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平成元年に始まり平成で終わった美少女ゲーム『ランス』シリーズを振り返る。各種文献から見るアリスソフトとTADA氏の軌跡

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 長らくアリスソフトで開発本部長として陣頭指揮を取り、代表作『ランス』シリーズをついに完結させたゲームクリエイターのTADA氏が、昨年6月から休養し、経営開発を降りていたことを2019年4月にTwitterで報告した。

 TADA氏が長期休養に入った時期の2018年6月末は『Rance X -決戦-』のアップデータ「Ver.1.04」が配布された時期と一致しており、それを区切りとして休養生活に入ったと見られる。

 シリーズ29年間の歴史を経て、堂々たる完結を迎えた『ランス』シリーズ。ナンバリングごとに世界を刷新するのではなく、同一主人公、同一世界観によるシリーズの完結は、世界ゲーム史上に残る偉業を達成したといえるだろう。

 しかもその完結を示した作品でファンを十分に納得させるとなると、もはや前人未到の領域といえる。その『ランス』シリーズの生みの親であり、長らく美少女ゲーム業界の第一線で活躍していたTADA氏の業績を、この機会に振り返ってみよう。

ライター/福山幸司
編集/ishigenn


戦略シミュレーションからゲームクリエイターの道を志す

 TADA氏は1967年9月23日生まれ。アリスソフトのゲームで登場する埴輪像の姿をしたキャラクター「ハニー」や「ハニーキング」のアイコンがトレードマークとなっている。また、めがねっ子好きでもある。

 学生時代にボードゲームの戦略シミュレーション、さらにアスキーの『ヨーロッパ大戦』、光栄の『信長の野望』などに熱中し、ゲームクリエイターの道を志す。 ディスクマガジン『レモネード 創刊号』に付属していたゲーム『さらわれた美樹ちゃん』を、MSX向けに移植。その後、コマンド選択型アドベンチャーゲーム『学園戦記』、『リトルヴァンパイア』で、ゲームシナリオを担当することになった。

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『Little Vampire』(1988)

王道ファンタジーを逆手に『Rance -光を求めて-』の誕生

 チャンピオンソフトがブランド・アリスソフトを立ち上げたのは平成元年。鬼畜戦士ランスと、その奴隷の魔法使いシィルの冒険をコミカルに描いたアドベンチャーゲーム『Rance -光を求めて-』は同ブランドのタイトルであり、TADA氏がシナリオを制作するなど主導的な役割を果たした。

 同作はRPG風のファンタジーADVを制作するという着想から企画がスタート。アリスソフトは当時、RPGのゲームシステムを構築していなかったため、戦闘が終わるたびに経験値を計算することがプログラム的にできなかった。そのため苦肉の作として、店に訪れることで一ヶ所まとめてレベルアップできる「レベル屋(神)」が考案された。しかし、以後これはシリーズのトレードマークとなるレベルアップシステムとなる。

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『Rance -光を求めて-』(1989)

 もともとTADA氏は王道ファンタジーに愛着を持っておらず、スライム、エルフ、ゴブリン、ドワーフ、オーク、トロールなどの定番キャラクターをそのまま使うのをよしとしなかった。以後のシリーズを含め、それらはハニー、カラー、ヤンキー、ポピンズ、ぶたバンバラなどに置き換えられている。とはいえ、のちにメインスタッフとなるぷりん氏は王道ファンタジーが好きなので、結果的にはそういった要素を取り入れられ始める。

 とりわけTADA氏の王道ファンタジーを改変する姿勢を象徴するのが、主人公である鬼畜戦士ランスである。「強きをくじくが弱きもくじく 気に入らない者斬り捨て御免」、「乱世の奸雄、治世の暴漢 全ての美女は俺様のもの」。この傍若無人たる性格設定は、当時、TADA氏がさまざまなRPGをやっていくなかで、「主人公が自分の力を世界や人々のために使う」ということに違和感を抱いたことから生み出されたものだ。

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『Rance -光を求めて-』(1989)

