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エヴァ、パトレイバー、パシフィック・リム要素が強い、ウルトラ燃えるリアルSFロボットドラマ『ウルトラマンZ』の最終回が間近なので、絶対にリアルタイムで見てくれよな!

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 今年6月から放送開始した人気特撮シリーズの最新作『ウルトラマンZ』がアツい。12月19日(土)に最終回を迎えるのだが、ほんの少しでもロボットアニメやロボット特撮、SFが好きな人は、ぜひ「リアルタイムでこの作品を見た」という経験をしてほしい。いや、絶対に見てほしい。これを逃してしまったら、きっとリアルタイムで見れなかったことを後悔するかもしれないからだ。

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(画像は第11話 守るべきもの | ウルトラマンZ(ゼット)より)

 だって、テンションが上がるロボットアニメって何度も見返すし、「早く『スパロボ』に出てほしい!」って思える作品って、1年を通じてそうそう出会えないですよね。個人的にも、最後にロボットもので燃えたのは、『SSSS.GRIDMAN』『プラネット・ウィズ』以来、久々の体験。

 そして、ロボットアニメだと毎回が迫力の戦闘!とはいかないけれど、『ウルトラマンZ』は6月から半年に渡ってほぼ毎週、半端じゃない予算をかけた特撮で大迫力の戦闘シーンを放送している。見るしかないですよね。
 『パトレイバー』の続編、出ないかな〜」とか、「『パシフィック・リム』の続編、見たいな〜」と、巨大ロボットの作品を待望んでいる人の数は決して少なくないはず。そういう人たちも間違いなく見るべき。

 そして日本のカルチャー史において、極めて重要なポジションを占める作品に仕上がっているので、カルチャー好きやカルチャーに詳しいと自負する人たちは、絶対に見るべきなんですよ。
 というのも、『エヴァ』や『パシフィック・リム』を思わせる演出が非常に多く、これはかつての初代『ウルトラマン』に強く影響された庵野秀明やギレルモ・デル・トロの作品から、本家ウルトラシリーズが引用し返しているという、逆輸入的な構図となっているからです。歴史はめぐる。

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(画像はAmazon | パシフィック・リム [DVD] | 映画より)

 そして少々大げさかもしれないが、個人的には、ロボットアニメとウルトラマンの特撮という、日本が誇るべき文化の融合が実現したことで、予算でハリウッドに勝てないいま、日本のエンタメの戦い方とはどうあるべきなのかという問いに対してのひとつのアンサーとなった作品であると考えている。この点は、最終回放送後に深く考察してみたい。

 もちろん、「昔はウルトラマン好きだったけど、最近のはしばらく見てないな〜」という方も、ぜひ見てほしい。初代『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』を含む昭和シリーズに登場した怪獣たちがしっかり活躍するだけでなく、ウィンダムやキングジョーにパイロットが乗って操縦するんですよ。ロボット怪獣を操縦してみたいと夢見た人たち、その夢が映像化されていますよー!

 というわけで、少しでも見ようと思った人は、こんな原稿を読むのはいますぐ一時停止して、下記リンクから1話を無料で見て、その後はHuluNetflixアマプラで2話以降を見てください。

文/森ユースケ


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10月7日配信の「オンライン座談会」のスクショタイムの画像。左から、田口清隆監督、黒木ひかり、平野宏周、松田リマ、青柳尊哉

徹底的なリアル志向へのこだわり

 この作品世界では、怪獣が常に現れるため、その脅威から市民を守るべく地球防衛隊が組織されているという設定。その日本支部における対怪獣ロボット部隊「STORAGE(ストレイジ)」(正式名称は『対怪獣特殊空挺機甲隊』)の隊員たちが主役である。

 ウルトラマンのシリーズであるにもかかわらず、第1話の冒頭は、怪獣が街中(調布駅のビックカメラ周辺)で暴れているところを、巨大ロボットが攻撃し、鎮圧するところから物語が始まる。

