名作アクションRPG『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』が、オリジナル版から22年の時を経てHDリマスターとして発売されることになった。
リマスター版の発表は、喜びとともに「今しかない」というひとつの思いを湧き起こさせた。「いつか理解して習得したい」と思いながらも、長年手を付けずに寝かせ続けていたやりこみ要素。
『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』(以下、『LOM』)では副原料で武器を強化し続けると、ゲームバランスを破壊する異常な攻撃力の武器を作ることができるのだ。
その手法で作ることができる理論上最強武器は、「攻撃力2186のハンマー」。ゲーム上、攻撃力は100もあれば楽勝でボスを倒せてしまうので、はっきり言って攻略には必要ない代物だ。
しかし、そのあまりに異常な数値に「ロマン」を感じずにはいられなかった。
バグに近い仕様も利用しているため、リマスター版での完全再現はおそらく不可能だろう。しかしある種のロストテクノロジーとして、どうにか記録に残したい……!
そんな思いを電ファミ編集部に伝えたところ、こうして『LOM』最強武器の作り方を記事と動画の2種類の形式で残す機会をいただくことができた。
なお、この記事と動画で解説している強化チャートは、2019年3月31日にサービスを終了したYahoo!ジオシティーズ上の個人ホームページ「M.T.R. 聖剣伝説 LEGEND OF MANA」さまで公開されていた情報(を筆者がローカルに保存していたもの)を下敷きにしている。【※】
動画では作り方を駆け足で説明したが、この記事では動画で省略した要素を補足説明し、後半には「リマスター版でも使える汎用強化チャート」を載せている。
リマスター版で同じ強化チャートを使用して「攻撃力2186のハンマー」を作ることはおそらく不可能であり、新たな強化チャートが必要になることは間違いない。
もしリマスター版での「最強武器」錬成にご興味のある方がいれば、この記事が参考となれば幸いだ。
※本稿・動画の掲載にあたり、「M.T.R. 聖剣伝説 LEGEND OF MANA」の管理人・みささぎ たか氏に連絡を試みましたが、筆者のローカルアーカイブに残っていた氏のメールアドレスは残念ながら不通となっていました。しかし「『LOM』リマスター版の発売に際して貴重な攻略情報を再び世に残したい」という筆者の強い思いもあり、誠に勝手ながら掲載とさせていただきました。この場をお借りしてお詫び申し上げます。(編集部)
※記事中のデータは1999年発売の『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』オリジナル版のものであり、リマスター版も同様かは未確認です。
文/夏川77
「攻撃力2186のハンマー」作成チャート
「攻撃力2186のハンマー」作成に必要な原料と、使用する順番は次の通り。
【つくる】
ハンマー>スウィフト隕石【鍛える】
A : 光0-闇0-木0-金0-火15-土0-風0-水0
火のマナストーン×2>イオウ×2>ゴールドクローバー×3>火のマナストーン×2>イオウ×2>火のマナストーン×2>イオウ×2>火のマナストーン×2>イオウ×2>火のマナストーン×2B : 光0-闇0-木15-金0-火15-土0-風0-水0
>種>イオウ×2>肉×11>火のマナストーンC : 光0-闇0-木15-金15-火14-土0-風0-水0
>アウラの銀貨>イオウ×2>肉×11>火のマナストーンD : 光0-闇15-木15-金15-火15-土0-風0-水0
>イオウ>火のマナストーン>シェイドの銀貨>水銀>肉×12>シェイドの銀貨>火のマナストーンE : 光15-闇15-木15-金15-火15-土0-風0-水0
>イオウ×2>火のマナストーン>ウィスプの銀貨>イオウ>肉×13F : 光15-闇15-木15-金15-火14-土0-風15-水0
>火のマナストーン>風のマナストーン>水銀>肉×11>水銀>風のマナストーンG : 光15-闇15-木15-金15-火15-土0-風15-水0
>火のマナストーン>イオウ×2>火のマナストーン(>電気の素>火のマナストーン ※省略可)
H : 光15-闇15-木15-金15-火15-土7-風15-水0
