ケンカはマフィアのやることじゃない
エルヴィラ婆はチャイニーズの本拠地に自らカチ込んで死んだ……と思ったがそれは夢だったので大丈夫でした。畜生。あの野郎。だがこの経験は私に冷静になる機会を与えてくれた。
例えばだ。過去触れてきたギャング/マフィアものの映画やマンガを思い出してみよう。ヤクザものだっていい。ボスが自らカチ込んだり、あるいはガンガン戦争を仕掛けて四六時中街で大暴れしたりするものだろうか?
……いや、いざ思い返してみると「けっこうそういう作品あったな……」ってなってしまったけど、理想とする姿は違うじゃん? デキるボスってのはよ、部下に仕事をさせながら自分はいい椅子に座ってウィスキーだかブランデーだかを吸いながらモコモコした猫をなでてるもんだ。
ケンカはギャングの仕事じゃねえ! ブチャラティだって「この国のマフィアは目立つのを嫌う…」って言ってたもんな。あれはイタリアンマフィアでこっちはシカゴだけど。なのでここからは方針を変更。
・なるべく他組織との戦闘はしない
・金を稼いで地道に所持物件のレベルを上げる
・ネームドキャラの雇用を促進する
・クエストをクリアして報酬を得る
という感じで慌てず騒がず堅実なギャングライフのプランを練ってみた。っていうかクエストはやりなさいよ。やるためにあるんだから。なんかクエストシカトしてひたすら領地を広げたり敵組織を潰すムーブしてた。そういうところがある。
シカゴに無数に存在する他組織とは、戦うだけでなく同盟を結ぶこともできる。単にケンカしないようにしとこうぜって協定を結んだりとか……。
ほか勢力を協力して潰すということも可能。
さらに商売まで持ちかけてくれたりする。サルティス、お前どんどんおいしい話を持ってきてくれていいヤツだな。引導を渡すのは最後にしてやる。
そんなこんなして組織も軌道に乗ってきたある日、エルヴィラ側近軍団の誰かが金を盗むというクソバカイベントが発生。なんで!? お前ら、前金で3000ドルも払ったうえに毎週300ドルずつ払ってるんだぞ! この金食い虫やろうどもが! まだ足りねえか!
金盗みイベントが発生すると容疑者とチクリ野郎一覧が表示され、犯人を当てれば石を抱かせてミシガン湖に沈めることができるようだ。
ふたりから疑われてるクライド・マローンが怪しい! なによりこいつは先週雇ったばかりの若輩だ。てめえこのエルヴィラの財布から金を抜こうたいい度胸じゃねえかーッ!!
違った。クライド・マローン行っちゃった。先週雇ったばっかりだし前金で3000ドル払ったのにたいして仕事しないまま勝手に疑わられて去ってしまった。悔しい。なにがいけなかったんだ?
3000ドル……3000ドル……と失意のままメニュー画面を適当に遷移させてると仲がいい組織に「誰かを殺せ」と依頼できるのを発見。これって……これってもしかして……。
あるーーー!! クライド・マローンあるーーーー!!!
よし、クライド・マローンは私の3000ドルを奪いやがったしなにより濡れ衣を着せられたことで私を恨んでる可能性がある! それにヤツはなかなか強かった。敵に回ったら厄介だ。味方にならねえ野郎のことを心配せずに済む一番の方法はなんだ? このゲームから退席してもらうことだろう。
頼んだぜ!
と、思ったら失敗しやがった。「次はうまくいくといいな。」じゃないんだよ。そんなとっとこハム太郎のロコちゃんみたいな態度でいいのか。人の生き死にがかかってるんだぞ。ちゃんとやれ。
諦めるな! もう1回行ってこい! 一刻も早く殺してきてくれ。殺されるかもしれないんだぞ。
ダメだった。もういいよ。ほっとこう。
治安の悪いクエストが次々起こる楽しいシカゴ
クエストもいろいろある。例えばある程度いっしょに働いて忠誠度が上がった構成員にクエストが発生することも。
だがそこはギャング。なぜか大抵「昔ひどい目にあったヤツにあったから殺したいんだけど」というクエストばっかり発生します。スネにキズが無いヤツはいないのかよ。
なんとスナイパーのグローバーを昔ひどい目に合わせた旧友が、いまはウチのカジノのオーナーをやっているらしい。どうするかはともかく、一度会わせてみることにした。
は?
バーン!
シカゴは治安が悪いので一般市民も慣れたもの。突然カジノのオーナーが射殺されても動じたりしない。偉いね。
クエストをクリアすると、ステータスが上がったりスキルが手に入るほか、大金が手に入ることも。なんか知らんが部下の旧友を殺したら5000ドルも手に入った。これだけあれば施設のグレードアップをしたり新しい部下を雇ったりできるのでだいぶ助かる。
ボス本人にまつわるクエストや、部下のクエストのほかもっと細かい市井の人たちのクエストも多々ある。これは路地裏でガンをつけてくるチンピラに因縁をつけていくというまったくワクワク感のないクエスト。シカゴ、住みたくないねえ!