 そしてその後も、主役であるウルトラマンZとロボットが共闘するにとどまらず、ロボットが怪獣を倒してしまうシーンが1度や2度ではない。

 「対怪獣特殊空挺機甲」(通称特空機)と呼ばれる巨大ロボットが計4体が登場し、それぞれの特徴と設定を活かした活用がなされる。ヒーローものとしての“スーパーロボット”ではなく、リアルな世界の地球防衛隊で運用される“兵器”であるという描写がしっかりなされるので、登場する回でも、無邪気に怪獣を倒す道具として使われるのではなく、少しでも運用を間違えばどうなるのか……という恐ろしさが常に描かれているのだ。

 ネタバレになるので深くは触れないが、このロボットたちはどのようにしてつくられたのか……という点も徐々に明かされていき、SFテイストなストーリーが展開していく。

 SFやロボットもの好きとして見逃せないのが、ロボに乗り込むパイロットたちの所作が実在の防衛軍かのように規律正しく演出されている点だ。

 随所に出てくる敬礼や、「銃を構えた際に、味方が前を通る瞬間のみ銃口を下げる描写」など、細かい点まで考証が行き届いている。

「脚本やシリーズ構成の段階で関わる小柳さんに対し、ミリタリー・スーパーアドバイザーの越康弘さんは実際のお芝居にリアリティを与えるために招かせてもらいました。元自衛官、みんなで半日かけて自衛隊式の所作指導を受けています。今回こだわったのは『10度の敬礼』。よく見る挙手の敬礼って、自衛隊でも警察でも着帽のときでないとしちゃいけないんです。無帽のときは浅い角度のお辞儀をするんです」『宇宙船 vol.169』(ホビージャパン)

 また後方支援の整備班までもが濃厚に描写されており、チーフメカニックのナイスミドルがメインキャラクターのひとりを務めている。整備班の後方での活躍の場面がつねに細かく描かれ、このあたりは、田口監督が過去に実写で参加した『パトレイバー』シリーズの影響がみてとれる。

 作中の音響へも徹底的なこだわっており、監督はこう語っている。

「今回はとにかくリアル志向です。ストレイジの環境音も、工場のなかで聞こえるような、それでいて一般市民の僕らもなんとなく聞いたことのある鉄の音をいっぱい入れてくれとお願いしました。それだけだとつまらないので、よく聞くと「あれ? 科特隊の本部の音も聞こえるかも」っていう、ちょっと昭和の懐かしい音と、現代のリアルな音とうまく配分してくださいと」『宇宙船 vol.169』(ホビージャパン)

 同様に、怪獣たちに壊される街の様子もしっかりと描写してある。第1話では怪獣が出現するタイミングで市民たちのスマートフォンに緊急速報のアラームが鳴り響いたり、怪獣が暴れる際には、周囲のファミレスやオフィス内から窓越しに怪獣を写すカットが過去作に比較して非常に多く使われるなど、ただミニチュアが壊されているのではなく、“誰か”が住んでいる街が壊されているのだというリアリティも、過去作以上にしっかりと意識されているようにも感じた。

考証が行き届いたロケットパンチの描写

 ここからは登場する巨大ロボットの説明だ。登場する4体のうち3体は、過去のウルトラシリーズで登場したロボット怪獣が使用されている。

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左から、ウィンダム、セブンガー、キングジョー・ストレイジカスタム(頭部の右ツノは、2歳の息子が破損)のおもちゃ
(写真は筆者私物を撮影)

 特空機1号は、1974年放送の『ウルトラマンレオ』で一度だけ登場したロボット怪獣のセブンガー

 2号は1967年放送の『ウルトラセブン』に登場したロボット怪獣のウィンダム

 3号も同じく『ウルトラセブン』に敵として登場した、屈指の人気怪獣であるキングジョーを人類が鹵獲(ろかく)し、改造したキングジョー・ストレイジカスタムだ。

 往年のシリーズのファンのなかには、ウルトラマンにロボットが登場すると聞けば、複雑な気持ちを抱くこともあるだろうが、「ウィンダムやキングジョーに地球防衛隊の隊員が乗る」となれば、胸が踊ること間違いなし。

