『TOBAL2』というゲームをご存知だろうか。本作はスクウェア(現スクウェア・エニックス)から1997年に発売された格闘ゲーム『TOBAL』シリーズの2作目にあたる。
『TOBAL』シリーズは『ドラゴンボール』等で有名な鳥山明氏や坂口博信氏をはじめとする『ファイナルファンタジー』のスタッフ、『鉄拳』や『バーチャファイター』のスタッフ達もスタッフロールに名を連ねる、今考えるととんでもない豪華なゲームなのだが、最も大きな特徴は格ゲーとしては珍しく「クエストモード」が存在することだ。
このクエストモードでは、敵やショップから入手したアイテムを駆使しながらキャラを育成し、自動生成によって作られたダンジョンを攻略していく。
要するに、格ゲーとローグライクをあわせたようなシステムになっているのだが、このクエストモードは今の基準で考えてもすごい点が2つある。
ひとつ目は革新性。そもそも「格ゲー×ローグライク」という同じジャンルのゲームが他に無い(筆者調べ)のだ。『TOBAL2』の前作『TOBALNo.1』や『TOBAL2』の後に同じチームから開発された『エアガイツ』をはじめとして、2023年に発売される『ストリートファイター6』など、アクションゲームのようなサブモードが搭載された格闘ゲームは他に幾つか存在する。
しかし、武器も持たずに格闘とアイテムで3Dダンジョンを攻略するローグライクに特化したゲームは筆者の知る限り『TOBAL2』のクエストモードだけなのである。
他に類を見ないアクションゲームであるため、システムも少し独特で面白い。ひとつ例をあげると、クエストモードでは「投げ」が多用される。敵との格闘ゲームで相手を投げて倒したり、敵にアイテムを投げてぶつけて効果を調べたり、あるいはアイテムに別のアイテムを投げてぶつけることで効果を合成することができる。
しかし3D空間で上手くアイテムを投げてあてるのは少し難しい。ラスボスでさえ倒せる必殺の猛毒アイテムが一瞬の操作ミスで敵に当たらずその足元に落ちたと思いきや、「敵が投げ返してくる」、あるいは「敵に当たる前に壁にあたって跳ね返ってくる」という状況も発生する。
このゲームでは敵と同様にプレイヤーがアイテムと接触すると効果が生じてしまう。そのため自分で合成した必殺アイテムが自分にとっても危険な「即死アイテム」となるのだ。
2つ目は難易度の高さ。そもそもこのクエストモードはかなり難しい。プレイヤーは格ゲーの技術だけでなく、ローグライク的なサバイバル術も駆使して進むことになるのだ。しかも敵は「こっちが動いたら1手動く」というわけではなく、エンカウントしたら本気でこっちを殺そうと技の数々を繰り出してくる。
さらに、敵からドロップしたアイテムは使い方を間違えると大ピンチになってしまうものも少なくない。キャラを充分育成したと思っても一瞬の油断で殺されてしまう。そして死んでしまうと容赦なくダンジョンの入り口に戻される。
格ゲーとローグライクを組み合わせたゲーム性と高い難易度。この2点がこのゲームの唯一無二の面白さを作り出していると言えるだろう。
プレイヤーは時に理不尽に思えるほどの苦境に立たされるが、このゲームには「格ゲーの技術を上げる」、「アイテムを巧みに扱う」、「キャラを徹底的に育てる」など様々な攻略法が用意されており、それらを変化する状況に合わせてうまく組み合わせていけば攻略は可能だ。
また、敵を倒した時に出るアイテムも変化するため、1回完全にクリアしたとしても再度挑む際は、その日のプレイヤーの集中力や運によって別の対応が必要となり、本当の意味でゲームが終わることがないのだ。
その唯一無二の面白さゆえに愛好するゲームファンも少なくなく、発売から25年以上が経過した2023年の現在でも、SNSでときおり話題となっている。
さて、その『TOBAL2』のクエストモードが実は令和になってから面白い展開を見せている。ネット対戦もない過去に発売された名作が今、実況プレイやRTAという新たなゲームの楽しみ方によって更なる魅力が発掘されているのだ。
発売当初クエストモードが攻略できずに枕を濡らした方、何か新しいゲームを求めている方へ、25周年を迎えた今こそ名作『TOBAL2』のクエストモードの魅力を伝えたい。
文/ShoyoFILMS
編集/実存
早速潜ってみよう!プラクティスダンジョン
クエストモードをより詳しく説明するために、ゲームで最初に入るプラクティスダンジョンを踏破してみよう。
クエストモードをスタートすると惑星トバルのウダン皇帝から「魔物が出現するダンジョンを調査してこい」と命じられる場面からスタートする。
