ハクスラ初心者のプレイヤーでも遊びやすく、シリーズのファンにも満足できるようなものへ
──ハクスラをあまりプレイしたことがなかったので、『ディアブロ 4』から本格的な体験に入っていこうと考えていたのですが、先行プレイを通じて本作が理解しやすく、遊びやすいことに驚きました。私のようなハクスラに不慣れなプレイヤー、本作からシリーズに触れるプレイヤーを想定して配慮した点などあればおしえてください。
ピエピオラ氏:
ありがとうございます! 「本作からハクスラを遊ぶ初心者でも遊びやすい」は開発チームがまさに望んでいた反応そのものであり、非常に嬉しいです。
シリーズ初体験のプレイヤーやハクスラ初心者の方へ配慮した点としては、開発初期からキーボード+マウスによる操作でもコントローラー操作でも支障なくプレイできるようなベースづくりを心がけていました。
ゲームプレイに関しても、本作を遊ぶ流れのなかで、プレイヤーへ提示する情報を段階的に増やし、プレイヤーに新しい学びを楽しんでもらえるデザインにしよう、というのが前提にありました。
本作における魔法使い「ソーサラー」を例に出しますと、最初のうちはシンプルな、火を直線的に飛ばすようなスキルから始まります。そういった分かりやすいスキルを使って戦い、レベルを上げていくにつれて、新しい可能性や発展したスキルが解放されていきます。
とはいえ、こういった手法をやりすぎてしまうと、過去の『ディアブロ』シリーズやハクスラジャンルに親しんだプレイヤーにとっては物足りなさを感じてしまうでしょう。ですので、どちら側のプレイヤーも楽しんでもらえるよう、バランスを取りながら調整をしています。
この質問自体が、私たちの目指した設計が機能したことを表していると思います。この質問を聞くことができて本当に嬉しいです。
ファーガソン氏:
『ディアブロ』シリーズには25年以上の歴史があり、本作はナンバリングタイトルとしても4作目にあたります。一般的なゲーマーの感覚として、「1~3やってないから分からないかも」と思うかもしれませんが、そんなことは全くありません。
『ディアブロ』シリーズで扱われる物語は時系列としてはっきりとした区切りが存在しており、作中では過去の出来事よりも現在の状況、「今この世界で何が起こっているのか」を伝えながら進行していきます。なので、本作から遊ぶプレイヤーにとっても、ストーリー部分を100%楽しんでもらえるようになっています。
一方で、過去の『ディアブロ』シリーズを体験してきたプレイヤーにとって馴染みのない新しい世界ということにもしていません。例えば、本作におけるメインキャラクターの一人として登場する「ロラス」は、『ディアブロ 3』から続投しているキャラクターです。このように、新規プレイヤーにも、昔からのプレイヤーにも、どちらにも楽しんでもらえるようになっているので、安心してプレイしてください。
また、本作の自由度をどこまで拡張するかという点も意識しました。本作は洞窟で目覚めるところから始まりますが、その洞窟から広い世界にプレイヤーを放り出し、「あとは何をしても自由ですよ。好きに冒険してください」としてしまえば、新規プレイヤーは何をしていいのかわからなくなってしまう恐れがあります。
ですので、最初の5レベルまではしっかりと誘導し、本作に慣れてもらう期間としました。レベル5、展開的には最初の街についてからが本番であり、オープンワールドらしく世界が広がっていく設計として本作を構築しました。
そこからはプレイヤーが成長し、学びながら、自分の行動を選択していってほしいと思っています。
「知ることはたやすく、極めることはむずかしい」ゲームになっているので、そういった部分も色んな人に楽しんでもらいたいですね。
あと、これはハクスラ初心者への配慮という観点からは少しズレてしまうんですが、本作には聴覚障害者へ向けた字幕を導入しています。そういったサポートの面でも、様々なプレイヤーが本作を楽しめるように、工夫しながら取り組んできました。
敵のレベルがプレイヤーのレベルに応じて変化する「スケーリング」、その驚きの仕様と導入の理由
──D4はオープンワールドとして、街の中のキャラクターがロードなどを挟まずに直接外に出ていける構造を持っています。一方で、敵モンスターのレベルがプレイヤー側のレベルに依存する可変式になっています。もし同じ街に低レベルのキャラクターと高レベルのキャラクターが居合わせ、ともに外のモンスターと遭遇した場合、外のモンスターの強さというのはどのように決定されるのでしょうか?
