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死んでも“3秒だけ時間を巻き戻せる”2Dアクション『COGEN: 大鳥こはくと刻の剣』。初のユニティちゃん主演作なのに、ゴリゴリに尖った高難度が異彩を放つ良作

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 始めに断っておくと『COGEN: 大鳥こはくと刻の剣』(以下、COGEN)は人を選ぶゲームである。

 もっと厳密に言うと、「横スクロールアクションゲームが大好きだ」という人でなければオススメできない。さらに何度も敗北を味わい、再挑戦を繰り返しながら突破口を切り開くことに楽しさを見出だせる人でなければオススメするのは難しい。
 そのような心持ちなく挑めば、大やけどは不可避である。

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 ゲームエンジン『Unity』の日本法人Unity Technologies Japanの看板キャラクター(アイドル)であり、同エンジンを使うクリエイターの応援役でもある『ユニティちゃん』こと『大鳥こはく』
 2014年の誕生以来、そのミッションに従事し続ける彼女が主人公を務める本作には、万人受けを狙ったアクションゲームとの印象を持つだろう。少なくとも筆者は最初、そのようなものを持っていた。

 ところがいざゲームに触れてみるとどうしたことか。驚くべき勢いでユニティちゃんがやられまくる。体力の概念がないのに加え、敵の攻撃も容赦なく降りかかってくるので、僅かな判断ミスが地獄への片道切符。
 「おいおい、仮にも『Unity』のアイドルだろうに、ここまで容赦ないことをするのか……制作チームは鬼か!?」と戸惑うのも無理はないほど、激辛なアクションゲームに仕上がっていた。

 しかしながらこのゲーム、激辛は激辛でもたしかに旨味を感じられる辛さであることは断言できる。
 確かに慣れない最初はそれなりの勢いでやられ続けるだろう。あまりの難しさに「正気か!?」ともなる。しかし、このような辛さこと高難度を特徴にするゲームほど「失敗を納得できるのか否か」が重要だ。
 結論から言えば、本作は非常に精密なレベルでその域に到達している。繰り返し挑み続けることにより、どんどんユニティちゃんがやられなくなっていく、プレイヤー自身の上達を確実に感じ取れるバランスに調整されている。

 また、本作は例えやられてもその3秒前に戻れる『ウロボロスシステム』こと、時間の巻き戻しによる復帰が可能だ。
 若干の制約こそあるが、実質無限に使える仕組みであり、その仕様にも興味深い特徴があるので、工夫次第では豪快な突破も難しくはない。単なる救済措置ではなく、ステージ攻略上の戦術を編み出す要素として位置付けられているのも面白いところだ。

 そんな見所も満載の”尖りに尖った”意欲作『COGEN』の特徴、見所を綴っていこう。

文/シェループ


古風な1本道構成に徹したステージクリア型アクションゲーム

 『COGEN』の基本は昔ながらのステージクリア方式で進行する横スクロールアクションゲームである。ユニティちゃんこと大鳥こはく(以下、こはく)を操作し、様々な仕掛けや敵が待ち受けるステージを進む。そして、最後に現れるボスを倒せば次のステージへ。その繰り返しだ。

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 昨今の横スクロールアクションは、地形の仕掛けの配置が遊ぶたび変化したり、迷路のように広大な地形をしらみ潰し感覚で進める要素を持つのがある種の流行りになっている。対照的にひとつひとつのステージを順番に攻略する様式は、ワールドという大きな箱の中に置かれ、道中とボス戦と区分けされたステージ(またの言い方でレベル、コース)を攻略していくタイプを指す節がある。
 名前を出すなら、かの『スーパーマリオブラザーズ』はこの類に該当する象徴的な一例だ。

