『タクティクスオウガ』。その名を耳にして思い浮かぶのは、発売から25年以上の年月が経った今もなお、圧倒的な支持と人気を得ているという、スーパーファミコン後期の名作タクティカルRPGとしての確固たる姿だろう。
そんな『タクティクスオウガ』の開発には「HERMIT」(ハーミット)なるものが用いられていたことはご存じだろうか。
「HERMIT」とは、『タクティクスオウガ』を販売・開発した株式会社クエストが独自に作り上げた開発ツール……今で言う「ゲームエンジン」に相当する存在だ。この謎のゲームエンジンが、実は『タクティクスオウガ』の開発にあたって大活躍をしていたという。
ではこの「HERMIT」は、いったい何がすごかったのか?
まずひとつ目のポイントは、開発に用いるPC上で実際のテレビ画面に映るグラフィックの表示を確認できたこと。
実は当時、開発中のPCモニタで見る映像と家庭用ゲーム機を実際につなぐブラウン管テレビで見る映像には大きな差異があったのだ。ブラウン管によるドットの滲みなども考慮する必要があり、表示を確認する工程は大きな作業コストとなっていた。
しかし「HERMIT」は、PC上で実機プレイに近いグラフィックを表示することを可能にし、チェックのコストを大幅に削減した。「開発用のPC上で家庭用ゲーム機の実機プレイ画面を確認する」手法が一般的になったのは液晶テレビが普及したPS3、Xbox 360の時代であり、実に10年以上も時代を先取りした試みと言えるだろう。
そしてふたつ目は「ゲームプランナーがマップを編集できるようになった」こと。当時の一般的なシミュレーションRPGのマップづくりの工程は、プランナーが設計や仕様を決め、それに従って実際にマップを制作していくのはデザイナーという分業型だった。
この方法では仕様変更や構造の調整が必要になった際、いちいちプランナーとデザイナーでデータのやり取りや意思疎通を行わなくてはならず、それだけ時間も労力もかかってしまう。プランナー側で「ここを改善したい!」と思っても、すぐに手直しができるわけではないのだ。
しかし「マップエディタ」としての機能も果たす「HERMIT」は、プランナーが直接マップを編集することを可能にした。そのおかげで『タクティクスオウガ』はゲームバランスを突き詰めるとともに、見映えの上でもハイクオリティなマップを大量に実装することが叶ったのである。
実際、『タクティクスオウガ』に収録されたマップは200以上におよぶ。発売時期を同じくする名作シミュレーションRPG『フロントミッション』でも全30ステージほどであったことを踏まえれば、『タクティクスオウガ』のボリュームがどれほど圧倒的なものかは明らかだ。もちろんその中に、使い回しや明らかに手抜きと思われるようなマップはない。
要するに、「HERMIT」は現代における「Unreal Engine」、「Unity」といったゲームエンジンのような機能を、1990年初頭にすでに実現していたのである。特に現代では個人のクリエイターの間でもそれらゲームエンジンが普及している実情を踏まえれば、『タクティクスオウガ』と「HERMIT」が、いかに時代を先取りしていたのかも見えてくるというものだ。
そんな「HERMIT」に令和のいま、“業界最古のゲームエンジン”として目を付けたのが、スクウェア・エニックスにて過去のゲーム開発資料の発掘および総管理を実施している『SAVE Project』に携わるリードAIリサーチャーの三宅陽一郎氏と坂田新平氏である。
今回、電ファミニコゲーマー編集部と三宅氏、坂田氏は『タクティクスオウガ』開発に携わった元クエストのオリジナルスタッフ、吉田明彦氏と皆川裕史氏へのインタビューを敢行した。
オリジナル版の開発に用いられた本物の「HERMIT」も用意されたうえで、なぜこのようなゲームエンジンが開発されたのか? 「HERMIT」の始まりと、それを手がけたクエストの凄腕エンジニアたちの活躍、そして吉田氏、皆川氏のクリエイターとしての原点に迫っていく。
なお、本来は『タクティクスオウガ』にてメインシステム全般を担当し、「HERMIT」の中心人物とも言えるプログラマーの方を迎えての鼎談を行う予定であったが、このたびは残念ながらご本人に連絡を取ることは叶わなかった次第である。
聞き手/坂田新平、三宅陽一郎、TAITAI
文/シェループ
編集/久田晴
撮影/佐々木秀二
『タクティクスオウガ』オリジナルスタッフ、数十年ぶりに「HERMIT」を触る
──早速ですが……スーパーファミコンのオリジナル版『タクティクスオウガ』の仕様書全部、それからX68000の実機と「HERMIT」をご用意させていただきました。皆川さん、吉田さん、まずは触っていただければと。
皆川氏:
うわっ(笑)。
吉田氏:
「うわっ」って言うな(笑)。
──えー……この「Tool」というファイルが「HERMIT」の実行ファイルです。これを読み込みまして、ロードしますと……はい、立ち上がりました。というわけで、吉田さんよろしくお願いします!
