いま読まれている記事

癒しの声を持つ世界の歌姫はアニメ・ゲームに救われた少女だった──『ゼノブレイド』『約束のネバーランド』の歌唱で知られるアーティスト、サラ・オレインさんが語る新アルバムに込めた「たくさん逃げていい」という想い

article-thumbnail-250711p

1

2

ゲーム音楽の作曲家は、みんな「変態」で「普通の人」

── さきほど、Chip Tanaka(田中宏和)さんのお話もありましたが、サラさんは、多くの有名なゲーム作曲家の方々とお仕事をされています。作曲家のみなさんには、どういった印象がありますか?

サラさん:
みんないい意味で「変態」だと思います。

── (笑)。

サラさん:
そうじゃないと、あれほどのファンタジーな世界観の音楽は作れないと思うんです。

数年前、坂本英城さん【※1】が沖縄で開催された「沖縄ゲームタクト」というコンサートで、イトケンさん【※2】や、下村さん【※3】といった多くの作曲家さんたちとお会いしたのですが、実際にお話してみると、とてもおもしろいんですよ。

みなさんと一緒にいると本当に賑やかで、音楽以外の話もすごく話しやすかったです。みんな個性的ですが、すごくいい人ですね。

話す内容や考え方、発想がおもしろいんですよね。私自身もそうですが、作曲家のみなさんは音楽だけではなくいろいろなものに興味を持って表現に取り入れられていて、すごくクリエイティブだなと感じます。

作曲家の方々が、すごくクリエイティブで本当にいい人たちだということは、みなさんが作られた音楽を聴いていただければわかると思います。

※1 作曲家。ノイジークローク代表取締役。『龍が如く2』『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』『428 ~封鎖された渋谷で~』『勇者のくせになまいきだ』シリーズなどのゲーム音楽の作曲で知られている。

※2 作曲家の伊藤賢治氏。自主レーベル”gentle echo”主宰。代表作は、『サガ』シリーズ、『聖剣伝説』シリーズ、『カルドセプト セカンド』『デビルサバイバー2』など。

※3 作曲家の下村陽子氏。『ストリートファイターII』『スーパーマリオRPG』『LIVE A LIVE』『KINGDOM HEARTS』シリーズなどの作曲で知られている。

── 作曲家の方たちについて、印象的なエピソードはありますか?

サラさん:
「変態」とは真逆のことを言うようですけど、お話をしていて感じるのは、いい意味で「普通の人」でもあるということですね。

私の場合はChip Tanakaさんとお会いしたときがそうだったのですが、みなさんも好きなゲームの音楽を作曲をされた方にお会いするときって、まるで神様に会っているかのような感覚になると思うんです。

なのに、みなさん対等に話してくださって「普通」なんです。
私がこれまでに出会ったみなさんは、もちろんずば抜けた個性をお持ちではあるんですが、本当に謙虚なんです。

そして、「私と一緒」と言ってしまうと失礼かもしれませんが、意外と緊張しながら作曲をされていたりいろいろな悩みをお持ちだったり、「神様みたいな存在だけど、神様じゃなくて同じ人間なんだな」と、実際にお話をさせていただいて感じました。

サラ・オレインさんインタビュー|『ISEKAI - Anime & Video Game Muse』リリース記念_006

── サラさんが最初にお会いしたゲーム音楽の作曲家さんは、『ゼノブレイド』の光田さん【※】かと思います。「Beyond the Sky」はサラさんのデビュー曲でもありますが、どういった経緯で歌唱されることになったのでしょうか?

※作曲家の光田康典さん。『クロノ・トリガー』『ゼノギアス』『マリオパーティ』『イナズマイレブン』などのゲーム音楽の作曲で知られている。

サラさん:
光田さんがネイティブな英語をしゃべれて歌える人を探していらっしゃるときに、私と同じオーストラリア出身の方があいだに入ってつないでくださったんです。

オーディションに応募したわけではなく、タイミングとご縁があって、光田さんとお仕事をさせていただくことができた、という感じです。当時、バイオリンはやっていましたが、プロとして歌ったことはありませんでしたから。

── レコーディング時のことは覚えていらっしゃいますか?