 本作『COGEN』はワールドという箱は存在せず、道中とボス戦全てを凝縮したステージを順番に攻略していく作りである。分かりやすく言い換えれば1本道だ。
 この構成を採用したタイトルは1980年代後半~1990年代にかけ、多数見られたが、近年のアクションゲーム界隈においては数が減っていて、僅かながら希少種に近いものになりつつある。そんな様式を本作は採用しており、まさに前述に挙げた時代を感じさせられるアクションゲームになっている。

 とにかく前へ、前へと進み、最後に出てくるボスを倒せばいい。そんな古風なスタイルに徹したアクションゲームの完全新作という点でも、本作は割と珍しいと言えるだろう。

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 加えて本作はステージ総数も少ない。具体的な数は言及しないが、2桁に届かない。”合算した場合”は2桁あるが(詳細は後述)、それでもかなり少なく、この点でも昨今のアクションゲームの中では異彩を放っている。

 その分、ステージごとのボリュームが大きい。序盤こそおよそ5分以内で攻略できるが、中盤を越えると15分以上費やすのがザラになる。では、終盤は? その回答はプレイヤーの腕前に左右されるが、初見なら1時間~1時間半以上を余裕で費やす感じだ。

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 なので、数の少なさとは裏腹にエンディングまで辿り着くのに要する時間は長い。参考程度に筆者がエンディング到達にまで費やしたのはおよそ5時間半。人によっては技量にもよるが、10時間を超えてしまう可能性もあり得るだろう。それほどまでに本作に用意されたステージは、数が少ないのに時間を要する。
 「箱は小さいのに面積が広い」を体現するような、意表を突いた密度になっているのだ。

 1本道でステージの数が2桁以下。なら早々とクリアできちゃうじゃん。そう思うかもしれない。だが、よほどの凄腕で無い限り、それは困難を極める。
 加えて、この後詳しく取り上げるが難易度も手加減無用の高さに加え、体力の概念がないので簡単にやられる。場合によっては、何度もチェックポイントからのやり直しを強いられる。(なお、本作は残機無限の仕様だ)

 きっと数の少なさを感じさせない圧倒的なやり応えと充実感が襲い来るはずだ。
 同時に「これ以上あっては……」となるかもしれない。

制限のある巻き戻し機能が演出する、独自の攻略性

 プレイヤーが動かす「こはく」のアクション全般も総じて機動性に秀でている。
 基本の移動、ジャンプに加え、左右方向に高速移動する『ダッシュ』(ジャンプ中にも対応するボタンを押せば『空中ダッシュ』になる)、瞬時に後方へと退く『バックステップ』、ジャンプ中にさらに対応するボタンを押すと発動する『2段ジャンプ』、壁に張り付いた状態で逆方向へと跳ぶ『壁蹴り』と、まさに縦横無尽を体現する動きが可能だ。

 攻撃は『エグゼブレイカー』(以下、通称でもあるEBと表記)と称された大剣による斬撃(近接攻撃)が主体。
 対応するボタンを3回連続で押すことによる3段斬り、ジャンプ斬り、ダッシュ中限定の突き(ダッシュ斬り)などを繰り出せる。コントロールスティック(もしくは方向キー)との組み合わせれば、上方向へと斬撃を行うというのも可能だ。

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 これらの特徴に関して、アクションゲームに精通している人は「どこかで聞いたような……?紅いエイユウが脳裏を過ぎったような……」となるかもしれない。作品名は出さずにおくが、概ねその通りとだけ言っておこう。
 ただし、『壁蹴り』は駆け上がり非対応だったり、大剣を手にしている設定に説得力を出す意図でか、斬撃やダッシュ時の速度が気持ち遅く設定されているなど、厳密な調整は本作独自のものになっている。

 何より大きいのが『EB』に内蔵された『ウロボロスシステム』。別の言い方をすると『時間逆行』(巻き戻し)である。前述の通り、本作には体力の概念がないため、敵本体もしくは敵の攻撃に1回でも接触すれば、その時点でこはくがやられてしまう。

