雇用するスタッフの数が上限を迎えてしまったらしく、しっかりと「スタッフ定員到達」と表示された。新たに人を雇えなくなってしまったわけだ。どうやら全体で75名が上限らしい。
これは大きな誤算だった。このゲームは、基本的に新たに人が雇えないとそう大きなことができないという特徴がある。この部屋が混んできたからもう2,3個ほど設置しておくか、とやっても、そこに入る人員がいないわけである。むしろ、いたずらに設備を増やすと人手不足に陥り、一気に評判が下がって瓦解する危険すらある。
普通なら、この時点でこれ以上、病院の規模を大きくはできないので満足して終わるか、それとも別の評価軸、患者の満足度を極限まで上げるとか、病院の価値を極限まで上げるとか、そういった方向にやりこみを進めていくのだと思う。けれども、僕は事情が違う。とにかく、金、金、金、なのである。すべてはストロングゼロのために。
現時点では病院経営が完全に軌道に乗っているので、ほぼ放置していても金が増え続ける状態だ。ただし完全放置というわけにはいかない。きちんと見張っていないと機械がぶっ壊れて火災が起こることがあるし、ランダムに起こるイベントも手動で受託し、時にはそのイベントを効率よくクリアするために手動で人を配置したりする。おまけに「待遇が悪い」と辞職を匂わす職員も出てくるので、そうなったらなんとか、なだめすかして残留してもらわねばならない。
これらを放置しているといっきに設備が廃れ、人手不足になり、経営が瓦解する。そして、1年の最後には総決算みたいな画面が表示されるので、それもスキップできないのでしっかりと見なくてはならない。つまり放置しながら別のことをやるってのは、なかなか難しい。ずっと画面を眺めながらうっとりと、これでストロングゼロが200本かあ、夢が広がるなあと、増えゆく金を眺めてゆくのである。完全に守銭奴のそれだ。
経営25年で所持金が3000万ドルを突破。ストロングゼロ300本である。ちなみにこのゲームは時間の経過を止めたり早めたり遅くしたりできるのだけど、早送り状態でプレイすると1年経過するのに20分くらいかかる。25年だと500分。8時間ちょっとだ。
経営35年で4000万ドル突破。ストロングゼロ400本。もうめちゃくちゃなことになっている。400本、ケースにすると17ケースほどだ。ただ、その増え方が鈍化したように感じた。1000万ドル増やすのに10年かかっている。
相変わらず病院の評判はマックスで振り切れているのだけど、院内を歩く人の数が減ったように思う。これがこのゲームの深いところなのだけど、完全に軌道に乗ったと思い、特に大きな変化をさせることがなくても、なにかのきっかけで一気に状況が変化する危険があるのだ。
経営48年で5000万ドル突破。ストロングゼロ500本。こんどは1000万増えるのに13年かかった。明らかに収益のペースが鈍化している。
ついに、単月でみると赤字を叩き出すようになってしまった。あんなに順調だったのになぜ。このままではまた一気にジリ貧状態になってしまう。早めに手を打たねばならない。
何が原因なのかと隅々まで病院を監視していると、妙に「総合診察室」の待ちが多いことに気が付いた。この部屋は適切な数が整備され、それを補う人数の医師が雇用されているはずなのに、かなりの待ちが発生している。観察していると、診察室を不在にしている医師が多いようだ。
じゃあその医師たちは診察をほっぽり出してどこにいっているのか、探してみると意外な場所にいた。
なんかめちゃくちゃ揉めてる。
ここはスタッフが休憩するためのスタッフルームで、疲労を取るために必ず設置しなくてはならない部屋なのだけど、そこで医師や看護師が密集して揉めている感じがする。ここでずっと揉めているから診察室や治療部屋が空いてしまい、収益に悪影響を与えている。
おそらくこのスタッフルームで何らかのドラマが展開しているのだと思う。まさかあ、そこまで緻密に各個人が個性を発揮しているの? と思うかもしれないが、そうとしか考えられないのだ。
じつは、医師たちが多く集まる「総合診察室」密集エリアにも立派なスタッフルームを整備している。立地も設備もさきほどのスタッフルームより立派なやつだ。サッカーボールのオブジェまで置かれている。けれども、ここを誰も使わないのだ。面白いくらいだれもここで休憩しない。
それで、医師たちはわざわざ遠くにあるこの小部屋のルームに歩いてきて揉めている。普通に考えるとここで何らかのドラマが展開されていると考えるべきだ。
