「世の中にはもはや遊びきれないほど沢山のMMORPGが溢れているけど、俺はMMORPGの『バトル』の部分だけを遊びたいんだ!」と感じている方はいないだろうか。
そんな貴方に『TrinityS』というゲームが存在する。フリートライアルはありません。
今回紹介する『TrinityS』はそんなMMOの「バトル」の部分だけがやりたくてやりたくて仕方がない熱き血潮たぎる戦闘民族な貴方の要望にドンピシャで応えるゲームだ。
Twitterなどで「いくら何でも酷似しすぎていないか」「初めて見たはずなのに見覚えがありすぎる」と一部光の戦士の間で話題となっていた今作だが、実際に触ってみてどうだったのか、その辺りも一緒にお届けしていこう。
文/ジスマロック
そもそも『TrinityS』とは?
先程から何度も何度も言っている通り、『TrinityS』は「MMORPG風アクションゲーム」……いや、「MMORPG」といちいちぼかしていると対象が広範囲となってしまうため単刀直入に言わせてもらうが、「『FF14』のバトルだけを楽しめるアクションゲーム」だ。
……よくこれ一本で勝負しようと思ったな!?
ここまで読み進めている方にはもはや説明不要かもしれないが、『FF14』もとい『FINAL FANTASY XIV』は全世界のプレイヤー数が2500万人を突破している大人気MMORPG。
「エオルゼア」で大冒険を繰り広げるか、最強の冒険者を目指して高難易度コンテンツに挑むか、それとも家を建ててインテリアに勤しむか、それともファイナル麻雀ファンタジーとして遊ぶか……戦いだけに限らず、もはや一生かけても遊びきれない大量のコンテンツが用意されている。
しかし『TrinityS』はそんなFF14の「バトル」の側面にフィーチャーした作品だ。FF14のバトルと言えば、主にタンク・ヒーラー・DPSの3つのロールに分かれ、敵の攻撃の範囲を回避したり、敵の強力な攻撃を複数人で受けたり、MMORPGらしくプレイヤー同士の「協力」が求められる。
『TrinityS』はタンクに相当する「グレイ」、ヒーラーに相当する「ベル」、DPSに相当する「エミール」の3人でパーティーを組む。FF14の場合は、4人・8人・24人でパーティーを組む事が大多数なため、「3人」という点に関しては割と新鮮かもしれない。
そんなタイトル通り3人組で戦う『TrinityS』の戦闘システムは……戦闘システムは……
いや見覚えありすぎるやろこのオレンジの円!!!!!
ランドスラ……ジオクラッ……
明らかに見覚えのあるオレンジの攻撃範囲、明らかに見覚えのある攻撃方法、初めて遊んだはずなのに何故かデジャブが発生する今作だが……敵に関しても明らかに見覚えのあるボスが次々と立ちふさがる。見よ、このイフリートとタイタンが悪魔合体を果たしたような何とも言えぬビジュアルのモンスター。
細かく言うならば、『TrinityS』はFF14の「討滅戦・レイド」の部分にスポットライトを当てたゲームとなっている。
4人でパーティーを組み、雑魚敵を倒しつつ最奥でボスが待ち構えているダンジョンを踏破する「ID」、24人でパーティーを組み立ちふさがるボスを次々と撃破する大規模ダンジョン「アライアンスレイド」など、ボスバトルだけでなく多種多様なコンテンツが用意されているが、今作は1体の強大なボスと戦う「討滅戦・レイド」の部分をひたすら遊べるゲームだ。
なので、3人で息を合わせて強大なボスを撃破…………おいこれランドスライド【※1】だろ! カメラ止めろ!! スクエニから第XIV軍団送られてくる前にカメラ止めろ!!!
ちゃんと強化版ランドスライドも用意してんじゃねえ!!!
