』と一緒なんです。でも結果的に、TikTokとかでセカオワのMVが先に大バズりして、曲だけがひとり歩きしたじゃないですか。同じ形のはずなのに、起きている事象というか、結果がぜんぜん違う。

佐藤氏:
 コラボになってない、とも言えますね。セカオワ的にはスゴイけど。

 そのあたりをゲームの文脈で語ると、僕がよく「共創型だ」という事例として挙げていたものは、結局のところインゲームまで踏み込んで、そこでまったく別のコンテンツを生み出しているっていうのが多いんですよ。さっきの米津玄師さん×『フォートナイト』なんて、インゲームでまったく別の物を生み出しているじゃないですか。だから、それはかなり強い共創型のパターンだなと思っていて。

 さっきのAdoさんの話も、ゲームで言えばインゲームの部分にまで踏み込んでいるわけですよ。ウタという新しいキャラクターを作って、彼女の物語に合わせて歌っているわけですから。

 これが共創型の、ひとつの掛け算なんだろうなと思うんです。それによって、僕の言葉で言うとゲームならゲームの「独占コンテンツ」になるので。ウタのすべてを見るには『FILM RED』を見るしかないわけですから。

横田氏:
 それは要素として大きいと思います。

 今回の『FILM RED』って、Adoさんのファンからの目線でも、いわゆるボカロPの分類ではないクリエイターからの楽曲提供だったので。だからその視点でも新しかったですよ。ボカロPじゃない界隈の人たちから曲を集めてきて、しかもその中には秦基博さんとかもいれば、中田ヤスタカさんみたいな重鎮もいるし、VaundyとかFAKE TYPE.みたいな若手もいるっていう。そこの新しさもありましたからね。

「共創型」のコラボは相手のポテンシャルを引き出して、お互いに新たな価値を生み出すことができる

――たとえば『フォートナイト』だと、最近『ドラゴンボール超』とのコラボがネットでバズッたりしてましたけど、あれは感覚的にはそれこそ『パズドラ』のコラボとかに近いのかなと。話題にこそなったけど、結局は消費型でしかないというか。

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(画像はエピックゲームズ公式ニュースより)

佐藤氏:
 そうですね。

――同じ『フォートナイト』でも、『ドラゴンボール超』コラボと米津玄師さんとのコラボの差って、具体的に何が違うんですか?

佐藤氏:
 それがさっきの話に戻るんじゃないですかね。インゲームでやるってことに意味があるわけではなくて、そこでもやっぱり世界観との調和だとか、文脈とかが必要になるってことのうような気もします。……でも米津さんの場合は、そういうことともまた違いますよねぇ。

横田氏:
 米津さんとのコラボは、体験として新しかったというのがありますよね。米津さん以外にもトラヴィス・スコットやアリアナ・グランデ、BTS、後に星野源さんとかもやってるわけですけど。

 いずれにしても、ドンパチするゲームなのにみんなで音楽に合わせて飛び跳ねたりして、その体験はすごく新しかったと思うんです。そこの話題性というか、やっぱり体験そのもののユニークさですよね。

佐藤氏:
 さらに言うと、米津さんのファンも「ライブは見たい」んですよね。それに対して『ドラゴンボール超』とのコラボは、『ドラゴンボール』のファンがどうしてもアレを遊びたいと思うかというと、あんまりそうは思えない。

横田氏:
 だからまさに「『ドラゴンボール』と調和しているのか?」と聞かれると、「んー」っていう話なんじゃないですか。

佐藤氏:
 新しくない、もしくは『ドラゴンボール』ファンが求めている体験ではない、ということなんじゃないかと。

 『ドラゴンボール』のゲームをやりたければ、『フォートナイト』じゃなくて『ドラゴンボールZ KAKAROT』とかをやればいいんであって。でも米津さんの場合はライブなので、米津さん自身のコアバリューにつながっているんですよ。

“IPコラボ”ってなんなんだ? 『ワンピース フィルムレッド』×「Ado」のコラボは何が凄かったのか? コラボ企画を実践してきたプロと共に、その方程式を徹底議論してみた_009