このスタッフルームの人間模様を眺めていると、マーク・カザグルマという医師が揉め事の中心にいるような感じだ。その彼のステータスを見てみた。
「片思い中」
ぜったいにマーク・カザグルマが揉め事の中心だ。エネルギー十分に片思いしとる。しかも「不機嫌」とあるので、どうやらその恋は上手くいってないようだ。ではこの片思いの相手は誰か。
色々と観察していると、どうもマーク・カザグルマ医師の動きが、エイミー・ハリネズーミ医師に対してだけ少しぎこちない感じがした。
彼女のステータスに「魅力的」とある。おそらく、マーク・カザグルマ医師の片思いの相手はこのエイミー・ハリネズーミ医師で、そして彼女は魅力的なので色々な人に好意を寄せられ、まるでドラマのような恋模様やいざこざがこの小さなスタッフルームで展開されているのではないだろうか。
とにかく、経営に影響を与えるレベルの揉め事は困るので、このスタッフルームは閉鎖して治療室に作り替えた。
もうひとつ、収益を安定させる秘策を思いついた。色々と病院を眺めていて気が付いた。
姿が犬のようになってしまう「いぬばか症」という疾病がある。これを治療するには「犬小屋」という設備が必要となる。どうやらこの治療、なかなか効率が良いのだ。
まず、治療した際の収入が大きい。他にも報酬の大きい疾病はあるのだけど、この「いぬばか症」の治療には医師ではなく看護師があたることができる。もう医師は手一杯なので看護師があたることができる利点は大きい。治療にもそんなに時間がかからない。けっこうサクサクと進む。そして、現実的な頻度で患者がきてくれるのだ。
これをもっと治療することができれば収益が安定するはずだ。具体的には、複数の「犬小屋」を設置することが大切になる。ただし、それだけでは「いぬばか症」の患者がきてくれるわけではない。
そこで「マーケティング室」によるマーケティングを利用する。このマーケティング室では病院自身をPRするキャンペーンと、特定の病気に対するキャンペーンが行え、患者を呼び込むことができる。
ここで「いぬばか症」のキャンペーンを継続して行うことにより、「いぬばか症」の患者がより多く押し寄せてくれるようになるのだ。そこに複数設置した犬小屋で効率よく治療していき、収入を得ていく。この病院に「いぬばか症」治療あり、みたいな状態になればかなり効率よく治療でき、収入が安定する。
経営57年で6000万ドル突破。ストロングゼロ600本だ。もう! そんなに飲み切れないよ!
25年 3000万ドル
35年 4000万ドル
48年 5000万ドル
57年 6000万ドル
この施策が完全に当たりだった。1000万ドル稼ぐペースが13年と鈍化していったところが大幅に改善され、9年で消化できるようになった。
経営68年で7000万ドル突破。ストロングゼロ700本。
経営78年で8000万ドル突破。もう止まらないぜ! ストロングゼロ800本!
経営88年で9000万ドル突破!うおおおおおおおお。ストロングゼロ900本!!!
ここにきて一つの懸念が生じた。この所持金、9999万ドルでカンストしちゃうんじゃないかという点だ。つまりストロングゼロ999本で終わっちゃうんじゃないだろうか。冗談じゃない。こちとらここで一生分のストロングゼロを稼ごうと思っているんだ。9999万ドルでカンストされちゃ困る。
経営97年経過で9998万ドル。くるぞくるぞ、カンストしないでくれ。上の桁までいってくれ! 頼む! 神様! こい!
1億ドル。ストロングゼロ1000本
上の桁あったああああああああああああああああああ!
カンストせずに上の桁あった。こりゃもう確実に9億9999万ドルまでいくじゃん。ストロングゼロ9999本いくじゃん。1日に3本飲んでも3333日。およそ10年飲める。そんなに酒浸りだったらたぶん途中で死ぬからこれはもう一生分ってことでいいだろ。
ただ、そうやって一生分のストロングゼロを稼ぐにはもうひとつ懸念事項がある。
この経過年度のところ、どう考えても二桁しかない。つまり99年でカンストする可能性が高い。そうなると、あと2年ほどしか時間が残されていないわけで、さすがに一生分のストロングゼロを稼ぐことが難しい状況に追い込まれてしまう。
頼む、99年でカンストしないでくれ。
そして、ついにその時はやってきた。
経営99年目、12月31日。所持金1億228万ドル(ストロングゼロ1022本)
頼む。99年で終わらないでくれ。こい!
