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『Fate/Samurai Remnant』は圧倒的な力量差のある「人間VSサーヴァントの戦い」をアクションゲームで表現することに挑戦している!「聖杯戦争を作りたい!」と熱望していたPに話を聞いてみた【TGS2023】

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 2004年の『Fate/stay night』にはじまり、数多くの派生作品が生み出されてきた『Fate』シリーズ。その歴史に新たな1ページを刻むのが、コーエーテクモゲームスが手がける新作『Fate/Samurai Remnant』だ。

 『真・三國無双』シリーズを筆頭とするさまざまなタイトルで知られる「ω-Force」ブランドが手がける本作の特徴は、ずばり「マスターを主人公にしたアクションゲーム」であること。

 ご存じの方も多いと思うが、『Fate』シリーズにおいては過去の英雄を召喚した「サーヴァント」が圧倒的な力を持つ。本作の主人公・宮本伊織は「宮本武蔵」の弟子である凄腕の剣豪ながら、相棒のサーヴァント・セイバーには「弱い」と断じられてしまう。それほどまでに、『Fate』世界では基本的に人間とサーヴァントには明確な力の差があるのだ。

 『Fate/stay night』の主人公もマスターの一人であり本編でサーヴァントに屠られるシーンがあるが、同作がビジュアルノベルであるのに対して『Fate/Samurai Remnant』はアクションゲーム。力で劣る立場とはいえ、自ら動かして戦う爽快感を捨て去ればゲームとしての魅力に欠け、逆に自分が“無双”してしまえば『Fate』シリーズの世界設定を破綻させてしまう。

 一見すると非常に困難なこの課題に、開発チームはどう取り組んだのか? そして最終的に『Fate/Samurai Remnant』はどのような作品になっているのか?

 今回のインタビューでは本作のプロデューサーであり、また「ω-Force」ブランド長でもある庄知彦氏に『Fate/Samurai Remnant』の挑戦や開発の背景、そして本作の見どころをご紹介いただいた。9月28日(木)の発売を待ちかねている方に、少しでも本作の魅力をお届けできれば幸いに思う。

『Fate/Samurai Remnant』インタビュー【TGS2023】_001

文・取材/久田晴


「人とサーヴァントの力の差」を表現しつつ、誰もが楽しめるアクションを目指して

──本日はお時間を割いていただき、ありがとうございます。『Fate/Samurai Remnant』(以下、Fate/SR)、TGSブースでの試遊も大変楽しませていただきました。

庄知彦氏(以下、庄氏):
 それは良かったです(笑)。本日はよろしくお願いします。

──まず『Fate/SR』と言えば、当たり前の話ではありますが『Fate』シリーズの新作ですよね。ただこの『Fate』シリーズというのは元を辿るとノベルゲームであり、昨今でメジャーな『Fate/Grand Order』(以下、FGO)もRPGの形で展開している。となると、本作のメインターゲットはアクションゲームになじみの薄いユーザーさんになるのかな、と思います。

 こうした背景を踏まえたうえで、コーエーテクモゲームスさんの側で特に気を使ったポイントなどがあれば、ぜひお聞きしたいなと。恐らくそれが本作のゲームプレイの要である、“サーヴァントの強さ”というところにも絡んでくるのではないかと考えております。

庄氏:
 気を使ったポイントはめちゃくちゃあります(笑)。なのでふたつに絞ってお話していくんですが、ひとつは「『Fate』らしい体験」をどうアクションに落とし込むか、というところです。

 本作の初期からのコンセプトとして「聖杯戦争をマスター視点のアクションで作ろう」というものがありました。ただ「マスター」というのは基本的には人の身ですから、『Fate』シリーズのルールに則るのであれば、サーヴァントの圧倒的な力の前には瞬殺されてしまってもおかしくないわけですよね。

