『スーパーモンキーボール』は北米では『マリカー』のようなポジションの人気ゲームだった!? 全世界シリーズ累計出荷本数500万本以上、知られざる北米での根強い人気の理由を現地の人に聞いてみた

 おサルのキャラクターが入ったボールをステージを傾けて転がし、ゴールを目指すゲーム『スーパーモンキーボール』シリーズ。

 本シリーズは、アーケードゲーム『モンキーボール』の家庭用移植作として、もともとのタイトルに “スーパー” をつけた『スーパーモンキーボール』というタイトルで、2001年に任天堂が発売した家庭用ゲーム機、ニンテンドーゲームキューブのローンチタイトルとしてその歴史をスタートさせました。 

 非常にシンプルなシステムでありながら、高い中毒性を持つ本シリーズは、ゲームキューブで続編『スーパーモンキーボール2』が発売されて以降、PS2・Xbox・Wii・DS・3DS・PlayStation Vita・PS4など、さまざまな機種にわたって新作やリメイクが発表。     
 全世界でシリーズ累計出荷本数500万本以上にものぼる本シリーズは、2021年に20周年を迎えました。

『スーパーモンキーボール2』

 そんな『スーパーモンキーボール』シリーズですが、じつは日本よりも北米での人気がかなり高いそうなのです。
 たとえば、ゲーム雑誌『Next Generation』の調査によれば、アメリカでは『スーパーモンキーボール』『スーパーモンキーボール2』にかけて100万本以上の売上が記録されています。

 また、シリーズ20周年を記念して先日発売されたリメイク作品『たべごろ!スーパーモンキーボール 1&2リメイク』においても、ゲーム内で貯めたポイントにより購入可能なプレイヤーキャラクターとして、ソニック・ザ・ヘッジホッグを筆頭に、『ジェットセットラジオ』ビート『龍が如く』桐生一馬など、北米で人気の高いキャラクターたちが名を連ねており、本作が北米での人気を強く意識して制作されていることが分かります。

ソニック・ザ・ヘッジホッグ
ビート
桐生一馬

 『スーパーモンキーボール』のどのようなところが北米の方々に受け入れられ、人気を獲得したのでしょうか?
 今回はセガ・オブ・アメリカで『スーパーモンキーボール』シリーズを担当するネイサン・シャバジ(Nathan Shabazi)氏に、その人気の実態をお聞きしつつ、今年20周年を迎えた『スーパーモンキーボール』シリーズの歴史を紐解いていきたいと思います。

文/DuckHead


言葉の壁が存在しない、誰でも遊べて、簡単に楽しめるゲーム

 さて、『スーパーモンキーボール』の前身であるアーケードゲーム『モンキーボール』は、“誰でも遊べて、簡単に楽しめるゲーム” というコンセプトで開発が進められました。

 そのコンセプトを物語るかのように、『モンキーボール』の筐体は、 “バナナレバー” と呼ばれるバナナの形を模したレバーとスタートボタンのみというシンプルなデザインで、ゲームシステムも、「バナナレバーを倒してボールを転がし、各ステージに設置されたゴールを目指す」という単純明快なものでした。

 そして、『モンキーボール』の家庭用移植作である『スーパーモンキーボール』にも、このシンプルなゲームシステムは引き継がれ、基本操作は、スティックを倒してボールを転がすだけとなっています。
 それ以外の操作は、ポーズをかけたり、ミニマップを拡大・縮小したりといった直接はプレイに関わらない補助的なもので、極端に言ってしまえば、「スティックを倒す」という操作のみでゲームが成立しています。

めちゃくちゃにシンプルな操作方法

 このような、直感的に手軽に遊べるシンプルなシステムから、『スーパーモンキーボール』は、言語依存性が非常に低いゲーム作品であるといえます。
 つまり、『スーパーモンキーボール』は言葉の壁がほぼ存在しない、“誰でも遊べて、簡単に楽しめるゲーム”なのです。この特徴は、北米での人気を獲得した大きな一因のひとつとして考えられるでしょう。

 
 またネイサン氏によると、北米ではメインゲームだけではなく、ゲーム内に収録されているパーティーゲームも非常に親しまれているそうです。
 ジャンプ台からジャンプをしてターゲットに上手く着地することを目指す “モンキーターゲット” 、ボールに入ったおサルたちがミニサッカーで闘う “モンキーフットサル”、おサルたちが大空を飛び回りながらお互いを撃墜しあう “モンキードッグファイト” の3つが特に人気が高いとのことでした。

モンキーターゲット
モンキーフットサル
モンキードッグファイト

 これらのパーティーゲームの操作も、スティックを倒すだけ……というわけでは流石にありませんが、その基本操作やルールはシンプルなものとなっており、ゲームに馴染みの無い人でも気軽に楽しめるようにデザインされています。

