『ドラゴンクエスト』シリーズが、今年で36周年を迎えるらしい。
そして私は、ちょうど今年の2月に成人を迎えた。
編集部から「『ドラゴンクエスト』シリーズよりも16歳年下のキミから見た『ドラゴンクエスト』について何か書いてくれたまえよ!」とのことで私に白羽の矢が立ったらしい。一瞬「なんでこんなキリの悪い年に……?」という思いが脳裏をよぎらないこともなくはなかったが、まあそれはそれ。
……と言っても、実は私がちゃんとプレイしたことのある『ドラゴンクエスト』のナンバリングタイトルは『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』『ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人』『ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて』の3作だけである。
「『ドラゴンクエスト』のナンバリングは3作しかやったことないです」って、ゲームライターとしてちょっといかがなものかとは流石に自分でも思う。しかし、「一切『ドラゴンクエスト』に触れず育ってきた」という訳ではない。
というわけで今回紹介していくのは、そんな「『ドラゴンクエスト』のナンバリングにあまり触れなかった子どもが遊んできた『ドラゴンクエスト』」……要はナンバリング以外の「外伝作品」となる!
今回の記事は「『ドラゴンクエスト』36周年の歴史」とか、「36年続いてきた『ドラゴンクエスト』の面白さ」とか、そんな高尚なことは全く書かれておらず、とにかく「2002年に生まれた筆者のドラゴンクエスト思い出話」に終始している。
私と少し離れた世代の方々には、「この世代はこういう『ドラゴンクエスト』を通ってきたのか」と温かく見守っていただければ幸いだ。
※今回の記事は「20歳が通ってきた『ドラゴンクエスト』」という切り口で外伝作品を紹介する記事となっていますが、もちろん世の中すべての20代の方がこの記事と同じ道を通っている訳ではございません。
もしかしたら『ドラゴンクエスト』全シリーズを遊んでいる方もいるかもしれないし、ナンバリングには一切触れず『ドラゴンクエストウォーク』をひたすら遊び続けている方もいるかもしれません。ここからはあくまでも「筆者個人」の『ドラゴンクエスト』にまつわる思い出話になることをご了承ください。
出会いはショッピングモールから『ドラゴンクエストモンスター バトルロード』
私が初めて出会った『ドラゴンクエスト』……そう、アレはおよそ14〜15年前のこと。当時茨城県のひたちなか市に住んでいた私は、確かアレは赤ちゃん本舗だったかな……いやショッピングモールだったか……? ジョイフル本田とセイミヤではないことは確かなのだが……すみません、ひたちなか市民にしか伝わらないネタは止めます。
とにかく茨城県ひたちなか市のどこかの大型買い物施設で、「もはや筐体が破壊されるんじゃないだろうか」とでも言わんばかりの勢いでボタンを連打している子を見たのがすべての始まりである。
そのゲームの名は『ドラゴンクエストモンスター バトルロード』。
ドガガガガガガガガガッ!!!
もはやこれくらいの勢いで筐体のボタンを連打しているものだから、私はゲーム内容よりも「え、大丈夫……?」という心配が真っ先に来たのをよく覚えている。いや、筐体も連打してる方も。
これは「ドラゴンクエスト」シリーズ初のアーケードゲームでもあり、当時の『甲虫王者ムシキング』や『オシャレ魔女 ラブandベリー』と言った、「カードが排出される100円トレーディングカードアーケードゲーム」の業界に激震を与えたタイトルだったのではないか……と、今になってみれば思う。
他のトレーディングカードアーケードゲームと比較して今作が一線を画している点、それはまず「筐体のデザイン」にある。筐体の中央に突き刺さった「天空の剣(初期は王者の剣)」が目を引くデザインだが、まず「何か知らんがかっこいい剣が刺さっている100円ゲーム」というだけで子どもはもうメチャクチャに気を惹かれてしまう。実際私がそうだったのだから仕方がない。
その異様な筐体に積まれたゲーム本体もこれまた面白く、「プレイヤーのアバターが装備可能な武器・鎧・盾のカード」「味方として使役可能なモンスターのカード」が排出され、100円で遊べるアーケードゲームでありながらも本家『ドラゴンクエスト』シリーズのRPGとしての楽しさを上手く落とし込んでいる。
逆に考えれば、当時の5歳になるかどうかの私は、このゲームから「武器を装備してモンスターと戦う」というRPGのプリミティブなワクワク感を味わっていたのかもしれない。それもそうである、たった100円で「『ドラゴンクエスト』という傑作RPGの面白さの一片」を味わえるのだから、恐ろしくコストパフォーマンスが高い。
しかもカードが排出されるから、家に帰ってもまたあの楽しさを思い返すことができる。その「家に帰ってカードを眺める」という行為が「また遊びに行って新しいカード欲しいなあ……」という気持ちを呼び起こし、次のプレイに繋がる……いやこう考えると恐ろしくないか!? 5歳児のプレイ心理を操作する『ドラゴンクエスト』、恐ろしくないか!?
