「名越スタジオ」にはどんな人材が集まっている? 制作中のゲームの内容は? 『龍が如く』新作の発表は100点満点で200点? 名越稔洋氏が語るスタジオのいまと未来

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 『龍が如く』を手がけた名越稔洋氏が自らのスタジオを立ち上げた──そんなニュースがゲーム業界を騒がせたのは、まだ記憶に新しい2022年1月のこと。

 一時はセガの取締役COOを務め、同社をけん引した日本ゲーム界のレジェンドは、自らが代表取締役を担う「名越スタジオ」でどんなゲームを作っているのか? 中国のNetEase Gamesの100%出資からなるスタジオということもあり、国内のゲーマーの間ではさまざまな反応や憶測が飛び交っていた。

 今回電ファミでは東京ゲームショウ2022(以下、TGS2022)の開催にあわせた9月16日に、名越スタジオと共同でTwiitterスペースを実施するという初めての試みを実現。名越稔洋氏ご本人に参加していただき、名越スタジオの現状や、現在制作している作品について、直接お尋ねするという非常に貴重な機会をいただくことができた。名越スタジオの皆様、名越さん、本当にありがとうございました。

 というわけで、その模様をインタビュー形式に近いテイストで記事としてまとめたものが以下となる。実際のスペース上では、なかば雑談のような雰囲気で緩く進んだ部分もあったため、一部内容をテキストに適した形に整えてあることはご理解いただきたい。

 NetEase Gamesとの関係目下制作中のタイトルTGS2022で行われた『龍が如く』の新作発表について……といった気になるポイントはもちろん、名越稔洋氏のクリエイティブに関する考え方まで語っていただいた非常に貴重な記録となっている。ぜひ一読していただければ幸いだ。

聞き手/TAITAI
文/久田晴
編集/実存


名越スタジオの現状と、パートナーとして見るNetEase Games

──まずさっそくですが「名越スタジオ」を立ち上げられてからの約1年を振り返って、率直なご感想をお聞きできればと思います。

名越稔洋氏(以下、名越氏):
 2021年11月にスタジオを立ち上げ、当初は3人でスタートしたんですよ。その後、いまの公式サイトに載っている9人のメンバーがそろったのが今年の2月ごろになります。現在はそこからさらに増えて人数は30名ほどになっていて、割といいペースでリクルーティングも進んでいます。全国各地の、皆さんもご存じのような著名なゲームメーカーに所属経験のある方々を採用させていただいている、という感じです。

──なるほど。日本人の方だけではなく、海外の方も含めて集まっているということでしょうか?

名越氏:
 そうですね。中国資本ということで勘ぐられることもあるかと思うのですが、中国の方もいればまた別の国の方もいらっしゃいます。そういう意味では多国籍軍的なスタジオになっていますね(笑)。

──ちょうど「中国資本」というワードが出たところでお聞きしたいのですが、出資元であるNetEase Gamesとの関係はどのようなものなのでしょうか。

名越氏:
 話し合いを始めた当初は「どうかなぁ」と思った面もあったんですけど、いまでは「これで安心して仕事ができるな」というのが正直な感想です。結果的には私の取り越し苦労もふくめて「なんだ、すごく良い会社じゃん」という感じです。魅力を感じたからこそグループ入りしたんですが、むしろ入社後に知った魅力やメリットの方が多かったんです。「何で早く言わなかったんだろう?」って不思議に思ったくらいです。

──お話を聞いていて、パートナーを選んでいく中では紆余曲折あったと思うのですが、「NetEase Gamesといっしょにやろう」と決め手になったのは?

名越氏:
 彼らは基本的にはスマートフォンやPCの市場を主軸としています。その中で、「家庭用ゲーム機でももっとブランド力を上げていきたい」という彼らの狙いに「名越スタジオ」がハマることができた、という感じです。

 加えて、今回の東京ゲームショウ2022でも中国や韓国のブースが成長してきているな、と感じられた方も多いと思います。とはいえ、まだブランドでいうとごく一部に限られているのが現状なわけです。

 その中でブランド力を上げていきたい彼らと、今後もっと大きなトライをしたい私たち、まだまだ結果は出ていませんが、最終的にはWin-Winになれる関係をつくりましょう、というところで一番共感できたのが大きかったと思いますね。

──なるほど。僕たちもNetEase Gamesとやり取りはあるのですが、その関わりの中では、ある種のラフさや若さのようなものを感じます。そういった点を名越さんはどのように受けとめられましたか?

