星乃一歌は、初音ミクは、いた。
本当の想いを探す少年少女とさまざまな「セカイ」を描く『プロジェクトセカイ カラフルステージ feat.初音ミク』の2回目となるリアルライブ「プロジェクトセカイ Colorful LIVE 2nd -Will-」が幕張メッセにて1月7日(土)から1月9日(月)の期間に開催された。
リアルライブと聞いて気になるのは、デジタルの世界の中で生きているキャラクターたちにどれほど「実在」を感じることができるのかという点だと思うが、これに関して本公演ではミリも心配する必要がない。びっくりするくらいに実在している。ステージ全体を見渡せる位置でライブを鑑賞したが、時折目の前で踊っているのは2次元なのか3次元なのか本気でわからなくなった。
本公演はモーションの滑らかさや音との整合性など、技術的な面はもちろんのこと、ブレス音や細かな動きのニュアンスといった表現の面でも圧倒的な完成度を誇っている。これらと舞台演出がいっしょになったとき、目の前にキャラクターがいるという実感が湧く。
実在性は前提の上で作り上げられたクオリティの高いステージは本当に楽しかった。「本物だ!」という高揚と、爆音で流れる自分の好きな曲というライブの楽しさを両方全力で楽しむことができた。本稿で会場の雰囲気を少しでもお伝えできたら、2月の大阪公演にいくか迷っている方の背中を押せれば幸いだ。
※本稿にはセットリストのネタバレがふくまれます。
最初に登場したのは、本作のメインビジュアルにも起用されている星乃一歌が所属するバンド・Leo/Need(以下、レオニ)。実際のバンドさながら、照明が落ちてそのまま登場、演奏されたのは「STAGE OF SEKAI(作詞・作曲:針原翼(はりーP))」。ライブへの期待感がとにかく高まった状態で暗転、「君が輝ける場所はここだよ」の歌い出しが会場に響き渡る瞬間を想像してみてほしい。最高だ。
「STAGE OF SEKAI」の盛り上がりをそのままに、メンバーを紹介。続いて演奏されたのは、ジミーサムPによる失恋を描いた楽曲「Calc.(作詞・作曲:ジミーサムP)」。2012年に公開、愛されている不朽の名曲ということもあり、一歌が曲名を発表すると会場からは歓喜の声が上がった。ギターサウンドがエモーショナルなイントロから、等身大の想いを描いた歌詞が胸に染み入る。
ライブということもあり、生音源で楽曲を楽しめるのはもちろん、ところどころで観客を盛り上げるように拳を突き上げたり、メンバー同士でアイコンタクトをしながら演奏する姿も見られ、1組目から存分にライブ感を楽しむことができた。
今回のライブでは「大声」に当たらない一時的な声援や会話程度の音量の声出しはOKとされていたこともあり、楽曲の演奏が始まるたびにファンの声で会場がひとつになることができていた。
いよいよ明日から #セカライ 2ndが開催です✨
— プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 4th – Unison -【セカライ】 (@pjsekai_live) January 6, 2023
昨年末に更新いたしました「声援」に関するルールについて、改めて概要をまとめました🔔
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たった2曲にも関わらず、余韻を残していちどステージを後にしたレオニ。その直後に登場したのはMORE MORE JUMP!(以下、モモジャン)だ。本公演では会場がそのユニットのためだけの空間に作り変えられたように感じるほど、各ユニットの世界を表現していた。桃井愛莉の「だからもっと」が聴こえた瞬間、セカイを移動したかのように、会場全体を包む空気がアイドルのライブでの熱気へと変貌した。
1曲目は彼女たちを象徴する楽曲「モア!ジャンプ!モア!(作詞・作曲:ナユタン星人)」。ナユタン星人氏の爽やかで疾走感あるトラックに乗せて「こんなもんじゃないよ」と自身たちの道と向上心を明るく歌う爽やかなナンバーだ。
また、振り付けや動きにそれぞれの個性が表れていることにもこのときに気づいた。モモジャンは指先のニュアンスまでもが揃ったアイドルらしい振り付けが見られ、会場のペンライトの動きとあわせて観客とともにライブを楽しんでいた。
ファンたちに振り付けを教え、期待感が高まるままに披露された2曲目は「ヴァンパイア(作詞・作曲:DECO*27)」。先ほどまでのフレッシュな印象からは一転、小悪魔的な魅力のある歌詞やミステリアスなトラックが会場に鳴り響く。2曲のみの披露ながら、モモジャンの魅力を余すとこなく伝えるステージとなった。