吉田氏:
(笑)。
皆川氏:
無茶振りだ(笑)。
──1995年当時を思い出しつつ、触っていただければと思います(笑)。
(※2人がいろいろ思い出し、戸惑いながらも「HERMIT」を触る)
吉田氏:
ロードはダブルクリックだっけ……しないな(笑)。
皆川氏:
もう1回こっちに定義するにはどうすれば……?
──すみません、環境は用意させていただきましたが、詳細はわかりかねます!(笑)
一同:
(笑)。
皆川氏:
もう、思い出せる人がほとんどいない(笑)。
いちいちテレビに繋ぐことなしにプレビューを可能にした「HERMIT」
──という感じで、「HERMIT」を久しぶりに触っていただきましたところで、本題に入らせていただければと思います。
まず『タクティクスオウガ』は1995年10月6日にスーパーファミコン用ソフトとしてクエストから発売されました。ただ、そのゲームエンジンである「HERMIT」に関しては、意外にもWEB上では詳しい情報が見当たりません。当時ですと、『ファミマガ』などでけっこう宣伝をされていたように記憶しています。
そういった点も含めまして、本日「HERMIT」を中心としたお話を伺えたらと考えていました。
我々はゲーム開発資料を保存している「SAVE」という活動を通して、「HERMIT」は現存する業界最古のゲームエンジンではないかと思っておりまして、ぜひ、当事者の方にお話をということで、今回のインタビューを企画させていただきました。
また、『タクティクスオウガ』は描画システムにも特徴的な仕様が組まれていたり、表現の手法においても珍しいものがあるかと思います。その辺りのお話についても後ほど、お聞かせいただければと思っています。
皆川氏:
覚えているかぎりで(笑)。
──ありがとうございます。まず「HERMIT」の仕様からお聞きで着ればと思います。「HERMIT」はX68000上で動いておりますが、当時の解像度って640×480になるのでしょうか?
皆川氏:
いや、解像度は384×256じゃないかなぁ。他社さんの2D格闘ゲームの移植がその画面解像度でやっていたはずです。
スーパーファミコンの画面解像度である256×224は開発ツールとしては解像度が足りないので、ツールの情報を追加できるように少し解像度の高い画面モードを使っていました。
──「HERMIT」のマップエディターをメインで使っていたのは吉田さんなのでしょうか? 皆川さんはあまり関わっていないのでしょうか?
皆川氏:
分担としては、キャラクターが自分、吉田さんがマップを担当していました。
──ということは、ツールの操作周りの実装は全て吉田さんの依頼で作られた?