名越氏:
 そうですね。まず「トップや経営幹部がとても若い」というのはひとつ大きな意味を持つと思います。そして彼らは皆ゲームが何よりも好きで現役で遊んでいるということ。もちろんビジネスですから利益の計算はしますが、それ以上に、「こういうゲームを作りたい」といった議論を本当に大切にしていますね。あと、やはり何をするにもスピードは速いですね。

──スピードというと?

名越氏:
 たとえば「名越さん、最近どう? 困ったことはない?」という相談の中で、「日本ではこういうルールでやるともっとスムーズにいくよ」と伝えると、次の日にはもうそれが適用されている。

 これが日本の一般的な企業であれば、まずプレゼンの資料を作って、プレゼンを行って、会議を通して……みたいなプロセスが必要になるじゃないですか。そこのスピード感が、やっぱり全然違いますね。

──そういった部分にも「若さ」を感じると。

名越氏:
 若い世代が莫大な資金を、スピード感をもって動かす。これは日本の企業がまだまだできていない面だと思います。

 その一方で、「オリジナリティの高いゲーム作り」という部分では、まだ開拓する余地が残っていると感じますね。中国発のゲームが、家庭用ゲーム機の市場でちゃんと花開いているとはまだまだ言えないわけですから。その中で私たちがひと役買えるようなことがあれば、お互いに得るものはあるのかなと考えています。

──マーケティング的な意味ではどうなのでしょうか。日本のゲームファンからしてみれば、いわゆる「中国向け」「海外向け」のゲームになってしまうのではないか、という不安もあるかと思います。

名越氏:
 私からすれば、「自分のゲームを中国本土でたくさん売ろう」というビジョンはありません。NetEase Gamesとしても内需の拡大よりもグローバル展開にフォーカスしていますし。

 そのため、彼らも「アジア、そして欧米で売れるものを作ってくれれば何も問題ない」という姿勢を見せてくれています。もちろん中国内にも買っていただける方はいると思うんですが、極端な話をすれば私たちが狙うマーケットはセガにいた時代と何も変わりません。

「名越スタジオ」にはどんな人材が集まっている? 制作中のゲームの内容は? 『龍が如く』新作の発表は100点満点で200点? 名越稔洋氏が語るスタジオのいまと未来_001

『龍が如く』ではできなかった、ビジョンメイクに時間をかけるものづくりをしたい

──スタジオ立ち上げ以前は「ゲームクリエイター」としての名越さんの印象が強いですが、いまでは代表取締役を務めていらっしゃいますよね。クリエイターであると同時に経営者としても動かれていると思うんですが、このあたりはいかがでしょうか。

名越氏:
 確かに経営の権限は私が持っているんですけど、たとえば経理的な業務だとかはNetEase Games側にお願いしているので、そんなにわずらわしく思うことはないですね。1日の中で90パーセント以上はゲーム作りにあてることができています

 いまはプロデューサー兼ディレクター、その中間みたいな立ち位置で動いていて、久しぶりにどっぷりシナリオを書いたりもしています。そのうえでゲームシステムとの折り合いをつけて、シナリオを直して、またプランナーと仕様を相談して……という流れで進めている感じです。

 初めて『龍が如く』を立ち上げたときは、「アクションをする」、「アドベンチャー部分で遊ぶ」、「ムービーを見る」といったあらゆる要素に対して非常に細かくこだわっていたんです。それに近い感覚を久しぶりに味わわせてもらっているな、というところです。

 世の中の人からすると「『龍が如く』の人が作るんだったら、それに近いものになるんでしょう」みたいな面はあると思うんですね。それは期待でもあり、ある意味では見透かされている部分でもある。自分のことを俯瞰してみるとそう思います。ただまあそれでも、やっぱり“ちょっと違う”ことをやりたいなとは思ってしまいますね(笑)。

──ちょうど新作タイトルの話になったので、あらためてどんなゲームを作っているのか、というところをお聞かせください。

名越氏:
 『龍が如く』を制作する中でドラマ性の高いゲームを作ることの楽しさ、喜びといったものをすごく感じたので、これからもそういった部分にこだわりたいという思いはあります。でも、こういうこと言うとジャンルはある程度想像がついてしまうのかな(笑)。

 私自身は『龍が如く』って、セミオープンワールドでストーリードリヴン的な作品だと捉えています。言い換えればマップはある程度の広さがあって自由に歩けるけれど、基本的にはドラマを楽しむことが最優先である作りだということです。そしてその優先順位がしっかり定められていることが、ドラマとしてのメッセージも伝えやすいことにつながっている。とはいえその作り自体を好むプレイヤーもいる一方で、少し窮屈に感じているプレイヤーもいるのも事実です。

