11月12日よりいよいよ『エルデンリング』のネットワークテストが開始された。多くのファンが待ち望んだネットワークテストを、今回ありがたいことに先行プレイする機会をいただいた。ここでは筆者や電ファミ編集部がテストを遊んだ感想をお届けする。
『エルデンリング』のアートがあまりに美しすぎたので、100枚の画面写真で「エルデン百景」を作ってみた。まるで西洋絵画のようなタッチがどの角度から撮ってもキマりすぎる…!
『ダークソウル』信者が『エルデンリング』をプレイして気がついた52のこと。新要素や『ダクソ』からの変化などをまとめてみた【ネタバレなし】
さて本題に入る前に、まずは筆者が今回のネットワークテストを遊んで感じた一番の印象を一言だけ、ここで述べるとしよう。
本作『エルデンリング』は、『ダークソウル』シリーズと『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をかけ合わせたような、まさに“夢のゲーム”であった、と。
密度濃いオープンワールドに、野生の息吹を感じた。
本作の一番の特徴といえば、やはり広大なオープンフィールドにあると言っていいだろう。これまでのシリーズとは異なり、『エルデンリング』では非常に広いフィールドを探索して物語を進めていくというゲームデザインを採用している。
『ソウル』シリーズでは、入り組んだダンジョンを攻略していくというデザインが採られていたが、オープンなフィールドをメインに据えることにより、そのゲーム体験は大きく変化することとなった。
筆者は筋金入りのフロム信者という訳ではないが、このゲームデザインの変化は非常に興味深く、新鮮で素晴らしい体験を提供してくれるものだと感じた。獣道を歩く敵との遭遇戦や、少しずつ探索範囲を広げていく楽しみはオープンワールドならではの面白さだが、本作において何より特筆すべきはその密度である。
今回のネットワークテストで遊ぶことができたは、ゲーム開始直後に探索するであろうほんの僅かな範囲のエリアに過ぎない。しかし、その中だけで見ても、片手では数えきれないほどのダンジョンが配置されている。
寄り道は大歓迎、どこへ行っても入るべきダンジョン、倒すべき敵が用意されており、今回のネットワークテストで遊べる範囲だけでも、すでにひとつのゲームと呼べるほどのボリュームを備えている。これが製品版になるとどうなってしまうのか、それを考えると末恐ろしい。
そのプレイフィールは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、BotW)を彷彿とさせる。
『BotW』では「祠」という広いフィールドに無数に点在するダンジョンの要素が存在したが、『エルデンリング』のダンジョンはこの「祠」の立ち位置とよく似ている。
どのような順番で回っても良し、あるいは回らなくても良し。ダンジョンを回りつくす寄り道を楽しむか、ガイドに導かれるままストーリーをガンガン進めていくか、全てがプレイヤーに委ねられているという点で、本作は「真のオープンワールド」を実現していると言えよう。
なお、各地に点在する地下墓地や洞窟、坑道といったダンジョンは『ブラッドボーン』における「聖杯ダンジョン」と似た構造となっている。ひとたびダンジョンに入ればトラップも不意打ちも満載な「いつものフロム」が待っているので、「オープンワールドはちょっと……」というファンでもご安心されたい。
もっとも、『BotW』と『エルデンリング』では、そのアプローチが若干異なることは留意しておきたい。『BotW』では崖のぼりやパラセールなど、かなり探索に重きを置いたゲームデザインがなされているが、『エルデンリング』ではより「戦闘」を重視したつくりになっているように感じた。
いまやオープンワールドゲームの決定版とも呼べる『BotW』だが、強いて物足りない部分を挙げるとすれば、「強敵のバリエーションが少ない」という点だったと思う。もちろん『BotW』の楽しさは戦闘だけではないのだが、「もっとライネル先生のような強敵(とも)と戦いたい!」と体が闘争を求めたプレイヤーも少なくないはずだ。
おそらく、『エルデンリング』ではその戦いへの渇きが満たされることは間違いない。なぜなら、『エルデンリング』は敵キャラクターのバリエーションがすごいことになっているからだ。
フィールド上の特定の地点に鎮座する強敵が存在するのはもちろんのこと、各ダンジョンにはそれぞれボスが存在し、見た目やモーションもそれぞれ異なるという作りこみ。それぞれの敵にそれぞれの死闘が用意されているというだけでも、ファンとしては垂涎ものだろう。
もちろん、オープンワールド化に際して、本作はゲームプレイの快適性の追求にも余念がない。チェックポイントとなる「祝福」へはもちろん、それ以外のあらゆる地点にも高速でファストトラベルが可能なことに加え、便利な移動手段である「霊馬」を文字通り瞬時に呼び出すことが可能だ。
わざわざ口笛を吹いて呼び寄せ、いちいち「騎乗」コマンドを押す必要もないのだ! 加えて、コンパスとピンの追加、近くの「祝福」への光の軌跡も、プレイヤーが広すぎる世界で迷子にならぬよう視覚的にサポートしてくれる。こうしたユーザビリティの徹底は、ゲームへの没入を手助けしてくれる重要な要素でもある。