吉田氏:
依頼は……してないですね。
皆川氏:
内製ツールの設計は、自分がグラフィック面で表現したいことをプログラマーに依頼して進めました。スーパーファミコンのハードウェア仕様や制約を考慮して実際のゲーム画面をどのように構成するか、そのために必要なツール側の機能は何かを考えて開発環境を用意してもらい、その上で吉田さんがビジュアルを創り出す、という分担です。
──当時、クエストにいらしたメインシステムを担当したプログラマーに対し、皆川さんが「ここにこういう機能を付けて欲しい、使う側としては便利だから」と実装を依頼していたと聞きおよんでいます。
皆川氏:
そうですね。メインシステムを担当したプログラマーがスーパーファミコン側のHERMITを実装していて、もう一人X68000に精通したプログラマーがいて、その方に「HERMIT」のマップ作成用ツール、キャラクターのエディットツールの2つをX68000で作成していただきました。
──「HERMIT」のマップ用ツールは把握していたのですが、これとは別にキャラエディターが存在したんですね。
皆川氏:
はい。 キャラクターに関してもスーパーファミコンの実装に合わせた管理ツールをX68000上で再現しました。キャラクターが装備や武器を変えた際のアニメーション確認や編集調整が標準のツールだと大変だったので、クラスや装備の変更を確かめやすくするために、ゲーム中の動作確認を素早く簡単にできるツールを作ってもらいました。
──そもそも、なぜX68000なのでしょうか? 当時のスーパーファミコンの標準的な開発環境はPC-9800だったと思うのですが。
皆川氏:
まずPC-9800が「1画面に16色しか出せない」、「画面解像度が違う」という大きな違いがありました。端的に言うと、テレビに映したときの映像が、PC側ではわかりにくいのです。実際にテレビに映した場合の表示を確認するには、任天堂さんの専用開発機材を通して、ブラウン管テレビにつなぐ必要がありました。
ただ、本作は様々なクラス(職業)と、武器装備をグラフィックに反映するゲームデザインなので、攻撃側と受け手側双方のクラスや装備を素早く切り替えながら、編集と確認ができる環境が無いと開発時間が足りなくなる懸念が大きく、そのためには専用のツールが重要だと判断しました。
そこでスーパーファミコンと遜色ない色数を同時に表示できて、テレビに近い解像度の画面を表示できるX68000をツールのプラットフォームとして選びました。
──なるほど。つまり『タクティクスオウガ』では任天堂さんが開発環境を提供していたなか、あえてクエスト内製のツールを作られたということですよね。それは当時、普通のことだったのでしょうか?
コンソールゲーム開発で「PC上でグラフィックを確認する」という意識が出始めたのって、ゲームエンジンが出てきたPlayStation 3、Xbox 360以降の考え方だったと思うのですが。
皆川氏:
他社さんの当時の事例をそれほど知らないので「普通」だったのかはわからないですが、本作『タクティクスオウガ』の場合、「HERMIT」がゲーム中に表示するBG(背景)データは、HERMIT専用のデータから動的に生成しているため、HERMIT専用のデータを作るツールは当然、「自分たちで作るしかなかった」というのが一番大きな理由です。
──『タクティクスオウガ』における動的に生成とはどういうものなんでしょう……?
皆川氏:
一般的なスーパーファミコンのゲームですと、背景に使う画像のチップを並べたデータ(BGスクリーンデータ)をROMカートリッジに保存しておいて、それを読み込むのが普通です。BGスクリーンデータは、スーパーファミコンのハード側のフォーマットなので、このデータは公式ツールで作成できます。
一方で「HERMIT」は、ROMカートリッジの中のマップを、32種類の柱状のパネルが、32×32の盤面に敷き詰められた情報で保存していて、その情報を元にHERMITがスーパーファミコンが表示できるBGスクリーンデータを都度生成しています。これを動的に生成している、と説明しました。このような特殊な描画手法のため、標準の開発ツールでは対応できませんでした。
──どうしてそんなややこしい仕様で描画することになったんでしょうか?