>カオスのクリスタル>土のマナストーン>イオウ>ゴールドクローバー×2>火のマナストーン>土のマナストーンI : 光15-闇15-木15-金15-火15-土9-風15-水0
>カオスのクリスタル>イオウ>火のマナストーン>土のマナストーン×2>カオスのクリスタルJ : 光15-闇15-木15-金15-火15-土10-風15-水0
>火のマナストーン>イオウ>土のマナストーン>火のマナストーン>カオスのクリスタルK : 光15-闇15-木15-金15-火15-土12-風15-水0
>イオウ>土のマナストーン>火のマナストーン>土のマナストーン>カオスのクリスタルL : 光15-闇15-木15-金15-火15-土14-風15-水0
>イオウ>火のマナストーン>土のマナストーン>イオウ>カオスのクリスタル>火のマナストーンM : 光15-闇15-木15-金15-火15-土14-風15-水14
>灰>ツノガイニンジン×14N : 光15-闇15-木15-金15-火15-土14-風15-水14
>聖水>小屋ダケ×2>聖水>「外出」>フィッシュフルーツO : 仕上げ
>「外出」>ハサミ
低確率であったり、入手場所が限られている原料はあるが、ハンマーの主原料となる「スウィフト隕石」を除けば普通にゲームを1周クリアすればだいたい溜まる量なので、入手方法について詳述する必要はないだろう。
ちなみに、動画ではGの5・6番目で「>電気の素>火のマナストーン」を使用しているが、このふたつは省略しても問題ない。
「電気の素」で強化をするとハンマーは専用の大技「ミルニョル」が使用できるようになるのだが、最終的に「灰」で強化をすることで「ミルニョル」は別の大技「マグマのハンマー」に上書きされ、全く意味をなさなくなるためだ。
スウィフト隕石の入手確率はなぜ約0.28%なのか
さて、最強のハンマーの主原料となる「スウィフト隕石」なのだが、これは入手するのが非常に難しい。筆者の計算によれば、その入手確率はおよそ0.28%だ。
「隕石」に分類される主原料は全部で8種あり、うち5種はゲーム内でも入手可能なのだが、スウィフト隕石を含む高性能な3種はポケットステーションで遊べるミニゲーム「リング・りんぐ・ランド」内でしか入手できないアイテムとなっている。
「リング・りんぐ・ランド」では自分のペットを操作してアイテムを収集することになるのだが、アイテムには★1~★4のレア度が存在する。次いで、道中で拾うアイテムはMINERAL(鉱石)、SEED(種)、BAG(その他)の3つのカテゴリに分けられる。
そして、スウィフト隕石はBAGに分類され、最もレアな★4に属する。つまり道中でBAGを拾い、なおかつ★4となる確率を計算すると、どう高く見積もっても0.27777……%になるのだ。
この「高く見積もる」というのは、スタート地点を左、進行方向を上に取り、周回数を3LAPSにした場合を指す。
スタート地点と進行方向を変えると、BAGの出現率が下がる。そして周回数を2LAPS以下にするとそもそも★4が出現しなくなるので注意が必要だ。
しかしこれは「道中で」スウィフト隕石を拾う恒常的な確率であり、実は入手手段がもうひとつ存在する。「3LAP最後のボス撃破で確定ドロップする★4から入手する」というものだ。
しかしボスがドロップする★4では「固定アイテムの入手確率が80%」と定められている。スウィフト隕石を手に入れるには、「残り20%の確率」の中から引き当てるしかない。加えて、残り20%にはスウィフト隕石以外の★4も含まれるため、最終的な入手確率は1.25%となる。
道中で拾うより4倍以上高い確率となっているが、この入手法には大きな問題がある。
そもそもボスを撃破するのが難しいのだ。ボスは非常に強いため、敗北して★4を得られずクリアとなるか、体力が0以下になってゲームオーバー(=拾ったアイテムも全ロスト)となる可能性が非常に高い。ただでさえ低い確率にもかかわらず、撃破が安定しないのでリスクは高い。
とはいえ、最強武器の錬成の主原料たるスウィフト隕石は必須アイテムだ。しかも、オリジナル版のみならず、ゲームアーカイブス版や今回発売されるリマスター版でも、「リング・りんぐ・ランド」はしっかり収録されている。
リマスター版でスウィフト隕石を狙う諸氏は、ぜひ精神状態を良好に保って周回に挑んでいただきたい(ちなみに、筆者は5回に1回程度しか勝てなかった)。
なぜゲームバランスを破壊する攻撃力の武器が作れてしまうのか?