冒頭部分に記載した「『ダークソウル』信者が『エルデンリング』をプレイして気がついた52のこと。新要素や『ダクソ』からの変化などをまとめてみた【ネタバレなし】」の筆者であるレイヴァン氏も、本作のシステムを「今まで当たり前に「こういうものだと思っていたこと」が見直されて、いい意味でオープンフィールドRPGとして最適化している」と評している。
これまで好評だった点を継承しつつ、新たな要素を取り入れ「当たり前を見直す」という点も、『BotW』の開発コンセプトとどこか似ている、というのは言い過ぎだろうか。
戦闘にも新風が吹く。
ここまで主にオープンワールド部分について触れてきたが、ここからは戦闘部分についての感想を述べていこう。
まずは先ほども話題に出た「霊馬」の要素から紹介しよう。今作の「霊馬」は、「広いフィールドを探索するうえで頻繁に用いられる移動手段」という側面を持ちながら、一方で「新しい戦闘スタイルを提供する武器」という側面も持っている。
馬の要素が登場するゲームでとかく使われがちな騎乗状態での攻撃。さまざまなゲームで取り入れられている要素だが、その使い勝手はゲームによって千差万別だろう。ゲームによっては、騎乗攻撃が単に「横に位置取っている敵をシンプルなモーションで斬りつける」だけというものも存在する。そういった騎乗攻撃を見て、「馬は移動手段に過ぎない」という固定観念を持ってしまったプレイヤーも少なくないのではないだろうか。
少なくとも私が見てきたゲームの中では、『エルデンリング』の馬が最も「実用的な」馬であることは確かだ。
「霊馬」に乗った状態のアクションは、左右への攻撃、片手での攻撃、両手での攻撃は自由自在。もちろん魔法だって打てる。武器によっては──たとえばランスは──武器での攻撃が騎乗攻撃に最適化されており、普通に戦うよりも「霊馬」に乗って戦った方が高い戦闘能力を発揮するといったこだわりようだ。
もちろん「霊馬」で戦うことを想定してデザインされた敵も存在する。馬に乗った敵との騎馬戦は非常にダイナミックかつ爽快感のある画になり、これまでのシリーズとは全く異なる戦闘を楽しめる。少なくとも『エルデンリング』は、「騎馬での戦闘」という点に関しては最も完成されたゲームのひとつであることは間違いなく、ここがひとつの到達点であるという感慨さえ湧いてくる。
敵の群れに突撃し、ぶんぶんと得物を振り回してなぎ倒す。タイミングを見計らい、大剣を地面にガリガリとこすりつけながら力を溜め、すれ違いざまに馬上から強烈な一撃を叩きつける。騎馬によるアクションはどれも本物の騎士になったような気持ちになれてしまうほどに面白い。
ちなみに、この「霊馬」はダンジョン内では使うことができない。当然といえば当然だが、むしろダンジョンで使えないということが、オープンワールド部分とダンジョン部分のメリハリとなっていて非常にニクい。
戦闘に関する新要素としては、「霊体」の召喚も見逃せない。「霊体」は、対応するアイテムを使用+FPを消費することが召喚可能。なお、召喚アイテム自体は何度でも使える。
自身と共に戦闘に参加してくれる「霊体」はさまざまな種類があり、そしてその使い方もプレイヤーによってさまざまだ。
おそらくほとんどのプレイヤーは「霊体」をボス戦ないしは強力な敵との戦闘で使用することになるだろうが、極限のタイマン勝負に「霊体」という第三者(正確に言えば味方なのだが)を放り込むことは、ゲームの流れをより多様性のあるものへと、あるいはカオスなものへと変化させることを意味する。
「霊体」はターゲットをプレイヤーからそらし、自身よりもはるかに強そうな敵へと果敢に向かっていく。時には敵の強力な技に一掃されてしまうこともあるだろう。霊体の攻撃を見守って敵を観察するか?霊体がいるうちに回復するか?霊体に気を取られた敵の裏を突くか?
霊体との協力は戦術の幅をぐっと広げる要素であり、これまで以上に「作戦」を練る余地が生まれるだろう。今作ではさらに使いやすくなった「戦技」に加えこの霊体もFPを使用するので、いわゆる「脳筋」ビルド志向でもステータスの振り方を考え直すいい機会になるかもしれない。
今回遊んだのはまだまだゲーム序盤だが、それでも4〜5体ほどの霊体を発見できたので、製品版ではとんでもない種類の霊体が登場することになるはずだ。自分だけの戦い方を探していく楽しさは、また違った意味での「自由度」をプレイヤーに提供してくれるだろう。
いかがだっただろうか。何度も繰り返すようだが、今回遊んだネットワークテストはゲーム全体のほんの一部に過ぎない。この先に待つのは、想像もできないほどの「ボリューム」と「自由度」を兼ね備えた最高のゲームだ。
今こうして感想を語っている途中に気づいたことだが、もしかしたら『エルデンリング』は「欲しいもの全て」が入ったゲームなのかもしれない。かつて抱いた「もしフロムがオープンワールドを作ったらどうなるだろう」「もし作るなら、こんなゲームがいいな」というゲーマーの素朴な妄想が、具体的な形を伴って今ここに存在している。
数多くのダンジョン、広大なマップをうろつく強敵、馬に乗っての死闘……。本作は、欲張りにもその「全て」を持ち合わせている。これは断じて誇張などではない。
今回のネットワークテストに落選してしまった方も、どうか気を落とさないで欲しい。発売日は刻一刻と迫っている。2022年2月25日、その日が来れば全てのプレイヤーが「神ゲーだ」と叫ぶことができるのだから。