サラさん:
すべてが新鮮でした。私はそれまでRPGを遊んだことがありませんでしたし、レコーディングのときにブースに入るという初経験をして、そこで初めて自分の歌声を聞きました。

── そのとき、率直にどのような感想をお持ちになりましたか?

サラさん:
もう違和感しかないですよ(笑)。

みなさんも電話や録音した自分の声を聞いてみると違和感があると思うのですが、同じ感覚ですね。自分の歌声には違和感しかなかったです。

最初に歌ったときは、光田さんから「イメージと違う」と言われました。なので何度も歌い直しましたし、特定のフレーズをカットして、その部分だけを歌ったりもしました。

どういう仕組みでレコーディングが進んでいくのかすら理解していなかったので、「1曲通して歌うんじゃなくて、こんな風に切ったり貼ったりして曲を作るんだ」というのが、ちょっとだけショックでしたね。

でも、レコーディングが終わったときに、なんとなく光田さんの意図がわかったような気がしたので、ダメもとで「光田さん、最後にもう1回だけ歌っていいですか?」と伝えたんです。光田さんはやさしいので「いいですよ」と言ってくださって。

じつは、このときに歌った最後のワンテイクが、フルで切り貼りせずに『ゼノブレイド』で使われることになったんです。

── レコーディング中に光田さんからアドバイスはあったのでしょうか?

サラさん:
アドバイスというよりは、やり取りをしているうちに、自然に光田さんの意図する世界観が見えてきたような感じでした。

これは偶然ですが、私がゲーム音楽に初めて携わらせていただいた『ゼノブレイド』の発売日が6月10日で、今回の「ISEKAI」の発売前日が6月10日だったんです。

私にとって「Beyond the Sky」はすごく大事な楽曲ですし、深い縁を感じました。

── アルバムには、光田さんが作曲された『クロノ・クロス』の「Radical Dreamers」のカバーも収録されていますよね。

サラさん:
私が留学生として日本に来ていたときに、日本好きの友達から「Radical Dreamers」っていう綺麗な曲がある」とオススメしてもらったのが最初で、その友達とカラオケで一緒に歌ったりしていたんです。

そんな曲を、光田さんとカラオケに行ったときにご本人の前で歌ったのは、いい思い出です(笑)。

── 光田さんとカラオケに行かれたのですか!?

サラさん:
はい(笑)。

まさか、その数年後に光田さんの『クロノクロス』のツアーに呼んでいただいて、実際にライブで歌わせていただけるとは思ってもいませんでした。

── (笑)。

サラさん:
カラオケの思い出でいえば、坂本英城さんともカラオケに行きましたね(笑)。

『ゼノブレイド』をキッカケにたくさんの作曲家さんに知っていただけるようになって、坂本さんと「The Final Time Traveler」を作ることになったときに、坂本さんは私の声のレンジに合わせた曲を作りたいと考えていらっしゃったんです。

でも、まだ私はメジャーデビューもしていなかったですし、音源もほとんどありませんでした。そこで、「だったらカラオケに行ったほうが早いんじゃないか」ということになり、坂本さんとカラオケに行くことになったんです。

──なるほど。そういった経緯があったんですね。

サラさん:
いま考えると変ですよね(笑)。でも、カラオケでいろんな曲を歌わせてもらいました。そのカラオケ会があったすぐあとに、坂本さんは「The Final Time Traveler」を書かれたんです。

── これまたすごいお話ですね。

サラさん:
「The Final Time Traveler」は、フィギュアスケートの羽生結弦選手とコラボをさせていただいたことも、大きな思い出のひとつですね。

── どういった経緯でコラボが実現したのですか?