 そのうえで、今回我々が狙うのは、まずゲームとして『龍が如く』以上の自由度を担保することを優先して考えること。そして同時に「人間ドラマをしっかり描きたい」という目標を叶えることです。
 ただ勘違いしてほしくないのはストーリーの優先順位を下げるという意味ではないんです。実現したいのは優れたレベルデザインの中で楽しく遊ぶことと、ドラマを楽しむことの意識を分断させないことであり、そのためにはあえてこの優先順位が大事になると考えたわけです。

 いまお伝えしたことを聞いても「わかんねーよ!」って言われるかもしれませんが、これでも大サービスの回答だと思ってもらえれば(笑)。

──(笑)。「人間ドラマを描きたい」と仰っているところなんですが、これまでも『龍が如く』で濃厚な物語をいろいろと手がけられてきたと思います。それでもなお「やりたい」というのは、まだ描き足りない、描きたいものがある、ということなんでしょうか。

名越氏:
 たくさんあります。『龍が如く』では外伝作をふくめて10作以上に携わってきたわけですが、その中では間違いなく10作品分以上のアイデアがあったわけですよ。ですので、まだまだ「こういうことがやりたかったな」という、くすぶった思いみたいなものが残っていて。

 あとシリーズの中でも好評をいただいた『龍が如く0 誓いの場所』には思い出があって、私の中ではあれほどシンプルかつストレートに作れた作品はありませんでした。シナリオが出来上がる前に基本設定、ラスト、その後の読後感みたいな部分までの輪郭がしっかり見えていて、最後まで私自身、そこに迷いはほとんどありませんでした。完成後、シナリオを描き上げてくれた古田(古田剛志氏)と話したときも「良い感じで作品が生まれるときって、得てしてこういう感じなんだよね」って、不思議な振り返りをした記憶もあります。

 そうやって、もっともスムーズに作れた作品の評価が高かったというのは、いまでも不思議な気がするんですよね。だって、どんなゲームであれ作り上げるのは大変なことです。年中、慌ただしく、そして自問自答を繰り返しつつチームをまとめていくわけですから。とはいえそれこそがクリエイティブという仕事なんだと思っていました。でも『龍が如く0』の経験は、雑念を取り払う大切さみたいなものを改めて教えてくれたんです。じゃあ“クリエイティブの妙”と言うべき悟りが開けたのか? と聞かれれば、まだまだですけどね。

 あとは今回、せっかく新しいものを作れるチャンスを手にした以上、まずビジョンメイクにきちんと時間をかけたいと考えています。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、ある程度のテンポで発売する必要があった『龍が如く』に関わってき続けた自分にとっては、半ばあきらめかけていたことをやってみたい! という強い想いがあるんです。

「名越スタジオ」にはどんな人材が集まっている? 制作中のゲームの内容は? 『龍が如く』新作の発表は100点満点で200点? 名越稔洋氏が語るスタジオのいまと未来_002
(画像は『龍が如く0 誓いの場所』公式サイトより)

──なるほど。そこで、名越さんの仰る「新しいもの」を作る際の「企画の立て方」みたいなところをお聞きかせください。たとえば『龍が如く』であれば、それ以前にいわゆる「ヤクザもの」で大成功したゲームはなかったわけで、そこがひとつ革新的な着眼点の作品だったと思うのですが。

名越氏:
 まず最初はゲームのプロットというか、簡単な設定と「こういうことが起きて、こんな部分がゲームとして遊べて」みたいなものを明確にします。そしてその時点で、最終的にお客さんが手に取りたくなるためのフックになる部分が存在しているかどうかをプランナーたちと相談します。少し変わっているとすれば、かなり早い段階で買ってもらえる動機の有無にこだわることでしょうか。

 そして「それはどうなんだろう?」とか「ここはこう変えましょう」とか、いろいろな気づきが生まれてくるわけです。それで一回差し戻して、私がまた考え直して、という「答え合わせ」の手続きを何度も行う流れになります。

──現在制作中のゲームについて、具体的な開発環境についてもお聞きしてよろしいでしょうか。

名越氏:
 現在は「Unreal Engine 5」を使って製作しています。というのも、『The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience』【※】のアセットが公開されて話題になりましたが、あれを見たときは結構呆然としてしまって。これは「半端ないな」と。

 でも、ちゃんと理解してワークフローの中にしっかり取り込んでこそ「ハイエンドを作るゲームチームです」って胸を張って言えるわけですから、その瞬間から各自が勉強しなおして、このシステムに適応するチームになるしかない。と、頭を切り替えました。