 それに加えて、セブンガーという、通なファンでもなければすっと思い出すことが難しいキャラを46年ぶりにひっぱりだしたサプライズ人事。

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新旧セブンガーのソフビ人形と、ブロマイド

 しかし、作品を見ていくと、このセブンガーがかわいくて仕方なくなっていくのだから、あら不思議。実際、このセブンガーのソフトビニール人形は売り切れ続出で、SNS上でも「手に入らない」と嘆く声が続出し、店頭をさまようセブンガー難民も発生したほど。

 見た目こそ『ロボコン』『カブタック』などかわいい系の系譜のように感じるが、動く様子は『パシフィック・リム』のイェーガーさながらの特撮とアクションというギャップがたまらない。

 この見た目について田口監督は、このように語っている。

「すべての映画が、世界中でリアルであるべき、かっこよかったり、リアルに見えなきゃださいって風潮があるなかで、ウルトラマンって、ある種そこまでいかなくても許されてる世界で、僕はすごく居心地がいい。そっちのほうが見たい人もいるし、子どもにはそのほうが刺さるんじゃないかと思っていて。

 そのなかで、ものすごくリアルな発進基地で巨大感たっぷりだけどあのセブンガーの顔っていうギャップ。これはハリウッドはやれないんじゃないか」(TSUBURAYA・GALAXY vol.16)

 このコメントから、巨額を費やすリアル路線ではハリウッドに到底かなわないなか、日本の特撮の歴史を活かした戦い方のひとつを、この作品で結実させた。いま日本ができる頂点がセブンガーにある。そんな田口監督の誇りを勝手に感じ取ってしまったが、当たらずとも遠からずなのでは。

 本筋に触れない程度のネタバレにはなるが、第3話の冒頭でセブンガーの新兵器「硬芯鉄拳弾」(ほぼロケットパンチ)が炸裂した際には、ガコンと手が外れて重力で少し落ちた後、推進力が作動して前に進み始めるという、細かい部分まで考証が行き届いている。

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セブンガーのソフビ人形を、アプリ『 ヒーロータイム ウルトラマン』の写真フレームで撮影

 そんな兵器で大活躍したかと思えば、壊してしまった街中のガレキ撤去に勤しむ姿も描写され、萌ポイントを提供するとともに世界観に深みを与えている。

 動力源は電気で、『新世紀エヴァンゲリオン』のアンビリカルケーブルさながらの有線で行動する際には無尽蔵に動けるが、切り離したあとはバッテリーで3分間しか動かすことができない。同じく第3話では、整備班たちがそのケーブルをセブンガーの足元でちょっとずつ伸ばすことに奔走する姿も挟まれる。

 非常に短いシーンではあるが、主要キャラたちだけで構成される閉じた世界ではなく、その背後に多くの人々のリアルな生活が広がっていることを感じさせる演出が随所に見られるのだ。

ウィンダムがシャイニングフィンガーを繰り出すだと!?

 第1話で登場するのはセブンガーのみで、話が進むに連れ、徐々にロボットが増えていく。ウィンダムは過去作の見た目のままだが、キングジョーを知る人の目には、不思議な形とカラーリングに映ることだろう。その理由について、田口監督はこう説明している。

「ペダン星人じゃなく人類がつくったキングジョーだから、人類がつくりうるデザインにしてくださいとお願いしました。かっこよくするためによくやる斜めのパネルラインはやめて、関節も含めて実在するロボットの延長線上でありうるディティールを入れていこうと。なるべく地に足のついたハードSFガジェットとしてのキングジョーにしようとしつこいくらいに言って、何回もデザインにリテイクを出しました」(『宇宙船 vol.169』(ホビージャパン))

 さらに、元のキングジョー同様に分離、合体し、それぞれモードで活躍。

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キングジョー・ストレイジカスタムの分離バージョン
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キングジョー・ストレイジカスタムのタンクモード

 そのほかにも、ロボットもの好きがピンとくる描写も数しれず。

 12話でウィンダムが敵の怪獣に「食べられ」てしまったり、24話で4号機ロボットがとある理由で制御不能になり、基地から4足歩行で這い出ていく際にはエヴァの使徒を思わせる演出になっており、なにより、ラスボスの怪獣の名前に「使徒」が入っている。