ピエピオラ氏:
とても良い質問をありがとうございます。ざっくり説明しますと、仮にレベル10のプレイヤーとレベル50のプレイヤーが同じ街に存在し、ともに町の外へ出た場合。そこに存在するモンスターは、レベル50のプレイヤーから見ればレベル50相当に、レベル10のプレイヤーから見ればレベル10相当のモンスターとして表示されます。
もし、レベルの離れた二人のプレイヤーが同時にモンスターを攻撃した場合にも、自身のレベルや装備に応じて適正なモンスターに与えるダメージと同じだけの割合でダメージが入ります。
なので、プレイヤー同士のレベルが大きく離れていても、お互いに自分と近いレベルのプレイヤーとともに戦っているような感覚で遊ぶことになります。
この調整をした理由としては、本作をオープンワールドとして設計するにあたって、街の外で他プレイヤーと遭遇した際に「ウザがられない」という点を大事にしたかったからです。
低レベルのプレイヤーがモンスターと戦っているときに、高レベルのプレイヤーが脇を通り過ぎながら強烈な攻撃をしてモンスターを一瞬で倒してしまうような事態は絶対に避けたいと思いました。
むしろ、孤独感を味わう本作のゲームプレイの中で、不意に他プレイヤーと出会いともに戦うことが、嬉しいハプニングとなってくれるような体験をプレイヤーに楽しんでもらえると思います。
ファーガソン氏:
付け足しとして、3点。
スケーリングに関する別の視点として、本作ではマルチプレイを皆さんに楽しんでほしいという思いがありました。しかし、都合よく友達と同じレベル帯でプレイできるとは限りません。また、ストーリーの進行度によって遊んでいるエリアが異なっている可能性もあります。
従来であれば、そういう状況で無理やりマルチプレイをしたとしても、低いレベルのプレイヤーは何もすることがなくて、端の方で死なないようにビクビクしている必要がありました。
しかし、本作ではそのようなことは一切起きません。クロスプラットフォームにも対応しているため、あらゆる意味で、プレイヤーはいつでも友達といっしょに本作を楽しむことができるのです。
次に、こちらはオープンワールドに紐づく観点なのですが、「序盤の街に行く意味がない」という状況にしたくなかったというものがあります。
従来のRPGであれば、序盤の街では売っているものも序盤用、周囲に出てくる敵も序盤用に調整されています。
レベル1のプレイヤーが戦って、倒して、レベルを上げていく分には、十分適正なバランスですが、それがレベル10、レベル15と上がっていくにつれて、序盤の街には戻らない、戻る意味がなくなってしまう。
本作をオープンワールドとして開発する以上、「戻る価値がない」とか「行く意味がない」という体験は避けたいと強く思いました。プレイヤーのレベルがどれほど上昇したとしても、世界の全ての場所に行く理由がある、行ってしっかりと楽しむことができる、そういったバランスでゲームを作りたかったのです。
最後に、本作におけるスケーリングはすべてのものに適応されるわけではありません。ひとつ例を挙げると、本作には「ワールドティア」と呼ばれる難易度のようなものが設定されているのですが、このティアを上昇させるためにはとあるダンジョンを攻略する必要があります。
こういったダンジョンなどに関しては、モンスターのレベルを固定しています。このダンジョンを攻略できるぐらいに強くなったかどうか、プレイヤーにチャレンジしてほしいですね。
作中に登場する強大な敵、“ワールドボス”アシャバ。あれって少数でも倒せるの?
──ワールドボス「アシャバ」について質問します。サーバースラムで私も何度かアシャバとの戦闘に参加し、爪の一振りでプレイヤーが何人も蹴散らされていく光景に圧倒されたんですが、複数のプレイヤーが力を合わせて倒す、というデザインのボスに対して、2~3人しかプレイヤーが集まらないような可能性も存在するように思います。
単刀直入にお聞きしますと、アシャバは少人数でも勝てるように設計されていますか? ワールドボスという存在のあり方というものについて、開発チームでどのように想定されていたのかも含めて教えてください。
ピエピオラ氏:
率直に答えるなら、アシャバは1対1でも倒せます。ただし、極めて難しいです。そもそも、サーバースラムの際のアシャバはプレイヤーレベルが20で上限に達するにも関わらず、レベル25相当として用意されていました。
これは本来のバランスからは逸脱した調整ですが、開発チームとしてどうしても「強いアシャバと戦ってほしい」という思いがありそのようになったものです。
リリースを迎えれば、アシャバは非常に高いレベルのモンスターとして登場するので、プレイヤーのレベルが低い状態で戦うことはないと思います。もちろん、スキルやアイテムにも一切制限はなくなりますから、プレイヤー側もしっかりと準備を整えた状態でアシャバに挑むことになるでしょう。ですから、サーバースラムの時よりは倒しやすくなるかなと思います。
