1996年、世界にひとつのゲームが出現しました。悪魔の名を冠したそのゲームは、ゲーマーたちを深くて暗い恐るべき迷宮へと引きずり込んでいきました。
今もなお人々を震え上がらせる、その悪魔の名は「ディアブロ」。数多のゲーマーを飲み込み、決して逃さない迷宮の名は「ハクスラ」。
その後も2000年、2012年と悪魔は度々目を覚まし、輪をかけて多くのゲーマーを魅了していきました。悪魔はゲーマーのみならずゲームクリエイターの心をも掴み、何人ものフォロワーが生まれました。悪魔の影響を受けた何作ものゲームが制作されました。
そして来たる2023年6月6日(火)、悪魔が4度目の覚醒を果たします。
……ということで、Blizzard Entertainmentが手がけるアクションRPGシリーズの最新作『ディアブロ 4』がついに! 発売を迎えます!
実にめでたいことなんですが、なにしろ四半世紀以上も続く長いシリーズです。正直なところ、「名前は知っているけど遊んだことない」という方も少なくないのではないでしょうか?
いざ一念発起してプレイしてみようかと考えても、やはりシリーズ物を前にすると「今から入って楽しめるの?」という疑問がどうしても出てきてしまいます。
決して安くはない買い物ですし、不安が残ると腰も重くなってしまうもの。最初の一歩を踏み出すための最後の一押しとして、不安を拭い去れるような情報を求めている方もいるでしょう。
ご安心ください。このたび私は『ディアブロ 4』の開発メンバーへインタビューをおこない、開発陣が本作に掛ける熱い思いや、長く続くシリーズに新しく参入するプレイヤーへ向けたメッセージを聞くことができました。
このインタビューを読んでいただければ、悪魔に魅入られ『ディアブロ』シリーズを追い続けてきた歴戦の皆さんにも、本作からシリーズへ触れてみようかなと思っている皆さんにも、『ディアブロ 4』開発陣がどれほど「プレイヤーに楽しんでもらいたい」という願いを込めてゲームを制作していたかが伝わるはずです。
ぜひ、最後までお読みください。
文/うきゅう
編集/実存
※インタビューは他メディアとの合同で行われました。
祝『ディアブロ 4』発売!今の率直な感想は?
──『ディアブロ4』完成おめでとうございます。発売を直前に控えた今の率直な感想をお聞かせください。
ロッド・ファーガソン氏(以下、ファーガソン氏):
興奮して、眠れません。そのくらい楽しみな状態です。
このゲームは発表から5年間、ずっと開発を続けてきました。私自身がずっと楽しくプレイしてきた『ディアブロ』シリーズの続編に開発として関われる、というのは非常に稀なケースなのではないかなと思いますし、開発期間もずっとそれを楽しんで続けていました。
先行アクセスを一週間前に控えた今【※】の心境としては、「プレイヤーにはやく遊んでほしい」「プレイヤーの反応が見たい」「自分が楽しんで作ったゲームを楽しんでいる姿を早く見てみたい」というのが率直な思いです。
また、すでに様々な媒体からプレイレビューやスコアなどが入ってきているので、それを見てニヤニヤしています。
皆さんにも是非、このゲームを楽しんでほしいです。
※インタビュー当時の話。本インタビューは5月26日に開催された。
初代『ディアブロ』は「禁じられたタイトル」だった!? 27年の時を経て変わったもの、変わらないもの
──初代『ディアブロ』が発売されてから25年以上の時が経ち、ゲームを取り巻く環境にも様々な変化が訪れたかと思いますが、初代、『ディアブロ 2』、また2012年の『ディアブロ 3』を開発していた時と比べて、開発チームの中で「『ディアブロ』をどう作るか」というスタンスに変化はありましたか?