サラさん:
羽生選手がゲーマーで『タイムトラベラーズ』が大好きだというところから実現しました。「The Final Time Traveler」がゲームの世界から飛び出して、フィギュアスケートの世界でも知られる曲になったことは感慨深かったです。

坂本さんがコラボの記念として、「The Final Time Traveler」は高音が活かされている曲だから」と、高音が綺麗にとれるマイクをプレゼントしてくださったこともすごくうれしかったです。

そのときいただいたマイクは、いまでもずっと大事にしていて「ISEKAI」の限定盤のジャケットにも大切なアイテムのひとつとして写っています。

サラ・オレインさんインタビュー|『ISEKAI - Anime & Video Game Muse』リリース記念_007

── ジャケットのマイクには、そういったストーリーがあったんですね。

サラさん:
ジャケットにもいろいろなこだわりがありまして、それぞれのアイテムたちにもサイドストーリーがあります。

── サラさんが逆さまになっているのもインパクトがありますよね。

サラさん:
異世界に舞い降りる様子をイメージしてデザインしました。

アルバムを紹介しているサイトなどでは私の頭が下向きになった状態で掲載されていますが、たまに私の頭を上向きにして逆に持つ方がいらっしゃるんです(笑)。

でも、ジャケットに書かれた私の名前とアルバムタイトルは、頭を上向きにしていないと読めないんですよね。どちらにも見えるし、どちらでもない。このデザインには「SEIKAI―正解なんてない」という意味を込めています。

あと、私はダジャレが結構好きで、「ISEKAI」という言葉は、英語の「Sky」の響きを持っているんですよね。「Beyond the Sky」もそうですが、空というのは多くの作品で印象的に描かれているものだと思います。

なので、いろいろな空、いろいろなSkyに旅をするという意味を込めて、ジャケットには絶対に空を描きたいと思っていました。

アドバイスをされたことはほとんどない。信頼して、新しい魅力を引き出してくれた。

── これまでに作曲家の方からいただいたアドバイスで、印象的なものはありますか?

サラさん:
じつは、あまりアドバイスはいただいていないんですよね。

さきほどお話したように、「Beyond the Sky」では光田さんから「イメージと違う」と言われましたが、それ以降は私のために作ってくださる曲が増えてきたんです。

『約束のネバーランド』の「イザベラの唄」も、私が歌うことに決まる前から、私の声に合わせて小畑さん【※】が作曲してくださったそうです。

アニメで歌わなければいけない声優さんが、すごく苦労して歌われたとお聞きしました。

※作曲家の小畑貴裕氏。『約束のネバーランド』『ニンジャラ』『ぷにるんず』『〈小市民〉シリーズ』などの作曲で知られる。

── サラさんをイメージして作曲された、そのほかの楽曲も教えてください。

サラさん:
「The Final Time Traveler」や「Sunbreak」もそうですね。

あとは、なるけみちこ【※】さんが作曲された『百英雄伝』の「Flags of Brave」も、私の声をイメージして作っていただいた楽曲です。

この曲にはバラードの要素だけでなくシャウトもありますし、「最後は自由にスキャットしてほしい」と言われたので、そこは自由に歌わせていただきました。ですので、ほかの曲よりも力強い曲になっていると思います。

※作曲家。代表作は、『ワイルドアームズ』シリーズ、『ノーラと刻の工房』『天使の詩』シリーズ、『百英雄伝』など。

── サラさんの歌声は「癒し」のイメージがありますが、なるけさんはどういった意図からサラさんに力強い曲を託されたのでしょうか?

サラさん:
なるけさんが私のコンサートに来てくださったときに「My Way」【※】のカバーを歌ったのですが、それを聞いたなるけさんが、「こういうテンションの曲を作ってみたい」とおっしゃっていて、そのあとに「Flags of Brave」を作曲されたんです。

※フランク・シナトラの大ヒット曲。原曲は、シャンソンの「Comme d’habitude」。

──サラさんがこれまでに歌われてきた中で、苦労をされた作品はありますか?