ここからは、そもそもなぜ攻撃力が2000以上という異常な数値まで強化できるのかについて解説してみよう。『LOM』の武器攻撃力を決定する計算式は次の通りとなっている。
この式に「ハンマー」「スウィフト隕石」を代入すると以下の式になる。計算結果を見るまでもなく、相性が良いことがお分かりいただけるだろう。
性能基準値は仕上げに使用した副原料でしか増減できない。最強のハンマーチャートでは、「聖水x2」「灰」「ハサミ」を仕上げに使っている。
上記以外で武器の攻撃力を上げられる要素が、「8種類の属性の合計レベル」だ。
最強のハンマーチャートの工数が非常に長くなっているのは、8種の各属性のレベルを上げることに大半を費やしているためだ(動画では04:13〜ごろから属性レベルの上下を可視化してある)。
しかしこの属性レベルは互いに強弱関係があり、強属性のレベルを上げると弱属性のレベルが下がるようになっている。そのため、漠然と副原料を使うだけでは異常な数値にはならない。
属性レベルを上げるには「エネルギー」が必要となるのだが、エネルギーはマスクデータなので可視化されていない。もちろん、ゲーム内ではレベルアップに必要なエネルギーもわからない(この点に関しては攻略本『聖剣伝説LEGEND OF MANA アルティマニア』に記載がある)。
そのうえ、副原料から得られるエネルギーには限界があり、普通に強化すればレベル9程度で打ち止めとなってしまう。だが「スウィフト隕石」もしくは「ディオールの木」を主原料にした場合【※1】のみ、副原料からのエネルギーに頼らず属性レベルを上げることができた【※2】。
しかしこれらの仕様を研究し、限界に挑む人たちがいた。2000年ごろにジオシティーズのホームページで情報交換をしていた人々である。
※1 隕石が主原料の武器防具は、「副原料で鍛えるたびに火属性レベルが1下がる」「最初から火属性レベル4」という仕様がある。また木材が主原料の武器防具は「シークレットパワーがない副原料で鍛えるとドリアード(木属性)のシークレットパワーが自動で予約される」という仕様がある。シークレットパワーとは武器や防具に追加できる特別な効果を指し、99倍速の動画では左下の4段の表で可視化している。
※2 99倍速の動画の右下の青い数字は、エネルギーの計算を可視化したものだ。通常、エネルギーは副原料が固定で持っているものを利用するのだが、「属性レベルが下がる時に放出される」エネルギーも利用することができる。例えば火属性がレベル15のスウィフト隕石なら、レベル14に下がった時にエネルギーが「114688」放出される。このエネルギーは他の属性のレベル上げにそのまま流用することができる(下がった火属性レベルを戻すために再利用することもできる)。動画をよく見ると火属性のレベルが時々下がっていることが確認できるだろう。
ディオールの木はドリアード(木属性)が自動で予約される性質上、相反する金属性のレベルが下がりやすい。金属性からエネルギーを取り出し、他の属性の強化に当てることになる。
スウィフト隕石(あるいはディオールの木)の特殊仕様を利用すれば、各属性のレベルを10以上に【※3】することができた。しかしその計算は属性レベルの上下を繰り返さなければならず、また「エネルギーの入り方」【※4】も考慮しなければならないのでややこしい。
※3 属性レベルの表示上の上限は15。真の上限はレベル16とも言えるのだが、表示がオーバーフローを起こして「0」になってしまう。しかも表示が0になった後に一度でも副原料で強化すると「レベル0」で確定してしまい、レベル15まで上げた苦労が水の泡になる。
※4 まず副原料の属性が反映され、次に光属性、闇属性……といった順番があり、シークレットパワーが古い順に参照され、と本当にややこしい。気にしなくてもある程度強化は可能だが、全て把握しなければ最強チャートは作れない。
それら全てを把握して計算し、なおかつ最後にほとんどバグに近い仕様を利用した技──通称「外出技」を用いて限界まで強化されたものが「攻撃力2186のハンマー」なのだ。
外出技とは?
オリジナル版の『LOM』では武器防具を強化する時、「データをセーブ&ロードした直後」あるいは「ワールドマップに出てから作成小屋に入った直後」の鍛え初めの1回だけは、「副原料の性質が正しく反映されない」という仕様があった。
だがこの「反映されなさ」が一様ではなく、通常通りに反映される素材もあれば、全く反映されずに「無」になってしまうものや、一部の性質だけ反映されたり、エネルギーが全く違う数値で反映されたりと、非常にバラつきのある仕様だった。
「攻撃力2186のハンマー」作成チャートの最後のほうに突如「外出」の文字が登場するが、これは文字通り「作成小屋の外に出る」ことを意味している。なお、動画では作成小屋を飛び出しワールドマップに出て、即座にとんぼ返りする様子が99倍速で収録されている。
この外出技を利用することで、「副原料で鍛えると火属性レベルが下がる」というスウィフト隕石の特殊仕様をなぜか抑えることができ、火属性が最後までレベル15を保てるのだ。