 しかも、プレイヤー側にも味方のサーヴァント・セイバーがいますので、単純に考えるとセイバーが敵を全滅させてしまい、プレイヤーは見ているだけになってしまいます。こういった理由から、「マスター」を主人公にしたアクションゲームを作るというのは非常に難しい挑戦でした。

━━なるほど。

庄氏:
 とはいえ本作の主人公・宮本伊織は、かの剣客・宮本武蔵の一番弟子ですから、彼自身のアクションの楽しさも出さなくてはいけません。なので「伊織を操作して戦う楽しさ」と「人とサーヴァントの力の差」の両方を表現するというのが、本作の制作にあたって特に気を使った部分になります。

 またおっしゃる通り、『Fate』シリーズはノベルゲームをメインに展開してきた作品ですので、アクションになじみのないファンの方も少なくないと思います。そういったファンの皆さんが「アクションだから遊べない」となってしまうのは非常に残念なことですので、アクションゲーム初心者の方でも楽しめるというところも強く意識していますね。

 これはアクションに限らずゲーム全体の話でもあるんですが、ふだんはテキストアドベンチャーやRPGを主に遊ばれている方も楽しめる、そういったアクションRPGの形を模索してきました。

──ありがとうございます。「サーヴァントとマスターの力の差」というのは、本日試遊してみて“鍔迫り合い”のシステムですごく強く感じました。連打で押し返そうとするんですけど、全力でがんばっても敵のサーヴァントに押し切られてしまうんですよね……。

庄氏:
 基本は無理だと思います(笑)。やはり人とサーヴァントの違いというものを色々なところで体験していただきたいので、バランス調整もふくめて随所にそういった要素を取り入れています。

 TGSの試遊版は瞬殺こそされないようなものになっていますが、やはりサーヴァントに負けてしまうというのは大いにあり得る話だと思っています。そのうえでアクションが苦手な人も詰んでしまうことがないよう、手を凝らしてバランスを調整したり、さまざまな攻略法を用意したりと工夫しております。

──試遊していて「回復アイテムの使用時に時間が止まる」というのは、すごく気を使われているポイントのひとつだな、と感じました。

庄氏:
 まさにそうですね! どんなに激しく戦っていても、吹っ飛ばされていても、「ヤバい!」と思った時にアイテム選択画面を開くボタンさえ押せれば、取り返しがつくように意図した仕様です。

 アクションゲームって取り返しのつかない緊張感のようなものもふくめて魅力ですので、時間を止めて安全に回復できるという要素を入れるのは判断の難しいところでした。ただ本作に関しては、こうした方が多くの人に楽しんでいただけると考えて採用しています。アクションが得意な方はぜひ、アイテムを使わずに攻略していただきたいですね(笑)。

 TGSに出展している試遊版は緊張感もありながら、ある程度攻略がしやすいような調整をしていますので、ぜひ皆さん現地で楽しんでみてください。

巴比倫弐屋(ばびろにや)の“若旦那”は「どうしても出したい!」とコーエー側から熱烈アピール

──ありがとうございます。今回の試遊で言うと「逸れのサーヴァント」を使えるのもひとつ見どころでしたが、すでに公開されている7騎で全員と考えていいのでしょうか。

庄氏:
 はい、各クラス1騎ずつが登場します。ただ全員がアクションパートで操作できるか、と言われるとその限りではないですね。それぞれシチュエーションが異なりますので、ぜひゲームを実際にプレイして「こいつ、ここで味方になってくれるのか!」みたいな楽しみ方をしていただけると嬉しいですね。

──今回の試遊では逸れのランサーこと「クー・フーリン」がプレイアブルとなっていましたが、サーヴァント同士のアクションの差別化ってどのようにされているんでしょうか……?