 TADA氏は「これだけすごい力と才能があるなら、普通はまずその力を自分のために使うはずだ」と思い、「オレの力はオレのために使う」という主人公であるランスが誕生した。さらにヒロインのシィルは「勇ましく元気な魔法使いの相棒」とTADA氏は考えていたが、繊細なタッチで知られる女性グラフィッカーのYUKIMI氏が「奴隷にしましょう」と提案をした。TADA氏はその思いがけない提案に驚いたが、こうしてピンクのモコモコ髪の「奴隷」であり「助手」の健気な女の子シィルが誕生した。

 また、本作は美少女ゲーム業界ではPC-88のデジタル8色200ラインが主流だった時代に、あえてPC98からアナログ16色400ラインで発売した先駆的なタイトルだ。もともとTADA氏は、アナログ16色でやろうという提案を却下したものの、最終的には氏が個人的に16色ボードを所有することになり、決断されたものである。

 最新のハードに対応すれば16色でのグラフィックス表現が体験できるが、それを所有していないユーザーはプレイが不可になるため、ソフトの売上げ方針としては芳しくない。だが、この選択に象徴されるように、アリスソフトは現状を維持したり、流行を追随するわけではなく、その後もつねに美少女ゲーム業界の先陣を斬った取り組みを行うことになる。

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『Rance II -反逆の少女たち-』(1990)

 以後、『ランス』シリーズはTADA氏が独特のファンタジー世界観を他のスタッフと共に緻密に練り上げいき、同ブランドの代表作となった。RPGとして形になった『Rance II -反逆の少女たち-』では、カスタム四魔女と呼ばれるキャラクターが登場する。そのなかでも、魔想志津香の「黒いローブに、大きな帽子」という古風な魔法使いのデザインは、YUKIMI氏が昨今のファンタジーに疎いことから生み出されたが、結果的に多数のファンタジー作品のなかでも目立つデザインになり、以後、シリーズでも絶大な人気を集めた。

世界観を決定付けた『Rance III -リーザス陥落-』

 さらにアリスソフトは、すでに『Rance II -反逆の少女たち-』で構想があったという壮大な世界設定を『Rance III -リーザス陥落-』で全面的に推し出す。『Rance』の舞台であったリーザスに加えて、その敵国であるヘルマンが登場し、国と国との戦争が描かれた。さらに人類とは別の勢力である魔人と魔王が加わり、それらに唯一抵抗できる聖刀などの設定が生み出されていった。

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『Rance III -リーザス陥落-』(1991)

 こういった設定は、TADA氏がスタッフのぷりん氏と共に世界観を構築し、徐々にできあがっていったものである。本作の戦記ものとして方向性、タクティカルRPGとしての戦闘などは、当時、流行していた『ファイアーエムブレム』に似ないようにしたという。本作で生まれたさまざまな設定は、『ランス』シリーズに大きな深みをもたらし、以後のシリーズの土台となった。

 次に発売されたTADA氏の代表作といえば『闘神都市』だが、これは『Rance II -反逆の少女たち-』と同時期に計画されていたSF大作ゲームの企画が没となり、急いで制作されたものである。

 急ピッチで作られたアリスソフト初のフィールド移動型RPGだったが、ヒロインのクミコが人気が出るなど好評を得る。本作でやりきれなかったことを盛り込んだ続編『闘神都市II』は、その波乱に満ちたストーリーと、膨大なやり込み要素によって、PC-98の美少女ゲームRPGとして一際高い評価を受けた。

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『闘神都市』(1990)

ランスがWindowsに進出

 『闘神都市』シリーズ三作目として制作されていた『闘神都市ユプシロン』は、当初はメガCD用に制作していたコンソールのタイトルだったが諸事情で開発中止となり、『Rance IV -教団の遺産-』として引き継がれることになる。そのせいか結果的に大容量となり、『Rance III』とは違った方向性の闘神都市を舞台とした『ランス』シリーズとなった。

 当時としては異例のPC-98の外付けHDDが必須のタイトルとなり、のちにWindowsで移植されたバージョンで遊んだ人も多いだろう。番外編の『ランス4.1 -お薬工場を救え!-』、『ランス4.2 -エンジェル組-』もWindowsに対応したタイトルで、FDと同時にCD-ROMでも発売された。

