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キャラビジュがとにかくいい『怪獣8号 THE GAME』の3Dモデルは職人の“妄想”から生み出されていた── 開発の中核を担うアートチームに訊くキャラクター造形の極意。追及したのは原作には”存在しない顔”?

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『怪獣8号』のキャラクターが飛び出してきたみたいだ──。

8月31日より正式サービスが始まった『怪獣8号 THE GAME』に登場するキャラクターたちをひと目見てそう思った。

原作漫画とアニメを両取りしたようなキャラクターデザイン。ビジュアルが……ビジュアルがいい。そして、アニメとはまた違う動きを見せてくれるキャラクターたち。『怪獣8号』の世界がそこに感じられた。

ゲーム版『怪獣8号』開発陣インタビュー:開発の中核を担うアートチームに訊くキャラクター造形の極意_001

そして、この『怪獣8号』らしさについては、どうやらキャラクターモデル制作担当者の「妄想」によるアプローチによって表現されているものらしいのだ。

妄想……??

どういうことなのか。不思議に思う方がほとんどだろう。取材の場でその言葉を聞いたとき、筆者も同じ気持ちだった。しかし、話を聞いていくと腑に落ちるものだった。

というのも、本作の3Dモデルを作るうえでなにより大事にしているのが、キャラクターの「シルエット作り」

そのために、そのキャラクターがどのような人生を送ってきたのか。どのような食事をして、スポーツをしているとしたらどんな競技なのか。それゆえにどんな性格をしているのか。それらを作品を何度も読み返しながら、妄想を積み上げていく。それにより、そのキャラクターらしいシルエットが出てくるのだそうだ。

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そして、キャラクターの「顔」を表現するうえでのアプローチも興味深いものだった。

どうやら、原作漫画の特定のコマ、アニメの特定のシーンを再現しているわけではなく、複数の参考画像から「そのキャラのベースとなる顔」を探り、それらから平均値をとり、3Dモデルに落とし込んでいるのだという。つまり、原作・アニメには存在しないキャラクターの「顔」をある意味では「妄想」して作っているわけだ。

その結果なのかはわからないが、『怪獣8号 THE GAME』に登場するキャラクターたちの表情は、3Dモデルなのにもかかわらず、不思議と原作漫画・アニメの雰囲気に近い作りになっているように思える。

そんな『怪獣8号 THE GAME』において、キャラクターデザインの中核を担っているのが、今回お話をお聞きするのが黒薮氏と川島氏のおふたりだ。

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黒薮氏(右)はアートチーム全体を総括。川島氏(左)はキャラクターモデル制作の中心を担う本作のキーマンとなっている。

今回の取材では、『怪獣8号 THE GAME』のキャラクターの作りかたに焦点を当てて、保科宗四郎や鳴海弦など『怪獣8号』のキャラクターたちがいかにして生み出されたのか。キャラクターデザインの開発舞台裏に迫っていった。

加えて、おふたりはアカツキゲームスで『怪獣8号』のゲーム化プロジェクトを進めることになったきっかけを作った人物でもあることが発覚した。もちろん、その当時の話もお聞きした。

『怪獣8号』ゲーム化のチャンスを掴み取った経緯とはいったい……? 時は2021年夏──ここから、『怪獣8号 THE GAME』のすべてが始まった

聞き手・編集/竹中プレジデント

※この記事は『怪獣8号 THE GAME』の魅力をもっと知ってもらいたいアカツキゲームスさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


『怪獣8号』ゲーム化のチャンスを掴み取ったのは、1本のデモムービーがきっかけだった?

──事前におうかがいしている情報【※】によると、今回アカツキゲームスで『怪獣8号』のゲームを作る企画が動くことになったのは、黒藪さん川島さんおふたりの力が大きかったと、お聞きしています。

※後日、掲載予定の本作プロデューサー藤田氏のインタビューにて語られた。本インタビューの直前に実施。

黒薮氏:
そう言っていただけるのは本当にありがたいお話ですね……。

このプロジェクトが動き出したのが、2021年夏くらいなのですが、当時の副社長から『怪獣8号』のゲーム企画のデモを作ってほしいと、極秘任務を受けたのが始まりでした。

そのときのオーダーは、仮モデルで3Dのモック(試作品)を作って、それをできるだけかっこよく演出した、プレゼン用の”画像”を2枚作ってほしいという話でした。ただ……。

──ただ……?