ラブリーな魅力とは対極とも言えるスタイリッシュさで会場をロックしたのは、Vivid BAD SQUAD(以下、ビビバス)。本ユニットはダンスやラップを得意とするストリートユニットだ。1曲目の「シネマ(作詞・作曲:Ayase)」ではそれぞれの体躯を活かしながらも一体感のあるモーションや、奥行きまでをもつかったフォーメーションチェンジでビビバスらしさを全面に押し出したパフォーマンスを見せた。
間髪入れずに披露されたのは「ECHO(作詞・作曲:Crusher P)」。英語のみで歌唱され、さらに低音が鳴り響くライブ音響にもピッタリな1曲だ。ちょうど筆者世代にドンピシャな楽曲であったため、イントロが流れた際には鳥肌が立ち、ひとりで「うおおお」と声を出してしまった。
2023年に聴いても一切衰えないのはもちろん、女子メンバーと男子メンバーの「Why can’t I see?」の掛け合いなど、ビビバスらしくアップデートされたパート振りも魅力だ。
また、本楽曲は歌詞のないインスト部分が多いためメンバーのダンスを存分に楽しむことができたのも大きなポイント。静と動のコントラストがある振り付けや、後半パートでのルカの歌声にビビバスメンバーが声を重ねていく様子を目の前で楽しむことができたのはまさにライブならではの体験だろう。
披露後のMCでは、英語が苦手であるメンバーの練習中の様子をルカが「最初なんてすごかった」という風に笑いながら話す場面も。先ほどまでのクールな姿とは打って変わって、素の姿で笑い合うメンバーはギャップも相まって非常にチャーミングであった。
『プロセカ』の魅力はなんといっても個性豊かなユニットだ。爆音で鳴り響く電子音と重低音で熱に浮かされたままに登場したのは、まさにおもちゃ箱をひっくり返したようなポップなユニット・ワンダーランズ×ショウタイム(以下、ワンダショ)。
団長のツカーサ・テンマの一声で「新生ペガサス団」の入団試験に突如として参加する会場の人々。最後まで盛り上がることができれば合格とのことで始まったのは、底抜けの明るさと楽しい時間の終わりのような切なさが不思議と同居した楽曲「トンデモワンダーズ(作詞・作曲:sasakure.UK)」だ。
楽曲がサビに突入すると、ステージ横から火花が噴き出す演出が入り、これがサーカスのような雰囲気を作り出していた。物理的な演出が入ることによって「ステージに立っている」という実感がより強くなったほか、落ちサビの最初に入る天馬司のブレス音もステージ特有の緊張感を表現していた。
2曲目は「踊れオーケストラ(作詞・作曲:YASUHIRO(康寛))」。指揮を振るような指先の振り付けがしなやかで楽しい1曲だ。曲の披露が終わるも、「新生ペガサス団」の入団試験の結果はおあずけ。次のショーを心待ちにしながら、ワンダショのステージはいちど幕を降ろす。
これまでのどのユニットとも違う独特な存在感を示しながら始まった25時、ナイトコードで。(以下、ニーゴ)のステージ。1曲目にはMC無しで「悔やむと書いてミライ(作詞・作曲:まふまふ)」を披露。激しいピアノの旋律と痛みを伴う歌詞に全員が聴き入った。
さらに「フォニイ(作詞・作曲:ツミキ)」を披露。プロセカではカバーにおいて秀逸なパート分けも特徴のひとつだが、曲の始まりである「この世で造花より綺麗な花はないわ」のパートを歌う瑞希には、全員が胸を震わされたのではないだろうか。また、ニーゴの衣装が黒基調であることから、ステージ上の色彩が少なくライトでの演出が非常に映えていたのも特筆すべき点だろう。
ともに歌唱したMEIKOは「何か強い思いを感じた」とその根源を探るために退席。謎を残したまま、ニーゴの前半パートは終了した。
以上で前半パートは終了。中MCとともに一度着席する休憩時間が設けられた。取材に訪れた日はレオニのメンバーである志歩の「バースデーイブ」を祝う内容が放映され、休憩中も余すことなく『プロセカ』の世界観に浸ることができた。
各ユニットの魅力をフルパワーでぶつけるようなセットリストに興奮冷めやらぬまま、後半パートがスタート。
バーチャル・シンガーたちがオリジナルの衣装のまま登場し、会場のボルテージが再度上昇。どの世代のボーカロイドファンでも一度は聴いたことがあるであろう名曲「千本桜(作詞・作曲:黒うさ)」が披露された。
それぞれが独立したキャラクターであるバーチャル・シンガーたちは、これまでのユニットの中でも特に各キャラの魅力を引き立てるモーションが採用されているように見えた。
