第二次世界大戦、日本は原爆の投下や本土への大空襲を経験しているが、日本が統治していた台湾でも同様の戦火が広がっていたことをご存知だろうか。とくにその中でも、1945年5月31日に行われた台北州台北市に対する連合国軍の無差別爆撃では甚大な被害が発生しており、それは「台北大空襲」と呼ばれている。
そんな「台北大空襲」を題材としたインディーゲーム『台北大空襲』が2月16日に発売予定だ。開発は台湾のデベロッパー「Mizoroit Creative Company LTD.」。彼らの言葉を借りるなら、本作は「第二次世界大戦を題材にした台湾史上初のゲーム」になるという。
2月2日(木)から台湾・台北の台北南港展覧館第一ホールで開催されていた「台北ゲームショウ(台北國際電玩展)」で、台湾のアナログゲーム開発スタジオ「Mizoroit Creative Company LTD.」(迷走工作坊)は『台北大空襲』を出展したため、本作の試遊の機会を得ることができた。
台湾で話題となった同名のボードゲーム『台北大空襲』をベースに開発されており、プレイヤーは空襲で記憶を失った主人公である「清子」として、台湾犬「クロ」と共に戦乱の街から生き延びる物語となっている。
コンセプトは“戦争の恐ろしさや悲しみ”をプレイヤーに伝えること。作中では「台湾総督府」(現・総統府)や「台湾神社」(現・台北圓山大飯店)、空襲で破壊されてしまった「蓬莱町大聖堂」といった当時の街並みや状況が鮮明に再現されている。
実際に台北にはさまざまな歴史的な建造物が残っている。そのため、本作をプレイした後に台北を観光すると、ゲームで見たことのある場所だ!となるかもしれない。
ゲームは主に自由に探索しながらアイテムを収集する「セーフゾーン」と、さまざまなキャラクターと協力して空爆などといった危機を乗り越えていく「デンジャーゾーン」に分かれる。台北ゲームショウの試遊ではそんな「セーフゾーン」の冒頭と「デンジャーゾーン」の一部をプレイすることができた。
「セーフゾーン」の探索パートでは背景に台湾らしい街並み、それと同時に戦争でボロボロになってしまった町と人間たちが細かく描かれており、その作りこみとあまりに残酷な描写に、歩くだけで非常に緊張感が生まれた。
収集していくアイテムも「特攻隊の記事」「防空用の木製の名札」といったように実際の歴史に関連付けられたものが登場する。フレーバーテキストを読めばすぐにわかるが、ここには戦争の悲惨さはもちろんのこと、台湾から見た日本はどのように映っていたのかといった要素を確認することができ、第二次世界大戦中を新たな視点から見ることのできるいい機会となる。
空襲の恐怖を直感的に体感することのできる「デンジャーゾーン」では、「清子」と「クロ」の2キャラクターを同時に操作して、「ルッちゃん」という子どもを安全なところまで連れていくというミッションをプレイした。
見下ろし型アクションとなる本パートでは、無数の爆弾が上空から降ってくる。そのため、まず清子が先陣を切って安全を確認したら、クロを操作しルッちゃんを安全地帯へと運んでいくといった具合だ。
清子は2回ほどであったら爆撃に耐えることができるのだが、ルッちゃんの場合は一度でも当たってしまったらゲームオーバーになってしまう。あまりにもあっけなく死んでしまう姿に本作の表現したい恐怖を感じ、戦争の時代を生きた主人公たちの行く末を見たいと強く感じた。
台湾にはさまざまなインディーゲームが存在しており、その中でも特に歴史や土地に由来したゲームが非常に盛り上がっている。
白色テロを題材としたホラーゲーム『返校』、日本統治時代を題材とした3Dアドベンチャーゲーム『夕生 Halflight』、経済特区やヤマネコ保護を題材とした美少女アドベンチャーゲーム『苗栗国のヤママヤ―少女』などなど、挙げていくとキリがないほどにたくさん存在している。
本作『台北大空襲』も、きっと台湾の歴史を色濃く描いた作品として肩を並べることになるだろう。ゲームを遊びながら歴史を学ぶことのできる本作はPC(Steam)向けに2月16日(木)に発売される。ぜひ、気になる方はチェックしていただきたい。