世界初のトレーディングカードゲーム、『マジック:ザ・ギャザリング』(以下、『MTG』)。今から遡ること20年前……私が中学生の頃に一度『MTG』が流行り、近所の友達はみんな持っていた。
当時の私が愛用していたデッキは赤と黒【※】。戦術としては黒の再生を持つクリーチャーで何とか防ぎつつ、「暗黒の儀式」でマナ(エネルギーのようなもの)を増やし、「猛火」や「分解」などのマナをつぎ込めば威力が上がる赤のX呪文で相手のライフを削りきるという、今考えればめちゃくちゃなものだった。
それ以来『MTG』はご無沙汰だったのだが、電ファミ編集部から「『MTGアリーナ』のアーリーアクセスのお誘いがあるんですが、やりませんか?」との依頼が来た。
どうやら、『MTG』もついに『MTGアリーナ』としてデジタルカードゲーム化し、いつでもオンラインで遊べるようになったらしい。重いカードフォルダーを持ち歩いたり、独自解釈したルールで言いくるめられたりしなくなったのはいいことだ(それはそれで楽しいのだが)。
しかも、今回体験できるセットはあの『ダンジョン&ドラゴンズ』をテーマにしたカードで遊べる「フォーゴトン・レルム探訪」というものだそうだ。
20年のブランクがあっても大丈夫だろうか?と思いつつも、せっかくの機会なので『『MTG』アリーナ』で『MTG』に復帰してみることにした。これはその記録である。
カード資産がどんどん手に入る楽しさ
トレーディングカードゲームに限らず、何かを収集するゲームでは「コレクションが揃わないと楽しくない」という法則があると思う。ガチャでSSRを手に入れても、サポートアイテムが揃っていないとその性能を十全に発揮できなかったりするのだ。
紙の『MTG』でプレイしていた私にもそれは起きた。当時中学生の私にはお金がなく、上手い人からお下がりで貰うぐらいしか強いカードを集める方法がなかった。そのため弱いカードしか持てず対戦ではなかなか勝てない、と悔しい思いをした経験がある。
ゆえに「フォーゴトン・レルム探訪」を遊ぶにはリリース日である7月9日より先に始めて、ある程度カードを揃えなくてはならない。そう思った私は6月28日にプレイをはじめた。
まずはチュートリアル、続いてカラーチャレンジをクリアすることで各色のカードがある程度手に入った。
チュートリアルを済ませるだけで、ある程度そのままでも戦えてしまう構築デッキ(カード60枚)がもらえてしまうのは破格と言っていいだろう。それ加えて、ドラフトやジャンプスタートといったイベントではピックしたカードがそのままもらえてしまうし、デイリークエストをこなしていくだけでもパックやカードが無料でじゃんじゃん手に入る。お下がりで必死にプレイしていた中学生の私がもしこの環境に出会えていたら泣いて喜ぶと思う。
シンプルかつ奥深いカードの種類や効果
紙の『MTG』をプレイしていた私の時代のカードの種類と言えば土地、クリーチャー、エンチャント、アーティファクト、インスタント(インタラプト)、ソーサリーぐらいだった。能力で言えば速攻、飛行、再生、トランプル、島渡り、一番新しいもので装備などだったが、そこから20年も経つと流石にいろいろな種類や効果のカードが出てきていた。
まずプレインズウォーカー。これは『MTG』の世界観に関わる重要なカードだが、簡単に言えば一緒に戦ってくれる仲間の魔道士を召喚するカードだ。
ちなみに私はプレインズウォーカーのカードは持っていなかったが、未所持のカードはたまに入手できるワイルドカードを消費することで同等のレアリティのカードと交換して入手できる。
紙で買うとお高いレアカードでも、『MTGアリーナ』ならワイルドカードで簡単に揃えられるのが嬉しいところだ。
続いて英雄譚。これはターン毎に効果が発生し、『MTG』世界で起きた出来事を再現するカードだ。例えば《メレティス誕生》は1ターン目に土地カードをサーチし、2ターン目に壁クリーチャーを召喚。3ターン目にライフを回復した後消滅する(生け贄に捧げられる)。
能力も脱出、出来事、致死、絆魂、変容、切削、警戒、占術、上陸など面白い物が増えている。能力の詳細はカードにマウスオーバーすればいつでもルールを確認できるので、覚える必要がないのも嬉しい。
特に先制攻撃かつ攻撃回数が2回となる二段攻撃はとても強力に感じた(一度それで相手の二段攻撃クリーチャーからのダメージ計算を誤り、負けてしまった)。
またインスタントと同じタイミングで使用できる能力「瞬速」によって、今の『MTG』では相手のターンにクリーチャーを召喚したりすることもできる。『MTG』は相手の攻撃に対してブロックするクリーチャーを指定できるので元々そうなのだが、より後の先や反撃の戦術が取れるようになっていると感じた。
フォーゴトン・レルムを探訪しよう!