※『マトリックス』をベースとした「Unreal Engine 5」の技術デモ。現在はデモ本編は非公開となっており、アセットのみが公開中

 とはいえ、自社エンジンを否定はしているわけではありません。自由にカスタマイズできたり、ライセンス料の必要がなかったりというメリットもありますから。ただ現在はもうすでに「Unreal Engine」で作られたデータがメディアを超えて共用化される時代に入ってきているわけです。そういったことを踏まえて、いまはこれを使ってどうするんだ、と試行錯誤をしている段階にあります。

──名越さんは大学時代に映画学科を専攻されていましたよね。ゲーム表現の未来を感じてセガに入社されたという経緯だったと思うのですが、そのときの感覚が蘇ってきたようなイメージなんでしょうか。

名越氏:
 近いかもしれないですね。現代って「リアリティ」から「リアル」に移り替わりつつある時代だと思っていて、それはもうステップアップというよりは違う次元の階段をのぼるのに近いと感じているんです。

 そうなると、Unreal Engine 5の登場は「2Dから3Dに変わった」のと同じくらいのインパクトがあると言ってもいいかもしれません。

もっともっとクリエイターが“長生き”するために「10年若い仕事」をする

──さきほどスタッフは現状およそ30人程度とお話されていましたが、今後どの程度の規模まで広げていくのでしょうか?

名越氏:
 当初は5~60人程度を考えていましたが、やっぱり優秀な人はいつでもウェルカムですし、正直に言ってあまり明確な人数制限は考えていないですね。ただ、風通しが良い状態で作りたい、というのはずっとこだわりたいので3ケタのスケールのスタジオってイメージはいまのところはありません。ちなみに設立時はセガ出身者が多かったのですが、あっという間に少数派になりました(笑)

 メンバーとしては家庭用ゲーム機向けの作品で動いてきた方が中心になっています。まあ、いまやスマートフォンでもコンソール向けのエンジンが動く時代ですから、あんまりそこの差はないかと思います。

──なるほど。少し抽象的な質問になってしまうかもしれないんですが、名越スタジオに来られる方々は、どんなものを期待して集まってくるのでしょうか。

名越氏:
 皆さん一様に「新しいことがしたい」って言いますね。それだけだとすごく当たり前のように聞こえるかもしれないですが、実際に現実の職場だと「新しいものにチャレンジする」ってなかなか難しい時代なんですよ。

 私からすれば、逆にそれがメインのモチベーションで入社していいの? と思う時もあるんですが、「新しいことができる!」ということに、純粋にときめいて入社を希望する方が本当に多いのが事実なんです。

──なんというか、微妙なところですね。良い話でもある反面……

名越氏:
 そうですね。「新しいことがしたい」というのは「既存のゲーム会社ではできない」ということの裏返しでもあるわけです。その背景にはやはり既存のシリーズが多い。というのもあるとは思うんですが、特定のファンを長きにわたって喜ばせ続けることもまた立派なサービスではありますよね。ただ、ゲーム産業は景気が良い業種だと言われる割には、新規で投入される作品が減っていることも事実だと思うので、バランスが難しいところです。

──そういった中で名越さん自身は、自分のスタジオの価値を作っていくプロセスをどのようにお考えなのでしょうか?

名越氏:
 私は、クリエイティブのセンスという部分では、日本人は高いものがあると信じているんです。ゲームって最初は子どものおもちゃとして始まって、大人に広がっていって、そしてハードウェアの進化やマーケティングの開拓によってさらに広がっていったわけじゃないですか。そしてそういった歴史を振り返ってみると、起点は日本にあったわけです。つまり「作る」ことに対する日本人の情熱やセンスは、やはり半端じゃない

 であれば、せっかく高いセンスを持っているんだから、「クリエイターとしてもっと長生きしても良いはずだ」と思っているんですよ。それを踏まえて私はスタッフに「10年若い仕事をしようよ」って伝えています。30代だったら20代の、50代だったら40代の仕事をしよう。そうすれば、60歳になっても50代の仕事ができて、まだまだ食っていける。要するに自分次第なんだと。

 一般的な社会人が60歳をゴールにしているのに対して、私は大いに不満を持っています。「そんなこと気にする時代じゃねえだろ?」と。能力やスキルがあって、自分を磨くことにモチベーションを持ち続けられるなら、もっともっと長生きできる仕組みや環境を作っていきたい。もちろん市場は甘くはありませんし、いつかは限界が来ます。だからといってクリエイターが自ら社会が定めたルールにハマりに行く必要なんてない。もっともがいて全力を尽くそうよ。そういうスタンスです。

