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すべては圧倒的な没入感のために。巨大な「機械獣」の風圧に、弓の弦から伝わる抵抗──「PSVR2」で描かれる『Horizon』の世界に込められたこだわりを聞いてみた

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 2月22日(水)の発売が迫る「PlayStation VR2」(以下、PSVR2)。そのローンチタイトルの中でも特に注目を集めている1本が『Horizon Call of the Mountain』(以下、Call of the Mountain)だ。
 そう、PS4『Horizon Zero Dawn(ホライゾン ゼロ ドーン)』でデビューを飾ったシリーズの最新作が、VRゲームとして姿を現すのである。

 白を基調とする外装に包まれた、カッコよすぎる「機械獣」の脅威をVRで体感できる。そう聞いただけでも心躍るプレイヤーは少なくないのではないだろうか。

 また、本作を手がける「Guerrilla Games」は古くから「PlayStation Studios」の一員であり、前作『Horizon Forbidden West』でもPS5ならではの新機能「ハプティックフィードバック」や「アダプティブトリガー」を存分に活用していた。となれば、「PSVR2」という未知のVRデバイスの真骨頂も魅せてくれるのでは……? と期待してしまう。

 そんな中、電ファミニコゲーマーでは「Guerrilla Games」のスタジオナラティブディレクターを務めるベン・マコー氏に、囲み取材を通して直接お話をうかがうことが叶った。

 雄大に広がる“大自然”と、近未来的な“機械”。ふたつの相反する要素が不思議に調和して描かれる『Horizon』の世界が、PSVR2という新時代のデバイスを通してどのように描かれているのか。その一端を感じ取っていただければ幸いだ。

ベン・マコー氏
ベン・マコー氏

文・聞き手/久田晴


──本日はよろしくお願いいたします。

ベン・マコー氏(以下、マコー氏):
 よろしくお願いします。

──まず『Horizon』シリーズでVR作品を作ろう、と考えたきっかけからお聞かせいただいても良いでしょうか。

マコー氏:
 ご存じのように『Horizon』シリーズは美しいグラフィックや、雄大な大自然の表現、そして迫力あふれる「機械獣」の演出などを特徴としています。こうしたシリーズの強みはVRと非常に相性が良いのではないかと考え、本作『Horizon Call of the Mountain』の開発はスタートしました。

 VRという新たなプラットフォームへの挑戦に際して、『THE PLAYROOM VR』『THE PERSISTENCE』といったVRタイトルを手がけたことで知られる開発スタジオ「Firesprite」の協力を得ています。彼らは『Horizon』の世界の魅力を、あますことなくVR上で表現してくれました。

──シリーズの顔とも言える主人公「アーロイ」ではなく、新たな主人公として「レイアス」を立てている点も興味深いポイントでした。「アーロイ」も作中のNPCとして登場することは明かされていますが、本作は時系列で言うとどのあたりになるのでしょうか?

マコー氏:
 主人公として新たに「レイアス」を立てた背景には、VR作品ならではの魅力を生み出すという理由がひとつあります。VRの没入感を活かすための要素として本作では“高さ”の表現にフォーカスしていまして、それを存分に発揮すべく彼には“山登りの達人”という設定が与えられました。

 また、本作はこれまでの『Horizon』シリーズをプレイされていない方も単体で楽しめるストーリーになっていますので、そういった意味でも新たな主人公を打ち出したことには意味があったのかなと思います。

 時系列で言えば『Call of the Mountain』は『Zero Dawn』と『Forbidden West』の間にあたりますので、各作品を遊んでいただいた方だけが気づけるような要素もそこかしこに盛り込んでいます。ですが先ほども申し上げた通り、これまで『Horizon』シリーズを遊ばれていない方も充分に物語を堪能できるでしょう。

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──先ほど「VRという新たなプラットフォームへの挑戦」と表現されていましたが、実際にPSVR2向けに制作する中で特に難しかったポイントなどはありましたでしょうか。

マコー氏:
 ゲーム開発というのは常に難しいものです(笑)。ですが、特に意識したのはやはり“高さ”の表現ですね。プレイヤーが実際に岩壁を登っているような臨場感を生み出せるよう、丹念に手をかけて調整しています。その成果もあって素晴らしい表現ができていると自負しておりますので、ここは苦労したと同時に成功したポイントでもありますね。

 また、PSVR2というプラットフォームには、ハプティックフィードバックやアダプティブトリガー、ヘッドセットからのフィードバックなど没入感を加速させるための優れた機能がいくつも備えられています。こうした機能にも支えられ、『Call of the Mountain』では臨場感あふれる体験を創り出すことが叶いました。

──ハプティックフィードバック、特にヘッドセットからの振動は、PSVR2の目玉機能のひとつでもありますよね。本作では具体的にどのような表現に用いられているのでしょうか。