 その他にも、17話でウィンダムがどこからどう見てもGガンのシャイニングフィンガーを繰り出したり(戦う宇宙人の声の担当が、Gガン主人公・ドモン・カッシュの関智一であるため)、12話ではキングジョーストレイジカスタムが、攻撃をゲッターロボのオープンゲットばりの分離で避けて、必殺技のペダニウム砲で敵を撃墜するという勇姿まで。

 果ては、キングジョーが分離したビークルモードにセブンガーが乗って攻撃する、夢の合体攻撃を放つ姿も。「あれ、いまなにを見てるんだっけ……」と思わされるほど、ロボットの活躍シーンが非常に多く見られるのだ。

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キングジョー・ストレイジカスタムのビークルモードに乗るセブンガー

 「これ、ウルトラCで『スーパーロボット大戦』の参戦もありなのでは!?」と思わせるカッコ良いロボット演出がこれでもかと出てくる。
 蛇足ながら、オープニング曲が遠藤正明なのもロボットアニメっぽいし、エンディング曲が玉置成実なのは一時期のガンダムっぽい。

 また、強いロボが次々と登場する物語の途中から、セブンガーは引退し、博物館へ収蔵される。そして、あるエピソードではストレイジが上層部の意向で解散させられてしまうが、勝手に博物館のセブンガーに乗って怪獣退治へ……という、ロボットものあるあるなアツい展開も。

 個人的には、かつての初代『ウルトラマン』に強く影響された『エヴァ』や『パシフィック・リム』から、本家ウルトラシリーズが引用し返しているという、逆輸入的な構図が非常に面白いと感じている。歴史はめぐる。

 ちなみに、「これだけロボットが活躍していて、ウルトラマンシリーズとして大丈夫なの?」と心配する人がいるかもしれないが、まったく問題なし。

 そもそも、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』までは人間が開発した兵器で怪獣を倒す描写があるし、人間が頑張って、それでもダメならウルトラマンに頼る。そして最後には、人間の手で危機を乗り越えるのが、本来のウルトラシリーズのありかただった。その意味では、巨大ロボットまで開発して、頑張ってウルトラマンと共闘までする今作は、由緒正しきウルトラマンであるともいえる。

 原子爆弾の比喩として、威力が高すぎる兵器をテーマにしたエピソードを含め、ウルトラシリーズは数十年に渡って「強大な力を人類が手にして本当に良いのか、その力をどう使うべきなのか」と問い続けてきた。

 『ウルトラマンZ』では、このテーマを全話を費やして深堀りしている。『ウルトラマン』『ウルトラセブン』までのSFテイストに回帰した、正真正銘の、“王道ウルトラマン”なのだ。

大人も2歳の子どもも飽きずに見れる内容

 と、ここまでの流れだとハードでリアルなドラマかのように思えるが、子どももしっかりと楽しめる内容になっている。子ども向け番組を半世紀以上つくり続けている円谷プロだけに、さすがとしか言いようがない。

 ハードなドラマとコミカルな展開のバランスが素晴らしく、たとえば1話の冒頭では、セブンガーが怪獣を倒したかと思えば、主人公・ハルキのミスでセブンガーが周囲の建物を破壊してしまい、パイロットの先輩隊員・ヨウコが主人公に向かって、「ハルキ〜〜〜!!」と、『ナースのお仕事』での「あさくら〜〜〜!」ばりに怒られてしまい、その後も長官や隊長に「なにか壊さないと怪獣をたおせないのか!」と怒られるシーンが続く。

 登場人物のキャラクター紹介であり、基地内の描写であり、「ウルトラマンって怪獣と戦うときに街を壊してるよね。あれっていいの?」という視聴者からのツッコミに対するアンサーでもあり、コミカルに物語を進める展開であり……という何重にも意味が込められたクオリティの高い脚本と演出が毎週続くのだ。

 そのほかにも、筆者は2歳の息子と一緒に視聴しており、彼は他のウルトラマンシリーズを一緒に見ていると、途中で飽きてきてしまう傾向があるのだが、今作は飽きずに最後まで見られる。

