9月30日から10月3日まで開催された、「東京ゲームショウ 2021 オンライン」。その幕張メッセ会場に出展されていたのが、デスクワークスが開発中のインディーゲーム『RPGタイム!~ライトの伝説~』だ。
少年の日の思い出が蘇る『RPGタイム!~ライトの伝説~』今冬発売が決定。ゲーム全編にわたって詰め込まれた独創的なアイデアが高い評価を受けたインディーズタイトル
本作が発表されたのは、今から3年前。その間、様々な賞も受賞してきたということもあり、1度は目にしたことがある人も多いのではないだろうか。今回は、同ブース内で体験版を試遊することができた。
また、開発メンバーにもお話をお伺いすることができたので、こちらでは試遊のインプレッションとインタビューを合わせてご紹介していく。
文・取材・撮影/高島おしゃむ
ページをめくる度に新しい冒険と体験が待っている!
構想15年、開発期間はすでに9年超えという、インディーゲーム界のサクラダファミリアとも言われそうな歳月をかけて現在も開発が行われている作品が、デスクワークのアドベンチャーゲーム『RPGタイム!~ライトの伝説~』だ。
このゲームは、放課後の教室でゲームクリエイターを目指す少年のケンタくんが作った大作RPG『ライトの伝説』を遊ぶという設定の作品になっている。子供の頃、頭の中にいろいろと湧き上がってくるアイデアをノートにびっしりと描き詰めて、友達に遊んでもらうような、あの感覚を再現したような感じだ。
ゲームは、コントローラーでカーソルを鐘に合わせてRTボタンを押すとスタートする。最初にサッカーかバスケ、もしくはケンタくんが作ったRPGのどれを遊ぶか聞かれるのだが……実は、どれを選んでもRPGをプレイすることになる。
噂には聞いていたのだが、実際にゲームをプレイしてみると、やはり圧倒的な絵の書き込み量に驚かされた。ノートのページをめくっていく度に新たな展開がまっており、まったく飽きさせない作りになっているところにも感心させられた。
そしてなによりも、ひとつひとつの作りがとても丁寧なのだ。子供にもわかりやすく、ゲームを通していろんなことが学んでいけるエデュケーションソフトというジャンルがあるが、それに近い作りだ。内容的には大人でも十分に楽しめるものになっているため、幅広い層が楽しめるゲームになっている。
用意されているギミックも多彩で、ページごとに新たな体験ができるようになっているところも面白いポイントだ。例えば、冒頭に出てくるページでは、漫画のコマが付箋のようなもので隠されており、それをめくっていくことで物語が楽しめるようになっている。最後の対決シーンでは、某格闘ゲーム顔負けの必殺技コマンドを入力して戦うといった感じだ。
第1章の舞台となるのは、「はじまりのどうくつ」である。行く手を消しゴムで消されて塞がれてしまい、迷っていると選択肢が出現。「カッコイイの!」と「カワイイの!」という2択でカワイイ方を選んでみると、なんとかわいらしいヌイグルミたちが折り重なったハシゴが出現して、上の道へと移動することができるようになった。
しかし、その先に待ち構えていた試練で、このゲームをプレイして初めてゲームオーバーに遭遇してしまう。ゲームオーバー時には、倒れてしまった勇者をボタン連打で起こすことで、ふたたびゲームに挑戦することができる。また、どうしてもクリア方法がわからないときは、ここでヒントを見ることもできるようになっているのだ。
試練を乗り越え先に進むと、伝説の剣であるエクスカリバーを入手することができる。ここで、今回の体験版のクライマックスであるバトルに挑戦することになる。戦う相手は、炎の化身ファイヤーマンだ。すると、画面外にあった鉛筆が、なんと勇者の剣にレベルアップ。画面内にある様々な仕掛けを利用して鉛筆で切りつけファイヤーマンを退治すると、体験版は終了となった。
ゲーム世代の大人らなら、思わずニヤリとしてしまうような仕組みがあったり、あるいは何も知らない子供でもその世界間に引き込まれるような作りになっていたりする。親子で一緒に楽しむコンテンツとしても良さそうだ。何はともあれ、この感動は実際に触ってみないとわかりにくい部分もあるので、リリース後はぜひ遊んでみて欲しい作品である。
作り手の満足度は200パーセント! 開発者の藤井知晴氏&南場元樹氏にインタビュー
というわけで、一通りゲームを体験した後、本作を開発したデスクワークスの代表取締役である藤井知晴氏と、取締役の南場元樹氏にお話を伺った。
――現状開発はどれぐらい進んでますか?
