まずはこちらの動画をご覧いただきたい。
DNF DUEL、格闘ゲームとして常軌を逸した技がいっぱいあって神ゲーの気配がする。 pic.twitter.com/5gZYVnUfjy
— GZL|浅葉 (@asabataiga) December 18, 2021
これは昨年末にオープンβテストが行われた謎の格闘ゲーム『DNF DUEL』のワンシーンなのだが、見た目通りのまさしく「ハチャメチャ」な代物だった。
SNS上にはさまざまな「超性能の技」を撮影した動画がアップされ、「ダメージが高すぎる」、「拘束時間が長すぎる」、「この技だけで勝てそう」などと格闘ゲーマー界隈は一瞬にしてお祭り騒ぎとなった。
「ハチャメチャな技が飛び交うゲーム」というと楽しいゲームのような気もしてくるが、これが対戦ものだったとしたらどうだろう。ハチャメチャなのはいいけれど、「人と人とが対戦するうえでバランスは大丈夫なのだろうか」と心配してしまうかもしれない。
実はこの『DNF DUEL』、制作は開発は格闘ゲーム開発に長けたアークシステムワークスとエイティングが担当している。となると、このハチャメチャさも狙って作ったものなのではないかと予想できる。
実際に遊んでみると、そのハチャメチャな見た目とは裏腹に、硬派な格ゲーの一面が見えてくるのだから不思議だ。
そんな『DNF DUEL』は世界的に人気のあるMMORPG『アラド戦記』(『Dungeon & Fighter』)を原作としており、2022年にネクソン社から発売が予定されている。本記事では、オープンβテストをじっくり遊んだうえで見えてきた本作の魅力をお伝えしよう。
技が強すぎてバランス崩壊!?と思いきや、噛むほど味のある良ゲーの予感
2D格闘ゲームの「必殺技」というと、遠距離から攻撃する弾を打ち出したり、相手の攻撃を回避しながら攻撃する無敵時間のある技だったり、強力でそのキャラクターのバトルスタイルを象徴するかのような技が多い。
本作で驚いたのは、その必殺技にあたる“MPスキル”の性質や性能が、数ある格闘ゲームと比べても「ちょっと強すぎませんかね……」というようなスゴ技ばかりだったこと。
一度ガードさせたら長時間相手を拘束し、その上からゴリゴリと攻め続けられる技、でかかりに相手の攻撃をかわす無敵時間があるのに、ガードされてもリスクほぼない技、空中から“攻撃判定の塊”のような攻撃を繰り出す技……などなど。
一見すると、「ボスキャラ専用の技を間違って実装したんじゃないか」と疑ってしまうような超パワフルな技ばかりなのだ。SNS上ではこうした技が話題をさらい、「ゲームバランスが崩壊しているのでは」という声すら出ていた。しかし実際にじっくり対戦してみると、実は意外と「硬派な一面」が見えてくるのだから不思議だ。
本作の“スゴ技”であるMPスキルを繰り出すためには、文字通りMP(体力ゲージ下にあるのがMPゲージ。時間で自動回復する)と呼ばれるリソースが必要だ。闇雲に連打しているとすぐにガス欠のような状態になり、MPスキルなしで戦わなければいけない時間ができてしまう。
つまり、安定した勝ちを手にするためには、“強い技を要所で使う”という戦術をとる必要がある。ガス欠にならないために、いろいろな動きを使い始めると、そこにはしっかりとした「格闘ゲームのかけひき」が生まれていく。
スゴ技の影に隠れがちだが、意外と本作はガードを揺さぶる手段がシンプルなのも見逃せないポイントだ。立ちガードとしゃがみガードを揺さぶりまくる技というのはそれほど多くないため「何をやられているかわからない」という瞬間は意外と少なめ(全くないとは言っていない)。
基本的には接近してからの打撃と、ガード不能の投げを使い分けて渋くガードを崩すシーンが多いのだ。そのうえいわゆる“立ち回り”と呼ばれる相手にダメージを与えるまでの動きの軸は、ダッシュガード、前転といった他の格闘ゲームでもおなじみのシステムを堅実に使う必要がある。
さらに、βテストではあまり目立たなかったが、繰り出した行動を中断する“コンバージョン”というシステムも使いこなせばさらに戦いが奥深いものになりそうだった。
他の格闘ゲームでも似たようなシステムがあるが、本作はこのシステムを使用するリソースとして“体力”が関係してくるため、乱発するとピンチに陥ってしまうという味付けが面白い。かんたんな操作の下で、強力なMPスキル、小回りの利く通常技、そしてそれらの強さをさらに拡張するシステムを組み合わせて戦う『DNF DUEL』のバトルは、既存の格闘ゲームとは一味違った味わいを見せてくれそうだ。
“必殺技コマンド”という敷居と向き合った操作に注目
2D格闘ゲームというと、いわゆる↓\→+ボタン、→↓\コマンド+ボタンといった“コマンド入力”が求められるものが多い。
『ストリートファイター』シリーズを発祥とするこれらのコマンドは、格闘ゲームファンには広く受け入れられているが、新規ユーザーにとっては練習する必要のある難しい要素と受け取られる場合も少なくない。
