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多くのゲーマーが待ち望んだ『Atomic Heart』には、まさに1950年代ソビエト連邦がてんこ盛り。美しいロケーションと不気味すぎるロボットに翻弄された体験レポート

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 2017年にその存在が発表され、ゲーム映像やスクリーンショットが公開されるたびに多くのゲーマーが唯一無二の世界観に感服し話題となっていたアクションRPG『Atomic Heart』の発売がついに2023年2月21日に迫る。

 そんな誰もが発売を待ち望んだ期待作の体験の機会を得ることができた。まず読者には「待ったかいがあった」と伝えたい。多くの人が妄想し、夢をみたソビエト連邦の姿が『Atomic Heart』に存在していた。

 本作はネットワークやホログラム、ロボットなどの最先端の技術大国となった1955年のソビエト連邦が舞台。

 ”あったかもしれない夢のソ連”を体感したい方はもちろんのこと、このビジュアルに惹かれた方、歯ごたえのあるFPSを楽しみたい方、凄まじい陰謀と対峙する物語が好きな方、さまざまな方にお勧めできる本作。

 まだ、ほんの冒頭部分しかプレイしていないが、体験で感じた感動をここに記していきたい。

文/tnhr
編集/実存


物語がはじまる、最新技術と同志の夢が詰まった空中都市チェロメ

 本作はまず、「コレクティヴ2.0」というニューラルネットワークの実装を祝うセレモニーで浮足立っている「空中都市チェロメ」という場所で、小さなボートに乗りながらロボットに都市のガイドを行ってもらうところからはじまる。

 この冒頭の演出は『Half-Life』のモノレール、『Skyrim – The Elder Scrolls』の馬車、『BioShock』の潜水艦を彷彿とさせるもので、この世界にやってきた!と直感的に感じることができ、一気にゲームの世界に引き込まれる。

 とは言え、その3作のような明らかな”きな臭さ”はない。非常に華やかで美しい建造物、未来的で凄まじい程に便利そうなテクノロジーやロボットが広がり、まさにソビエト連邦の「夢」が詰まった世界が描かれる。

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 少しボートが進んだら空を飛ぶロボットが目の前に現れソーダをついでくれて、都市にはロボットに労働をさせる人々、ロボットの不具合で困っている人々が現れる。
 大自然に囲まれて、労働のほとんどをロボットに任せることのできる世界。なんて便利で楽しそうな都市なんだ……。

 けど、よく考えたらこの空中都市は空高くに人工的につくられた都市であるので、川や緑があるのはおかしい(そもそも空中に都市を作るのがおかしい気もする)。わざわざ景観のためにそのような自然を作ったはずだ。

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 ロボットたちも便利そうではあるが不気味ではある。ロボットに配達や掃除させるのはわかる。人間とダンスを踊るのも百歩譲ってわかる。

 けど、「シンセサイザーを演奏するロボット」とは一体なんなんだ? シンセサイザーが自動演奏するのと何が違うんだ……? とは言いつつも、現代にもそのようなロボットが存在しているし、存在している意味があるのも理解はできる。

 技術が行くところまで行った世界。”万博”で他の国に技術力を見せつけるためだけに生まれたロボットの不気味さが、この作品の唯一無二な不気味さに繋がっているのかもしれない。

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 そうしたロボットたちの不穏さにくわえ、街のスタッフに話を聞いていくと、「コレクティヴ2.0」というニューラルネットワークもかなりヤバい代物なんじゃないか?という疑念が出てくる。

 このネットワークに接続するには「ソート」と呼ばれるかわいいクラゲみたいな形のデバイスを着用する必要がある。そして、そのデバイスを装着し、ネットワークに接続すると、遠くの人と意思を伝達することができたり(電話みたいな感じだろうか)、ロボットを遠隔で操作できたり、さまざまな情報を即座に獲得できるそうだ。

 これだけ聞くと夢のような技術に思えるが、「さまざまな情報を即座に獲得する」という機能はよく考えてみると不気味極まりないだろう。
 それってつまり、ピアノの演奏技術も、韓国語も、博士課程級の知識も、即座に自分のものとして手に入れることができてしまう……ということだ。あきらかに脳に起きちゃいけないことが起きている感じがする。

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 そして、この「コレクティヴ2.0」の最終目標はソ連の市民全員に接続すること。ソ連によるソ連らしい計画が急速に進行しているのだ。

 ちなみに、主人公である「P-3」はなぜかこのデバイスに不具合のせいで接続することができない。なぜそうなるのかは現段階では不明だが、きっと物語に大きな影響をあたえるはずだ。

 『Atomic Heart』のキャッチコピーは「夢の裏側にあるものは?」というもの。そのキャッチコピーに込められたメッセージを冒頭30分ほどのゲームプレイで、体感できてしまうほどによくできたゲームの導入であった。