黒薮氏:
川島と僕で、「せっかくだし、キャラクターが動いたほうがいいだろう」と判断して、勝手にPV(ムービー)を作ってしまったんです。

──ええっ!? ど、どういうことですか?

黒薮氏:
じつは、僕自身、アカツキゲームスへの入社は2021年春ごろで、今回の『怪獣8号 THE GAME』は僕らのチームがこの会社で携わる最初の案件でした。

川島氏:
そうですね。僕は立場としてはフリーランスだったんですけれども、黒薮から「手伝ってくれない?」という相談を受けて、携わるようになりました。

黒薮氏:
ですので、正直なお話、「僕らの力を見せつけてやるぞ!」という意気込みがそのPVに込められていたのはあったと思います。

──なるほど。そういった経緯もあって、本来は画像2枚だった社内提案用の資料がPVとして作ることになったわけですね。

黒薮氏:
恐らく、最初に求められていたのは手持ちの花火くらいのものだったと思うんです。でも「せっかくなので打ち上げ花火はどうですか?」と、持って行ったのがこのPVになります。

振り返ってみても大変な作業ではありましたが、このPVで社内から企画提案許可が得られたので、結果的にはよかったんじゃないかなと。

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──怪獣8号とキコルのふたりをPVのメインに据えたのにはなにか理由があったのでしょうか。

川島氏:
僕らが着手したときには、アニメはまだ放送前、原作の漫画がまだコミックス数巻くらいまでしか話が進んでいなくて、そのころの『怪獣8号』って、カフカ(怪獣8号)とキコルのふたりが中心になってたんですよね。

真っ黒で筋肉質な巨体を持つ怪獣と、華やかな金髪の小柄な女性というのも、対比としてわかりやすい構図だったので、まずはこのふたりの3Dモデルから着手したと記憶しています。

黒薮氏:
ああ……当時のことを思い出してきました。たしか制作期間は1ヵ月もなかったんですよ。オーダーがあって、その20日後にはモデルをひとつ作ってほしいと言われていたんです。

川島氏:
そうですね。期間に余裕もなかったので、最初はキコルのモデルだけを作る予定でしたよね。

ただ、ふたりで話し合うなかで「やっぱりモデルは2体ほしいよね」となって、ふたり分のモデルを作ることになって。

黒薮氏:
そうそう。そのときに、どのキャラクターを組み合わせたらいい絵になるかと相談をして、怪獣8号とキコルのふたりになったんです。

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──本作は「巨大な怪獣へ逆転の一撃をブチ抜く ジャイアントキリングRPG」を謳っていますが、このイラストを見ると、企画提案の時点から、巨大な怪獣と人間サイズのキャラクターとの対比というコンセプトがあったんですね。

黒薮氏:
そうなんですよ。『怪獣8号』というIPでゲームのビジュアル作るなら、絶対これだと。この巨大な怪獣を見上げる絵を、モバイルゲームでも実現したいという想いを込めて、最初にこれを作りました。

というのも、モバイルゲームでターン制RPGの場合、敵も味方も同じサイズになりがちだと思うんです。だからこそ、『怪獣8号 THE GAME』では巨大な敵と対峙したときのダイナミックな絵を作りたい。それがデモ作成から今まで一貫していることですね。

3Dモデルでとくにこだわったのは、キャラクターのシルエットと筋肉造形

──本作はアニメ『怪獣8号』を原作としたゲームですが、登場するキャラクターの雰囲気はどちらかというと原作漫画に近いですよね。どのような方針から現在のキャラクターデザインになったのでしょうか。

黒薮氏:
このプロジェクトが始まったのが、4年前の2021年夏くらいで、当時はアニメの放送もまだですし、漫画もコミックスも数巻しか連載が進んでいませんでした。

キャラクターのビジュアルについてどう作るかの議論を重ねた結果、『怪獣8号 THE GAME』に関してはコミックス序盤までをベースにする取り決めとなったんです。その後、アニメの設定画が徐々に出てくるなかでそのエッセンスも取り入れていきました。ですので、漫画の雰囲気に近い印象なのはその影響があると思います。

──保科宗四郎や鳴海弦など人気キャラクターの動いているムービーが公開された際には、ファンの方々が盛り上がっていましたよね。

川島氏:
アートチームとしては、原作・アニメを最大限リスペクトして、キャラクターの印象を崩さないことを大前提としてこれまで制作してきました。それが少しでも表現できているなら、担当者としてもうれしい限りです。

──『怪獣8号』のキャラクターを3Dモデルで表現するうえで、どのようにアプローチしていったのでしょう?