ちなみに外出技を利用せずにそのままチャートを進めると、最終的な攻撃力は1812になってしまう。ゲームバランスを破壊する数値であることに変わりはないが、ロマンの開きはあまりに大きい。
筆者の知る限り、この外出技に関する詳細は2021年現在までほとんど不明のままだ。真偽は未検証だが、外出技の効果は「機種(使用ハード)によって変化する」という噂さえある。
副原料の変化についてはいくつかの先行研究があるのだが、この仕様の究明に迫る情報は失われている。
「攻撃力2186のハンマー」チャートはゲームアーカイブス版でも再現できたが、外出技を利用した強化チャートはオリジナル版同士ですら「再現できない」という恐ろしい可能性も秘めているのだ。
リマスター版にはおそらく反映されない仕様なので、情報がないことを嘆いたところで詮無いことではあるのだが……。
『スクウェア メモリーカードデータコレクション』とは何なのか
今回の検証動画では、主原料・副原料の収集作業については『スクウェア メモリーカードデータコレクション』のデータを使用した。
そもそもこれは何なのか?というと、デジキューブが発行していたCD-ROM付きムックである。スクウェアが初代プレイステーションで発売したあらゆるソフトの最強データやエンディング直前データがCD-ROMに収録されており、プレイステーションで起動することでメモリーカードにダウンロードすることができた(※PS3の仮想メモリーカードでも可能)。
今回使用したデータは、ニューゲーム直後から全種類の主原料を99個持っている「主原料多数」と、肉と果実を除く全種類の副原料を99個持っている「副原料多数」だ。チャートで使用する肉と果実は「副原料多数」データを攻略して収集した。
なお、言うまでもないことだがリマスター版では使えない。DLCで販売してくれるのを祈ろう。
余談となるが、『LOM』オリジナル版では、『LOM』のセーブデータがあるメモリーカードに『サガ フロンティア2』『レーシングラグーン』のセーブデータがあるときだけ見られる、特殊な隠しイベントがあった。
当時の筆者は攻略本『聖剣伝説LEGEND OF MANA アルティマニア』でその存在を知るのみで、『サガ フロンティア2』と『レーシングラグーン』を買い揃える財力はなかった。そこに現れたのが『スクウェア メモリーカードデータコレクション』である。
ゲーム本体を持っていなくても、セーブデータのみを入手することができる! 筆者は飛びついた。そして無事、紙面でしか知ることができなかったイベントを遊べて大満足したのである。
以来、『LOM』のアイテムを全種類持っているデータを持て余していたのだが、まさか20年の時を超えて役立つ日が来るとは思わなかった。
リマスター版でも使える汎用強化チャート
最後に、複雑な仕様は捨て去り、全ての主原料で使えてそれなりに強くなる「汎用強化チャート」を載せたいと思う。
A : 光0-闇0-木↑-金0-火0-土0-風0-水0
輝きのクリスタル×2>ドリアードの銀貨×2>イオウ>輝きのクリスタルB : 光0-闇0-木-金↑-火0-土0-風0-水0
>輝きのクリスタル>アウラの銀貨×2>水銀>輝きのクリスタルC : 光0-闇↑-木-金-火0-土0-風0-水0
>輝きのクリスタル×2>シェイドの銀貨×2>輝きのクリスタル×2D : 光↑-闇-木-金-火0-土0-風0-水0
>輝きのクリスタル>ウィスプの銀貨×2>輝きのクリスタル×2E : 光-闇-木-金-火↑-土0-風0-水0
>サラマンダーの銀貨×2>イオウ>輝きのクリスタルF : 光-闇-木-金-火-土0-風↑-水0
>輝きのクリスタル>ジンの銀貨×2>水銀>輝きのクリスタルG : 光-闇-木-金-火-土↑-風-水0
>カオスのクリスタル>ノームの銀貨×2>イオウ>輝きのクリスタルH : 光-闇-木-金-火-土-風-水↑
>カオスのクリスタル>ウンディーネの銀貨×2>水銀>輝きのクリスタル
大抵の主原料で属性レベルが5~7程度まで上げられるのがこのチャートだ。「壊れ性能はいらないから、攻略に役に立つ手頃なものがいい」という人にぜひオススメしたい。
このチャートは属性レベルを上げるために精霊のコインを使用しているが、大抵の主原料はコインではなくマナストーンでレベルが上げられる。また、互いに強弱関係を持つ火・風・土・水の4属性を強化する順番は入れ替えが可能だ(ただし強弱関係を正確に把握している必要がある)。
とはいえまだまだ最適化されたチャートとは言えないので、もし興味があればぜひ使いやすく改造してみてほしい。
さて、リマスター版で使える「最強武器のチャート」は筆者にはまだ分からない。
しかしほぼ確実に言えるのは、外出技を利用しているチャートはまず再現できないだろうということ、そしてオリジナル版のディオールの木の最強チャートは外出技を多用しているので、リマスター版では全く異なるチャートを構築しなければならないということだ。
もし『LOM』リマスター版を遊んでみて、「最強武器」にロマンを抱くときが来たら、ぜひこの記事と動画を参考にしてみてほしい。20年の時を経てよみがえった『LOM』で新たな最強武器を生み出すのは、あなたかもしれない。