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 だが、画面左上のゲージが1つでも溜まっていれば、『EB』内蔵の『ウロボロスシステム』が発動。3秒前まで時間を戻し、ミスを無かったことにする形でその場へと復帰し、やり直せるのである。
 ゲージは最大3本あり、全部を消費するならば最大3秒前まで巻き戻すことが可能。

 ただし、ゲージが空だと巻き戻しができなくなるため、その状態のまま敵本体への接触、攻撃の被弾が発生すればミスが確定。最後に通過したチェックポイントからやり直しになる。
 消費されたゲージも使い切った後には自動で回復するが、その速度は遅く、早めるためにはその場に立ち止まる、もしくはごく一部に配置された『パネル』(※グラフィックが歪んで表示される箇所)で待機するかチェックポイントを通過するしかない。また、巻き戻して復帰したとしても、タイミングが適切でなければミスが繰り返され、結果的にゲージの消耗へと繋がる。

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 ゆえにどの辺まで巻き戻し、どこまでゲージを使うかが求められてくる形だ。「ミスを無かったことにできる」というその特徴からこのシステムには救済措置の印象を持つかもしれない。現に巻き戻しというものはそのように捉えられやすい。

 昨今、特に1980~1990年代に発売された旧作の復刻タイトルでは、遊びやすくするための救済措置で巻き戻し機能(リワインド機能)が採用される傾向にある。

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『Capcom Arcade Stadium(カプコンアーケードスタジアム)』の巻き戻し(リワインド)機能

 基本的に戻せる時間は長めに取られがちで、おかげで原作では不可能同然の力任せな攻略を実践できるという楽しみがある。だが、本作で巻き戻せる時間は僅か3秒。そのため、巻き戻しに頼った力任せな攻略は困難になっている。うまく使えばゴリ押しすることもできなくもないのだが、それなりの工夫が必要とされるため容易ではない。
 結局のところ、上手く活かすか活かせないかは完全にプレイヤーの判断力次第というわけだ。

 「ゲームは制限を加えることによって面白くなる」とはよく聞くものだが、本作の巻き戻しはまさにそれを体現していて、この仕組み特有の状況を打破する楽しさ、難しさが描かれている。
 一撃死の設定もその独自性を引き立てており、体力の概念があるダメージ制であれば、まず空気同然の存在として終わっていたかもしれない。高めに設定された難易度もまた然りだ。

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 巻き戻し自体は決して新しいものではなく、先に触れた最近の復刻タイトル系では頻繁に見られるもの。しかし、本作はそれにちょっとした制約を加えることで、ゲーム攻略をより面白く、新しいものへと昇華させている。なるほど、本作がこの「巻き戻し」の仕掛けをアピールする理由も納得の手応えが表現されているのだ。

 さらにこのシステムには興味深い仕様があるのだが、それは後々に。

苛烈な難易度。だが、プレイヤーの成長を促す工夫によって理不尽さを軽減

 さて、幾度も匂わせてきた本作難易度だが、その難度の高さは誇張抜きに突き抜けている。そもそも、一撃死の時点で難しいゲームであることは証明されているようなものだが、その実態はそこからさらに「ここまでやる!?」と思わず声が出てしまうほどに苛烈だ。

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 とりわけ中盤、ステージ3以降より本作の難しさの本領が露わになっていく。敵の配置、攻撃のエグさが増すに限らず、素早い立ち回りと『バックステップ』も併用した確実な回避が試される場面が連続。
 巻き戻しも復帰(やり直し)のみならず、足場を出現させたり、変化させるといった別の使い方も必要とされ、慎重なゲージ管理が求められる。

 ステージ最後に対峙するボスもまた然りで、終盤の面子に関しては攻撃&行動パターン把握はもちろん、それらを的確に回避しつつダメージを与えていくことがほぼ必須。
 ボスは序盤も含め、体力が一定数まで下がると攻撃が激しくなるといった変化が起きる仕掛けが凝らされているが、これも後半になるにつれて激化。少しの気の緩みと判断ミスが取り返しのつかない事態を招き、究極的には敗北の末、チェックポイントへと戻されて戦闘の初めからやり直しだ。