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『Rance IV -教団の遺産-』(1993)

 もともと世界設定を考えるのが好きなTADA氏によって、『ランス』シリーズの世界設定はどんどん膨大になっていった。そのためナンバリングタイトルを順番に出していくと設定をとても全部見せきれないと考え、一端「if」の歴史として、それまでの練り上げていった世界設定を出すことにした。

 それが戦略シミュレーションゲームの『鬼畜王ランス』である。膨大なイベントが存在する美少女ゲームに類を見ない超大作となり、その物量、時間を忘れてのめりこむほどの面白さによって、長らく美少女ゲームの金字塔的な立ち位置を占めることとなる。

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『鬼畜王ランス』(1996)

ユーザー目線から生まれた配布フリー宣言と低価格路線

 早くから取締役開発本部長を務め、2000年代に入ってからは副社長を兼任したTADA氏は、ゲームデザイン、シナリオとして携わっていないタイトルであっても、アリスソフトの作品を支え続けた。

 「流行に左右されず、自分たちの作りたいものを作る」と語ってるように、インフォメーションコーナーが独立した『ALICEの館』、256色専用の『夢幻泡影』、HDD専用の『Rance IV』、Win95から発売した『鬼畜王ランス』、低価格設定の『妻みぐい』、過去に発売した一部タイトルを条件つきで第三者が配布することを許可する「配布フリー宣言」など、先進的な方策を次々と推し出している。

 「配布フリー宣言」はレトロPCの優れたエミュレーターが登場する中で、「PC-88のさまざまなゲームがフリーで配布されていたら嬉しい」というTADA氏自身の願いが込められている。「自分のところで率先してやろう」という、TADA氏なりのユーザー目線からの戦略であった。

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(画像はアリスソフト | このサイトについてより)

 また同じく低価格・短いボリュームの『妻みぐい』も、他社が追随を願ってのことである。『妻みぐい』は、結果的に大ヒットを記録。以後、他社も低価格路線のゲームを発売することになった。

 このようにTADA氏の方策はアリスソフトで完結するのではなく、業界のトップクリエイターとして、美少女ゲーム自体のユーザーの拡大や、大作化して肥大化していく美少女ゲーム業界への警鐘など、業界全体に対しても新しい提案を業界に投げかけていった。

織音氏の原画によって生まれ変わったランス

 その流れの中で『ランス5D -ひとりぼっちの女の子-』は『妻みぐい』路線と踏襲した低価格タイトルとして発売。これは『鬼畜王ランス』が売上げ、評価とも極めて高かっために、本来、次回作となるはずの『Rance V』の敷居が上がり、なかなか完成できない状況に陥ったためである。

 詳しい内実は不明だが、「ランス5A」、「ランス5B」、「ランス5C」と『Rance V』の企画が次々と頓挫し、4度目となる意味で「5D」というタイトルになっているようである。インタビューから垣間見れる情報としては、「ランス5A」はどうやらヘルマンが舞台として登場していたようだ。

 「次こそランスを完成させる」という号令のもと、いったん低価格路線として完成させた『ランス5D』はボードーゲームとカードゲームを組み合わせたような異色タイトルであったが、アリスソフトらしい高い完成度を誇り、久々のシリーズの帰還をファンは歓迎した。

 TADA氏にとっても非常に愛着のある作品になったようである。なお本作から原画に織音氏に変わり、以後『ランス』シリーズのメイン原画を織音氏が手掛けることになる。

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『大悪司』(2001)
(画像はアリスソフト | 大悪司より)

 「ランス5A~C」に変わり、大作路線としてTADA氏が中心となって開発されたのが地域制圧型シミュレーション『大悪司』である。

 本作はヤクザが題材、さらに典型的な萌えキャラクターが不在のゲームであるため、TADA氏はイマドキの売れ線のゲームから外れたタイトルと考えていたようだ。セールス的には綱渡りだったようだが、本作もまたプレイヤーには好評で、販売が予想以上に伸びたときは、TADA氏も一安心したようである。