経営100年目。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
3桁目あったああああああああ! しかも感じ的に999年までありそう。それだけあれば絶対に9億9999万ドル(ストロングゼロ9999本)いく。絶対に行く。うおおおおおおお!
といったところで、さすがにいつまでも締切を引き延ばせないので、ストップがかかり、経営100年で打ち止めとなりました。そうか、さすがに999年までやるのはあかんか。もう締切、引き延ばせないか。
ということで結果。
経営100年
所持金 102,070,278ドル(ストロングゼロ1020本)
ということで、守銭奴がストロングゼロをもらえると信じ込んで経営ゲームをプレイすると、ゲームとしてあまり大きくやることがなくなったとしても、一生分のストロングゼロを稼ごうと延々とプレイを続ける、ということが分かった。
今回、「ツーポイントホスピタル」をプレイしてみて、病院にはドラマがあるとつくづく思った。このゲーム内においても、患者の動きやスタッフの動きを100年分も眺めていると、様々なドラマが連想できた。やはり病院には人それぞれのドラマがあるのだ。
多くの場合、病院は体に不調をきたしたときに訪れる。いうなれば日常から切り離された存在だ。必然的に日常と切り離されるため多くの想いやドラマが生じるのではないのだろうか。ということで、最後にもう一度、病院の思い出を語らせていただきたい。
そろそろ僕も退院かというとき、お兄さんが病院からいなくなった。
何があったのか僕には教えてもらえなかった。ただ、一日がかりの検査を終えて病室に戻ると、お兄さんのベッドは綺麗に整頓されて何もなくなっていてガランとしていた。お兄さんは何も言わず、そんな素振りを見せることなくいなくなった。
ただ、その週のジャンプだけが、僕のベッドに置かれていた。
しばらくして退院した僕は、親に交渉し、毎週、ジャンプを買えるだけのお小遣いをもらえるようになり、欠かさず購入した。それはすっかりジャンプを読む習慣がついてしまったのもあるし、続きが気になる漫画もあった。それよりないより、ジャンプを買い続けることで、あたかもお兄さんと笑いあったあの日が続いているように感じたのだ。
しばらくは欠かさずジャンプを購入していたのだけど、そうもいかない事件が勃発した。ジャンプが10円値上げされたのだ。ギリギリ買えるだけのお小遣いしかもらっていなかった僕は、親に交渉したけど小遣いアップは認められなかった。こうして毎週のジャンプ購入を諦めることになったのだ。
ジャンプを買えなくなった瞬間、はじめて僕の中のお兄さんが消えたことを実感した。ガランとしたベッドを見たときも、置手紙のように置かれたジャンプを見たときも感じなかった感情が、10円値上げされたことで押し寄せてきたのだ。
もう、お兄さんには会えないんだ。
きっと、あのとき、お兄さんは転院したんだと思う。そして病気を治して今でも元気に暮らしていると思う。けれども連絡先もしらない僕らは会うことはない。お互いに元気でいたってもう会うことはないのだ。
ジャンプの10円の値上げでそれを実感した僕は、ただただ泣いたのだった。
僕は酔っぱらうとこの話をする。ジャンプの10円値上げによってお兄さんを失った話をする。それはきっと、今でもどこかで元気にしているお兄さんとお酒を酌み交わしている感覚なのかもしれない。
今回、ツーポイントホスピタル守銭奴プレイでいただけることになった1020本のストロングゼロ、これを飲みながらまたお兄さんを思い出し、酒を酌み交わしたい。
その際には守銭奴プレイではないまっとうなプレイでこのツーポイントホスピタルをプレイしたいものだ。きっと、忘れてしまっていた病院の思い出をまた思い出すに違いないから。
*
「ヨッピーさん、10200万ドル稼いだのでストロングゼロ1020本ください」
「は?」
勝手に信じ込んでいただけなのでまったく話が通じなかった。
おわり
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