※1「ランドスライド」
まさかここまで記事を読み進めてFF14を1ミリも知らないとは言わせない気持ちも山々なのだが……一応説明すると「タイタン討滅戦」というコンテンツにてボスの「タイタン」が放ってくる直線状の範囲攻撃。強化版が上記の画像の通り、複数の直線範囲攻撃が飛んでくる形となっている。こんな感じでnot光の戦士の方を置いてけぼりにする表現がこの記事には度々登場するので、どうかご容赦ください。
いや、もうランドスライドに留まらず「大ジャンプしてステージ全体を巻き込む地ならし攻撃」など、初見のはずなのに光の戦士ならば何故か避けられてしまう攻撃が今作には多数登場する。先ほど「イフリートとタイタンが悪魔合体を果たしたような敵」と言ったが、まさしくその通りで、この「ファイアビースト」という名前のしらばっくれたボスには何かイフリートっぽい攻撃も織り交ぜられている。
地面からランダムに円形の広範囲攻撃が飛んでくるエラプションじみた攻撃、制限時間以内に「ラヴァストーン」という名の炎獄の楔を破壊しなければ強力な攻撃が飛んでくるギミックなど……1ボスが丸々登場という訳ではなく、何かしらのボスと何かしらのボスのギミックを合体させてちょうどよく新鮮味を持たせる工夫は感じた。共鳴2層か?
……いやそれでも大体見覚えある感じの攻撃なんですが! イフリートさん、タイタンさん、蛮神の力、お借りします!
難易度が「極」や「零式」に片足を突っ込んでいることによる問題点
第2ステージのボスは「リヴァイアサン」。一応最初のボスは「ファイアビースト」とすっとぼけていたのに、ついに正真正銘のリヴァイアサンが出てくる。当然の如くジェネリックジャイヤ・スピュームみたいな攻撃も飛ばしてくる。
言い忘れていたが、今作は現時点では計5ステージに6体のボスが用意されている。一応クリア自体は3~4時間程度もあればサクッと出来てしまうのだが……ここでひとつ今作の問題点を挙げるとすれば、「少し難易度が高すぎないだろうか?」という疑問がある。
参考にしているゲームの性質上、やはりマルチプレイにおいては相当な連携と協力が求められる。しかし、今作のボスキャラの攻撃はFF14において普通に「極」や「零式」(高難度コンテンツ)に相当する苛烈な攻撃も含まれており、かなり苦戦を強いられる場面もあった。
もちろん高難度コンテンツにおける「トライアンドエラーを繰り返すうちに、敵の攻撃パターンやギミックを把握していく」という楽しさは今作にももちろんあるのだが、それにしたって難しすぎると感じる点もいくつかあった。特に「一発喰らったら即死」のギミックの多さは割とキツい。吉田……? いや吉田関係なかったわ。吉田ごめん。
ソロプレイの際に使用できるフェイス……でもなくコンポタ……でもなくCPUはかなり優秀で、敵の攻撃をほぼ完璧に回避してくれる。その一方、「この敵の攻撃の苛烈さはCPUの完璧な回避を前提とした上で構築しているのではないか?」とも感じてしまう。
総評としては、対人のマルチプレイはあまりカジュアルではないと言える。レベルレに行くぐらいの軽い気持ちで遊ぼうとすると、当然の如く極討滅戦クラスの苛烈な攻撃が飛んでくるため、クリアを目的とするならば個人的にはソロプレイをオススメする。
……と、あまり良くなかった点の列挙になってしまったが、もちろん『TrinityS』からはFF14への「愛」をひしひしと感じる。FF14のバトルにおける「何度も死んで敵のギミックを把握して完璧に処理できた時の気持ちよさ」をちゃんと理解した上でこのゲームに落とし込んでいるのは感じるし、ただの「FF14の模倣」には留まっていない。
FF14の戦闘の面白さをしっかりと噛み砕いた上で、「3人でこのギミックに対処するとした時はどのくらいの攻撃の頻度がいいのか」や「このボスのギミックとこのボスのギミックを組み合わせれば面白いのではないか」と言った点はしっかりと練られているため、純粋にゲームとしての完成度は高いと感じた。
いや、まさかこのゲームからFF14に入る奇特な人はあまり居ないとは思うのだが、FF14を一切知らない状態で遊んでも、『TrinityS』は結構楽しめるはずだ。
FF14の模倣に留まらない面白さ
ここからは『TrinityS』のオリジナル要素を紹介していこう。先ほども書いたことではあるが、今作は決して「FF14の模倣」には留まらない面白さをしっかりと持っている。
むしろ、FF14のコピーから一歩も進んでいないようなゲームであればそもそもこんな記事は書いていない。この記事には『TrinityS』が「FF14みたいなゲームが出たらしい」という情報だけで止まって欲しくない……という私個人の勝手な思いがかなり込められている。