殺しても良かったがただのチンピラならウチの客でもある。お前は脅かすだけで生かしておいてやるよ。とくに金はもらえなかったけど脅迫が強くなった。こうしてコツコツと強請の技術を身に着けていくのもマフィアの大切な仕事のひとつだ。
おもしろかったのはトミーとかいうチンピラ構成員のクエスト。ガールフレンドとデートがしたいが自らの酒癖が悪いのでついてきてほしいと抜かしやがる。マジか? 私、マフィアのボスなんだけどなんでそんなカアチャンみたいなことしなきゃならないんだ??? 友達に頼めよ。友達いないのか?
まあ行くけど……クエスト報酬が欲しいから……。
店に入るなり唇をウィスキーで濡らしたがるバカ。こいつマジか?
なんで私はシカゴ中の市民が震えるマフィアのボスなのにこんなクロマティ高校みたいなやりとりに付き合わなきゃいけないんだ?
結局、トミーが惚れた女は敵のハニートラップだった。殺せ!!!!!!
まあなんだ、色々あるさ。この世の半分は女だし、別に男に惚れたっていい。今日は思う存分飲め。酒が忘れさせてくれることもあるさ。
あ、クエスト報酬はくれよな。失恋したからって「一匹狼」とか習得してんじゃねえよ。まったく手間のかかるマンモーニだぜ! でもトミーに愛着は湧きました。
罪の帝国で豆苗を伸ばそう!
部下もだいぶ増えたので自らはセーフハウスに居座り、部隊も数個に分割。狙われがちなカジノや醸造所にネームドキャラを配置したり、攻撃隊を組織して隣町に派遣したり……とかなり有機的に組織を運営できるようになり、かなり楽しくなってきたんだけどここらでそろそろこの原稿の締め切りがヤバいのでタイムアップ。まとめるか。
このゲーム、「ギャング/マフィアとなって街を牛耳る」という目的ながら、なかなかのんびりと楽しめる作品と思ったね。なんだろう、ほかのことに例えると「豆苗」に近いかな。みんな豆苗って買ったことある? 豆苗はね、食べ終わっても水に浸しておくとまた伸びてくるんだよ。毎日少ぉ~しずつ伸びて、10日くらいするとまた切り取って食べられるんだ。
本作でじっくり施設や部下を育てたり、外交で他組織と取引した結果、少しずつチャリンチャリンと金が増えていく様子は伸びていく豆苗を思わせる。
あと、先述したけど改めて「だからギャングやヤクザはみだりに争いをしないんだな……」とゲームを通して納得できたのは本当に良かった。ケンカ、マジで無益です。ヤクザは損して得とれとはよく言ったもんだね。隣接する組織を潰しにがんばるよりも、手をつないでいっしょに悪い商売をしたほうがよっぽど儲かるし、面倒じゃない。
気に食わないやつがいたら、仲の良い組織に戦争してもらえばいいんだよ。自分の手を汚すこたあない。同盟を結んだ組織が他組織と戦争すると、「この施設に乗り込んでくれ!」と指示を出すこともできる。ある組織を協力して潰そうとした時、最初は部下を敵本拠地前に張り込ませつつ友好組織にも協力を依頼。友好組織の部隊が到着したら一緒に突入するぞ! と思っていたんだけどボケーと見てたら勝手に攻め込んでオワらせてしまった。すげえ。私何もせずに勝ってしまったぞ。笑っちゃった。
頭のいいワルは自分で動かないんだよ。周りを操って自分はオイシイとこだけ頂くのさ。ケンカは鉄砲玉にやらせておけ。マフィアのボスの仕事は画を描くこと。それにゲームを通すことで自らの体験として理解できたのは収穫だったぜ。
今回はPS4でプレイさせてもらったけど、このちまちま自分の庭を整えていく感のあるゲーム性だとNintendo Switchで遊ぶのもオススメかもしれないな。寝る前にちょっとやるとか、仕事する前にちょっと気乗りしねえからSwitchのスリープ解除して少し遊ぶとか、ちょっとバッチイけどトイレに籠もりながらやるとか。
特に敵組織と戦争状態になると街中で小さなモブ同士の争いが始まってちょっとダレるんだよな。そんなときプレイステーションで腰を据えて遊んでると「まあそれでも、ちょっと落ち着くまでやるか……」と付き合ってしまいがちなんだけど、やりながら「これがNintendo Switchだったらとりあえずスリープさせといてそのへんに投げとくのにな……」みたいな感覚はあった。まあそのへんはほかに並行して遊んでるゲームがいくつあるかとかでも変わるとは思うけどね。
そんなわけでのんびり人を殺したり警察に賄賂を渡して自分の金が増えていくのを見ながら、当時禁止されてしまったウィスキーなんかをすすって遊ぶと歴史に対して優越感が湧くのでおすすめのゲームです。みんなも金を稼ぐなら自分の手は汚さないようにがんばろうね。それじゃあな。