藤井氏:
もう、リリースの想定日も決まりまして、ほぼ完成しています。今は翻訳の英語や中国語を、手書きで書き直しているなど最後の仕上げをしています。昨年末にリリースの延期を発表しましたが、それからいろいろ追加しています。どちらかというと遊びやすさの調整や、より面白くするための作業をしていました。
“ほぼ出来ている状態”から、“出来ている状態”にするのが、すごく大変で(笑)。思ったよりも、そこに時間が掛かってしまったという感じですね。
発売日に関しては、今冬とさせていただいています。冬っていつまでですかね? 4月は冬ですか(笑)。なんとか寒いうちには出したいなと思っています。目処が付きましたら、具体的な日付やお値段なども発表すると思います。
――2018年に発表して以来、様々な賞を受賞されてきました。素直な感想としてはいかがでしょうか?
藤井氏:
今でも信じられないですね。それがなければ今もなかったですし。2018年にまわりで発表されていたインディーゲームが、続々とリリースされていき、それに対しても焦りがありました。どのゲームも面白くて。そうした中で、本当にわずかな差なのか何かの運で、自分たちのゲームが賞に選ばれたのは、本当に幸運でしかないなと思います。
――今回の東京ゲームショウで遊べたのはデモバージョンだと思いますが、だいたい全体でどれぐらいのボリュームになるのでしょうか?
藤井氏:
試遊のプレイ時間は10分から15分ぐらいで遊べるものにしています。全体的なボリュームではだいたい10時間ぐらいで、ページ数でいうと200数十ページになります。そのうちの8ページぐらいまでが今回遊べるようになっています。
――実際にプレイした印象では、エデュケーションソフトのような優しい感じがしました。本作でターゲットにされているのは、どれぐらいの年齢層の方々でしょか?
藤井氏:
ターゲットについては、老若男女というと広いかもしれませんが、自分たちはまだ30代半ばですが、ファミコンからゲームに慣れ親しんだおじさまたちにも遊んで欲しいですし、現役世代のお子様にも遊んで欲しいですね。ちょっと欲張った設定にしています。
――たしかに、随所に出てくるエッセンスに昔のゲームの要素のようなものが含まれていますね。
藤井氏:
大人の方にプレイしていただくと、懐かしいとか逆に新しいと言われたりします。お子さんにプレイして頂いたときも、6歳ぐらいの子が懐かしいっていいながら遊んでくれて(笑)。えーって思いながら。
幼稚園や小学校の低学年で、ノートに何か書いて遊ぶということをリアルタイムでもやってるんだなと思いました。
――試遊したバージョンでは、次に○○をやってといったベルトコンベア方式でしたが、徐々に自由度が広がっていく感じでしょうか?
藤井氏:
自由度というよりは、やることがいろいろと変わっていきます。たとえば次のステージは街なんですが、こちらは複数のページをあっちこっちいったりきたりして、住民の願い事を聞いたり、学校という大きな目標があり卒業するために準備するといった感じです。
――そうやってゲームの世界が広がっていくんですね。ゲームのグラフィックについてですが、キャラクターを1枚あたり書くのにどれぐらい掛かりますか?
南場氏:
1枚描くのにそんなに時間は掛かりませんが、5分から10分ぐらいですね。アニメーションもするので、生き物であったら止まっているときに3回絵を描いています。うにょうにょって動いている部分なんですけど。なので、ひとつのキャラクターの絵を描くのは結構時間が掛かります。とはいっても、フルカラーで描くよりは全然早く描くことができます。
――発想の原点はどこにあるのでしょうか?
藤井氏:
やはり、我々が遊んできたノートを使った遊びですね。当時の小学校って、テレビゲームを持ち込むのは禁止されていました。そうした中でなんとか遊ぼうとしていたときに、消しゴム落としとか鉛筆をサイコロ状に削って遊んだりしていました。
どちらかというと、僕は遊ばせてもらう側だったんです。小学校の時に、工作や絵が得意なクラスメイトがいて、彼への憧れと自分がそちら側に回ることができなかったという想いがありました。あの楽しかった時間をもう1度、というところも本作を作ったきっかけになっています。
あとは、自分たちができる精一杯の開発がこれだったというところですね。ふたりとも企画のチームなので、美麗なグラフィックやすごいプログラムの処理などは書けません。でも、鉛筆で絵を描いて動かすだけだったらできるんですよ。なので、それをフルに活用したという感じです。
――たしかに学校の雰囲気が出てますもんね! 特に開発側からここは押したいというポイントはございますか?
