──脱線した話がおもしろいのでこのまま聞いていたいのですが、話題を『維新 極』に戻しますね(笑)。「龍が如くスタジオ」が手がける、ひさしぶりの桐生一馬(のパーソナリティを引き継ぐ坂本龍馬)が主人公のタイトルでしたが、改めて桐生の魅力で気づいたところはありますか?
横山氏:
『維新 極』は桐生一馬のパーソナリティーだから成立する話なんですよね。桐生は向こう見ずというか、計算高くない人間、感情で動く人間。桐生だからこそ成立するストーリーなんですよね、『龍が如く』って。ふつうに考えたら攻め込まないところを攻めるし、ふつうは発想もしない忍び込みかたをするじゃないですか。隠れるとかじゃなくて、堂々と新選組に入る、とか。
──(笑)。
横山氏:
そんな桐生が坂本龍馬だったらどうなるか、と描いているのが『維新』ですから、つくづく桐生のパーソナリティーで成り立っているなと改めて思いましたね。あんなヤツだから時代を変えられる、という描き方なので、桐生じゃなければ『維新』の話なんてひとつも成立してないです。
阪本氏:
「坂本龍馬のゲームを作りましょう」というところから入っていますが、向こう見ずだからこそ日本を変えられたんだ、と史実をもじりながらも『龍が如く』らしい展開になっているんですよね。遊んでみたらやっぱり『龍が如く』だな、ってなりますので。
横山氏:
一瞬で世界を変えられる人ってやっぱりいるんですよ。世界というか、もっと閉じた世界の話でも。『龍が如く』も「日本でしか売れないよ」と開発陣が思っていた時期もあったわけです。それでいいと思って僕らは商売してきて、9年前の『維新』も日本でしか出さなかった。いまだったら考えられないくらい、狭いフィールドでプロジェクトをやっていたわけですが、セガの上層部のある人が「売れますよ、海外で。まともにやれば絶対に売れる」と言って動いたら、あっという間に売れちゃったんですよ。べつに彼が何かしたわけじゃないですよ? 周りの意識を変えちゃう人だったんです。
だから、常識ってたったひとつの言葉で変わるんだなと実感しましたね。学生のころに陸上競技をやっていたんですけど、陸上って不思議なもので、誰かひとりが記録を破ると、ほかの人間も一気にそこにいくんですよ。
誰かひとりが記録を破り、「このタイムが出せるんだ」と思った瞬間、一気にみんなのタイムが縮むんですね。誰かひとりができるんだっていうのを見せたら、周りも変わるわけです。桐生一馬はそういう人間のイメージで描いていますので、魅力としてはそういうところかな。
──いま話をうかがっているのは発売直前のタイミングですが、記事が掲載されるのは発売後になるので、このタイミングでおふたりが言っておきたいことがあればお聞かせください。
横山氏:
言っておきたいこと……たぶん『維新 極』は売れてるんですよ。海外はもちろんなんですが、日本でも。
──(笑)。
横山氏:
正直、最初は日本がいちばん自信がなかったんです。
阪本氏:
日本ではオリジナルが出てますしね。
横山氏:
オリジナルから9年と距離も近いし……と心配していたんですけど、ゲームは最新の環境でプレイしたいと思う人も多いのかなと。ゲームって、つくづく技術映像のメディアなんだなって思うんですよね。プレイステーション4が出るときに、「これ以上ハードの性能が上がらないでほしい」と言う人がいたんですが、それじゃダメですよね。クリエイターとして、ゲーム制作に関わっちゃダメな人の意見。
クリエイターはいつまでも技術が上がることを喜ばしく思わないといけないと僕は思っていて。今回、開発でアンリアルエンジンや、最新のハードを触っていたときに、改めて「オレたちは技術を追い続けないといけないんだな」と強く感じたんです。「技術を追えば新しい感動は生まれる」というのを、このタイトルで身をもって知ったというか。きっとこのあとも技術戦争ってあると思うんですけど、つねにそこに乗り遅れないでやり続けないといけないな、というのはすごく思いましたよね。
──阪本さんはいかがですか?
阪本氏:
オリジナルは9年前に発売されたタイトルじゃないですか。だから、オリジナルを遊んでいない人はかなりいると思っているんですね。高校生とか、大学生とか。また、YouTubeで実況動画は見たことはあるけれど、実際に自分で遊んでいなかったり。オリジナルをプレイした人が多いから日本は盛り上がらないんじゃないか、というのは間違いで、新しく遊んでくれる国内の人たちは多いと思っているんです。
横山氏:
現状だと、9年前と売り上げがそこまで変わらなさそうなんですよね。
──それってすごいことですよね。
横山氏:
不思議ですよね? 9年前はプレイステーション4のローンチタイトルだったにも関わらず、日本でのみ発売していた。しかもそれでビジネスが成り立ってたわけですから。
──横山さんには個人的にお伝えしたこともあったのですが、『龍が如く』はいま波が来ている気がするんですよ。Twitterの反響も以前より高いですし、若い世代が「『龍が如く』が気になる」と言っているのをよく聞きますし、若い層にアプローチができているのかなと。あとは、カラオケ曲の「ばかみたい」の英語圏でのミーム化もそうですが、海外で『龍が如く』が話題にあがることが増えていると感じていて。
横山氏:
それは本当にそうだと思います。というか、感じ取っていただいてありがとうございます(笑)。『龍が如く』の波がね、世界的にちょっと来ているんですよ。
──国内も、ほんのちょっとしたきっかけで、さらに伸びる気がしていて
横山氏:
僕らもそう思っていて、だからちょっといろいろと、その「ほんのちょっとしたきっかけ」を仕込んでいる最中なんですね。『龍が如く8』でもうひとつ上にバーンと行けるように。遊んでもらえたらおもしろさは理解していただけるので、どう知っていただいて、どう手にとっていただくか……。
波が来ている理由のひとつは『龍が如く7』をRPGにしたことで、これまで興味のなかった方に振り向いていただけたこともあるかと思っています。それが第一段階とすると、そのつぎが重要なんですよね。意識的にブレイクスルーを狙っていきます。ただ、まず言っておくと『龍が如く8』は楽しい。過去イチ楽しいし、話題にもなると思いますよ、うん。
──横山さんがこういったインタビューでそこまではっきり言うのは珍しいですね。
横山氏:
詳細は言えないですけど、期待していてほしいですね。もうひとつの『龍が如く7外伝』は……「外伝」ってついちゃっているので……。「わざわざタイトルに「外伝」とつけないでほしい」と社内でも言われました。『龍が如く8』につなげるための役割だから「外伝」としているわけですが、「なぜこの内容とクオリティーで「外伝」とつけるのか」、「「外伝」とつけなければ倍以上売れるんじゃないか」とか、いろいろ言われました(笑)。まあ、それくらいどちらもしっかりと作っていますので、両作ともに楽しみにしていてください。
──最後に新作の話も聞けて、期待が高まりました。本日はありがとうございました。