今作のオリジナル要素、それこそが「その場に留まり続けることによるメリット」。
『TrinityS』のタンク・ヒーラー・DPSにはそれぞれ「その場に留まり続けることによって発動するパッシブスキル」が用意されており、たとえばタンクの場合は「停止中、受けるダメージが減少する。このパッシブはその場に停止すればするほど効果が上昇する」というパッシブが発動するため、敵を引きつけてその場に留まり続ければ徐々に徐々に被ダメージが減少する。
ヒーラーは味方への回復効果、DPSには攻撃力の上昇……など、とにかく「その場に留まること」そのものが戦局を優位に組み立てることに繋がる。
今作はアクティブスキルを使用することで敵のヘイトを集める挑発スキルや強力な魔法を発動できるのだが、そのスキルを発動するために消費する「マナ」もその場に留まることによって上昇する。
『TrinityS』の敵の攻撃を避けるだけならば、基本的には常に動き回っていれば大体どうにかなる。しかし、そこに「その場に留まり続けることによって効果が上昇するパッシブ」や「その場に留まらなければ溜まらないマナ」などの要素を入れることで、敵の攻撃をかいくぐりながら適宜同じ場所に留まって攻撃を行う戦闘のメリハリがこのゲームに生まれている。
もちろんFF14にもその場に留まることで効果が発動する「黒魔紋」や、敵を特定の方向から攻撃することで火力補正が乗る「方向指定」などの、「停止することによるメリット」があったりするのだが、それに比べても『TrinityS』はかなりこの「停止」が戦略上重要なファクターとなってくる。
敵の攻撃を避けるためには動き続けなければならないが、火力を出したり回復力を高めたりスキルを使ったりするためにはその場に留まる必要がある。かと言ってチンタラ敵の攻撃中に魔法の詠唱なんかしてると敵の攻撃範囲に巻き込まれて死んでしまう。
今作はFF14の「徐々に敵のギミックを理解して完璧に回避する」という戦闘のカタルシスを、「その場に留まる」という要素を軸に再構成していると私は感じた。敵の攻撃パターンやギミックを理解すれば、それに応じて停止によるパッシブスキルの恩恵を受けて戦局を優位に進められる。「この気持ち良さを再現したくて『TrinityS』を作ってしまったのではないか」と思うほど、敵のギミックを理解するためにトライアンドエラーを繰り返す戦闘はよくできている。
他にもステージをクリアした際にランダムでひとつだけアクティブスキルが獲得できたりと、どう見てもFF14の絵面ではあるが今作独自のオリジナリティはちゃんとある。
特にDPSの「エミール」が獲得できる「ジャッジメントタイム」は超強力。「20秒間自分自身の与ダメージも2倍、被ダメージも2倍」と諸刃の剣ではあるものの、敵のギミックを完全に把握したうえで停止によるパッシブスキルと組み合わせることで尋常ではない火力を叩き出すことができる。このスキル、本家にも導入してくれませんかね……?
6.1の合間にいかがですか?
さて……「見覚えがありすぎる」「ランスラやんけ」と一部光の戦士の間で話題沸騰となっていた『TrinityS』だが、今作のFF14に対するリスペクトと、模倣に留まらず「3人」という人数の中であの戦闘の気持ちよさを再現しようとする再構成への創意工夫を感じ取っていただければ幸いだ。
多分光の戦士のみなさんは絶竜詩戦争とかミソロジー・オブ・エオルゼアとか6.1のメインシナリオとかでめっちゃ忙しいとは思うんですが……息抜きにでも『TrinityS』を触っていただければありがたいです。てか6.1のメインストーリーめっちゃ面白くなかった? アイツ出たよね? アイツヤバいよね!?
いや6.1の感想ここに書いてもしょうがないんですが……とにかく『TrinityS』はSteamにて早期アクセス版が発売中! 本来は税込1500円のところ発売開始セールで20%OFFの税込1200円! あんま変わってない気もしますが「値引きしてる」って事実が大事なんですよ、こういうのはなぁ!!
普段一緒に零式を遊んでいる仲間とマルチをするのもアリ、一緒にハウジングに勤しむFCの友達と気分転換に遊ぶもヨシ、なんならここからFF14に入るのもヨシ!
……いや、もし本当に『TrinityS』からFF14を始めた人が居たら私にご一報ください。普通にどう感じたのかフィードバックとして聞いてみたいのでよろしくお願いします。