『Rance VI -ゼス崩壊-』から再び戦乱の地に足を踏み入れるランス

 2004年には『Rance III』、『鬼畜王ランス』などの緻密な世界設定をフルに活かした『Rance VI -ゼス崩壊-』が発売。『鬼畜王ランス』の一部地域だった魔法国家ゼスにランスが足を踏み入れる。3DダンジョンRPGとして大ボリュームを誇り、久しぶりのシリーズ大作となった。

 3DダンジョンRPGは今でこそJRPGのジャンルとしてありふれたものとなっているが、 当時は美少女ゲームのみならず、コンソール、携帯機とも3DダンジョンRPGのゲームは数少なかった。

 TADA氏は『ウィザードリィ』以来の古きよき3Dダンジョンを現代風にアレンジしており、特に拠点でキャラクターのイベントが発生するシステムは、3Dダンジョンでなくなった以後の『ランス』シリーズても取り入れられることになる。もともと本作の3Dダンジョン要素は別の企画だったようが、最終的に『ランス』と合流したようである。

 TADA氏がディレクションをした『GALZOOアイランド』を経て、『ランス』シリーズ7作目となる『戦国ランス』が2006年12月に発売。RPGが続いたため、『鬼畜王ランス』以来の地域制圧型のシミュレーションゲームとなり、そのため本作には発売前から大きな注目を集めた。

 戦国時代を愛好しているTADA氏と、『ランス』のポップな世界観が遺憾なく発揮されており、「JAPAN」という摩訶不思議な日本が表現されている。最初の企画では武田家を主役としていたが、織田家のほうがよく知られているということで変更された。

 『鬼畜王ランス』より続くやりごたえのある戦略性は健在、また新舞台のためシリーズ未経験者でも入りやすい裾野の広さが魅力であり、本作はそれまで『ランス』シリーズをプレイしていなかった若い層を巻き込んで大ヒットを記録した。

苦難の時期、開発本部長を退く

 大成功した『戦国ランス』だったが、その後がTADA氏にとって苦難の時期となる。

 TADA氏は開発本部長という立場から、メインスタッフとして携わらないタイトルであってもゲーム開発全体を指揮をしていた。詳しい経緯は不明だが、2007年から2010年までは『闘神都市III』『大帝国』のゲームシステムの見直しなど、問題や準備不足などがあり、開発が泥沼化していった。

 開発が長期化を極める中、TADA氏は開発本部長という立場を降りることを表明。以後はHIRO氏が開発本部長を務めることになった。TADA氏いわく会社が成長するにつれ、旧態化して動きづらくなり、新しい体制にする必要性を感じたという。引き継いだHIRO氏は当時、これまでTADA氏が避けていたファンディスクや、個々のクリエイターを名前をしっかりと前面に出す方策に変えていくと抱負を述べた。

 こうしてTADA氏が開発に集中して制作したのが2011年に発売された『ランス・クエスト』だ。国家の命運をかけた戦争や動乱ではなく、ひとりの冒険者としてランスを追求したタイトルだが、蓋を開けてみると、裏では神の命令により人類を適度に苦しませるために暗躍をしている世界宗教「AL教団編」 ということがわかってくる。

 本作は『鬼畜王ランス』と対称的にする意味で「鬼畜戦士ランス」というタイトル案も考えられていたという。発売前にはTADA氏から万全のゲームバランスに自信をのぞかせる発言もあったが、ユーザーからは不評な結果になってしまった。

 TADA氏も「自分の感性が古くなったのかなぁ…」と反省しつつも、イベントの追加やゲームバランスを見直す修正パッチを配信。さらにブログなどを通じて、ユーザーから広く改善点や意見を募った。こうしてHIRO氏と相談して、アペンド・ディスク『ランス・クエスト マグナム』を開発・発売。これによって本作の評価は持ち直すことになる。

アニメとリメイクでランスに声がつく

 2013年には「以前からリメイクしたかった」というシリーズ第一作をリメイクした『ランス01 光をもとめて』が発売。初めてメインに抜擢された魚介氏による原画によって、現代風に『ランス』第一作が甦った。TADA氏はプロデューサーに回り、いってんちろく氏がディレクターとゲームデザインを担当している。