庄氏:
 これが非常に難しいところでして……。

 まず、人とサーヴァントの差別化はまだやりやすい方だったんですね。それでも苦労はあって、まず主人公・伊織も剣客なので、その辺の人間相手であれば余裕を持って戦えるような強さに設定してあります。そのうえでサーヴァントであるセイバーは「どのくらい振り切ってしまっていいんだろう?」というさじ加減の塩梅は試行錯誤を繰り返しました。最終的にはここまで強くしておけば気持ちよく遊べて、サーヴァントの強さも表現できているだろうというラインを見つけられたと思います。

 でもサーヴァント同士を差別化するとき、どちらかが明確に強いと感じてしまうような作り方はできないじゃないですか。なので。1騎ずつの特徴をどう表現するかという方向に特化することにしました。

 実際にやったこととしては、まずプレイヤー側で操作するときの技による差別化がひとつあります。もうひとつは敵対した場合の描き方ですね。時には敵に、時には味方に……という展開は『Fate』らしさの一角だと思いますが、敵として対峙したときのシチュエーションも一辺倒にならないよう、アクションだけでなくキャラクター性までふくめて異なる味を出せていると思います。

──物語の中でサーヴァントたちとどのように出会うのか、いっそう楽しみになりました。ところで「逸れのサーヴァント」については『FGO』から参戦しているキャラクターも目立ちますが、このあたりの選定の意図はどういったものなのでしょうか。

庄氏:
 まずメインの聖杯戦争「盈月の儀」に関連するサーヴァントについては、やはり物語の設定から決まっていきました。

 一方で「逸れのサーヴァント」については既存のファンの方に響くキャラクターをできる限り登場させたい、という意図がより強く出ていると思います。なのでいくつかは既存のサーヴァントから人気のものを選りすぐって登場させ、同時にせっかくの完全新作タイトルですから、新しいサーヴァントも用意しているという具合ですね。

 もちろん単なる人気の高さだけでなく、クラスや男女比も考慮し、そして何より物語全体を俯瞰して見たときに違和感のないよう選定しました。最終的な決定は『Fate』シリーズ全体のことも踏まえてTYPE-MOONさんに下していただいています。

──気の早い話になってしまいますが、本作オリジナルのサーヴァントが『FGO』に出張するようなことは……。

庄氏:
 私個人の希望としては「出してください!」に尽きますね(笑)。私自身も『FGO』をすごく遊んでいますので、ぜひお願いしたいと思っております。

──ぜひ期待したいですね……! あとサーヴァントではないですが、注目を集めているキャラクターとして巴比倫弐屋(ばびろにや)の「若旦那」の存在は外せないのかなと。ちょっとどなたとは申し上げにくいんですが……。

『Fate/Samurai Remnant』インタビュー【TGS2023】_002
(画像は『Fate/Samurai Remnant』公式サイトより)

庄氏:
 いえ、若旦那は若旦那ですよ(笑)。彼については我々の側から「どうしても出したい!」と熱烈なアピールをして、登場させることが決定しました。『Fate』シリーズのファンの方に喜んでいただくため、彼の存在は欠かせないなと思いましたので。

 ただ、彼をどういった立ち位置で登場させるか? という点についてはTYPE-MOONさんがすごく丁寧に一緒に考えてくださいました。単なるファン目線で「これやりたい!」というだけではゲームとして良いものにはなりませんので、話し合いを重ねながらこういった形に落とし込めたのは良かったのかなと。

──SNS上などでは本当に話題になっていましたので、まさに見せ方としては大成功と言えるんじゃないでしょうか。

庄氏:
 インターネット上がどよめきましたね(笑)。狙い通りの成果を出せたんじゃないかと。

──キャラクターデザインについては『英霊剣豪七番勝負』コミカライズの渡れいさんが中心ということで。『FGO』ファンの間で人気のある作家さんなのかなと。

庄氏:
 はい、今回は武内崇さんともご相談のうえ、本作におけるイラストの顔役は渡れいさんにお任せしています。サーヴァントについては『FGO』等で実績のある本庄雷太さん、pakoさんらをアサインしていただいたという形ですね。

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ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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