川島氏:
僕の場合、キャラクターの個性を見ることを意識していますね。そのために、そのキャラクターの背景を深く想像するというか……言ってしまうと妄想するんです。

──妄想……ですか。

川島氏:
はい。その個性も、目が大きい、筋肉質といった表面的な記号だけを見るのではなく、そのキャラクターがどのような人生を送ってきたのか、それゆえにどんな性格なのか、作品を何度も読みながら妄想していくんです。

たとえば、『怪獣8号』の四ノ宮キコルの場合なら、彼女はお嬢様だからもしスポーツをしているとしたら多分テニスなんじゃないか。恐らくこういう食事をしてきたんじゃないか。それらの想像をまず自分の中で積み上げていくんです。

その情報から体型を想像した状態で、再び原作漫画を読んでイメージを一致させていく。そういう思考をくり返すことで、似たような体型のキャラクター同士だとしても、同じ衣装を着ていたとしても、そのキャラクターらしいシルエットが出る。そう考えて、僕はいつもモデルを作っています。

──なるほど。原作漫画を読み解いて作り上げたシルエットがあるからこそ、キャラクターたちのデザインに漫画の雰囲気を感じるのかもしれませんね。

川島氏:
そう感じていただける方がいるなら、うれしいですね。作品特有である絵柄の大胆さや繊細さを、ゲームにおける3Dモデルに落とし込むため、キャラクターのシルエットや筋肉の造形についてはとくに注力しました。

たとえば、キャラクターとしての怪獣8号は基本的に人間の体型なんですが、あえて肩幅をずらしたり、少し首を長くしたり、バランスを崩しているんです。こうすることで人間に近いシルエットでありながら、異形感が出るんです。

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力強い背中~腰回りに見えるように筋肉のバランスを考えてモデルを作っている

──シルエットと筋肉造形についてこだわったとのことですが、具体的にどのような表現なのか、教えていただけないでしょうか。

川島氏:
とくに背中から腰まわりの表現についてはすごくこだわっていますね。『怪獣8号』のキャラクターたちは、近接戦で戦うことが多いので、腰がしっかりしていないと、重みや力強さが伝わらないんですよ。

黒薮氏:
『怪獣8号 THE GAME』はターン制RPGということもあり、ゲームプレイ中にキャラクターの背面を見る機会が多いです。そのため、3Dモデルを作る際には、後ろから見られることを想定してデザインしています。

川島氏:
ですので、身体の線が細いキャラクターでもしっかりと腰回りのディティールは描いています

たとえば、四ノ宮功のような上半身や太ももが大きくて相対的にお尻が小さく見える、いわゆるボディビル体型のキャラクターも、横から見た際に、力強いお尻に見えるように筋肉のバランスを考えてモデルを作っています。

黒薮氏:
これは(下記画像)四ノ宮功の資料になります。右側が僕がイメージとして川島に共有したもので、左側がそれをもとに川島が調整したラフ絵です。

調整後のほうが、背骨がしっかり立っていて、どっしりした構えになっているのがわかるかと思います。

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川島氏:
このラフ絵については、まず黒薮から渡されたポーズイメージをもとに、その雰囲気や勢いを殺さずに、原作に登場する功の要素を盛り込んでいきました。

──盛り込んでいくというのは?

川島氏:
原作を見るに、ものすごく真面目でお堅い性格ですし、戦いかたも我流というより体系的に格闘術を学んでいるのだろうと。なら、空手の型がイメージできるような構えのほうが功らしさが出るのではないか……と、先ほどお話したように原作を読みながら想像していくんです。

──たしかに調整後のポーズのほうが、どっしりと構えていて功らしさがでているような気がします。

黒薮氏:
こういう微調整に関しては、ひとりのキャラクターに対して多いときで30回を超えることもあります。

──そんなにリテイクが……。

川島氏:
功や怪獣8号に関しては、わりと早くできあがった記憶があります。個人的に、筋肉系キャラクターの造形は得意で、おじさんキャラを作るのも好きなので。そういうキャラクターは基本的にイメージがブレないので、作りやすいというのはありました。

ただ、怪獣8号は最後の微調整に苦労しました。最初のイメージは「基本が人型でバランスを崩すことで異形感を出す」ということで、スッと固まったんですが、黒薮と議論を重ねた結果、もう少し原作寄りにしようと。

なので、筋肉の張り出ている部分をもう少し盛ることで、他の媒体よりも筋肉質な印象になるようにしました。

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編集者
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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