サラさん:
作曲家さんたちが本当に丁寧にやり取りをしてくださるので、そこまで苦労をしたということはないと思います。

『サガ・エメラルドビヨンド』では、主人公のひとりであるディーヴァ・ナンバー5が歌う「Crazy for Who?」の英語歌詞と歌唱を担当させていただいたのですが、スクウェア・エニックスの河津さん【※】と、すごく念入りに「これでいいのか」「この世界観でいいのか」というやり取りをさせていただきました。

ただ歌うだけではなくて、直接クリエイターさんとやり取りができたというのは、私にとって貴重な経験でしたね。

※河津秋敏氏。『サガ』シリーズの生みの親として知られ、『ファイナルファンタジー』シリーズや『聖剣伝説』シリーズなど、さまざまなゲーム開発に携わっている。

── 「Crazy for Who?」はイトケンさんが作曲を手がけていますが、曲が先にあってから詞を作られたのですか?

サラさん:
イトケンさんが先に曲を作られていますね。
この曲は、イトケンさんにとっても珍しいスタイルの曲だったとお聞きしました。

私はずっとバラードのような綺麗な曲を多く歌わせていただいていたのですが、ディーヴァ・ナンバー5は、歌って踊れるロボットアイドルなんです。

なので、「やっとアイドルの曲を歌える!」という嬉しさがありました。ですので、すごく楽しかったですね。

── 「Crazy for Who?」を歌唱されるにあたって、河津さんからどのようなお話があったのですか?

サラさん:
アイドルソングだから、世界平和のような壮大なテーマはやめてくださいというお話がありました。

「恋ならいいよ」という感じだったので、そういった方向性で作詞をしましたが、英語を訳してみると、結構攻めたことを言っています(笑)。

── 「Crazy for Who?」のラップパートは圧倒されました。

サラさん:
ありがとうございます(笑)。

現場で「ここでラップしてみたら?」という提案をしていただいたので、あの歌ではじめてラップに挑戦しました。

そういった意味でも、この曲はほかの曲とは違う空気感を持っているので、すごく開放的に歌うことができましたね。

サラ・オレインさんインタビュー|『ISEKAI - Anime & Video Game Muse』リリース記念_008

── ちなみに、ラップの歌詞を書かれたときは、すぐにオッケーになったのですか?

サラさん:
はい。ですから「英語だけど、歌詞の意味はちゃんと理解されているんだろうか?」って思いましたね(笑)。

── (笑)。

サラさん:
でも、エンジニアさんはネイティブの方だったので、問題はなかったんですね。
リズムを大事に、かっこいい感じにしたいなと思いながら作詞をしました。

いろいろなお仕事をさせていただいていますが、本当にうれしいことに、作曲家のみなさんから信頼していただいているのを感じますね。「こうじゃないといけない」と言われることはほとんどなくて、自由に表現をさせていただいています。

── 「Crazy for Who?」のように、サラさんのイメージとは少し違うテイストの曲をオファーされるのは、信頼があるからこそだと思います。

サラさん:
いままでバラードやクラシックのような歌を歌ってきていたところに、ディレクターさんが意外な組み合わせの曲を持ってきてくださったのは、とてもうれしかったですね。

私の新しい魅力を引き出してくださるような現場は、本当に楽しいです。

歌詞が存在しなくても、歌詞が架空の言語でも、感情を大切に歌うことは変わらない。

── 先ほど、「The Final Time Traveler」についてのお話がありましたが、この曲の日本語版はイシイジロウさん【※】が作詞を手がけています。サラさんは、日本語の歌詞をもとに英語の作詞を担当されたわけですが、どのようなことに気を遣って作詞をされたのでしょうか?