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パジャマのまま、なぜか正座して『ウルトラマンZ』を視聴する2歳の息子

 この理由は、戦闘シーンが多いためだと考えている。従来、ウルトラマンシリーズは約30分の放送のうち、ラスト5〜10分程度で戦闘が起こるのだが、今作では、前半でも必ず戦闘シーンがあり、最後の5〜10分でも戦闘が起こるように作劇されているため、子どもが飽きないようになっている。

 田口監督が、過去に電ファミのインタビューで、このように語っている。

『ウルトラマンオーブ』田口清隆監督が怪獣特撮の視点で“ゲームにおける巨大生物“の魅力を語る「見慣れた日常が蹂躙される…そこに感動がある」

「たとえば男の子がどんなに騒いでいても、テレビでウルトラマンと怪獣が戦っているシーンが流れたらパッと見るじゃないですか。あれって人間の本能というか、オスの本能を揺さぶるものがあると思うんです。
 どんなに可愛い猫でも、目の前にチョロチョロしているものがいたら、手をパンって出すのと一緒で。
 じつはある調査を見せてもらったことがあって。小さい男の子と女の子を均等に集めて、特撮物の作品を見せるんです。それで子どもたちが、いったい何に反応するのかを見るという調査で。

 そうすると、女の子はストーリー部分をちゃんと見ているんですよ。
 でも男の子はすぐ飽きて、お母さんのほうとかを見ちゃう。ところが戦いが始まると、男の子はそっちに夢中になって、今度は女の子が飽きるんです」

 リアル志向のSFで大人をつかみつつ、あくまでメインテーマは子どもの心を掴むことだという意識が伺える。

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まだ2歳にもかかわらず、アンパンマンを早々に卒業してウルトラマンZにハマった息子。ろくにしゃべれないうちから「ごしょおわください、われのなを」(変身セリフ「ご唱和ください、われの名を。ウルトラマンZ !」)と口にするように

 今回はシリーズ構成として全話に携わっているようで、もしかすると全てのエピソードで、前半にも戦闘シーンを入れることを徹底してのでは、と睨んでいる。

生身の人間と怪獣の戦いもみどころ

 掲載媒体が電ファミということで、ゲームの話題にも触れておきたい。

 田口監督は、このインタビューで、ゲーム『モンスターハンター』について、このようなコメントをしている。

「『ダメじゃないか!』って怒られてしまったんです。今の子どもたちは『ウルトラマン』じゃなくて『モンスターハンター』で“怪獣を見ている”んだから、それを知らないで怪獣を作ろうとするのはダメだよ」と。

 (中略)

 『モンスターハンター』みたいに延々とワンカットでモンスターの股の下をくぐりながら戦う映像が、今の子どもたちにとっては当たり前だから、それを知っておいたほうがいい」と言われて、「それはその通りだ!」と思ったんです。
 「特撮を扱う映画監督としてやっておかないといけないゲームだな」と思いました」

 もともと、ワンカットの長回しを多用することで知られる田口監督だが、『ウルトラマンZ』では、合成と使用した疑似ワンカットを含め、長回しをさらに多用している印象が強い。

 1話において、怪獣の体当たりで押され、ビルを突き抜けて空中まで持ち上げられ、一瞬、ビルの内部も映されるあたりは、その一例だ。

 その他にも、これまでになかったアングルや特撮の演出がシリーズを通して非常に多く見られたので、これ、1話いくらかかってるんだろうか…と不安になるほど豪華なつくりになっている。

 また、同インタビューにて、このようなコメントもあった。

「(※筆者注、『ウルトラマンオーブ』の)特捜チームの柳沢慎吾さんたちが、武器を持ちながら走って一生懸命怪獣を追いかけているシーンです。
 もともと僕は『モンスターハンター』をプレイする前から“人間たちが先制して怪獣を攻撃してダメージを与える”という描写が好きなのですが、あのシーンはゲームの見せ方を意識しています。

 (中略)

 (※筆者注、昔のシリーズは)かなり攻撃的な武器を持っていましたからね〜。バズーカ砲を撃ち込んだりとか! 最近は、バズーカ砲を持っている人間を出せないので、ちょっともの足りない(笑)」