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反乱を起こすロボット、愛着が湧く登場人物

 冒頭のセレモニーが終わると、主人公の「P-3」は連絡が途絶えたソビエト連邦の最高機密施設「3826号施設」の調査を政府から命じられ、そこに向かうことになる。

 車に乗り、空を飛ぶ運送ロボットに運ばれ、ソビエト連邦の美しい自然を楽しんでいると突然ロボット達が反乱を起こしてしまいパニックが訪れる。国の発展を支えるロボットはもちろん非常に便利だが、敵に回したらマズい。

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 地上の世界がむちゃくちゃになり、ここからようやく『Atomic Heart』の『Atomic Heart』らしいゲームプレイが始まるのだ。

 主人公の「P-3」は、ソビエト連邦のために生涯を任務に捧げてきたが、代償として大きなケガを負い、精神的な問題を抱えてしまったキャラクター。実験室でプルトニウムを浴びて重傷を負ってしまい、生還するも完全に回復することはなく、手術前の記憶を失ってしまっている。

 左手には「チャー・ルズ」という名前の人工知能のようなものが搭載されたグローブ型のロボットが装着されており、作中ではP-3とチャー・ルズの掛け合いを楽しむことができる。

 基本的にこのふたりが協力して物語が進んでいくのだが、もちろん他にも魅力的な登場人物がいる。ロボットが反乱を起こした直後に登場する「ジーナ婆さん」は、みんな大好き重火器を華麗に使いこなすおばあちゃんキャラだ。

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 このキャラクターが一体、本作や「P-3」にどのような影響を与えていくか。ぜひ、実際にプレイして確認していただきたい。

スピーディーで複雑、難度高めの戦闘

 『Atomic Heart』の戦闘は非常に骨太でなかなかの難しさを感じた。序盤からいわゆる雑魚のような立ち位置の敵キャラクターにも苦戦してしまい、倒されてしまうこともあった。

 「VOV-A(ヴォヴァ)」という人型の戦闘ロボットが序盤の雑魚として登場するのだが、これがなかなか奇妙なビジュアルと動きでプレイヤーを翻弄してくるのだ。

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 ゾンビのような不可解な動きから生まれる恐怖ではなく、人間よりもキビキビとした“リアルすぎる”動きから恐怖が生まれる。
 リアリティを追求した結果、ある地点でそのリアルさが逆に不気味に感じられてしまう現象は「不気味の谷」と呼ばれているが、『Atomic Heart』に登場するロボットはまさにこの「不気味の谷」のど真ん中に存在する。
 ロボットのビジュアルが不気味の谷を再現していることはもちろんのこと、その動きにまで不気味の谷が現れているのだ。だからこそ、動きの予想をすることが難しく、戦闘に歯ごたえが生まれているように感じた。

 プレイヤーは自分の中で武器やスキルを上手にローテーションさせながら戦闘を行わなければいけない。なにかひとつ強い武器やスキルがあって、同じ行動だけで攻略できるようなゲームではなかった。

 弾薬はなかなか少なく、適当に撃っていたらあっという間に無くなってしまう。私がプレイした時は弾薬が少なかったので近距離武器をメインに立ち向かうことになったのだが、この立ち回りが非常にスリリングでおもしろい。

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 近接武器を使ったときは、相手との間合い管理が非常に重要。特に相手が赤く光ったときは注意が必要で、回避ボタンを押さなければ攻撃をかわすことが出来ない上に、食らってしまうと大きなダメージとノックバックで一気に戦況が不利になってしまう。

 回復パックの数も少なく、回復中のモーションはそれなりの時間がかかるので、敵からしっかりと逃げながら立ち回らなければいけない。少しでもその管理を怠ってしまうとすぐに死亡してしまうので、緊張感がかなり強い。

 また、倒したロボットから部品を集めて、武器を作ったり強化していくことが可能。武器をクラフトするステージョンにも人工知能らしきものが搭載されており、なかなかクセの強い発言を連発するので、ここにも注目してほしい。

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 プレイヤーは道中で手にいれることのできるアイテムを消費することによって、さまざまなスキルを獲得することができる。電気や氷、重力を扱うことができ、自由にスキルを組み合わせながら戦闘を行う

 例えば、泡のようなものを噴き出すスキルで敵を泡だらけにした後、電気のスキルを使うことで、より強力なダメージを与えることができると言った具合だ。


 冒頭で述べたように「待ったかいがあった」と強く感じた本作。奇妙なロボットやクリーチャー、ソビエト連邦らしさが詰まった兵器、美しいロケーション、そして物語がどのような結末を迎えるのかワクワクが止まらない。

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 『Atomic Heart』は、PC(Steam)、Xbox One、Xbox Series X|S向けに2023年2月21日に発売予定。PS4、PS5向けには2023年4月13日に発売予定だ。Xbox Game Pass向けにも展開する。

ライター
『プリパラ』、『妖怪ウォッチ』ありがとう。黙々とゲームに没頭する日々。こっそりと同人ゲーム、同人誌を作っています。ネオ昭和ビジュアルノベル『ふりかけ☆スペイシー』よろしくお願いします。
Twitter:@zombie_haruchan

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