『タイムトラベラーズ』『428 〜封鎖された渋谷で〜』『金八先生 伝説の教壇に立て!』『文豪とアルケミスト』などを手がけたゲームデザイナー。

サラさん:
直訳とまではいきませんが、イシイさんの思いをものすごく大事にしました。

なるべくイシイさんの言葉に沿う形で作詞をしましたが、英語と日本語の違いもあって、難しい作業になりましたね。

英語は日本語よりも入れられる言葉の数が多いので、作詞をするときにはもっと多くの情報が必要でした。『タイムトラベラーズ』は、阪神淡路大震災を忘れないようにという思いが込められた作品ですので、イシイさんの思いを大事にしつつ、そういったインスピレーションを英語で表現しています。

歌詞の話で思い出しましたけれど、日本語版のサビの「Aah……」の部分には、じつは最初の段階では歌詞があったんですよ。でも、言葉では表現しきれない「切実な想い」を表現するためには、歌詞がないほうがインパクトがあると思いまして、歌詞をなくすことを提案させていただきました。

みなさんと話し合いをして、イシイさんも坂本さんも「いいよ」と言ってくださったので、サビは声と音だけという形になりました。

── ちなみに、いくつかの曲はアレンジバージョンとなっていますが、アレンジもご自身で手がけられたのですか?

サラさん:
そうですね。今回のアルバムには、アレンジャーさんとコラボして編曲したものもあれば、私が全部編曲したものもあります。

私、ローズ・ピアノ【※】の音色がすごく好きなんですよ。ですので、「The Final Time Traveler」はあえて歌とローズ・ピアノだけの構成で作っています。このアレンジについては、坂本さんと相談しながら決めていきました。

もともと「The Final Time Traveler」については、日本語バージョン・英語バージョン・ピアノバージョンといった形で、これまでにも何度かセルフカバーをしていたので、つぎにセルフカバーを発表するのであれば、年齢を重ねたからこそできる表現をしたいと思っていました。

最初にご相談したときは、もう少し違う方向性でのアレンジを考えていましたが、坂本さんが「原曲とまったく違っていてもいい。メチャクチャにしていいです」と言ってくださったので、クラシックにルーツをお持ちの坂本さんが「想像できない」とおっしゃったジャズアレンジをすることに決めました。

── なるほど。

サラさん:
そこで、ジャズが得意な方と一緒に、ローズ・ピアノと歌だけのアレンジをすることにしました。ローズ・ピアノはバンドのようにいろいろな種類の楽器がある中でより輝くタイプの楽器なので、おそらくこの構成は珍しいと思います。

加えて、語りかけるように歌いたかったので、キーも思いっきり下げています。かなり原曲を崩してはいますが、イシイさんや私が歌詞に込めた思いをすごく大事にして歌わせていただいています。

── サラさんは英語と日本語が堪能で、両言語で歌われることもあります。言語によって歌い方に変化はあるのでしょうか?

サラさん:
私にとって日本語は母国語ではないですし、母音が多いので、日本語で歌うほうが表現が難しいという違いはありますが、大事なのは歌詞の内容ですね。言語を問わず、メッセージや物語を音として自然に表現しています。

── 『モンスターハンターライズ:サンブレイク』の「Sunbreak」では、架空の言語であるモンハン語でも歌われています。こういった架空言語の場合も、歌詞として単語の意味を意識しながら歌っているのですか?

サラさん:
「Sunbreak」の場合は、英語版の歌詞も日本語版の歌詞もあるので、それらの歌詞を意識しつつ、ゲームの内容をちゃんと把握するというアプローチで歌いました。

架空とは言っても、「モンハン語」という言語であることに間違いはないですから。

大学で言語学を専攻していたので、架空の言語で歌うという経験ができたことはうれしかったですね。「Sunbreak」には、英語・日本語・モンハン語の3つのバージョンがあるので、せっかくだから全部を混ぜて歌いたいなと思い、ライブではトリリンガルバージョンを披露しています。

「ISEKAI」に入っている「Sunbreak」は、そのトリリンガルバージョンを初めて披露したときのライブ音源になっています。

言語が違うとは言っても、ただただ綺麗に音を乗せるのではなくて、やはり感情が大事。楽器と同じ感覚ですね。ただ音を弾いているわけじゃなくて、音のバックには感情があるんです。