皆川氏:
ややこしいですよね(笑)。理由はふたつ。ひとつはデータの圧縮効率が非常に良いこと、もうひとつは試行錯誤の容易さです。
先ほど説明したように、「HERMIT」はBG素材を「柱状のデータ」にするんですが、こうするとデータの1つあたりのサイズが5ビット程度の小ささで済むんですよ。柱のパターンは全部で32種類あるんですが、これを組み合わせることで、最大で32×32という大きなサイズのマップもそれほど容量を圧迫せずに実現できているというわけです。
また、当初はあまり意識していなかったですけど、『タクティクスオウガ』のマップ量を普通の作り方で設定していたら、ミスやトラブルが多発してやってられなかった……というのもあると思います。最初はHERMIT固有のルール制約が複雑で難しい印象でしたが、最終的にはマップの追加や調整が非常に高速に行えるようになって試行錯誤が容易になったのも大きなメリットです。
吉田氏:
実際、僕も最初は全く意味がわからなかったですよ(笑)。ある日突然、このツールがやってきてメインシステムを担当したプログラマーから「これはこういうものだから、こう使ってください」「これは禁止事項です」とか言われて。
一同:
(笑)。
吉田氏:
「逆階段はダメです」「木は森みたいに配置することはできません」だとか。最終的にはできるようになったんだけど、なぜそのルールがあるのかが全く分からなくて。
メインシステムの担当プログラマーに一日中聞いていたけど、理解しないまま、「とりあえずもう、選べるか選べないかでやってください」って言われて(笑)。
──そうなんですか!? むしろ、吉田さんが「こうしたいから、こうしてくれ」というふうに、プログラマさんとやりとりしていたのかと思っていました。
吉田氏:
ないない!(笑)
それまでは普通にドットでクォータービューの絵を描いていたんですけど、「HERMIT」ができたことで、今の絵柄に変わっていったんです。描画やマップデータのルールが決まったことで、できること、できないことがハッキリしたからですね。
──ということは、開発自体は「HERMIT」ができる前から走り始めていたんですね。
皆川氏:
元々は「タクティカルRPGを作ろう」と思って作ったシステムではないんですよ。『伝説のオウガバトル』の後、「クォータービューの何かを作りたいな」となって、アクションゲームっぽいのを作ったり、ちょっと試作をしていたんです。
その時に開発チーム内で、「高さの要素を加えたシミュレーションRPGが作れるんじゃないの?」という話になり、『タクティクスオウガ』のゲームデザインが出てきたんです。
──つまり、「クォータービューのマップを効率よく作りたい」という必要が出てきて、「HERMIT」が作られたということでしょうか。
皆川氏:
そんな感じですね。メインシステムの担当プログラマーの設計としては、「できるだけ少ないBG素材でクォータービューを表現する」というところから来ていると思うんです。
「HERMIT」をスーパーファミコンの制約下で動くように基礎設計から細かい仕様調整まで担当していたのがメインシステムを担当したプログラマーで、X68000で動作するマップ編集ツールはHERMITのロジックを移植したものが動いています。
なので、あくまでもスーパーファミコン上で柱の形になったデータを並べたものから、クォータービューのマップを生成する仕組みを我々は「HERMIT」と呼んでいます。
──なるほど。開発効率に限らず、ゲームの設計上、必然性のあったツールということなのですね。
「HERMIT」は1秒あたり19000パネルを描画可能
──今回、「HERMIT」を「業界最古のゲームエンジン」という前提で話をさせていただいてますが、スーパーファミコンでエンジンの名前が出てくるゲームというのを、僕は他に知りません。
しかもロゴまで用意されていて、ゲームを起動して間もなく表示されています。それを作った理由とこの「MAX」と「19000」という数字や、「Version 1.3」という表記は何を意味しているのでしょうか?
皆川氏:
正直、バージョンについてはね……まったく覚えていないです!(笑)。
──(笑)。
皆川氏:
当時、クライマックスさんが出していた『ランドストーカー』【※】などのクォータービューのゲームではシステム名を付けているみたいなことがあったんですね。それをうちでもやって、「ちょっとキャッチーにした方がいいんじゃない」ぐらいの話だったと思いますね。
それで、バージョンや19000みたいな数字は「ロゴを出しただけでは締まらない」というので、付帯情報からひねり出した数字です(笑)。
といっても「19000」という数字は決してウソではなく、当時のプログラマーから「HERMITではスーパーファミコン上でパネル1個を1秒間あたり19000個も生成していますよ」という話を聞きまして。じゃあそれをスペックとして出そう、という感じでした。
※『ランドストーカー ~皇帝の財宝~』
1992年にセガから発売されたメガドライブ用アクションRPG。トレジャーハンターの主人公が幻の財宝を求めて大冒険を繰り広げる。2019年発売の『メガドライブミニ』にも収録されている。
──パネル1個って、クォータービューマップを構成しているあのパネル1個ですか?