――それで言うと『シャドウバース』×『ちいかわ』コラボも、一発ネタの消費型のようにも見えるんだけど、『フォートナイト』×『ドラゴンボール超』コラボと比較してみると、よりゲームに組み込まれているような気もしますね。

佐藤氏:
 そうなんですよ。バチッとは言えないんですけど、『シャドバ』×『ちいかわ』コラボとか、『雀魂』×にじさんじの企画の場合は、それによって何か新しい価値が、コラボした双方に生まれている気がするんですね。

――あぁ、なるほど。それに対して『フォートナイト』×『ドラゴンボール超』の場合は、『ドラゴンボール』だけが一方的に消費されているだけという感じがしますよね。

佐藤氏:
 そうなんです。『ドラゴンボール』側から見れば、若いユーザに『ドラゴンボール』を知ってもらったり体験してもらえることはあれば、新しい価値は生まれていない。そう言われてみると米津さんのコラボは、『フォートナイト』にも米津さんにも新しい価値が生まれていますよね

 だから共創型で重要なのは、「そのコラボによって新しい何かが生まれる」ってことなんですね。しかもそれは独占コンテンツだっていうのが、大事なポイントで。

横田氏:
 「そこでしか体験できない」とか「そこでしか買えない」とか、そういうことですね。

佐藤氏:
 だからインゲームかどうかというのはあまり大事ではなくて……というか大事なんだけど、べつにそうじゃないケースもあって。いちばん大事なのは、コラボすることによって新しい独占コンテンツみたいなものが、そこでお互いに生まれてくるってことで。

 『フォートナイト』×『ドラゴンボール超』の場合は、『ドラゴンボール』側には何も新しいものが生まれていない。というか、『フォートナイト』側にもべつにないんじゃないかな?

横田氏:
 「ただのスキンじゃん」っていう。だからアレは、お互いにお互いを消費し合っている、典型的な消費型のコラボなんですね。あっ、めちゃくちゃピンと来た。

 『雀魂』とにじさんじの企画も、結果的には新しかったですよね。ゲームの公式番組で外部のタレント、しかもVTuberを使って、さらにプロ雀士もそこに入って毎月番組をやるなんて、それ自体が誰もやっていなかったことでしたし。見る側もそれを面白がれる環境になっていったというのが事実あるし。しかも直近の同接は、今でもどんどん上がっているんですよ、毎月やってるのに。だから、たしかに新しいことなんです。

――そういった「新しい価値を生み出す」という話で言うと、『ポーカーチェイス』×福本伸行作品コラボは、どういうものになるのでしょうか?

横田氏:
 新しさっていうことだとおそらく、声優の話が軸になるのかなと。

 今までにアニメだったりパチンコだったり、福本作品に声がつくもので起用されてきた声優さんとはまったく別の声優さんを、すべてのキャラで起用しているので。それは、さっきの利根川=銀河万丈さんみたいな話で言うと、「僕の勝手な解釈では、いちばん調和しているのはここだよね」っていうエゴみたいなものを、そこにぶつけているところもあって。結果的にそれが、福本作品を知っていればいるほど、体験としては新しくなるだろうなって。

 そういう確信のもとでキャスティングをして、それがいちばん良く伝わりやすい形として、利根川の演説PVを作ったんです。その結果がどうなるかは分からないんですけど、それで説明はつくかなっていう(※取材日は9月7日)。

――ここまでの話で出てきた共創型コラボの条件みたいなものを、さっきの計算式に当てはめていくと。要素としてはミーム力みたいなものなんだけど、これがめちゃくちゃハマったり、結果としてユーザにウケたりといったことも含めて、この要素がある閾値を超えると、ただ消費されるものじゃなくて、何か独立した、自立したものに昇華される。……ということですかね?