そんな『バトルロード』の盛り上がりはアーケードに留まらない。今度の戦場は家庭用ハード、Wiiへと移る。その名も『ドラゴンクエストモンスター バトルロードビクトリー』。
ついにあの『バトルロード』が家庭用で登場する……まあ汚い言い方をすると「タダで『バトルロード』が遊べる」とのことで、私はこのゲームをいち早く購入していた友人の家に足繁く通っていたのをよく覚えている。
まあゲーム性自体は本家に忠実なので特筆することはないのだが、やたらと記憶に残っているのはこのゲームの「つばぜりあい」のシステムである。その名の通りお互いにつばぜりあって攻撃のチャンスをもぎ取るシステムなのだが、アーケード版の『バトルロード』では筐体のボタンをとにかく連打して連打して連打しまくることでこの「つばぜりあい」を行う。記事冒頭で触れた、もはや筐体のボタンを破壊する勢いで連打していた小さな勇者はおそらくこれを行っていたと思われる。
しかし『バトルロードビクトリー』の「つばぜりあい」は少し違う! なんとその手に握ったWiiリモコンを勇者の剣に見立て、「とにかくWiiリモコンを振って振って振りまくることでつばぜりあいを行う」というシステムになっているのだ! アーケード版の「とにかく連打する」というあの熱狂はそのままに、Wiiのシステムを存分に活かしたこのつばぜりあい!!
こういう「ゲーム内テキスト」の部分をちゃんとシステムに落とし込めているゲームって、大体面白い。こんな機会がなければ『バトルロード』の面白さを改めて言語化することもなかったとは思うのだが、冷静に考えてみるとかなり面白いゲームだったと思う。
最後にあまり関係のない話になってしまうのだが、実はこの『ドラゴンクエストモンスター バトルロード』、なんとあの大人気MMORPG『ファイナルファンタジー XIV』にてプロデューサー兼ディレクターを務める吉田直樹氏がディレクターとして参加していた作品であることを最近知った。
この『バトルロード』に関する吉田直樹氏の「最初の弾のモンスターのステータスをほぼひとりで作った」とかそういうモンスターエピソードは『吉田直樹の日々赤裸々。』というコラムに書かれているため、気になったバトルロードファンの方は要チェックだ。
まあ何を言いたいかというと、小学生当時激ハマりしていた『バトルロード』に参加していたクリエイターのゲームを今こうして『ファイナルファンタジー XIV』という別の形で触れているのは……なんていうかこう……不思議な巡り合わせを感じる。吉P、バトルロードめちゃくちゃ面白かったよ……。
ミラクルフラッシュが決まったァァァ!!!