──なるほど。たしかに名越さんは以前からゲーム業界人たちの定年退職というか、そういった時期が近づいてくることを気にされていましたよね。

名越氏:
 ここで勘違いしてほしくないのが、単にベテランにやさしい組織を作りたいわけではないんです。下を育てることも大事ですからね。でもキャリアを長く続けさせる方法論の構築は若い人にとってもいつかはその恩恵はつながるんです。そしてその理解が深まれば、ゲーム制作という仕事は若いうちにしかできないものだという価値観も変わっていくと思うんです。

 そのために私は面接の際、その人のスキルはもちろん見るんですが、「どのくらい苦い思いをしてきたのか」という部分を大事にしています。組織の中で一緒に働くとき、喜びだけではなく、悔しさや悲しさも共感しあえる、本音で話せるメンバーが欲しいと思っているんです。

 そういう人たちと共に頑張っていければ、長生きできる組織の意義を若手にも理解してもらいながら作り上げられると思っているんです。

──NetEase Gamesといえば、Quantic Dream【※】がグループに参入する発表もありました。グループのスタジオどうしで交流のようなものはあるんでしょうか?

※フランスに拠点をおくゲーム制作会社。『Detroit: Become Human』や『Beyond: Two Souls』、『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』などの作品で知られる。

名越氏:
 あれは個人的にはちょっとうれしいニュースでした。ただ、グループ内の交流もコロナ禍の影響があって、どーんと集まる、というのは難しいですね。ちょっと身内で飲みに行ったりとか、「そっちはどうよ」という話をしたりってレベルです。

 ただ、会社を立ち上げて、ビルを借りて、みたいなところをやっていくうえでの情報交換はやっています。「アンペア数が足りなくて工事しなくちゃいけない」だとか、「その工期がどのくらいになるのか」とか、そういった現実問題に向き合う上では欠かせないポイントでしたね。ゲーム会社ってとにかく電源を食うので(笑)。

「名越スタジオ」にはどんな人材が集まっている? 制作中のゲームの内容は? 『龍が如く』新作の発表は100点満点で200点? 名越稔洋氏が語るスタジオのいまと未来_003
(画像はSteam『デトロイト ビカム ヒューマン』ストアページより)

──スタジオどうしの横のつながりというのはどの程度密接なものなのでしょうか? 技術的な問題を相談し合うこともあるのでしょうか。

名越氏:
 いまのところは求められればお互い助け合う。という感じです。そもそも互いに目指しているゲームが異なるので、どうしても使うツールやワークフローが変わってくるんですよ。なので、無理に共有しても窮屈な思いをするだけになってしまうリスクもあると思います。グループ内であえてフォーマットも共有しないし、会社のルールさえも違っていていい。それは主語が作品とクリエイターにあり、仕事の全てはクリエイターが良いゲームを作るために自ら判断すればいい。というNetEaseからのメッセージでもあります。非常に合理的だと感じます。

 一方で、NetEase Games自体は中国本土に巨大なデザインセンターみたいなものを持っていて、アーティストの方も数えきれないほど存在していて、打ち合わせもしましたが実力も申し分ない。なので、そういったところのアウトソーシングは積極的に受けていきたいと考えています。共用化の押しつけはないけど、頼ろうと思えば強力なアウトソーシングも可能だという環境は魅力的ですね。

──そういったグループでリソースを共用するような仕組みって、日本のゲーム会社ではどの程度できているものなんでしょう? いまのNetEase Gamesの話を聞いて、素直に「すごいな」と思ってしまったんですが。

名越氏:
 まずグループトップの方針ってのはあると思うんですよね。「共用化しなさい」とするのか、「自分たちで思い通りの開発環境を作って進めなさい」とするのか。どちらにもメリットはあります。共用化の最大の魅力はノウハウの継続、そしてコストの抑制です。でもオリジナルタイトルの創出を軸に考えるとすれば、後者の選択もあり得ると思います。それぞれの会社がビジョンや企画をもって、それに適した開発環境やワークフローを構築していくのがベストであり、一概に正解がどらかとは言い切れません。

 でもせっかくグループである以上は、声をかけあって情報交換を行ってしかるべき。たとえば「Unreal Engine」にしても、先に触れているスタジオから「こういう便利な機能があるんだよ」と教えてもらうようなことはあります。これは既存の大手メーカーでも似たような感じだとは思います。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。
編集
ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a
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