また、オープンベータやサーバースラムの際にも少数でアシャバに挑むケースというのはそれほど頻度は高くありませんでした。本作が発売されれば、プレイヤーの数というのはテストの時とは桁違いに膨れ上がるはずですので、少数でしかアシャバと戦えないという状況は早々生まれないでしょう。
それはそれとしてサーバースラムの際、ソロでアシャバを倒したプレイヤーは存在しました。レベルキャップがあっても、倒すこと自体はできます。まあ、相当難しいはずですが。
ファーガソン氏:
私は8人でパーティを組んで挑みましたが、倒すまでに6回チャレンジしなくてはいけませんでした。ほとんど丸一日、アシャバと戦っていましたね。
そしてこの手強さこそが、私たち開発チームの考えているアシャバとの体験だと思っています。ワールドボスに挑戦するゲームプレイでは、プレイヤーはしっかりと自身を強化し、準備を整えたうえで、なお張り合いのある戦いを繰り広げられるでしょう。
──『ディアブロ 4』プレイテストを実施してきて、特徴的なフィードバックや反応などはありましたか? また、日本ならではの反応などがあれば教えてください。
ピエピオラ氏:
本作では、これまで3回のプレイテストを行いました。その内容に関して、プレイヤーから実に多くのフィードバックを貰っています。特にゲームのバランスについてや、レジェンダリーアイテムに関するものが多かったですが、日本から届いたフィードバックで言いますと、私が把握している限りでは「ローカライゼーション」、翻訳に関するものが多かったですね。
もっと詳しく説明してほしい、現状の説明では物足りない、というフィードバックを受け取っており、私たちにとっては大きな学びとなりました。
本作は現在17の言語に対応しており、全ての言語に対して同じ品質での翻訳ができているとは、私たちも思っていません。ですが、徐々に修正し、アップデートを重ね、より良いものへと変えていけるのもライブサービスの強みですので、今後も目を離さず、問題点を認識すればそこに取り組んでいくつもりです。
これはバランス調整に関するフィードバックに対しても同じことが言えます。リリースされた当日のものが、本作の最終的な調整ではありません。発売後はより多くのフィードバックを受けることになるでしょうし、私たちはそれを踏まえてゲームをさらに素晴らしいものへと変えていきます。
そのほかにプレイヤーから多かった反応として、「難易度が高い」というものがありました。特に5月13日に行われたサーバーへの負荷を調べる「サーバースラム」で多く寄せられましたが、これはサーバースラムの際にプレイヤーのレベル上限が20に設定されていたという要素が大きいと考えています。
実際のところ、本作におけるレベル20というのは、キャラクターの職業ごとに用意されたスペシャルな要素を十分に解放できていない状態です。バーバリアンであれば各武器へのマスタリー、ネクロマンサーであれば死者の書など、レベルが20後半へ向かうにつれプレイヤーの体験はガラリと変わっていきますので、是非発売後はレベルを上げてそれぞれの職業の“本当の姿”を堪能してほしいと思っています。
とはいえ、先ほども言ったように開発チームはリリース時のバランスを完璧なものとは考えていません。リリース後もプレイヤーからの反応を見ながら、パッチなどで随時修正を加えていくつもりです。
開発陣から日本のユーザーへ向けたメッセージ
──最後に、日本のプレイヤーへ向けたメッセージをお願いします。
ピエピオラ氏:
日本でのローンチを非常に楽しみにしています。『ディアブロ』というゲームシリーズは日本のプレイヤーにとってはあまり馴染みのないタイトルかもしれませんが、ゲームとしての楽しさには絶対的な自信があります。ぜひ一度手に取って、試してみてください。
ファーガソン氏:
ナンバリングが4となっているのを見て、新規参入しにくいかなと思っている方も怖がらずにプレイしてみてほしいですね。日本のRPG好きの方々が、『ディアブロ』という長い歴史を持つRPGに対してどういう反応を示すのか、はやく見てみたいです。
──ありがとうございました!(了)
以上、『ディアブロ 4』開発メンバーのお二人へのインタビューの様子をお伝えしました。開発チームの『ディアブロ』最新作に掛ける思い、そして本作からシリーズを遊ぶ方にも楽しんでもらえるゲームを作ったという意気込みを感じていただけたでしょうか。
広大な世界を冒険し、群がる悪魔をなぎ倒すハクスラ・アクションRPG『ディアブロ 4』は6月6日(火)よりリリースされます。対応プラットフォームはPC(Battle.net)、PS5/PS4、Xbox Series X|S/Xbox One。通常版の税込価格が9800円となっています。
ちなみに、インタビューのなかでも少し触れられていましたが本作は豪華版を購入することで6月2日(金)からの先行アクセスを楽しめます。興味のある方はこちらも検討してみてはいかがでしょうか。