横田氏:
 そのイメージだと思います。単純に「新しい」だけでは説明しきれないし。

――たとえば『FILM RED』で主題歌がグローバルチャートの1位を獲ったという話は、歌っているAdoさん自身がもともと持っていた知名度なんて、もはや関係ないレベルじゃないですか。それよりはもっと本質的に、『ONE PIECE』の知名度とAdoさんのポテンシャルが掛け合わされたことで爆発したというか。

 だから表面上の要素が掛け合わされたというよりは、Adoさんの“潜在能力が引き出されていってる感じ”ですよね。

横田氏:
 それでめちゃくちゃ説明がつくんですけど、「潜在能力」と言っちゃっていいのかというのはありますね。Adoさんの場合、もともと顕在化していたものなので。

佐藤氏:
 とはいえ『ONE PIECE』によって、Adoさんの新しい魅力は引き出されましたよね。もともと持っていたものとはいえ。

 「共創」といっても、まったく新しいものを生み出しているわけではないと思うんです。お互いに持っているもの、まさにポテンシャルみたいなものが引き出された結果だと思うので。それはAdoさんだけじゃなくて、にじさんじとかもそうでしょうし。

横田氏:
 だからたぶん言葉のニュアンスとして、「潜在能力」だとすごく一義的になっちゃうので、それよりは「ポテンシャル」って言い方のほうがしっくりきますよね。発展性みたいなものも含めて。

「共創型」IPコラボでお互いのポテンシャルを引き出すためには、「体験性」が重要になる

――あとは共創が生まれる閾値というか、一定条件とは何か、ですよね。普通のコラボで終わってしまうものと、新しい価値や体験を生むところまでいくものは、いったいどこで分かれるのかっていう。

横田氏:
 この「一定条件」自体が新しさなんじゃないか、っていう感じもしますけどね。そのまま「新しさ」でもいいし、言い方によっては「意外性」って言葉もハマるだろうし。「体験価値」みたいなこともそうだと思うんですよね。

 『ポーカーチェイス』×福本作品コラボも、結果としてどうなるかはまだ分からないですけど、この「新しさ」「意外性」「体験価値」は意識していました。そうじゃないと話題にもならんだろうと。

――体験価値の「濃さ」みたいなものを考えてみると。ただ「Twitterでバズりました」というだけでは、話題性はあるけど体験価値を伴ってはいないですよね。それに対して『フォートナイト』×米津玄師さんのコラボでは話題性に加えて、それに実際に行った人の体験談みたいな、「体験価値」が別途あると。

 要は、うわべとしての消費価値ではないところにまで到達できているかどうかですよね。

佐藤氏:
 それは大きそうですね。しかもそこが、お互いのポテンシャルが引き出されている体験になっているかどうか、だと思うんです。

 『シャドバ』×『ちいかわ』コラボも、一発ネタのように見えるけれども、『ちいかわ』をゲームの中にちゃんと取り込もうとしていますよね。少なくとも、ちいかわがゲームの中に来たとしてもおかしくないようにしよう、という配慮はすごくしていたと思うんです。そこに体験性がある気がしていて。

 だから体験性がすごく重要だと思うんですよね。Adoさんだって、音楽を聴くだけでも体験なので。

――『FILM RED』は、劇場のスクリーンにキャラとして出てきて、物語込みで歌を聴くというのが、体験性を圧倒的に深めているでしょうね。

佐藤氏:
 逆に言うと、それがなくて単なる主題歌だったら、こんな大ヒットにまではなっていないはずなんです。

――『君の名は。』パターンですね。いやまぁ、『君の名は。』もアニメ主題歌としては、ものすごい成功事例なんですけど。

佐藤氏:
 『君の名は。』は「前前前世」を挿入歌として使ったというのが、発明だったと思うんです。

 『ボヘミアン・ラプソディ』もある意味、映画とクイーンのコラボだと思うんですけど。あれも映画館でライブ体験ができるので、体験価値が高かったですよね。

 でも『FILM RED』でキャラとして登場させるというのは、今までにありそうでなかったなと。

横田氏:
 『FILM RED』の落とし込みってある種、これまでに『マクロス』シリーズがさんざんやってきたことではあるんです。結果として音楽の人気が出るというのも、『マクロス』でも起こった現象なので。ただ『FILM RED』は結果が前代未聞でしたし、体験価値としてもまったく別かなと思いますね。

佐藤氏:
 キャラクターとアーティスト、キャラクターと声優がコラボしているという意味では、『ラブライブ!』とかとも近いのかもしれないですね。あれもリアルライブという新しい体験に昇華できたことが、大きな成功要因だったので。