ドラゴンクエストを通じた「友人との交流」へ 『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2』
続いて紹介するのは『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2』。外伝作品では筆頭とも言える『ドラゴンクエストモンスターズ』シリーズの一作であり、DSにて発売された『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー』の続編。
ナンバリングタイトルとの違いはやはり「モンスターだけで戦う」という点。スライムやゴーレムにドラキー、果ては大魔王ゾーマまで仲間モンスターとして使役できる。
「ドラゴンクエスト」シリーズの人気要素のひとつでもある「モンスター」にスポットライトを当てた作品となっているのだが、本当に単刀直入に言ってしまうと、子どもの頃の私はおそらく「勇者を操作して戦う『ドラゴンクエスト』」にあまり興味を持てていなかった。
前述の『バトルロード』でも私は結局勇者として使えるアバターキャラよりもモンスターばかり使っていたし、『ウルトラマン』においても怪獣とウルトラマンが戦っているシーンだけを集めたビデオばかり見ていた気がする。とにかく私は勇者よりもモンスターの方が好きな子どもだったのだ。
そんな私にとって、この『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2』はドンピシャのゲームだった。私がこのゲームに触れたのは確か小学2~3年生の頃だった気がする。思いっきり他社のゲームを引き合いに出してしまうが、私が当時マトモにクリアできていたRPGはそれこそ『ポケットモンスター』シリーズぐらいだったと思う。そんな中、この「モンスターズ」は比較的ポケモンの延長線上で遊ぶことができたのが、当時の私としては大きかった……のだろう。
もちろん『モンスターズ』と『ポケモン』を比較とかそういう話をしたいわけではない。『モンスターズ』には『モンスターズ』の面白さがあるし、『ポケモン』には『ポケモン』の面白さがある。しかし、この『ジョーカー2』こそが私にとっては「ドラゴンクエスト入門」とも言えるゲームだったと思う。
客観的に判断した時のゲームの優しさ難しさはさておき、当時の私の感触として、とにかく遊びやすかったのだ。
スカウトしたモンスター同士を配合することで強力なモンスターを生み出し、その配合によって生まれたモンスターでさらに強いモンスターをスカウトする……シンプルなサイクルではあるが、あまりゲームがうまくない子どもをも熱中させるほど遊びやすくて面白いゲームだった。
何より、配合を極めたその果てに歴代の「魔王」すら使役できるというのが当時の私の心を惹きつけてやまなかった! だって魔王が使えるんですよ!? 最高でしょう!? カッコいいでしょう!?
そして、この作品は特に「ゲームを通じた友人間での交流」が盛んだったのを覚えている。モンスターの通信交換やモンスター同士のバトル、ランクSSの「大魔王」に相当するモンスターを生み出す際の複雑な配合の情報交換など、とにかく『ジョーカー2』は「友人と一緒に遊んだ」ということが強く印象に残っている。
マクドナルドのWi-Fiに接続することで特別なモンスターが貰える……といった現実を通じたゲーム外の施策にも非常にワクワクしたのを覚えている。というかもう今まさに書いてて「いやマックの配布モンスターとかあったな!?」って自分で勝手に興奮している。
ただ、少年時代の時というものは残酷に過ぎ去っていく。時は進み、ハードはニンテンドーDSから3DSへと移行。それに応じて「モンスターズ」も我々の記憶から消え…………ることは特になく、そのまま3DSでも『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D』と『ドラゴンクエストモンスターズ2 イルとルカのふしぎな鍵』を全く同じ友人と遊んだ。
これは確かな記憶である。『ジョーカー2』は流石に前すぎてやや記憶があやふやなのだが、『テリーのワンダーランド3D』に関しては特に鮮明に記憶している。もはや「ラスボスはメタルスコーピオンとクインガルハートとみがわりはぐメタを使って倒した」とかそういう部分までハッキリと覚えている。メタルスコーピオン、簡単に配合できるしランクSSだし強いし最高だよね……。
とにかく付き合いだけで言えば、下手をしたら本家ナンバリングタイトルよりもこの『モンスターズ』シリーズの方が長い可能性がある。それだけ私にとっては思い出深いタイトルなのだ。一応『ジョーカー2』の時点で実装されてはいたものの、『テリーのワンダーランド3D』では「すれちがい通信」機能を活用していたのも記憶に残っている。
3DSそのものが結構「すれちがい通信」というシステムを推していたのもあったかもしれないが、大勢の人が行き交う大都会に行って、友人間のコミュニティでは到底手に入らないレアモンスター使いの猛者とすれちがい通信を通じて戦うのがとても楽しかった。ヘルクラウドとスライダーヒーローをすれちがい通信で初めて見た時の衝撃、ヤバかったな……あ、なんか泣きそうになってきた……『モンスターズ』は俺の青春なんや……。
スクエニさん、『モンスターズ』の続編まだですか?
