『Fallout: New Vegas』開発の新作RPG『The Outer Worlds』には「ロールプレイ感」と「ブラックユーモア」がある。味わい深い本作の世界設定や魅力とは

 2019年10月25日に発売された『The Outer Worlds』は、Obsidian Entertainment開発のSF-RPGだ。「The Game Awards」のゲーム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされた作品でもあり、年末年始のお休み向けにとりあえず購入したという読者も多いのではなかろうか?

 日本市場では古くから「本格SFモノはヒットしない」というジンクスがまことしやかに流れているが、本作は事前の予想を上回る好調な売り上げを見せ、今年度内にはNintendo Switch版も予定されている。

 発売から約1カ月が経過していることもあり、ネット上では最速クリアといった攻略情報も多数存在。もちろん最速・最強を求めるプレイもけっして間違ってはいないが、『The Outer Worlds』の面白みは何といっても、プレイヤーの選択ひとつでガラリと表情を変えてしまう物語の行方にある。くわえて仲間となるNPCのバックストーリーも魅力的で、それらをすっ飛ばした効率重視プレイはあまりにもったいない。

 本記事は攻略情報のような実用性は少なめな分、『The Outer Worlds』が持つ濃厚な魅力を、読者の皆様にお届けしたい。

文/麻生ちはや
編集/ishigenn


70年間の眠りから目覚めると、そこは雪国でもなければ王子のキスも無い宇宙だった

 ゲーム冒頭、プレイヤーは宇宙船「ホープ」の中で研究者フィニアスの手により70年の冷凍睡眠から目覚めさせられる。彼の独り言から、ホープ内には冷凍睡眠したままの乗客がまだまだ多数いること、覚醒させるための薬品がもう無いこと、そして何らかの理由でフィニアスが指名手配の脱走者であるといった断片的な情報が与えられる。

 それ以外は何が起きているかよくわからないまま、最初の地「テラ2」へ放り出される。

 キャラクター作成は男女の性別、髪型、肌の色以外にもかなり細かくパーツごとのカスタマイズが可能。とはいえ、全体的に“バタ臭い”見た目になるのは洋ゲーのお約束。FPSゆえ原則自分の顔は見えないのであまり気にする必要はないだろう。

 むしろ悩むべきは、あとから変更がきかない「スキル」ボーナスポイントの割り振りと「適性」の決定だ。プレイスタイルでも大きく左右されるため正解と呼べるものはないが、ゲーム難易度にストーリー(=Easy)かノーマルを選んでいる場合どんなに戦闘が苦手なプレイヤーでも、回復薬を吸引しつつ武器を適当にぶんぶん振り回していれば正直なんとか切り抜けられてしまう。

 初プレイで何を選んだらよいか分からないが失敗はしたくない……という人は「説得」「騙し」といった会話テクがあがるカテゴリを選んでおけば、後悔はしないはず。ハード以上の難易度でプレイする上級者は自分のAIM力やスニーク力と相談しつつお好きなものをどうぞ。

様々な思惑でうごめく複数の派閥、そのどちらに味方するかはあなた次第…暴力か非暴力か、それが問題だ

 銀河の辺境に位置する「ハルシオン星系」は複数の惑星で構成されており、全てを牛耳る議会を頂点に各惑星には強欲な企業彼らに反発する脱走した入植者議会の目を盗み利益をかすめとる組織といったさまざまな派閥が存在。プレイヤーはストーリーを進めていく過程で彼らと接触し、さまざまな選択を強いられる。

 ときにふたつの相対する派閥の片方にとって多大な利益を、もう片方には厳しい選択を迫るといった場面も。ただし、結果としてその選択がプレイヤーに不利益をもたらすこともある。

ミッションクリアで該当派閥からの評価がアップ。強者に尻尾を振るか、コロニーで苦しい生活を強いられる弱者の見方をするかはあなた次第だ

 筆者はとある街の住人から死ぬほど恨まれてしまい、街に一歩足を踏み入れただけで住人全員が本気で筆者を殺しに来るハメに……。アイテムの売買も自動販売機以外で行えない不便さに辟易し、“やむなく”皆殺しのゴーストタウンにすることで穏やかな日々を取り戻した。