 ネイサン氏によると、実際に北米では「『スーパーモンキーボール』のパーティーゲームを家族や友達と一緒に遊んで育った」というエピソードを持っている方も多く、『スーパーモンキーボール』は、日本でいうところの『マリオカート』『マリオパーティ』のようなポジションを確立しているそうで、本作の手軽さ・親しみやすさが、高評価を得ているということが伺えます。

 そして、シンプルなゲーム性に加えて、主人公のアイアイをはじめとする可愛らしいメインキャラクターたちがゲームに華を添え、本作を更に親しみやすいものにしてくれています。
 ネイサン氏によると、流石にソニックと並ぶほどではないものの、発売当初から根強い人気を博しているとのことです。

かわいらしいメインキャラクターたち

親しみやすいゲームシステムから生み出される、凶悪な難易度と強烈な中毒性

 さて、ここまでは『スーパーモンキーボール』の親しみやすい部分、いわば “表の顔” についてご紹介してきましたが、ここからは『スーパーモンキーボール』の真の姿、“裏の顔” について述べていきたいと思います。

 先ほど述べましたように、『スーパーモンキーボール』は、“ボールを転がしてゴールするゲーム” です。こう言ってしまうと、非常に簡単にクリアすることができるゲームであるかのように聞こえてしまうかもしれません。

 しかしこれは、「野球はバットでボールを打つだけのスポーツだから、プロ野球でホームランを打つのは簡単」「漫才は立ち話の延長だから、M-1グランプリで優勝するのは簡単」などと言っているようなものです。
 実際のところは、『スーパーモンキーボール』は操作方法のシンプルさからは想像もできないほどの高い難易度を誇り、“難易度が高すぎるゲームソフト”として、しばしば名前が挙がるほど。この、“非常にシンプルな操作性にもかかわらず、非常に高い難易度を誇る”という点が、『スーパーモンキーボール』シリーズのもうひとつの大きな特徴、“裏の顔” なのです。

 本作の難易度は、ステージの構成・ギミック・制限時間といった、シンプルなステージ構築の妙によって高められています。
 このステージの多彩さも、本シリーズの大きな魅力のひとつではあるのですが、ゲーム後半は難所につぐ難所で、普通にクリアを目指すだけでも熟達したテクニックが必要となってきます。

ギミック
狭い通路

 細かい操作ができない、時間が足りない、ゴールの位置が分からない…“ないこと尽くし” の難所に対してプレイヤーができることは、ボールを転がすことだけ。おサルの入ったボールは、ボタンを押してもジャンプすらしてくれません。
 “スティックを倒してボールを転がす”。これが『スーパーモンキーボール』の基本であり、『スーパーモンキーボール』の全てであると言っても過言ではなく、親しみやすさを生み出していた “システムのシンプルさ” が、一方では高すぎる難易度に拍車をかけているのです。

 そして、プレイヤーが唯一行える操作である “ボール転がし” も、慣性がしっかりと働くために制御が難しく、転がして狙い通りの位置に止めるという基本的なことにも、慣れとテクニックが必要になってきます。このシンプルかつダイナミックなゲーム性が、シリーズが長年愛されてきた大きな要因のひとつであるといえるでしょう。

コース外に落ちる(フォールアウト)ともちろんミスになります

 さて、難易度が非常に高いゲームは、飽きられて投げ出されてしまいやすいゲームと言い換えることもでき、中々ファンが付きにくいという問題が発生しがちですが、『スーパーモンキーボール』シリーズは、これを “リトライのしやすさ” で解消しています。
 本シリーズは、ミスをしたとしても、ボタンひとつでロードもほぼ無く流れるようにステージをやり直すことが可能となっており、試行回数を稼いで攻略を進めていくのが基本となります。

 ステージの難易度が高くても、リトライをするのは容易かつストレスフリーであるため、ゲームプレイに強い中毒性が生まれ、もう一回、あと一回、次が最後の一回、本当にこれが最後の一回……と、やめ時がなくなり、いつの間にか大幅に時間を盗まれていることもしばしばです。
 
 シンプルであるがゆえに難度が高く、シンプルであるがゆえに中毒性が生まれる。“誰でも遊べて、簡単に楽しめるゲーム” というコンセプトで開発が進められた本作は、当初はコアなユーザーを意識してはいなかったとのことですが、とてもそうとは思えないくらいの難易度の高さと中毒性から、多くのコアなユーザー、いわゆる “ガチ勢” も多く生み出し、多くの人を虜にしています。