藤井氏:
当初は、南場がひとりで描いていた鉛筆のグラフィックに注目を頂いてました。たしかにその当時はそちらが主体でしたが、我々も3Dモデルが少し作ることができるようになりまして。そこから、ノートの中の遊びだったのが、ノートの外の遊びも作れるようになりました。
ノートだけでは、絵的な変化も少ないのですが、あっちに行ったりこっちに行ったりということができるようになり、さらに面白くなっています。なので、3D部分の遊びについても注目していただければと思います。
藤井氏:
今回の東京ゲームショウは、アニプレックスさんのご協力で出展しています。その分、開発に集中することができました。元々パブリッシングも自分たちでやろうとしていましたが、今回このようなブースで出展できたので、お願いして正解でした。
藤井氏:
新しいトレーラーも沢城みゆきさんにナレーションを付けていただいたので、こちらも観ていただきたいですね。今まで英語版しかなかったので、地味に日本語のゲーム画面を見せるのも初めてだったりします。
――現状の完成度で満足度はどれぐらいですか?
藤井氏:
満足度で言うと120パーセントは超えています。当時2年間で作ろうかという話をしていて、もっと時間をかけて作っているので、2とか3を作っているかのようなイメージです。当時こうなったらいいのに、ああなったらいいのにと思っていたものよりも、もっとすごいものが出来ています。
なので、自分たちでも出来上がったものにたいして驚いています。120パーセントっていいましたけど、200パーセントでもいいぐらいですね(笑)。
南場氏:
たしかに、2作目分ぐらいは作りました。
藤井氏:
2018年からでも120~130パーセントぐらいにはなってますね。遊びやすくなったという部分もありますし、いろいろなイベントでプレイしていただいて、直したらもう少しわかりやすくなるなという部分もあったので。
あれがなければ、遊びにくいものになっていたと思います。操作など、遊びもちょっと独特の部分があり、迷う方もいらっしゃいます。いろいろとごちゃごちゃ描き込んである分、どこを見ていいのかわからないこともありました。あとは、フォントを調整してテキストをちゃんと読めるようにするなど、細かい配慮もしています。
以前はもっと、同時にいろんなことが起きていましたが、ひとつでないとユーザーが迷って追えなくなります。長年ゲームを作っていると、徐々に知らない間に難易度が上がっていくみたいな話がありますが、そうしたことがこのゲームにもあったなと思いました。
――リリース後の予定や目標などはございますか?
藤井氏:
変わらずデスクワークスというチームで、新しいゲームを作っていきたいと思っています。インディーゲームは、ジンクスでいうと続編の2が売れないと言われていますが、今だと無料でアップデートをするのか、それとも有料でアップデートをするのかなど、いろんな手段があります。
ゲームを完成させたあとには、周りを見ながら新しいコンテンツを用意できればと思っています。
――続編になるかもしれないし、まったく新しいゲームになるかもしれないと。
藤井氏:
そうですね。今回の主人公はケンタくんですけど、女の子がこのRPGを作ったらどうなるのかとか、いろいろアイデアは貯まってきています。その一番いいやつをお見せできればなと思います。
――最後に、本作の発売を楽しみに待っているファンに向けてメッセージをお願いします。
南場氏:
以前からご注目をいただいていたのであれば、その期待を裏切らないように遊びを詰め込んでいます。楽しみにお待ちいただければと思います。
藤井氏:
ぜひ遊んでもらって、ゲームもグッズが増えたほか机が賑やかになるなど、後半になっていくにつれて面白い要素がどんどん出てきます。RPGでは、仲間や訪ねた土地などが積み上がっていきます。それが徐々に面白くなっていくのが、最初に作った15分で終わるRPGでは表現出来なかった部分です。
ぜひお手にとって頂いて、可能であれば最後までプレイして、ケンタくんのRPGをエンディングまで進めていただきたいなと思います。
――本日はありがとうございました!