── 楽器の演奏と同じ感覚という説明でイメージできました。

サラさん:
歌詞という話ですと、「イザベラの唄」は歌詞がないんです。

事前に『約束のネバーランド』のマンガを読んで、ストーリーの内容と歌の重要性がわかっていたので、ネタバレになりすぎないように、お母さんが子どもに歌うララバイをイメージしながら、感情をすごく大事にして歌いました。

歌詞がなかったとしても、架空の言葉だったとしても、歌うときにいちばん大事にしているものは感情です。歌うときは、その物語やキャラクターが抱えている思いを強く意識しています。

──なるほど。最後になりますが、サラさんからのメッセージをお願いします。

サラさん:
いちばん伝えたいのは、「がんばらなくていいですよ」ということですね。

みなさんポジティブに「がんばってね」とか「がんばってください!」と言ってくださるのですが、この言葉は私にとって、大きなプレッシャーになるんです。

悪気がまったくないということはわかっているのですが、私は「もう十分がんばってます」と感じてしまうので、「無理はしないでくださいね」という言葉をかけるのがちょうどいいんじゃないかなと思います。

みんな生きてるだけで十分がんばっていると思うので、一度しかない人生ですから、自分のことを本当に、本当に大事にしてほしいですね。もしも辛くなったときは、まずは自分のことを大切にしてあげて、ゲームをプレイしたりアニメを見たり、たくさん逃げてほしいです。いくらでも逃げていいんです。

そして、「異世界」からこっちの世界に戻ってきたら「生きて」と伝えたいですね。


数多くのゲーム・アニメ音楽の歌唱を担当されているサラ・オレインさんに、アニメとゲームに対する思いや、これまでに参加されてきた作品の思い出などについて話をうかがった。

「うまく歌うことよりも、感情を届けられるかどうかがいちばん大事」と語るサラさんの音楽への向き合い方からは、曲やゲームを作り上げたクリエイターへの大いなるリスペクトと、表現者としての高い意識が感じられた。

また、不登校や差別など、辛い幼少期を過ごしたサラさんにとって、アニメ・ゲームはかけがえのない「逃げ場所」であり、その存在に救われて、現在のサラさんの活動があるということがうかがえた。

正解のない世界の中では、誰しも悩みを持つもの。

行き場所がないと感じたときには、サラさんの作り上げる癒しの異世界に逃げ込み、サラさんの歌声を聞きながら、人生を変えていくキッカケにしてみてはいかがだろうか。

──
<アルバム情報>
ISEKAI – Anime & Video Game Muse

<収録曲>
1.Beyond the Sky -Bilingual Vers. [ゼノブレイド] (LIVE at Tokyo International Forum)
2. イザベラの唄[約束のネバーランド] (LIVE at Suntory Hall)
3. Flags of Brave -Sarah ÀlainnVersion [百英雄伝]
4. Eight Melodies -Sarah ÀlainnVersion [MOTHER]
5. 水の星へ愛をこめて[機動戦士Ζガンダム]
6. Sunbreak -Trilingual Vers. [モンスターハンターライズ:サンブレイク] (LIVE at Tokyo International Forum)
7. アイドル[推しの子] (LIVE at Billboard Japan)
8. CRAZY FOR WHO? [サガエメラルドビヨンド]
9. Radical Dreamers -Bilingual Vers.[クロノクロス] (LIVE at Suntory Hall)
10. The Final Time Traveler -Sarah ÀlainnJazz Version [タイムトラベラーズ]
11. SAYONARA [さよなら銀河鉄道999 —アンドロメダ終着駅—]
12. Flags of Brave [百英雄伝]
──

1

2

ライター
レトロゲームから最新ゲームまで、面白そうだと感じた家庭用ゲームを後先考えず手当たり次第に買い漁る男。500を越えてから、積み上げたゲームを数えるのは止めました。 ディズニーアニメ・お笑い・音楽・漫画などにも広く浅く手を伸ばし、動画投稿者としても蠢いています。
Twitter:@DuckheadW
副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