ファーガソン氏:
初代『ディアブロ』は非常にダークな作品でした。悪い意味で「悪魔」的なゲームであり、当時は自分の親に『ディアブロ』を遊んでいることを隠すような、禁じられたタイトルだったというのが、当時を思い出した際の自分の率直な感想です。
しかし、そこから25年経った今、ダークな作品というものがずいぶんとメインストリームになってきたように感じています。例えば『ウォーキング・デッド』とか、『ゲーム・オブ・ザ・スローンズ』などですね。
これらの作品が受け入れられる土壌が整った今ならば、初代の頃のようなダークな雰囲気を真正面から描くことができるのではないか、と思いました。ですから、そうですね。時代の変化を受け、開発チームのスタンスというものも変化したと思います。
ジョセフ・ピエピオラ氏(以下、ピオピエラ氏):
今回の『ディアブロ 4』は、これまでのナンバリングタイトルと比べても特に「ストーリーを見せる」ということに注力して開発を進めたため、とても苦労しながらの制作となりました。
『ディアブロ』シリーズはこれまでも一貫して、「天使と悪魔」「天国と地獄」の戦いを描いてきましたが、本作では一層その関係性にフィーチャーしました。
これまで名前だけの登場となっていた「憎悪の娘」リリスに「天界の天使」イナリウスという二大キャラクターが今回のストーリーのメインとなっています。
この「天使と悪魔の戦い」という構図へプレイヤーを巻き込みながら物語を展開していく、というのが本作を開発しながら私たちが目指したものです。
イナリウスやリリスが行動を起こす「動機」といった内面的な要素にまで踏み込んでストーリーが語られるのも、本作の目玉と言えるのではないかと思います。
『ディアブロ』のダークでありながら美しくもある世界を、プレイヤーに楽しんでもらいたいですね。
ファーガソン氏:
追加で、ひとつ。25年前と今で、ゲーム制作において最も大きな違いはゲームが「ライブ・サービス」になりつつある、という点だと思いますね。
25年前は、非常に小さなチームでゲームを作り、発売日を迎えてしまえば開発チームはそれ以上なにかをすることは出来なかったため、チーム全員が休みを取って旅行に行くような状態でした。
しかし現在の「ライブ・サービス」としてのゲーム制作は、発売日はあくまでもスタートラインであり、Day1パッチであったり、次のアップデートや拡張パックを考えるなど、常に動き続ける必要があります。
そのため、自然とチームサイズも拡大していくことになります。こうして大きくなったチームをどう動かしていくのか、という方法論なども、過去と今を比べたときのゲーム制作の違いとして言えるでしょう。
──初代『ディアブロ』の発売以来、数多のハック&スラッシュ(ハクスラ)ゲームが登場しましたが、それら同ジャンルの他作品と比べて『ディアブロ4』が特に優れていると思う点を教えてください。
ピエピオラ氏:
『ディアブロ 4』の持つ特別な点としては、やはりなんと言っても『ディアブロ』シリーズというその歴史の長さが挙げられると思います。私たちは、それぞれのナンバリングタイトルで培ってきた魅力、長所というものを『ディアブロ 4』に結集しました。これは、他のタイトルにはない優位点と言えるのではないでしょうか。
具体的に言いますと、初代『ディアブロ』からはなによりもその「ダークさ」や「狭いダンジョンに潜っていく」というゲームプレイを取り入れています。閉所恐怖症の方にとってはしんどくなってしまうかもしれない要素ですが(笑)。
『ディアブロ 2』からは、スキルや装備によるキャラクタービルドのシステムであったり、キャラクターを強化するために敵を倒して沢山のアイテムを“掘る”という、コアなゲームプレイに関する魅力をさらに強化しました。
『ディアブロ 3』にあったアクションや戦闘そのものの持つ気持ちよさ、というものも忘れてはなりません。この部分もしっかりと抜き出して、『ディアブロ 4』を遊ぶ方にあらためて楽しんでもらえるように考えました。
こうやって考えると『ディアブロ 4』はまさに、過去3作の『ディアブロ』シリーズの集大成と言える作品に仕上がったと自負しています。
さらに今回は「プレイヤー・チョイス」、プレイヤーがより自由に、各々の遊びたいように遊ぶことができるよう設計しています。これによって、ディアブロが持つファンタジー世界の魅力というものにドップリと浸ってもらえるのではないかと思っています。
──本作は『ディアブロ』シリーズ初のオープンワールドということですが、オープンワールドにすることで『ディアブロ』シリーズの魅力が損なわれるのではないか、といった危惧はありましたか? また逆に、オープンワールドとなったことによって『ディアブロ』シリーズの魅力がより引き立てられた点などあれば教えてください。
ピエピオラ氏:
過去の『ディアブロ』、特に初代と『2』は、展開が非常にリニア(一本道)な設計となっていました。どんなプレイヤーが遊んでも、ほとんど内容や体験に変化はありません。一方で、本作はご質問にあったようにオープンワールドとして、プレイヤーに選択肢を与える設計となっています。
一方でオープンワールドらしさを追求するあまり選択肢を無尽蔵に増やしてしまうと、過去作を楽しんできたプレイヤーに違和感を与えかねません。そこのバランスに関しては、非常に気を使って開発を進めました。
『ディアブロ』の根幹というのは、モンスターをガンガン倒して、強いアイテムを手に入れ自らを成長させていくという部分にあると考えています。このコアの部分を楽しんでもらえるようにするというのが大切ですが、過去作のプレイヤーの遊び方を見ていると、どちらかと言うと「効率化」に重点が置かれ、楽しいゲームプレイができていなかったのではないか? という懸念がありました。
どうすればより早く目の前の敵を倒せるか、どうすればより沢山のアイテムを掘れるか、という要素を追求するゲームになっていたのです。これをもう少し自然に、ゲームプレイのなかで楽しんでもらえるようなデザインにしたいという思いがありました。
本作では、一人のプレイヤーが何体ものキャラクターを作って遊ぶことが想定されています。そのため、複数のキャラを操作して何度も何度も同じことを繰り返す必要があるような状況は避けるべきだろうと考えました。
たとえば、作中には「リリスの祭壇」という要素がありますが、マップを移動していてこれを最初に発見した喜びというものを大切にしたいと思っています。新しいキャラクターを作るたびに祭壇を全て探す必要は無くていいですよね。ですので、二人目以降のキャラクターに関してもリリスの祭壇の効果は適応されるようにして、探す必要はないデザインにしました。
プレイヤーにオープンワールドを、世界を巡る楽しさを実感してもらう時間を多く取ってもらって、作業感のあるプレイに関しては省いていけるように、というのを念頭に置いて本作の開発は進められました。