こうして私は20年のブランクを埋めつつ、プレリリースを遊べるサーバーへ招待を受けた。日本時間で深夜だったため時間は限られていたが、プレリリース専用のアカウントで「フォーゴトン・レルム探訪」のカードを大量に入手することが出来たので、使ってみて面白かったカードを紹介してみよう。
まず改めて「フォーゴトン・レルム探訪」は『ダンジョン&ドラゴンズ(以下、D&D)』をテーマにしたカードが登場する。一番の目玉となるギミックは「ダンジョンの探索」だろう。
まず何もない状態で「ダンジョン探索をする」の能力を使用すると3種のダンジョンを選ぶことができる。
マウスをダンジョンカードに載せると裏返り、効果を確認できる。ダンジョンを選ぶと一番上の部屋の効果(例えば真ん中のダンジョンなら占術1)が発生する。
続いて「ダンジョン探索をする」の能力を使用すると接続された部屋のうちどこへ移動するかを選択できる。部屋を選ぶとその効果が発生する。
「ダンジョン探索をする」の能力を繰り返し使用し、最後の部屋の効果を使ったらダンジョンは踏破されたことになる。これのどこが強いのかと思われるかもしれないが、なんとこのダンジョン、周回プレイが可能なのだ。
つまり再度「ダンジョン探索をする」でダンジョンへ入り効果を発生させることができる(別のダンジョンへ入る事も可能)。カードによっては安価なコストでダンジョン探索を行うことができるので、プレイヤーはデッキや手札を消費せずクリーチャー召喚などのさまざまな効果を繰り出せるのだ。
「フォーゴトン・レルム探訪」ではその他にも面白そうなカードがいくつか存在する。
まずはダンジョンに眠る《宝箱》。《宝箱》の能力を起動したとき、2〜9の目が出れば「宝物・トークン」を5つも得られる。宝物・トークンは使い切りだが好きな色のマナを作れるので、全ての色でマナ加速(より早い段階で強い呪文を唱えたり大型クリーチャーを召喚出来る状態)が期待できる。
先程の《宝箱》もそうだが、ダイスロールの結果で効果が変わるカードが多数追加された。中には1d20で20を引き当てればかなり有利な特殊勝利に近い状態に持って行くことが出来る《デック・オヴ・メニー・シングズ》のようなカードがある。
ちなみに『MTGアリーナ』ならダイスもゲーム内で振ってくれるので何処かに転がっていくこともない。
『D&D』の職業(クラス)を表現したエンチャントも追加された。
《ワイト》のようにお馴染みのクリーチャーも用意されている。しかも「生命力吸収」のように能力に固有の名前が付いており、より『D&D』らしい世界観を表現している。
《高貴なる行いの書》。上手くいけば「相手は勝てず、自分は負けない」というとんでもない効果が得られる。
ここからはメインでプレイした赤のカードについて紹介しよう。
《君は二匹のゴブリンを見つけた》のようにイベント名を冠したカードもある。また赤のカードはゴブリンを生み出すものが多く、始めたてのプレイヤーはカラーチャレンジで手に入るゴブリンデッキを強化できるかもしれない。
『D&D』でお馴染みの《レッド・ドラゴン》や《マジック・ミサイル》も赤のカードに含まれている。原作通り、マジック・ミサイルはなかなか使い勝手がよさそうだ。
条件を満たせばドラゴンを手札からノーコストで召喚できる《強き者の下僕》。先程の《レッド・ドラゴン》のように「フォーゴトン・レルム探訪」には多くのドラゴンカードやドラゴンにシナジーのあるカードが追加されたので活躍を期待できそうだ。
そして《星山脈の業火》。飛行で地上のクリーチャーにはブロックされず、速攻で隙もなく、青のカウンター呪文にも打ち消されないという、決定力に満ちた強力なドラゴンだ。個人的に、赤にはゲームを決める手頃なコストの切り札がもっとあればいいのにと思っていたので、これはありがたい。
しかもこのクリーチャー、パワーが20点に達した時に対象に20点の直接ダメージを与えるロマン能力まで持っている。対戦時の相手の初期体力は20点なので、決まればワンパンで勝ててしまうというわけだ。条件は少し難しいが装備やエンチャントなどで19点までパワーを上げ、最後にこの能力を使えば20点に届く。早速試してみたのだが……
クリックミスでドラゴンは自分に20点ファイアを放ち、爆発四散してしまった。能力の対象は慎重に選ぼう……。
非常に楽しいカードで『D&D』の世界観を味わえる「フォーゴトン・レルム探訪」のカードたち。20年のブランクもどこへやら、いつの間にか中学生の頃のように『MTG』に熱中してしまっていた。
『MTGアリーナ』は私のように初めたばかりの者でも十分楽しむことが出来るので、是非プレイしてみてはいかがだろうか。