ミクのツインテールやKAITOのコートとマフラーといったアイテムはなびくようなターンを何度も見せ、リンとレンは飛び跳ねるような動きでリボンと前髪がぴょこぴょこと動くのが非常にキュートだ。落ち着いた魅力のあるルカはロングヘアーとロングスカートの映えるなめらかな振り、MEIKOはボディラインの出た衣装にぴったりの四肢の長さを強調するような振り付けが多く見られた。
王道の楽曲をノンストップで披露し会場を盛り上げる前半パートと比べて、後半パートでは各ユニットの想いを表すような楽曲が多く見られた。また、ステージの端から端までファンに手を振りながら移動してくれるのも嬉しいポイントだった。
「新生ペガサス団」の入団試験の続きをするべく再度現れたワンダショ。ステージ上の液晶を効果的に使用した演出とスピーディーな振り付けが楽しい「テレキャスタービーボーイ(作詞・作曲:すりぃ)」を披露する。
楽曲のあとの入団試験の結果発表では、晴れて全員が合格。ツカーサ団長のお墨付きをもらい、新生ペガサス団となったファンたちとともにショーをすることに。
印象的だったのは、このときに「はい団長!提案があります!」と手をあげたえむのセリフに聞き覚えがあったのはもちろんだが、あまりにかわいらしすぎたのか会場全体がどよめきに包まれ四方から「え?かわいい」、「かわいすぎる」、「かわいい……」というつぶやく声が聞こえたことだ。筆者は口には出さなかったが、マスクの下でしっかり歯を剥き出しにして笑顔になっていた。
ショーをすることになったものの、レン・カガミーネ団員が「着替えの衣装忘れちゃった〜」と退席。なんだか聞き覚えのあるセリフに会場の人々が勘付きはじめ、そわそわとした期待感が広がる中、「パスポートは持った?」、「モバイルバッテリーは持った?」、「志は持ったかい?」とお決まりのセリフが入り、「にっこり^^調査隊のテーマ(作詞・作曲:じーざす )」がエンタ〜↓テイメ〜ン↑に披露された。
ステージの終わりには、新生ペガサス団の全員で「わんだほーい!」をしてお別れ。明日からの活力になりそうな、元気をチャージできる楽しさ満点のステージだった。
続いて登場したのはモモジャン。1曲目の「天使のクローバー(作詞・作曲:DIVELA)」では、イントロの振り付けに個性が出ていたのが印象的で、曲終わりの息切れとあわせてアイドルユニット独自の等身大の魅力を感じることができた。
曲と曲の間では、リンがミクとモモジャンメンバーにハイタッチをしてバトンタッチするかわいらしい場面も。2曲目の「心予報(作詞・作曲:Eve)」はこれまでより気持ち低めのキーのAメロとBメロ、そこから一転するサビの伸びやかな高音が気持ちいい。晴れた空のような開放感のある、最後の1曲に相応しい曲だ。
爽やかでキュートなセットリストで駆け抜けた、モモジャンらしいパフォーマンス。最後には全員で「モアモア、ジャンプ!」の掛け声をして、お別れとなった。
続いて登場したのはビビバス。1曲目は杏の提案でセットリストに入ったという「街(作詞・作曲:jon-YAKITORY)」。特色であるクールさをすこし抑え、ビビッドストリートという街を拠点に活動する彼女たちの想いをエモーショナルに歌い上げるギャップのある楽曲だ。
その後、間髪入れずに最後の楽曲「DAYBREAK FRONTLINE(作詞・作曲:Orangestar)」へ突入。一気にBPMが上昇し、ボーカル・ダンスともに密度の高いパフォーマンスを披露した。ビビバスの楽曲では、共通の動きがないフリーの状態の際にそれぞれが音楽に乗っている姿がみれるのがとても魅力的であった。楽曲中のメンバー同士のやりとりからは、クルー感を存分に感じた。
「いつでも最高の歌を用意して待ってるからな!」と、最後の最後までクールにステージを締めくくった。
ミクとMEIKOが感じたという「強い想い」とは何なのかを探るため、歌うことを続けるニーゴがステージに登場。不協和音が特徴的な「ビターチョコデコレーション(作詞・作曲:syudou)」から始まり、続いて「ロウワー(作詞・作曲:ぬゆり)」を披露した。
ニーゴのステージでは「ビターチョコデコレーション」での皿を思わせる円の形や下手から上手へと走り抜け、戸惑ったように立ち止まるまふゆなど物語性を感じるフォーメーションが多く見られた。時折目を逸らしたくなるほど切ない表情をしているのも特徴で、ステージ中何度か胸が詰まった。
ステージの最後には、「強い想い」がライブを楽しむファンたちの“ニーゴのメンバーにもステージを楽しんでほしい”という願いだったとわかり、ファーストライブでは「何の意味もなかったね」と言っていたまふゆも「胸のあたりがソワソワする気がする」とステージを振り返った。
