「進級」はゲームシステム面での変化も自然に演出できる
──エンタメ作品で「進級を描く」ってあまり見かけないですから、実際どうなんだろう?と思っていたんですが、まーしー。さんのお話を聞いていると、かなり良いことづくめだなって思っちゃいますね。
まーしー。氏:
まぁ、寂しいというのはありますよ。でもさっきも言ったように、1年間で描ける成長やドラマってどうしても限られてくるので。だったら時を進めて、キャラクターの成長を描写した方が自然でいいのかな、と僕は思いますね。
それこそ『ガルパ2』みたいなものを作って新しいキャラクターと舞台でやるって選択肢もあったんでしょうけど、なんだかんだエンタメって初代を超えるの難しいじゃないですか。
例えば『ラブライブ!』なんかは、メンバーをがっつり変えたことで、人気が分かれてしまったような面もあると思いますし。もちろん後の方の作品でも、すごく多くのファンを獲得しているとは思うんですけど。
だからやっぱり『ガルパ』の場合なら、今いるキャラクターたちをそのまま進級させていった方がプラスだと思いますね。大学が出てくるというのは先ほどから言っているんですけど、新しいライブハウスの系列店ができたりとか、環境の変化が自然につけられるというのもメリットじゃないかな。僕はあれ、3Dライブの衣装が買えるみたいな機能を持つんじゃないかって睨んでいます(笑)。
──今回の超大型アップデートでは、ゲームシステム面でもいろいろと変化するんですよね。その中でも目玉のひとつが3Dライブだと思いますが、これはスマホのリズムゲームの中だとかなり後発の方じゃないでしょうか?
まーしー。氏:
早いのだと『デレステ』が2015年ですもんね。あの時代にあのクオリティの3Dライブは、本当にすごかったと思います。
確かに『ガルパ』は遅い方でしたけど、公式から出ている映像とかを見ると、かなりこだわって作られていると思いますよ。テーマがバンドなので、アイドルと違って踊ったりしないから、ふつうに撮るだけだと映えないじゃないですか。
実際のバンドだって、ライブには演奏を聞きに行っているわけだから、動きはそれほどないと思うんです。でも、ライブのDVDとかってがっつり演出を入れて魅せるように作っていますよね? それに近いような感じで『ガルパ』の3Dライブは作られている気がします。
──確かに。実際のバンドのライブだって踊っているわけじゃないけど、DVDになったら演出も込みで楽しく観られますもんね。現場の盛り上がりを味わえるというか。
まーしー。氏:
あと、3Dライブの良さって意味で言うといろいろなキャラクターを動かせるところと、衣装をしっかり見ることができるようになるところですかね。
ひとつ目について軽くお話しますと、ライブ中に走り回ったりするようなモーションが用意されているんですね。で、その枠に普段は物静かで大人しそうなキャラクターをプレイヤー側で配置したら、普通ならあり得ないようなシーンが見られるわけですよ。これはひとつ新しい遊び方になるんじゃないかなと思いますし、それでこそ振付にも注目できますよね。
衣装の方はもうそのままの話で、これまで「衣装」という機能自体はあってないようなものだったんです。実装こそされていましたけど、楽しめるのはカードイラストかライブ前の2Dライブ映像くらいで。「そんなにがっつり見るモノじゃないよね」という印象がありました。でも、3Dライブが実装されたことによって衣装が映える場面も増えてくるんじゃないかな、と期待しています。
──なるほど。
まーしー。氏:
あとこれはシンプルな話なんですけど、無料でゲームのキャラクターが実際にバンドしている姿を見られるのは嬉しいと思いますよ。地方に住んでいる方、特に学生さんとかはなかなかリアルライブに足を運ぶのも難しいじゃないですか。
そういう意味で、自分が好きなキャラクターの3Dライブをいつでもゲームから観られるのは単純に嬉しいんじゃないかなと。
実は、僕自身もまだ現地へ行ったことがないんですよ。もちろん行ってみたい、ライブの雰囲気を味わってみたいという思いはあるんですが、やはり基本は関東圏での開催ですし、動画制作や仕事のことを考えているとなかなか行けなくて。生で体験してみたいとは思っているんですけどね。
そういう意味でも、3Dライブは「ある」と「ない」なら絶対に有った方が良いと思います。3Dライブ自体の目新しさはそれほどないと思いつつ、いちファンとして追加が嬉しい要素ではあります。
「これ『ガルパ』の曲じゃん!」は若い世代にウケていた証拠でもある
──ストレートにお聞きしますが、今回のアップデートでまーしー。さんは『ガルパ』のユーザーが増えると思いますか? 少しシビアな話になってしまうと思いますが。
まーしー。氏:
このアップデートだけでは難しいと思いますよ。先ほど話した3Dライブにせよ、ほかのリズムゲームではもう当たり前になっている要素のひとつですから。
結局のところ『ガルパ』は2017年のゲームなので、機能面、ビジュアル面でどうしてもある種の古臭さは拭いきれないんですよね。今回のアップデートは、そうした面をリニューアルして、最近のゲームに“追いつく”ための意味合いが強いんじゃないかなと。
ただ、対等なレベルになったとしても、すでに別のゲームで遊んでいる方がわざわざ『ガルパ』に来るか? と言われると難しいと思うんです。
だから、大型アップデートはあくまでもきっかけのひとつであって、そこからどう新規ユーザーに仕掛けるかが重要なんじゃないかな、という話はプロデューサーの湯田雅さんとコラボしたときにもしました。
そのとき湯田さんも僕の考えに同意してくださって「だから僕もいろいろ考えてるんですよね」とおっしゃってくれたので、何かあるんだとは思います。秋には大型アップデート第2弾も控えていますし、夏や秋に大型企画を用意しているそうなので、そのあたりが仕掛けになるんだろうなと思っているんですけど。
恐らく『ガルパ』にとって今年は勝負の一年になると思いますし、だからこそプレイヤーとして僕は今年の『ガルパ』がすごく楽しみです。本当に、頑張ってほしいですね。
──お話を聞いていると、まーしー。さんご自身としても、「新規ユーザーに来て欲しい」という気持ちが伝わってくる気がします。
まーしー。氏:
投稿者としても、ユーザーとしても『ガルパ』に長く続いて欲しいですからね。もっと続きが見たいんですよ。
でも、今の取り組みだけだとあと一押し足りないんじゃないかなと感じています。僕はずっと湯田さんに「無料200連やりましょう!」って言っているんですけど(笑)。こういうのがTwitterのトレンドとかに入っていたら、みんな気になりますよ、と。
──(笑)。そういうのを入り口にして、まーしー。さんが一番推している物語の部分に新規ユーザーがたどり着いてくれるとベストってことですよね。
まーしー。氏:
そうですね、それがベストではあるんですが……6年分が溜まっているんですよねぇ(苦笑)。
──初心者の方に向けた導線という意味も込めてお聞きするんですが、まーしー。さんご自身としては、『ガルパ』を始めたばかりのころってどういうところに惹かれたんでしょう?