マコー氏:
 ハプティックフィードバックはゲームのリアリティを高めるうえで、非常に重要な機能だと考えています。まず手のハプティックについて申し上げますと、本作ではクライミングの際の岩の感触や、弓を引き絞る動作などを触覚的に表現しています。

 ヘッドセットからの振動につきましても、機械獣「トールネック」が頭の上を通り過ぎる際や、「ストームバード」が頭上で羽ばたいているときなど、ゲームプレイのさまざまなシチュエーションで没入感を高める役割をはたしています。プレイする際には、ぜひ隅々まで味わっていただきたいですね。

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──戦闘アクションについてもお聞きしたいのですが、VRに対応することで従来の『Horizon』シリーズからはメカニズムを組みなおす必要もあったのではないかとお察しします。

マコー氏:
 そうですね、VRで戦闘を表現するということは、VRらしさをきちんと出していかなくてはならないということですから。ここもひとつ我々にとって新しい試みとなりました。

 特に『Horizon』の世界を象徴する存在である「機械獣」は、そのスケール感を存分に表現できるよう、こだわり抜いて制作しています。大型の機械獣である「サンダージョー」とのバトルでは、その巨体を目の前にしたかのような感覚を抱いていただけるのではないでしょうか。

 また、VRゲームとするにあたり、操作性は従来の『Horizon』シリーズから大きく変える必要もありました。それでもファンの方が快適に遊べるよう、視点やキャラクターの移動方法・速度の調整から、弓を自動リロードするように変更したり、クライミング時に手を離してしまっても落下しないなど、戦闘・探索ともに多岐にわたるオプションを用意しています。

 VRゲームの経験や個人の体質によっても遊びやすい設定は異なって来るかと思いますので、プレイヤーの皆さんがそれぞれにとって最適な状態で本作を楽しめるよう力を入れております。

──もう少し掘り下げてお聞きしますが、これまでの『Horizon』シリーズで用いられてきた「属性効果」や「部位破壊」などの要素は継承されているのでしょうか?

マコー氏:
 はい、属性効果も部位破壊もそれぞれ『Call of the Mountain』へ継承しています。素材を集めればクラフトで「火矢」を作れるといった具合ですね。そのほかにも、戦闘への没入感を高めるためにさまざまなメカニズムを採用しました。

 作中には「ウォッチャー」や「サンダージョー」をはじめ、多数の機械獣が登場します。これまでの『Horizon』シリーズとは少し異なる、VRを通じた彼らとの戦いを楽しんでいただければと思います。

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──ありがとうございます。ここまでをまとめまして、本作を遊ぶプレイヤーにもっとも楽しんでほしいポイント、というのはどのあたりになるのでしょうか。

マコー氏:
 そうですね。どういう風に遊ぶか、というのはプレイヤーの皆さんに委ねたいと考えていますので、どうか自由に遊んでいただきたいなと。もちろんクライミングや機械獣との戦闘は本作のメインとなる要素ですが、そのほかにも立ち止まって雄大な自然を鑑賞してみたり、あるいは道中に落ちているものを適当に拾って投げてみたりと、さまざまな楽しみ方で『Call of the Mountain』を味わっていただけたらと思いますね。

──それでは、最後に日本のファンに向けたメッセージをお願いいたします。

マコー氏:
 PSVR2は非常に魅力と驚きにあふれたプラットフォームなので、ぜひ多くの方に体験していただきたいですね! もちろん『Call of the Mountain』もそれにふさわしい作品に仕上がっていますので、手に取っていただけると嬉しいです。

 日本のファンの皆さんには手厚いご支持をいただいており、私たちとしても心から感謝しています。ぜひ『Call of the Mountain』もお楽しみいただけることを願っています!

──本日は、お忙しい中ありがとうございました。

マコー氏:
 ありがとうございました。(了)


 今回のインタビューからは、『Call of the Mountain』が「PSVR2」という新たなプラットフォームならではの表現へと挑戦していったことがうかがえる。VRならではの視点と、近年のプレイステーション作品におけるトレンドとも言える「触覚的な表現」があわさることにより、プレイヤーはこれまでにないほど『Horizon』の世界に飛びこめるはずだ。

 それにくわえ、戦闘アクションなどの面では『Horizon』シリーズの魅力をしっかりと継承していることも感じられた。もちろん、オープンワールドを自由に探索する従来の『Horizon』作品とは異なる。しかし「VRゲームだから仕方ない」と安易に簡略化することなく、むしろVRならではの表現を突き詰め、研ぎ澄ましているような印象が強い。

 「PSVR2」と『Horizon Call of the Mountain』は、いよいよ2月22日(水)に発売を迎える。『Horizon』や『Killzone』など、数々の名作を手がけてきたGuerrilla Gamesの新たな挑戦の結果を、ぜひ多くの方に見届けていただきたいと思う。

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ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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