そしてトリのレオニが登場。MCを入れずに「ヒバナ -Reloaded-(作詞・作曲:DECO*27)」の演奏が開始され、会場中にギターの旋律が響き渡った。中MCでは、先程のハードな演奏からは想像できないほど、メンバーたちが年齢相応のかわいらしさを見せながらライブの終わりを惜しんだ。
最後の曲は「ステラ(作詞・作曲:じん)」。メンバー同士がアイコンタクトしながら演奏する姿からはすれ違いやぶつかりを乗り越え舞台に立つ4人の想いを感じることができ、ペンライトで真っ青に染まった会場も相まって感動的なステージだった。
ライブ本編はここで終了したものの、アンコールの声に応えてバーチャル・シンガーたちが再登場。1周年のアニバーサリー楽曲である「群青讃歌(作詞・作曲:Eve)」をカバーした。ステージの上部に設置された液晶にはそれぞれのイメージカラーの飛行機が映され、落ちサビではシャボン玉による幻想的な演出がされた。
最後にはミクにくわえて各ユニットのリーダーも再登場し、2周年アニバーサリーソング「Journey(作詞・作曲:DECO*27)」を披露した。楽曲の始まりとともに衣装もチェンジ。それぞれの個性がひとつになった特別なステージとなった。
予想をはるかに上回る楽しさを届けてくれた「プロジェクトセカイ Colorful LIVE 2nd – Will -」。音楽のパワーと、「同じ空間にキャラクターがいる!」という高揚は凄まじく、途中から取材メモをとることすらやめてライブを全力で楽しむことに没頭させてくれた。多分、迷惑がかからない程度に取材席でいちばん踊っていた。
レポートした東京公演は1月15 日(日)まで視聴可能なオンライン配信チケットがABEMAにて発売されているほか、2月25日(土)、26日(日)には大阪での公演も予定されている。なお、大阪公演は一般販売のチケットがまだ購入可能となっている。「ボカロ」を一度でも通ったことがあるならば、あの実在をぜひ体験してほしい。彼ら彼女らの想いを乗せたパフォーマンスは、きっと魂を震わせてくれる。
1. STAGE OF SEKAI 作詞・作曲:針原翼(はりーP)
Leo/need&鏡音レン
2. Calc. 作詞・作曲:ジミーサムP
Leo/need&初音ミク3. モア!ジャンプ!モア! 作詞・作曲:ナユタン星人
MORE MORE JUMP!&初音ミク4. ヴァンパイア 作詞・作曲:DECO*27
MORE MORE JUMP!&初音ミク5.シネマ 作詞・作曲:Ayase
Vivid BAD SQUAD&KAITO6. ECHO 作詞・作曲:Crusher P
Vivid BAD SQUAD&巡音ルカ7. トンデモワンダーズ 作詞・作曲:sasakure.UK
ワンダーランズ×ショウタイム&KAITO8. 踊れオーケストラ 作詞・作曲:YASUHIRO(康寛)
ワンダーランズ×ショウタイム&巡音ルカ9. 悔やむと書いてミライ作詞・作曲:まふまふ
25時、ナイトコードで。&初音ミク10. フォニイ 作詞・作曲:ツミキ
25時、ナイトコードで。&MEIKO11. 千本桜 作詞・作曲:黒うさ
初音ミク&鏡音リン&鏡音レン&巡音ルカ&MEIKO&KAIT12. テレキャスタービーボーイ 作詞・作曲:すりぃ
ワンダーランズ×ショウタイム&鏡音レン13. にっこり^^調査隊のテーマ 作詞・作曲:じーざす
ワンダーランズ×ショウタイム&初音ミク14.天使のクローバー 作詞・作曲:DIVELA
MORE MORE JUMP!&鏡音リン15.心予報 作詞・作曲:Eve
MORE MORE JUMP!&初音ミク16. 街 作詞・作曲:jon-YAKITORY
Vivid BAD SQUAD&鏡音リン17.DAYBREAK FRONTLINE 作詞・作曲:Orangestar
Vivid BAD SQUAD&初音ミク18.ビターチョコデコレーション 作詞・作曲:syudou
25時、ナイトコードで。&初音ミク19. ロウワー 作詞・作曲:ぬゆり
25時、ナイトコードで。&MEIKO20. ステラ 作詞・作曲:じん
Leo/need&初音ミク21. ヒバナ -Reloaded- 作詞・作曲:DECO*27
Leo/need&初音ミク22. 群青讃歌 作詞・作曲:Eve
初音ミク&鏡音リン&鏡音レン&巡音ルカ&MEIKO&KAITO23.Journey 作詞・作曲:DECO*27
初音ミク&星乃一歌&花里みのり&小豆沢こはね&天馬司&宵崎奏