なんか明らかにすごそうなエレゼン(エレメス)がいたのでお声がけしたら、なんかインタビューできることになりました。
「エオルゼアは広大だ」──。
これはゲーム内のマップ、ゲームのボリュームももちろんだが、それだけを指すものではない。それらは“広大”という言葉の中の一つである。あくまで個人の主観だが、エオルゼアでもっとも広大なのは「プレイヤーのあり方」だと思う。
そこには高難易度コンテンツをひたすら駆け抜ける人、重厚な世界観に浸る人、ロールプレイを楽しむ人、ファッションを楽しむ人、商人のように市場を見定め、商品を売り捌く人……。
とにかく多種多様なプレイスタイルが存在し、それらが許容されている。おかげで筆者のメインストーリーは一向に進んでいない。
なぜなら、ログインしては他のプレイヤーとお喋りばかりしているからだ。プレイスキルはまったく上達せず、ネタマクロだけが延々と増え続けている日々である。
そんな私のプレイキャラクターは、エレゼン女性である。
正確には「エレゼン・シェーダー・女性」であるが、大きくまとめると、エレゼン女性は通称「エレメス」と呼ばれている(エレゼン男性は「エレオス」だ)。
エレゼンは長い四肢と痩身長躯の体形が特徴的で、いわゆる“モデル体型”の外観だ。そのためか、ゲーム内で他のプレイヤーの方とやり取りする時でも、麗しの我が自キャラは「かわいい」ではなく、「綺麗」とか「美しい」と言われることが多い。
それはともかく、そんな素晴らしい種族のエレゼンだが、いない。ビックリするくらい、本当にいない。見かけることがとても少ないのだ。
『ファイナルファンタジーXIV』はエレゼンを含め、8種類の種族からキャラクターをクリエイトし、プレイができる。簡潔に表すなら、ゲーム内での己の分身となる存在だ。だが、エレゼン、とくにエレメスでプレイしているプレイヤーは少なめだ。
それは街中でも、ダンジョンの中でも変わらない。エレゼンがいると目で追ってしまう「エレゼンセンサー」を搭載している私の、その稼働する機会の少なさが現状を体現していると言ってよい。
別に「みんなエレゼンになろう」と言っているわけではないのだ。
ないのだが、「もっとエレゼンの魅力を知ってほしい」と思っている自分がいるのは事実である。その上で「エレゼン、イイな……」と思ってほしいわけである。というわけで、私が知りうる限りの“つよつよエレゼン”にお声がけしたところ、出演OKを頂くことができた。
そのエレメスこそ、本インタビューにてお話を伺うことになる、Chiyo Asakura氏である。
Chiyo氏は言うならば、エレゼン界のスターである。正確にはスターではなく、スーパースターである(筆者の一見解だが)。エレゼンとゲーム内に登場する装備をこよなく愛する同氏は、ゲーム内に登場する装備を無数に網羅し、紹介するファンサイト『FF14 装備手帳』を運営している。
そのボリュームはサイト全体で、2023年2月時点で約3500ページ、スクリーンショット総数は45000枚以上に及び、それらの管理を基本的にすべて一人で行っているというのだから驚くほかあるまい。そして、それらすべてのモデルをエレゼンで統一しているという、凄いとかいう言葉を超越した、イイ感じにヤバくて凄い光の戦士なのである。
本稿は「エレゼンの魅力を語ってもらおう。グヘへ」という根も葉もない私の独断で始まったインタビューだが、結果として、「オンラインゲームとの付き合い方、存在意義」や「とてもイイ話」が連発した。私の当初の計算は完全に狂ったと言ってよい。だが、そんな打算ごときが恥ずかしくなるほど、貴重で、そして自然と前向きになれる、大変素敵なお話を聞かせていただくことができた。
約3時間以上のロングインタビューとなったため、本稿は非常に長文になっている。紅茶でも飲みながら、じっくりゆっくり読み進めてもらえれば幸いだ。
注意
本稿には『ファイナルファンタジーXIV』本編の内容が含まれます。
執筆/撮影/聞き手:夏上シキ
撮影/画像提供:Chiyo Asakura
Chiyo Asakuraはなぜサイトを立ち上げたのか?
──本日はよろしくお願いいたします!
Chiyo Asakura氏(以下、Chiyo氏):
よろしくお願いします!