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 まさに高難度の矜持に則った設計。プレイヤーの瞬発力と判断力、根気強さなくしてクリアの3文字は拝めないのである。
 無論、「敗北を繰り返せば難易度を下げられるようになる」といった救済措置など存在しない。あるとすれば、EBからのアドバイスが入る程度。頼りになるのは己の実力次第という、徹底ぶりなのだ。

 それゆえに本作はアクションゲームが好きではない、何度も敗北を味わい、再挑戦を繰り返しながら突破口を切り開くのが苦手という人には薦めがたい。
 しかし逆を返せば、好きな人には相応に刺さる作りになっていることを意味する。実際、その調整は高難度の醍醐味たる、「再挑戦を繰り返すたびにプレイヤーが着実に上達している」ことを実感させるものになっている。

 それを演出するのがゲーム全体の成長を見据えた設計である。

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 具体的には事前予測がしっかりしていること。例えば遠距離攻撃を仕掛けてくる敵はあらかじめ弾道を指す射線を表示したり、発射もワンクッション挟んだ後に実施してくるよう設定されている。
 一部、射線を出していないタイプもいるが、それも武器を構えて間もなく表示し、ちゃんとワンクッション挟んでから撃つ姿勢を徹底。基本的に「あ、こっちに来る」と分かった上で対処できるので、何度か直面するにつれ、対処法が自然に身に付くようになっている。

 穴から直線状に飛び出してくる敵も同様であり、出てくる地点には必ず赤いランプが示される。なので、「急に現れたためにやられた、落とされた」といったことにもならない。プレイヤーの見落としが原因でやられた、ときっちりプレイヤー自身の責任として認識させてくれるのである。

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 ボスも攻撃直前に明確なサインが出るので、再挑戦を重ねていけば、いずれは確実な回避が可能になるだろう。後半のボスは初見殺しの色も強く、敵にも一部、事前の予測無しに攻撃を仕掛けてくるタイプがいる。

 だが、必ず法則に従った行動を取るため、最終的にはそれぞれの動きに合わせた対処法をプレイヤーは衝動的に取るようになる。それと同時にミスの回数も減っていく。

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 こうした設計の徹底もあって、本作は上達がわかりやすく現れるバランス調整、納得感のある高難度を確立しているのだ。同時にこはくのアクションを始め、細かい仕様を突き詰めていくことで、大胆な立ち回りが可能になる見所もある。

 というのも本作、数多くの意図的かつ便利な仕様が隠されている。特筆すべきは巻き戻し。先の通り、ゲージが1つでも溜まっていればミスした時に発動するこのシステムだが、実はミスしたその瞬間に発生する訳ではない。

 実際には微かに”ズレて”発生するのだ。つまるところ、戻す時間の調節によっては、全く違うタイミングからでの復帰を決められる。

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 さらに復帰直前にはコンマ数秒の無敵時間が発生する。敵本体は(ほぼ)対象外ながら、弾であれば無敵時間を利用して潜り抜けることもできなくはない。

 そして、ちょっとここで考えてみていただきたい。「時間を巻き戻す」ということは、言い換えれば「リセット」である。それすなわち、2段ジャンプと空中ダッシュを実践したという前回の行動は……?