まーしー。氏:
分かりやすいポイントだと「カバー楽曲」の存在ですかね。『千本桜』とか『Butter-Fly』とか、僕らの世代ではすごく有名な楽曲をカバーして収録していたので。当時、カバー楽曲を本格的に採り入れて、それで話題を集めたのは『ガルパ』が初めてなんじゃないですかね? 今となってはカバー楽曲の存在もいろいろなゲームで当たり前になっていますけど。
──なんか、少し昔の有名なアニソンを「これ『ガルパ』の曲じゃん!」みたいに語るユーザーがいると話題になったことがありましたよね。
まーしー。氏:
そんなこともありましたね! これは僕も少し思うところがありまして、カバー楽曲のアニソンを「『ガルパ』の曲」として認識していたプレイヤーは実在すると思うんですよ。それこそ、今のユーザーがまだ赤ちゃんのころとか、生まれていなかったくらいのころの楽曲も『ガルパ』には収録されているので。
そういうのを『ガルパ』で初めて聞いて覚えていたら「あ、『ガルパ』の曲だ!」ってなるのもおかしくないと思うんですよ。原曲を知っている人からしたらそういう反応ってショックだろうから、ああやってネタに昇華される形になったんじゃないかな、と。
実は僕も最近こういうシーンに出くわしまして。
『ガルパ』ではないんですが、あるリズムゲームでカバーされている楽曲を小学生くらいの女の子が口ずさんでいたんですよ。すると隣にいた同じくらいの子が「それ、あのゲームの曲じゃん」って。やっぱりそうなるよなぁと思いました。
──でも、こういう現象が起こるのって『ガルパ』が若い人にウケていた証拠ともいえますよね。
まーしー。氏:
それはその通りだと思います。『ガルパ』は特に若い人が多いと思いますね。僕自身もYouTubeで活動しているので、どんな年齢層が自分の動画を見ているのかってデータで見られるんですよ。最初のころと比べたらもちろん年齢は上がってきていますけど、当時で考えれば10代に相当する人がメイン層ですから。
確か当時は10代ばかりで、たまに20代後半とか30代くらいの人がちょこんといる、くらいの感じでしたね。24歳~40歳くらいは全部合計しても20%にも満たなかったと思います。本当にほとんど10代でした。なので、今は20代になっている方が多いという具合ですね。
僕は今年で32歳になるんですが、それにしても若い子が多いな、というのは感じますね。そうするとやっぱり、承認欲求が外に出がちというか。
「これ、『ガルパ』の曲じゃん!」みたいなのがバズっていると、それにあやかって自分も注目されたいとか、正直あると思うんです。僕ももう少し若かったらそういうことをしていたかもしれないですし(笑)。
スマホゲームにあるまじき圧倒的な“軽さ”で続けやすいという魅力
──もうひとつ、これも率直にお聞きしてしまうんですが、5年間も遊んでいて「やめたい!」とか思うことってなかったんでしょうか?
まーしー。氏:
じつは、これが意外となかったんですよ。5年間で止めようと思ったことは一度もないですね。というのも、『ガルパ』って1日に必要なプレイ時間がすごく短くて済むからなんです。
今のスマホゲームの多くって“デイリー”の概念があるじゃないですか。「1日のうちにこれだけはやっておかないと損するよ」というやつですね。ゲームによっては「1日1時間くらいは遊ばないといけない」みたいなのもあると思うんですが、『ガルパ』は、最低でも1日1回プレイすればそれでOKなんです。
だから本気で忙しいときとか、今日はちょっとやる気出ないなという日でも続けやすい。1日5分で充分だし、最近だとオートプレイもあるので本当に気楽ですね。で、やりたいときはがっつり遊べる。このバランスがすごく僕に合っていたんだと思います。毎日欠かさず1時間は遊ばなくちゃいけない、とかになるとちょっと嫌になってしまうじゃないですか。
──確かに。デイリー消化がワンプレイで済むのはかなりお手軽な感じがしますね。それはサービスの初期のころからそういう仕様だったんですか?
まーしー。氏:
えーっと、多分もともと『ガルパ』にはデイリー要素みたいなものはなかったんじゃないですかね。だから昔から「やりたいときにやる」「やりたくないときはやらない」が通用するゲームだったと思います。
デイリーとかウィークリー的な要素が入ってきたのは2020年くらいかな。それまでの『ガルパ』で「やらなくちゃいけない」のは報酬をゲットするためにイベントを走るくらいでしたね。
でもそれさえ、イベント期間の10日間くらいのどこかでやりたいときにやればいい、ってくらいものなのでそれほどキツい義務感は感じなかったです。
現代っていろいろなスマホゲームが出ているじゃないですか。で、いくつも並行して遊んでいたらデイリーはこれとこれとこれをやらないといけない! みたいになっちゃう。そうすると掛け持ちが難しくなると思うんですけど、『ガルパ』はそういった面が薄いのでユーザーが離れにくいというのもあるんじゃないかなと。
──なんというか、逆にその仕様が現代のスタイルに合っている気もしますね。可処分時間の争奪戦に優しい、というか。
まーしー。氏:
そんな感じです。僕も今はいろいろなスマホゲームを遊んでいますが、それでもなお『ガルパ』が一番軽いと感じてます。それが良いところでもあるんですけど、常々やり込みたいという人には物足りない部分かもしれませんね。ただ、僕みたいにいろいろゲームやりつつ、普通に仕事もしつつとなると、1日5分でOKな“軽さ”ってのはすごくありがたい要素です。
一応やり込み要素がゼロってわけでもなくて、キャラクターのイベントがありまして、そのイベントで上位を目指すとなるとがっつりやる必要があります。でも、やり込む人もそのくらいじゃないかな。
基本的には軽く楽しめるゲームとして、現代のスマホゲームの遊ばれ方にうまくフィットしていると思います。こういうところはアップデートを経ても受け継いでいってほしいですね。
入り口は広く、ハマればどっぷり楽しめる『ガルパ』を今からでも遊んでほしい!