横田氏:
 『マクロス』と『FILM RED』の違いって、僕の主観が多分に入るんですけど、『マクロス』の場合は作品世界の中で歌われている劇中歌、劇中アーティストであって、あくまで作品のための歌じゃないですか。キャラクターがその世界観の中で、本当に歌っている歌を作ってるっていう。

 『FILM RED』も同じ作り方のはずなんだけど、大きく違うのは、普通に音楽だけを聴いた時にもポップスとして成立しているんですよね。楽曲の印象であったりとか、歌われている内容だったりとかが、単体のポップスとして成立していて。それぞれのクリエイターの作家性とか、色とかもめちゃめちゃ出ていて。

 にもかかわらず、映画で見た時に「ここの歌詞とこのシーンがめっちゃ調和している!」みたいなことが起きているので。僕がさっき「制作工程がわからん」って言ったのは、そういうことなんです。作品に合わせてガチガチに作っていたら、そういうふうに作れるのは分かるんだけど、実際の仕上がりを見るとそれだけで作った感じがしないっていう。しっかりと作家さんのエゴも垣間見えるというか。そこが『マクロス』シリーズにおける劇中歌とは大きく違うなと思いますね。

佐藤氏:
 今聞いてすごく思ったのは、『マクロス』はコラボじゃないんだと。『マクロス』という大きな作品の内側で音楽も作っている。それに対して『FILM RED』は、『ONE PIECE』とAdoさんというお互いに大きなもの同士が対等に向き合って、コラボして作っているということなんですね。

――ではここまでの話を総合して、最後にIPコラボの計算式をまとめておきましょうか。

■IPコラボのポテンシャル計算式
作品の知名度 × 世界観との調和(or 意外性) × 文脈(or 意外性) × 自分の知識/熱 × ユニーク係数(ミーム力)
 × さらに一定条件(新しさ、意外性、体験価値)を満たした時に、新しい魅力&ポテンシャルが引き出される

――それでは最後に横田さんから、今日のお話を踏まえた上での、IPコラボとの向き合い方を聞かせてもらえばと思います。

横田氏:
 ゲームがIPとコラボするっていう話だと結局、ゲーム側がIPとどう向き合うかということにフォーカスしたほうがいいかなと思っていて。もちろん「互いに愛を持って」みたいなことが理想ではあるけれども、現実問題としてはやっぱり、ゲーム会社の側から「そちらのIPを使わせてください」とお願いする形が圧倒的に多いですから。

 その上でゲーム側としては、今日の話で計算式の形にまとまったような考え方に基づいて、クオリティのコントロールをしっかり考えていくべきだと思います。

 そういう意味で言うと雑なコラボって、とにかく無駄な消費を増やすことになるので。しかもゲームだけじゃなくて、コラボしたIP自体もある種、ムダに消費されてしまうので。だったらむしろやらないほうがいいし、やるならちゃんとやろうよ、ということで。(了)

“IPコラボ”ってなんなんだ? 『ワンピース フィルムレッド』×「Ado」のコラボは何が凄かったのか? コラボ企画を実践してきたプロと共に、その方程式を徹底議論してみた_010

 ここで語られている「雑なコラボ」「丁寧なコラボ」の違いは、我々受け手の側でも勘のいい人や、その作品の熱心なファンの人であれば、なんとなく感じていたことではないだろうか。ただ、それをここまで明瞭に分類・分析して、その背景に至るまで言語化できたのは、実際にIPコラボを手がけているマーケティングの専門家であるお2人の力に依るところが大きい。

 「雑なコラボ」は双方が知名度を消費し合って、逆に足を引っ張り合うことにもなりかねない。だがその一方で「共創型」のコラボとなって、お互いに新たな価値を生み出すことができれば、まさに『ONE PIECE FILM RED』の例のように、コラボした双方を大きく飛躍させる起爆剤ともなり得る。

 我々ファンとしても、自分の好きな作品がそうした素晴らしいコラボに巡り会うのを期待したいところだ。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
ライター
過去には『電撃王』『電撃姫』『電撃オンライン』などで、クリエイターインタビューや業界分析記事を担当。また、アニメに関する著作も。現在は電ファミニコゲーマーで企画記事を執筆中。
Twitter:@ito_seinosuke

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