 また、メインクエストの多くにはその遂行に複数の選択肢が用意されており、暴力ありきで敵対勢力を片っ端から排除するもよし、ハッキング技術で裏口から侵入するステルスプレイあり、騙し・脅しといった口先三寸で切り開く詐欺師プレイもでき自由度は高く、クエスト依頼主の殺害すら可能である。

かつて『The Elder Scrolls IV: Oblivion』で散々ピッキングに失敗し衛兵を呼ばれた苦い経験のある筆者。本作ではスリも万引きもわりと簡単なのでつい夢中になりすぎ、盗んだバナナを自販機に売りつけるのが快感に。気が付けばメインシナリオを1つも進めないまま2時間ほど経過していた。

 冒頭で触れた最速クリアを目指すプレイのように、寄り道せず必要最低限のクエストだけこなすと、『The Outer Worlds』は実はそれほどボリュームのあるタイトルではない。本気を出せば二日程度で初回プレイを終えられるかもしれない。

 だが、これから本タイトルをプレイする方には、ぜひともできるだけ多くの会話の選択を行い、その会話内容をすっ飛ばすことなくじっくり読んでいただきたい。というのも、NPCとの会話から見えてくる議会・企業・各惑星の派閥の利害関係や腹に一物抱えた思惑を、彼らとの会話から読み解いてくのも面白さのひとつなのだ。ときに「威圧」、「説得」などの話術を使えば、本音をポロリともらすNPCもいるだろう。

 しかし、ハルシオン星系の人々は話好きなのか、とにかく話が長いのが欠点でもある。忍耐強いゲーマーの筆者ですら時々(あくまで時々)ウンザリし、「このまま撃っちゃおうっかなー?」と思うことも……。「RPGも世界観とかあまり気にしない」、「クエストも目的さえわかればあとの会話には用がない!」という短気な方には不向きかもしれない。

だいたいの会話に<攻撃>の選択肢が用意されている。とにかく話が長くてめんどくさいNPC相手には、ついついポチっと押したい誘惑にかられるのも無理ない、かも?
ハルシオン星系の各惑星はメインストーリーの進行またはサイドクエストを発生させることでアンロックされる。特にサイドクエストは話しかけないとどのNPCがクエスト関係者なのか不明なので、最後まで一度も立ち寄ることなく終わる惑星もある

コンパニオンとの旅でぼっちプレイの寂しさ解消!彼ら自身の物語にも一歩踏み込むことで見えてくるこの世界の在り方

 FPSもTPSも大の苦手、銃を打てば全弾外すヘタレゲーマーの筆者が本作を心ゆくまで楽しめたのは、最大2名まで同行できるNPCコンパニオンの存在が大きかった。コンパニオンはメイン・サブクエストなど条件を満たせば仲間となり、プレイヤーの宇宙船「アンリライアブル号」の個室に住み着く。

 それぞれ武器の好み、得意ジャンルがあり、同行するだけで特定のスキルにボーナスを付与してくれるというメリットのほか、戦闘が苦手ならサポートとして大いに役立つし、“誰かと共に旅している感”が欲しいならば、コンパニオン同士の勝手な掛け合いがプレイヤーの孤独感を薄めてくれる。

 コンパニオンたちにも過去の因縁や彼らなりの生きざまがある。仲間になったあとは宇宙船の中の個室に、思い思いの記念品や家族の写真を飾っていたり、コンパニオン同士の何気ない会話からそれらが垣間見えることも。

 注意したいのは、彼らの逆鱗にふれるような選択か行動を取ると、コンパニオンは仲間を外れ二度と戻って来ないという点だ(意図的に外すことも可能)。

 とあるコンパニオンには恋愛にまつわるサイドクエストが用意されており、プレイヤーは恋の相談にのったり、恋愛成就のためのお願いを聞いてあげるのだが……。めでたく恋愛が成就したその時、PC前でランチを食べながら操作をしていた筆者の手がうっかり、本当に偶然マウスのボタンに当たり、できたてホヤホヤの恋人を殴り殺してしまうアクシデントが発生。
 コンパニオンからあらん限りの罵倒を浴びせかけられたあげく、仲間から外れてしまったのだ。『The Outer Worlds』プレイの際のお食事はできれば別の場所ですることをおすすめしたい。