そこで、プレイヤーがダンジョンへ入るとさっそく敵が出現。そして何故か丁寧に操作説明をしてくれる。
ここでプレイヤーは基礎操作を学んでいく。しかしながらダンジョン攻略の最重要情報である「薬の合成」や「白い薬」については教えてくれない【※】。なんでだよ。
※「薬の合成」や「白い薬」について
筆者も長年知らなかったが、実はこの白い薬の情報は地上のNPCに話しかけると入手できる。おそらく、ダンジョンを攻略できずに攻略ヒントを得たいプレイヤーが色々なNPCに話しかけて入手できる設計になっているのだと思われる。
その代わりダンジョンでは移動やガード、レベルについて学ぶことができる。基本的にはプレイヤーの体力がゼロになる前に最深階のボスを倒せればダンジョンクリアとなる。
ここからは「育成」についても触れておこう。クエストモードではプレイヤーが技を繰り出すと、使った体の部位(例えば左パンチなら左手)に経験値が入る。これが一定数以上溜まる事でレベルが上がり、その部位を使った技の攻撃力が上がるというシステムだ。
そのためクエストモードでは格闘ゲームでありながら、たくさんの技の出し方を覚える必要はない。むしろ同じ技を何度も出してひとつの部位を鍛え抜いたほうが攻撃力は上がる。
防御力にもレベルが存在する。敵の攻撃をガードしたり、食べ物を食べて空腹ゲージを満タン以上にすると経験値が溜まっていく。敵の攻撃力はどんどん上がっていくので、最初はガードレベルを上げることに注力したほうがいいだろう。
ちなみに『TOBAL2』においてのガードはR1トリガーで使用できるのだが、このゲームは昨今の主流の格闘ゲームと違って攻撃がガードしながらワンボタンで繰り出せる【※】ため、操作しやすいのだ。
※攻撃がガードしながらワンボタンで繰り出せる
昨今のゲームのガードは「相手と逆の方向の入力」が必要で、攻撃するにはガードの入力をやめなければならないゲームが多い。勿論それが競技性を高めているため悪いわけでないのだが、筆者としては格ゲーが苦手な人にとっては操作性が難しく、参入障壁になっているのではないかと考えている。
「ガードのしやすさ」と、先ほどの「技の出し方をたくさん覚えなくてもいい」という点をあわせて、筆者は『TOBAL2』の格闘システムは非常に初心者に優しいと考えている。おそらく、格闘ゲームで遊んだことがない方や苦手な方も楽しめるはずなので是非チャレンジしていただきたいところだ。
『TOBAL2』では敵を倒すと薬や石を落とすことがある。薬は飲んだり、相手に投げつけることで特定の効果を発生させるもの。石は装備することでステータスを強化したり、モンスターを捕獲したりするものだ。合計9つまで携帯することができる。
ところが薬や石には良い効果をもたらすものと悪い効果をもたらすものがあり、うかつに薬を飲んだり、石を装備すると危険だ。薬は敵に投げつける事で効果を確認でき、一度効果を知った薬は再度ドロップすると識別状態になるため、まずは投げてみるのがセオリーとなる。しかしながら「一定時間無敵になる」など、非常に良い効果の薬の場合はプラクティスダンジョンでも一気に敵が有利になってしまうので非常にスリルがある。
また、薬と石はそれぞれ合成が出来る。薬はその色の「RGB値」、石は「補正値」によって効果が変化する。
たとえは薬のRGB値を3つとも255にする事で白い薬ができるのだが、これは「毒の解除+(装備時に呪われていると外せなくなってしまう)石の呪いの解除+ランダムで1効果」を発生させる薬だ。
この薬を利用することで、効果のわからない石を安全に確認したり、たまに敵が落とす「腐った肉」等も毒状態を回避しながら空腹の回復と防御のレベルアップに繋げることができる。しかしランダムでひとつ効果が発生してしまうのでたまに逆にピンチになってしまう事もある。油断はできない。
ここまで、ダンジョン攻略の情報を入手し、たまに凡ミスによって敵に倒されてしまったり、地上からやり直す事を3回ほど繰り返しながら、地下5階のボス「BROWN APE」を倒すことができた。
このあとに待ち受けるのが、更に難易度の高いダンジョンを進むクエストモードである。
※移動する敵(青白い火の玉)
クエストモードの敵は基本的にエンカウントするまでその場から動かない赤い火の玉のシンボルで配置されているが、同じフロアに居続けると、ダンジョン内を移動する青白い火の玉が出現する。次の章の大谷さんのプレイ動画の最後にも登場しているので、是非その恐ろしさを見てみて欲しい。