舞台はRPGからアクションへ『スライムもりもり ドラゴンクエスト』
最後に紹介するのはこの『スライムもりもりドラゴンクエスト』、正確に言えば「2」と「3」にあたる『スライムもりもり ドラゴンクエスト2 大戦車としっぽ団』と『スライムもりもり ドラゴンクエスト3 大海賊としっぽ団』の2作だ。
タイトル通り「スライム」が主人公のアクションゲーム。確か『スライムもりもり ドラゴンクエスト2 大戦車としっぽ団』は友人がプレイしているところを覗き込んだのがファーストコンタクトだった気がする。ほら……小学生の頃って友達が遊んでるゲームをただ適当に見てるだけでも割と面白いところあったじゃないですか……。
先ほど紹介した「モンスターズ」にも「勇車スラリンガル」と「エリスグール」の2体が出張している通り、今作は「勇車」という名の巨大戦車を使ったRTS的なバトルも魅力のひとつ。かわいいグラフィックで描かれたスライムたちがわちゃわちゃ動き回る勇車バトルが最高。
しかし私が本格的にやり始めたのは3DSで発売された3作目の『スライムもりもり ドラゴンクエスト3 大海賊としっぽ団』。大まかなシステムに変更はなかったものの、戦車を使ったバトルが海賊船同士で戦う「海戦」へと移行した。
この「スライムもりもり」シリーズの面白さのひとつとして、やはり「ドラゴンクエストシリーズで使われるアイテムを大砲に詰め込んで発射する」あのメチャクチャ感が挙げられるだろう。勇車の剣やメタルキングの剣などを直接戦車や海賊船の大砲に詰め込んで相手の船に向かって発射するあの無法感、たまらない。
「特やくそう」を大砲に詰め込めば自分の海賊船の回復を行えるし、「メタルキングの盾」を発射すれば相手の剣や砲弾を防御するその名のとおり「盾」として使用することができる。『バトルロード』もそうだったが、ドラゴンクエストの外伝作品は本家が持っている堀井雄二節が効いたテキストの味わいを別媒体でも綺麗に落とし込むのが異様に上手い気がする。
だからこそ、私のようなナンバリングタイトルにあまり触れないまま育ってきた人間でも『ドラゴンクエスト』という作品の大まかな部分を知ることができたのだろう。
ドラゴンクエストの「外伝作品の幅広さ」
『バトルロード』、『モンスターズ』、『スライムもりもり』……20歳になったばかりの私の思い出の『ドラゴンクエスト』を振り返ってきてみたが、いかがだっただろうか。私としては、「こんな思い出話だけで完結してしまっていいのか……?」という疑念が今じわじわと湧いてきている。
今となって考えてみると、ナンバリングタイトルそのものにはあまり興味のなかった子どもを取り逃さないこの「外伝作品の幅広さ」そのものが『ドラゴンクエスト』というシリーズのすごさなのかもしれない。
「RPG」だけに留まらない外伝作品の豊富さは現在でも拡張が続いており、リアルのウォーキングと連動する『ドラゴンクエストウォーク』、ウルトラマンに続いて土曜の朝から放送されているアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』、そしてアーケード版の『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 クロスブレイド』……とにかくどの世代も逃さない盤石の布陣は現在も変わらず形成されている。
改めて、『ドラゴンクエスト』36周年おめでとうございます。これからもこのシリーズが世代を問わず愛されていくことを願っております。
で、『モンスターズ』の続編まだですか?
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それはゲームを制作している作り手の側も、このRPGというゲームジャンルが相当に難解でちょっとしたことでユーザーが振り落とされてしまうということを重々理解したうえで、ゲームを作り、そして作り手自らが情報発信をしていたからである。