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 他にこれはゲーム中にも説明されるが、『バックステップ』にも発動中に数秒の無敵が発生したり、ジャンプ斬りも2段ジャンプをタイミングよく繰り出せば4連続攻撃に繋げられる、斬撃の当たり判定は意外に長いなど、気付くことで攻略法に大きな変化を及ぼす仕様が隠されている。

 そして、これらを併用すれば、真正面から挑んだ時とは全く違う攻略法が編み出されるのも夢ではない。こんな極めるなりの楽しみもあり、ただ精密にこなすだけが難所を乗り越えるだけではない魅力があるのだ。

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 そのため少し思うことがある。これ、それなりに熟達した腕前のプレイヤーが取り組めば、「あり得ない動きをするこはくが現れるのではなかろうか」と。特に巻き戻しの意図的な仕様には、その可能性を匂わすものがある。

 いつの日か、それが現実になるのではないのか。少し期待してしまう。同時にこの仕様に強烈な魅力を感じたアクションゲーム好きならば、ぜひ試してみていただきたく思う。恐らく、延々と遊べてしまうかもしれない。ゆくゆくは、あなたが異様な動きをするこはくこと、ユニティちゃんの創造主になってしまうかもしれない。

 その時、ユニティちゃんにはどんな呼び名が付くことになってしまうのだろうか。

「これもあれば……!」と思ってしまう部分もあった

 ……と、難易度の調整と興味深い仕様の存在に言及はしたが、本作も決して隙が無いほど綺麗にまとまっている訳ではない。プレイしていて、「いや、これはどうなんだ?」と思えた箇所もいくつかあったので、伏せずに記しておきたい。

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 ひとつにこはくの当たり判定だ。本当に若干ではあるが、厳密すぎる(広い)きらいがあり、回避が間に合ったはずなのに接触判定を下されることが時々ある。主に敵本体を寸での所で避けようとする時に生じやすい。

 攻撃の反応も大剣という武器の性質上、ほんの僅かな振りの遅れで攻撃が間に合わずに被弾、あるいは敵本体と接触ということを招いたりする。

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 この設定自体は理に適っていると筆者個人は感じたが、こはくの判定は正直、もう少しばかり狭くしても良かったのでは、と思えてしまった。主に複数の敵と対峙する混戦、素早い攻撃を持ち味とするボス戦時に見受けられるため、今後プレイ予定のある方は念のため、用心することをあらかじめお伝えしておきたい。

 また、欲を言うならば、下突き攻撃はあって欲しかった……。厳密にはあるにはあるのだが、こはくのアクションでない(後述)のがもどかしい。

 ふたつにステージ3とそのボス。溶岩地帯が舞台で、長距離ジャンプが試されたり、巻き戻しで足場を出現させながら進む場所、そして下よりせり上がってくる溶岩から逃げる場面がある。だが、全体的にシビアな操作を要求しすぎな印象が否めない。

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 特にせり上がってくる溶岩の場面は、何の予告もなく上方から敵が現れる、初見殺しがすぎる場面があったのは引っかかりを覚えてしまった。
 ボスも弱点を露出させて叩くタイプである関係で長期戦に陥りやすく(特に攻撃激化後がなりやすい)、戦闘の最初からやり直しになった時の負担がラストを含む最終ボス以上に大きいのにも首を傾げてしまった次第だ。

 また、初見殺しな現れ方をする敵に象徴されるように、画面外から敵が来る時には警告表示のアイコンを出しても良かったように思える。前述のステージ3のケース以外にも、下り坂を進んでいたら急に敵が現れるということがあるため、その必要性を感じてしまった。

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 他に巻き戻しに関しては、復帰以外の使用機会が足場の制御程度に落ち着いているのも少し物足りなさを感じてしまった。初めての作品ゆえに難しいところがあったかもしれないが、まだ巻き戻しが応用できそうなネタはあるのでは、と思えたのも事実。その辺は将来、あるかどうかは分からないが……続編でリベンジされることを期待したい。

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 最後に賛否を呼びそうに感じたのが中盤以降の展開だ。ネタバレになるため、詳細をぼかしつつ記させていただくが、人によっては水増し感を抱いてしまうかもしれない。

 ただ、ストーリー上の理由付けがきちんとされていること、一見、無茶だろうと思わせて実はちゃんとバランスの取れた構成になっていること、上達の快感を味わえる作りになっているのは十分評価できるポイントだろう。