アウターワールドの世界に溢れるレトロ広告「夢のあるライフスタイル」と現実のギャップ

 本作で描かれるのは、10年間の宇宙旅行を体感数十分で進み、地球から遠く離れた惑星で人々が植民地化を行うのが当たり前、スペースコロニーも実現している、はるか未来の物語だ。

 そんな最先端の技術で宇宙空間に飛び出したはずが、『The Outer World』で訪れる地域はどこもかしこも……妙に古臭い、良く言えばレトロ臭漂うことに気が付くだろう。

 自動販売機から流れる音楽も、ローディング中に表示される広告デザインやスローガンは1960年~70年代アメリカのそれを思い起こさせる。

ゲーム内に実在するお酒や缶詰の広告、議会や議長を称える熱い政治的メッセージなどは細かく読んでいくとなかなか面白い。サルツナマグロの缶詰広告に「Taste The Freedom」とあるのは皮肉か。

 60年代アメリカの広告には人々の夢が託されていた。新商品の魅力を強調するとともに、アメリカ人が憧れた「夢のある生活シーン」を描く。冷蔵庫や洗濯機といった家電・三種の神器は手にしたが、さらにもう一歩先のゆとりあるライフスタイルが「コレを買えば手に入りますよ!」と物欲を刺激する。

 ハルシオンの各所で頻繁に目にするさまざまな広告も、「It’ best choice.It’ Spacer’ choice!」といったキャッチコピーが理想的な美男美女の笑顔と共に添えられ、「あぁ、素晴らしきかなコロニー生活!」とでも言いたそうである。

実際の1960年~1970年代アメリカの雑誌広告・ポスターたち
(画像はSearch Vintage Ad Browserより)

 だがハルシオンの現実は一部企業が惑星の資源を独占、もちろん労働者たる人間もこの資源に含まれており、自殺すら許されない。自殺は会社の“資源”を故意に傷つけたとされ埋葬もままならぬ。

 不満を抱いたとしても、一歩街を出れば人語を解さぬ略奪者や凶暴な野生動物が闊歩し、生きることすら難しい。キラキラした広告に書かれる自由とは全く正反対の管理社会というブラックユーモアこそ、本作の世界を支える魅力のひとつだろう。

 

周回プレイの要素は少なめのアッサリ風味は惜しいがお値段以上の楽しさはまさに“It’ Spacers choice!”

 『The Outer Worlds』でプレイヤーは、行く先々で与えられるミッションに対し、「どちらの味方となるのか?」、「どんな解決方法を選ぶのか?」といった行動を選択する。その行動がさまざまな変化をもたらし、この世界に生き、そして関わっているという“ロールプレイ”感を強く与えくれる。

 ただ少し物足りないのは周回プレイ要素がやや薄い点か。特定のユニーク武器の収集、分岐次第で結末が変わるクエストもあるにはあるが、直前でセーブしておけばよいため(難易度によっては不可)、2周、3周とキャラクター作成からやりなおす動機付けはさほど強くない。

 宇宙船の内部のインテリアを好きにカスタマイズできる、やぼったいアーマーとは別に見た目のファッションを楽しめる、惑星ごとにセカンドハウスを買えるなど、メインシナリオとは全く別に、もう少し遊びの幅を増やしてもよかったのではと感じた。この辺りはストーリー追加とともにDLCで今後の拡張に期待したい。

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思春期=家庭用ゲーム機全盛期にもかかわらず、そのほぼ全てをスルーして成長し、本格的なゲーム体験はなぜか中古のPC-98版「エメラルドドラゴン」という変わり種。毎日PCゲームを18時間ほど遊んでいたら眼底出血し、それ以来「ゲームは1日10時間まで」を守り通している模範ゲーマー。(アイコン:いられら氏作)
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ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
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