──そもそもの話になりますが、なぜご自身の手でファンサイトを立ち上げようと思われたのでしょう。
Chiyo氏:
もともと『FFXIV』に登場する装備のデザインが好きで集めていて、リテイナーに預けたりと色々していたんですが、それでも所持品がパンパンになっちゃいまして(笑)。
──なるほど(笑)。
Chiyo氏:
それで整理をしようとなったんですが、その前に「記念としてスクリーンショットを撮っておこう」と考えたんです。「すぐに見れて、かつ綺麗に見えるのってどうしたらいいだろう?」と悩んだ結果、自分でサイトを作ってアップロードしていったらいいんじゃないかなって。
──最初は“見てもらうもの”ではなく“自分で見たい”というところからだったんですね。
Chiyo氏:
そうなんです。もし『FFXIV』をやめることがあっても、サイトが残っていれば見返して楽しめるなって考えました。
──ちょっと意外でした。「もっとエレゼン見て!」「もっと装備見て!」みたいな感じで始められたのかなって勝手に思っていましたね(笑)。
Chiyo氏:
うふふ(笑)。今はそれもありますが、大部分は自己満足でやってます~という感じです。
──エレゼンにフォーカスするというコンセプトは初期からあったんでしょうか。
Chiyo氏:
最初は本当に自分で見返す目的でした。幻想薬を頻繁に使うタイプではなかったので、フォーカスするという意識はあまりしてなくて。
──自然とエレゼンになっていったと。
Chiyo氏:
そうですね。
──もともとサイト構築などの知識は持たれていたんでしょうか。
Chiyo氏:
まったくなかったんです。全然分からない状態から始めて、それこそ最初の頃とかは「小学校の授業で作ってみました」ぐらいの感じだったんですけど、今はサイトを直感的に作れるじゃないですか。
──テンプレートが用意されているといったような。
Chiyo氏:
そうです。それで思ったよりもサクサクと作れて。
──現在の『FF14 装備手帳』に移行する前のサイト【※】も拝見させていただいたんですが、こう、なんでしょう……。言葉で表現するのが難しいんですが、『VOGUE』とかの海外の女性向けファッション誌とでも形容すべきか……。そういった“カッコいい”系のエッセンスを感じたんですよね。
【※】Chiyo氏が最初に立ち上げたのが『ELEZEN FEMALE PHOTOGRAPHY』というサイト。その後に『FFXIV ATTIRE』を経て、現在の『FF14 装備手帳』を運営している。
Chiyo氏:
あはは(笑)。
──なので、元からサイト構築とかをガンガンやられていたのかなって。
Chiyo氏:
そんなことはなく(笑)、テンプレートが用意されている中で自分好みに変えていったら意外とできちゃったという感じです。
──でも、それって持ち前のセンスがないと出来ないじゃないですか。
Chiyo氏:
そう…なんですかね?(笑)。
──見やすいし、でもカッコよさがあるって、それはセンスだと思います。その“両立”って更に難しいでしょうし。
Chiyo氏:
難しかった…です!(笑)。
──今では過去形ですね(笑)。
Chiyo氏:
前のサイトとかでは文字が入れられないとかの制限があって、写真だけとかの場合も多かったんです。それが逆に「写真一枚でどれだけ魅せるか」という点に繋がっていった部分もありますね。
──なるほど!そういう理由だったんですね。逆転の発想だったと。
話は変わりますが、そんなサイト運営がキッカケで現在のご職業に就かれたとか。
Chiyo氏:
そうなんです。Photoshopが使えるようになったので(笑)。今までそうしたソフトは触ったことがなかったんですけど、サイトで使うために作ってたのが正方形の画像ばっかりだったんですよ。それがキッカケで、Instagramとかで用いる正方形の画像を担当することになりました。
──自分も知らない内にChiyoさんが制作されている画像を見てるかもしれない……。
Chiyo氏:
いま務めている会社の面接の時にサイトも見てもらったんです。
──反応はどうでしたか?
Chiyo氏:
「こういうコトをやれる人を探してたんです~!」みたいな感じで言っていただいて。経験〇年以上みたいな募集要項だったんですが、採用していただきました。
──実質的に募集要項は満たしている気もしますが(笑)。でもいいですよね。趣味が仕事に繋がっているし、お互いにお互いの経験が活かせるじゃないですか!
Chiyo氏:
そうですそうです!