 そして何より、ステージクリア型アクションゲームであるという基本中の基本を崩していないこと。ともすれば、ゲーム全体の設計を別ジャンルに近いものへ変える方向に行きかねないのを真っ当に貫き通したところは、筆者個人としては拍手を送りたい。

良作だが人を選ぶ。まずは体験版で事前準備を。

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 ストーリーは件の展開もそうだが、ちゃんとゲームプレイとステージ構造との連携が取れた設計になっているのも良い。肝心の内容も『こはく』と『EB』のやり取りに愉快なノリのものが多いほか、徐々に信頼関係を築き上げていく流れはベタながらも見入ってしまうものがある。

 キャラクターも『こはく』、『EB』が際立っているが、最終的にこのゲームを一通りプレイした多くのプレイヤーが最も強烈な印象を残すのは『アーカーシャ』かもしれない。多分だが、最初と最後とで印象が180度豪快に逆転する……はず。

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 また、本作は3種類のダウンロードコンテンツ(DLC)が販売されており、購入すれば本編ボリュームの拡張も図れる。

 DLCは本編のクリアを前提としているため、難易度が総じて突き抜けて高く、理不尽スレスレなものもある。ただその分、本編にはなかったアイディアが詰め込まれた作りになっていて、独自の面白さがある。

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 それぞれのエピソードで操作するキャラクターのアクションにも「それ、こはくもできるようにしてよ!」と言いたくなる……まあ、前述の通り『下突き』のことなのだが。それができたり、ゲームジャンルが全く変わってしまうものもあるので、本編に物足りなさを覚えたのならばぜひ、チャレンジいただきたいところだ。

 なお、パッケージ版であれば、そのひとつである『アーカーシャ編』は特典として封入されているため、実質無料でゲット可能だ。

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 また、本作と同日に発売された同じく横スクロールアクションの『白き鋼鉄のX(イクス)2』とのコラボDLCは、同作の主人公アキュラを操作する特別編に当たるものになっている。基本アクションは件の続編に準拠しているほか、『ブリッツダッシュ』といったアクションも忠実に再現されている(ただし、基本仕様は前作ではなく続編を元にしている)。

 もちろん、専用のストーリーもあり、声優陣も原作準拠である。本作のシステムも多少反映した少し変わったノリの『白き鋼鉄のX』が楽しめるので、ファンであればチェックいただきたいところだ。

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 総じてアクションゲームとしての完成度については盤石。良作と言い切れる。ただし、難易度の高さ、何度も挑戦しながら活路を切り開いていくことに徹したスタイルから、人を選ぶ。

 何度も繰り返しているが、アクションゲームが苦手だったり、何度もやられながら再挑戦するのが嫌な人は、かなりの確率で刺さらず、楽しさより苦痛が勝ってしまうだろう。基本、一撃死であるスタイルもアクションゲーム好きだとしても好みが分かれるかもしれない。

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 それほどまでに、ガチガチなアクションゲームに徹している。
 同時に巻き戻しによる、一風変わった攻略要素が光る意欲作にもなっている。

 とは言え、どんなゲームか気になってしまう……というのなら、まずは製品版ではなく体験版から始めてみよう。体験版ではオリジナルのステージに挑めるのだが(※ちなみに現在はアップデートにより、製品版でもこのステージが遊べるようになっている)、基本のアクションから巻き戻しの感覚、ステージ構成やボス戦の様式および作風を確かめられるようになっている。

 一連の内容に「楽しい!」「自分は大丈夫だろう」との確信を得られたら、製品版に行くのがおすすめだ。難易度の高いゲームであるからこそ、事前の確認は入念に。

 そして、いざ製品版を始めて、挫けそうになった時は「大丈夫。あなたならきっと出来るよっ!」というユニティちゃんからの応援に耳を傾けよう! この尖りに尖った本作が、好きな人にちゃんと刺さることを書き手としては願ってやまない。

ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop

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