 以前、『アリス2010』に収録された『ランス02』として部分的にリメイクしていたが、それを全面的に推し進めた形だ。さらに『ランス01』はOVA『ランス01 光を求めて THE ANIMATION』としてアニメ化され、豪快に動き回るしゃべるランスが実現した。もともと1993年に一度アニメ化にしているが、こちらはより原作に忠実である。

 TADA氏いわく、『ランス01』のボリュームならアニメ化に最適だと感じたという。このアニメをフィードバックする形で、『Rance III』をリメイクした『ランス03 リーザス陥落』でもボイス付きのランスが実現することとなった。

 『ランス』シリーズの開発に専念していたTADA氏だったが、2014年にHIRO氏が病気でダウン。それを引き継ぐ人がいなかったため、TADA氏が開発本部長に再び就任した。

 美少女ゲーム業界が衰退していくのを感じていたTADA氏は、会社組織として若返りを考えていたが、最終的には「継承や先のことは考えず、まずはなにより自分たちがやりたいことをやろう」と腹を決めたという。もしかすると『ランス10』が終わると休養することも、このときに心に決めたのかもしれない。

 2014年には『ランスIX -ヘルマン革命-』が発売。ヘルマンの地に足を踏み入れたランスが、国家を転覆させ革命を果たすまでの軌跡は、『鬼畜王ランス』におけるヘルマン編のセルフオマージュを感じさせる戦記ものの傑作となった。

 実は『戦国ランス』の次回作にと、この『ランスIX』に相当するヘルマン編を考えていたこともあったため、多くのネタが濃密な作品となった。本作は監督、ゲームデザインはぷりん氏が中核となって制作している。TADA氏は2015年の『イブニクル』、『ランス03』も並行しつつ、着々と『ランス10』に向けて準備をしていた。

そして、シリーズ完結へ

 すでに『戦国ランス』の時点から、完結編となる『ランス10』のストーリーの骨格や結末を考えていたというTADA氏だが、システムに関しては数回にわたって考え直したという。2014年6月末に開発がスタート。2017年10月19日にタイトルと発売日が発表され『Rance X -決戦-』と決定した。

 『鬼畜王ランス』では、魔人の領域に攻め入る立場だったランスたちだったが、『Rance X』では逆に人類に対する侵攻を開始した魔人を迎え撃つ。シリーズを通して諸国と関係を持ち、人類の王となったランスが各国を防衛し、魔人討伐隊として敵を各個撃破する。

 システム的には、『Rance VI』の拠点システム、『ランス03』の移動形式、『ランス・クエスト』の戦闘などがアレンジされてミックスされており、さらに『戦国ランス』のように膨大なキャラクターたちを使いこなす必要があり、『Rance VI』以降のシリーズ作品の集大成的なものとなった。

 またストーリー的には、魔人とランス側だけではなく、暗躍する勇者の視点も描かれ、創造神ルドラサウムが構築した「残酷なまでの平等な世界」が、これまで以上に表現されている。魔王として目覚めることを宿願とした魔人ケイブリスの圧倒的な強さには、多くのプレイヤーが畏怖したが、やり込みによって返り討ちにすることも可能という『ランス』ならではの自由度の高さも見せた。

 29年間のさまざなな伏線が繋がり、まさにこれしかないラスボス、これしかないストーリーの結末が用意されている。長らく続いていたシリーズを完結するとなると、巨大なハードルだが、発売後はユーザーから圧倒的な支持を集めている。


 こうして堂々たるシリーズ完結を迎えた『ランス』シリーズ。今回の休養を報告するツイートでTADA氏は「心身共にへたった」とも伝えており、『Rance X』の開発の無理がたたり、体調がかんばしくはなかったのかもしれない。『ランス』シリーズ完結を祝すと共に、まずはたっぷりと休養をとっていただき、状況が整えば、再びTADA氏の活躍を見れることを願ってやまない。

ライター/福山幸司

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ライター
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福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman
編集
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ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
Twitter:@ishigenn

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