皆川氏:
そうですね。実際のゲームプレイでは、ステージ開始時にマップ以外にもキャラクターの展開やいろいろな内部的な処理が走っているんですが、それらの処理を除いて純粋に「HERMIT」が行っている処理だけを計測すると、それぐらいのスピードが出ているという話でした。
──えっ、19000っていったら相当な数になりますよね……?
皆川氏:
マップの大きさは最大で32×32なので、1階層あたり1024パネルになるじゃないですか。それを20階層ぐらい積み上げると、それぐらいの速度となります。
──10段積み上げて10240……なるほど、20段積み上げると2万パネルぐらいになりますね。それだけの描画量を1秒で……。
バトルマップは全てプランナーが作成。それを可能にした「HERMIT」の利便性
──「HERMIT」のようなツールができたとなると、デザイナー以外もマップに触れる状況にあったのかと思っています。実際にプランナーさんがゲームデザインの観点からマップをエディットされることもあったのですか?
吉田氏:
実際のマップをエディットしたのはすべてプランナーさんです。自分は最初に「建物はこういう風に組みます」「こんな見せ方ができます」といったサンプルをいくつか作って、それをもとにマップを作ってもらった感じですね。
──デザイナーである吉田さんがマップをガツガツと作られていたのかと思っていたのですが、プランナーさんがやられていたのですね。一般的に、プランナーの方にマップデザインを任せると(失礼ながら)あまり見た目の良くないものも出てきてしまうと思うのですが……。
吉田氏:
マップを作るときって、どちらかというと「どんなバトルをさせたいか?」というのを重視して作っていたんですよ。なのでスタート位置とか敵の配置とか、バトルデザインを考えられるプランナーの方にお任せした方がいい。
あと、できてくるものにあまり不満が無かったというのもあります。絵心のあるプランナーがその辺をやっていたんじゃないんですかね。
皆川氏:
一応補足しますと、吉田さんがあらかじめいくつかの区画を作っておいて、それを参考にしながらコピー&ペースト機能で組み立てていくといったフローだったかと思います。元々の素材になるデータだけをいきなり渡してしまうと、さすがに見た目の良くないマップが作られてしまいますから。
補足 「プランナーが直接マップを編集できる」という利点
当時のシミュレーションRPGでは、まずプランナーが設計や仕様を決め、それに従ってデザイナーが実際のマップを制作していくというスタイルが一般的だった。しかしこの方法では、開発中に仕様変更や構造の調整が必要になった際、その都度プランナーとデザイナー間でデータのやり取りや意思疎通を行う必要があり、それだけのコストもかかる。
たとえば、プランナーが仕様を再設計し、デザイナーがマップを作成し、それをプランナーがチェックし、そこで一発OKならいいのだが、思ったとおりにできていなければ差し戻し、また仕様の設計からやり直し……といった具合だ。一方で『タクティクスオウガ』では「マップエディタ」としての機能も果たす「HERMIT」の利用によって、デザイナーではなく、ゲームプランナーがマップを直接編集できていた。このことにより、『タクティクスオウガ』の開発では上述のようなやり取りが省略され、作業が効率化された。こうして、プランナーはレベルデザインに専念することができ、ハイクオリティなマップを大量に実装することができたのである。
実際、『タクティクスオウガ』に収録されたマップは120ステージ以上におよぶ。発売時期を同じくする名作シミュレーションRPG『フロントミッション』でも全30ステージほどであったことを踏まえれば、『タクティクスオウガ』のボリュームがどれほど圧倒的なものかがわかるだろう。