 『ウルトラマンオーブ』で片鱗を見せた生身の人間VS怪獣について、『ウルトラマンZ』では、防衛隊の隊員が怪獣を狙撃するシーンが随所に出てくる。

 3話での、ヨウコ隊員がビルの屋上からゴモラに向かって狙撃するシーンは大きな見どころだ。

 余談だが、怪獣に対する狙撃のほか、等身大の相手に対する狙撃、信号弾などさまざまな銃弾を発射するのだが、銃のやノズルは常に同じで、弾倉のみを付け替えているように見えたため、さまざまな用途に合わせた使い方ができるように設計されているのかもしれない。このあたりのリアリティも追求されているのがにくい。

 ゲームっぽさを感じた要素をあとふたつほど。

 ある回でケルビムという怪獣が多数出現し、個別撃破していくのだが、一向に減る様子がない。分析すると、大気圏外に母体のマザーケルビムが存在し、そちらを倒さないと、いわゆる“無限湧き”が起こるという演出があるのだが、ウルトラシリーズではおそらく過去にない、ゲーム要素の強い描写であった。

 またある回で、主人公が亡き父と邂逅を遂げるシーンは、『ドラゴンクエスト5』を思わせる演出だった。

とにかくウルトラオススメできる作品。騙されたと思って追いかけて、最終回を見てください!

 と、ここまでその魅力を説明してきたのだが、まだ未視聴かつ、ロボットものが好きな人に向けた内容のため、ウルトラマンの要素をほとんど説明していないのだが、過去のウルトラシリーズファンで今作未視聴な方にもウルトラオススメできる作品だ。

 ネロンガゴモラテレスドンレッドキングといった往年の人気怪獣もしっかりと活躍。また、従来のシリーズであれば、過去の怪獣はパワーのインフレの材料として、噛ませ犬的に扱われることが多いのだが、今作ではそれぞれの良さを発揮してしっかり強敵として扱われているのが好印象。

 もちろん新規の人でもついていけるように、過去作の説明なしで見れる内容になっているので安心してほしい。

 では、最終回に向けて、最低限押さえておくべきエピソードはどれか?というと、非常に難しくなってしまうのが、唯一の難点。

 というのも、連続ドラマものでよくある、話の本筋に関する“縦軸“の回と、オムニバス的な回に分けたとして、ほとんどが“縦軸”に絡むという、連続テレビシリーズでは珍しいつくりになっている。監督とメイン脚本家の吹原幸太氏(残念ながら放送開始直前に逝去された)が、全ての回の打ち合わせに参加し、注文をつけたようで、「作家陣にはウザがられていただろうと思います」(『宇宙船 vol.169』)とのこと。それだけに、全ての回を通して見たときの見ごたえはたっぷりとなっている。

 オムニバス的に、ネタっぽい扱いだと思っていた描写までもが、絡み合っていくため、ここだけ見れば良いというのが難しい……。

 ・まずは「とりあえず第1話だけでも」という人はこちら

 ・セブンガーの軍事考証ばっちりなロケットパンチが見たい人は、3話

 ・とりあえずキングジョー・ストレイジカスタムが活躍するところだけでも見たい人は、11話12話

 とはいえ、もし可能なら、騙されたと思って、特別編の「特空機シークレットファイル」「つなぐ師弟」、実質総集編の13話の「メダルいただきます!」、オムニバス色の強い18話「2020年の挑戦」と20話「想い、その先に」を除いた、総計21話(1話あたりOP・ED・予告を除いて約20分)を見て、最終回に臨んでください!

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毎日ウルトラ怪獣Tシャツを着ているフリー編集・ライター。インドネシアの新聞社、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。意外なテーマをかけ合わせた企画とインタビューが得意。守備範囲は政治・社会からアイドル、スポーツ、お笑いなどエンタメまで。30歳を超えてなお、相変わらず「マリオ」「ドラクエ」「パワプロ」「スパロボ」「ロックマン」の最新作をプレイしている現状に、20年前から精神年齢がまったく変わっていないことを痛感している。

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