本作の必殺技にあたる“MPスキル”も、こうしたコマンド入力を行うことで発動するのだが、これとは別にかんたんな操作でMPスキルを発動できる“簡易コマンド”が用意されている。たとえば↓\→+ボタンというコマンドの技を、→+ボタンといった入力で繰り出せるのだ。こうした簡易コマンド的な操作を擁する格闘ゲームというのは近年増えてきているが、“簡易入力で繰り出した技は性能が落ちる”といった弱点を抱えていたりする。
つまり、初中級者向けのゲームへの導線としてイージーモード的な操作を用意はするが、「最終的にはマニュアル操作で遊んでください」という設計になっている。こうしたゲームの場合、勝つためには最終的にすべて従来型のコマンド入力を行う必要があり、戦いのレベルがあがっていくと簡易コマンドを使いにくくなるという状況に陥ることも珍しくなかった。
しかしオープンβテスト中の『DNF DUEL』をプレイした限りでは、いわゆる従来型のコマンドで繰り出した技と、簡易コマンドで繰り出した技の間に、性能面での違いというのは感じられなかった。マニアックな差として従来型のコマンド入力で“MPスキル”を繰り出した場合は、若干MP回復がはじまるタイミングが早くなるという違いを確認できたが、このデメリットがあるからといって簡易コマンドを使わないということにはならない。
むしろ、でかかりに無敵時間のある技などは、コマンド入力の項数の少ない簡易入力のほうが明らかに使いやすく、狙える状況が多いのである。そのうえ、筆者はβテストの期間中ずっと簡易コマンドのみでプレイしていたが、MP回復速度の違いを露骨に感じる瞬間もなかった。
おそらく、うまくなってくればどちらの入力も使うという形になるのだろうが、よほどのハイレベルにならない限り簡易コマンドで十分な塩梅だった。
圧倒的新作感!このゲームは間違いなく“アツい”
最近の格闘ゲームのβテストでは一人で練習ができるトレーニングモードが遊べるものが多いのだが、今回の『DNF DUEL』βテストはオンライン対戦のみプレイ可能という珍しい仕組みだった。
遊び始めたばかりの頃は、「トレーニングモードがあればもうちょっと連続技も調べられるのに」などと思っていたが、ないものは仕方ないということで対戦に打ち込んだ。そうすると意外にも、かつてゲームセンターで新作タイトルを見つけたときのようなフレッシュな気持ちで格闘ゲームと向き合うことができた。
必殺技コマンドどころか、共通システムの繰り出し方もわからない。繰り出せたとしても、どう使う技なのかちょっと迷ってしまうというような環境。対戦の中でいろいろな動きを試し、他のプレイヤーが対戦中に使ってきた戦術が強そうと感じたら、すぐ盗みにかかる。
昔はこうやって、ゲームセンターで格闘ゲームを遊んでいたなあと感じたのだ。そんな遊び方で向き合ったβテストの3日間は、実に有意義だった。友達とボイスチャットをつないで、ああでもない、こうでもないと戦術のことを話し合ったりしたのも、最近では珍しい体験だった。
本作のβテストの仕様は、メーカー側がどこまで狙ったものかは定かではない。しかし、発売元であるネクソンにとっては新しい試みとなる「格闘ゲーム」で、大規模なβテストを開催してくれたという事実は、いち格闘ゲームファンとして感謝しかない。
βテストが始まったばかりの頃はオンラインが混雑し、プレイ中に中断してしまうなどの不具合もあったが、後半になると接続もほぼ安定してきており、メーカー側の熱量が垣間見えた3日間でもあった。開発元の2社はもちろん、ネクソンも格闘ゲーマーのことを見てくれていると感じたのだ。
また、アークシステムワークスとエイティングという制作のタッグも実に楽しみな組み合わせである。アークシステムワークスというと今年発売された『GUILTY GEAR ‐STRIVE-』が記憶に新しく、格闘ゲームファンたちから厚い支持を集めるメーカーのひとつ。
対するエイティングは、旧くは『ブラッディロア』(発売元はハドソン)、近年では『ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3』(発売元はカプコン)を制作した実績があり、こちらもコアな格闘ゲームファンから一目置かれる存在だ。
『DNF DUEL』は両社の良さを活かした作品となっており、アークシステムワークスの持ち味である、爽快感たっぷりでアニメさながらの美麗な映像表現は見ごたえ十分。そこに、エイティングの持ち味である、アクセルを踏みまくったゲームバランスが華やかに盛り付けられている。
MPスキル以外の部分でも、キャラクターの動きの個性を出すことに注力されており、「通常技」の挙動や性質までもがありきたりのものではなかったのも見逃せない。どこかで見たことのあるような通常技ばかりではなく、このゲームにしかないような通常技がしっかりと備わっていたのだ。
ハチャメチャで技を出しているだけで楽しいゲームだが、戦いを繰り返していくうちに深みが出てきて、練習すべきことも見えてくる。既存の格闘ゲームとは違ったところにうまく着地する作品になるのではと今から期待を寄せている。