動画サイトの普及によるスーパープレイの盛り上がり

 さて、通常クリアすら難しいほどの難度の高さを誇り、操作を極めることが非常に難しい『スーパーモンキーボール』シリーズですが、逆に言うと、操作を極めることで、人々がアッと驚くようなスーパープレイが生まれやすいゲームシリーズでもあると言えます。
 本作の魅力を更に高めたのがまさにこの点であり、数々のプレイヤーが、スーパープレイや、ゲームをスタートしてからクリアをするまでの実時間の短さを競う、リアルタイムアタック (RTA)に挑戦しています。

 世界中のプレイヤーのRTAの記録を取り扱う大手海外サイト、speedrun.comを見てみますと、『スーパーモンキーボール』シリーズには、各作品でさまざまな部門(レギュレーション)が存在しており、そのプレイヤーの多さからもRTA人気のあるシリーズであることが分かります。
 また、記録が掲載されているRTAプレイヤーのほとんどが欧米のプレイヤーであり、ここからも『スーパーモンキーボール』シリーズの欧米人気を伺い知ることができます。

 ネイサン氏によると、RTAについては、シリーズ1作目の『モンキーボール』がリリースされた2001年頃からすでに行われていたそうで、このようなムーブメントが発展してきたのは、“Games Done Quick(GDQ)” のような大規模なRTAイベントの開催がきっかけとのこと。
 また、YouTubeやTwitch、Facebookなどで配信が盛んに行われるようになったことで、ガチ勢プレイヤーたちにも注目が集まるようになり、彼らのスーパープレイを動画で見て、『スーパーモンキーボール』を始めたという新規プレイヤーも少なくないそうです。

 これらのようなスーパープレイ動画がたびたびバズったことで、多くの人々の目に触れることとなりました。その結果、新たなプレイヤーがそれらの動画をお手本に、更なるスーパープレイを編み出し、その動画がまたバズる……というスパイラルが発生し、『スーパーモンキーボール』シリーズは独自の発展を遂げていきました。
 このようなネット動画サイトを巻き込んだ大きな流れを、シリーズ開発当初スタッフは想定していなかったそうですが、この流れを新作に携わるスタッフが汲み取って反映させていくことで、『スーパーモンキーボール』シリーズは更なる独自発展を続けています。

 10年近く前の古いものにはなりますが、「日本と海外で好まれるゲームの違い」について研究した論文には、日本人は明確なゴールが決まっているゲームを好む傾向にあるのに対し、北米の方は完璧に構築された世界観の中で自由に楽しむことを好む傾向にあると記されていました。
 『スーパーモンキーボール』は、転がしてゴールを目指すという明確なゴールがあるゲームではありますが、その過程は問われません。プレイヤーは、スティックとボールとおサルと通路で構築された世界観の中で、自由にゴールを目指します。このようなゲームの特性も、本作が北米で人気を獲得した理由のひとつなのかもしれません。

 そして、これまで述べてきましたように、パーティーゲームを楽しむ初心者、通常プレイを楽しむ中級者、RTAやスーパープレイを楽しむ上級者……といったようにさまざまな層が思い思いの方法で楽しめるというのが『スーパーモンキーボール』シリーズの大きな魅力であり、長年のファンから新規のファンまで、多くのファンを獲得しているのです。

 さて、先ほどから何度か名前が登場している『スーパーモンキーボール』の新作『たべごろ!スーパーモンキーボール 1&2リメイク』
 従来通りのめちゃくちゃに難易度の高いステージやゲームモードがあるのはもちろんのこと、全世界の人とステージのクリアタイムを競う “オンラインランキング機能” や、制限時間が2倍になり、ゴールへの行き方を示すナビゲーションが表示される “おたすけ機能” などの新要素が導入されています。

ゴールへの行き方が表示されるおたすけ機能

 「ファミリー向けを強く意識し、長年のファンに愛されてきたパーティーゲームにもしっかり力を入れて開発しました」とネイサン氏が語る本作は、カジュアルプレイヤーからガチプレイヤー、長年のファンから新規プレイヤーまで、より広い層の方々が気軽に遊べるように工夫が施されています。

 これまでご紹介してきたようなさまざまな魅力を持つ『スーパーモンキーボール』シリーズ。このリメイク作品を機に楽しんでみてはいかがでしょうか。

ライター
学生時代、偶にしかゲームを買い与えない・ゲームを人質に学業に励ませるといった施術を両親から受けた結果、面白そうなゲームを手当たり次第に買い漁る体に改造されてしまった男。気がつけば、レトロゲームから最新ゲームまで、積み上げたゲームは500本を越えていました。口笛を元気に吹き鳴らし、今日もゲームを積み上げさせて頂いています。 他にはディズニーアニメ・お笑い・音楽・漫画・推理小説などが好きで、動画投稿者としても蠢いております。
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