──ここまでお話を聞かせていただいて、だいぶ『ガルパ』の魅力が解明できたのかなと思います。有名な楽曲のカバーや、スマホゲームらしからぬ“軽さ”で遊びやすいゲームでありながら、実はめちゃめちゃこだわって細かい表現が突き詰められているという。
まーしー。氏:
まさにそういった感じです。実際、新規の方からすると最初から物語部分を楽しむというのは難しいと思うんです。
なんといっても6年間続いてきたゲームなので、キャラクターの魅力を理解するには6年分のストーリーを読まなくちゃいけない。この先の物語を最大限楽しむための予備知識がすごく増えてしまっている状態ですよね。
──ベテランのまーしー。さんから見て、今から遊び始める新規の方が楽しみやすい『ガルパ』の遊び方ってどういうものになるんでしょう?
まーしー。氏:
そうですね……初心者の方は、まず知っているカバー楽曲をリズムゲームとして遊んでみるところから入っていただけると良いんじゃないでしょうか。実はカバー楽曲にも何種類かありまして、FLOWさんとか、実際の著名なアーティストさんと一緒に歌っている楽曲もあったりするんですよ。
そういうところから気軽に楽しんでいただいて、気になるキャラクターが出てきたらその子にまつわるストーリーを読んでみて欲しいです。それでもしハマったら、順番にいろいろなストーリーを読んでいって、最終的にはやっぱり『ガルパ』ならではの細かい描写を味わっていただきたいですよね。
もうずっと言っているんですけど、『ガルパ』って本当に細かいところまでこだわってストーリーづくりが行われている作品なので。やり込めばやり込むほどハマる、本当に「沼」という表現がふさわしいゲームです。なので……ぜひ、遊んでみてください。(了)
『ガルパ』のストーリーを細やかに、熱心に語るまーしー。氏の様子からは、心の底からその物語とキャラクターたちの生き様を楽しんでいることがうかがえた。同氏のような熱烈なファンの存在こそが、『ガルパ』のストーリーに込められたこだわりの価値を証明していると言えるだろう。
『ガルパ』はスマートフォン向けのリズムゲームとして早くからカバー楽曲の概念を採り入れ、スマホゲーム界という激戦区で6年という長い時間を生き抜いてきた。その背景は決してひと言で説明できるものではないが、まーしー。氏の言葉を聞いていると、本作の濃密で“大人向け”のストーリーテリングが理由のひとつにあったようにも思えてくる。
ひとつ興味深いのは、まーしー。氏が自身のYouTubeチャンネルの登録者層を解説している部分からも分かるように、本作のボリューム層自体も年を重ね、10代から20代……大人へと移り変わりつつある点だ。まさに“ちょっと大人になった人”として、『ガルパ』のストーリーを堪能できる時期に差し掛かっているわけである。
6周年を控えたここ1年では「歴代でもダントツ」のストーリーがいくつも現れた、とまーしー。氏は語っていたが、ひょっとするとそれは“大人”になりつつある世代へのエールなのかもしれない。また今は『ガルパ』をやめてしまった元プレイヤーの方も、この機会に復帰してみると、自らの成長を実感するとともに物語の新たな魅力に気づけるのではないだろうか。