2020年、1人でネタを披露する、いわゆるピン芸のNo. 1を決める賞レース『R-1ぐらんぷり』で優勝をおさめ、同年、日本で最も有名な漫才賞レース『M-1グランプリ』においてマヂカルラブリーとしてチャンピオンの栄冠に輝いた芸人、野田クリスタルさん。
大会のリニューアルとともにその表記やルールなどが変更された『R-1グランプリ』の審査員も務めた野田さんが『R-1ぐらんぷり』優勝の際に披露したネタは、自身でプログラミングして制作したゲームを舞台上で実際にプレイするという、言うなればゲーム実況のスタイルで進められる、これまでに無いような斬新な形式のものでした。
そんな、『R-1ぐらんぷり』の1本目で披露された『太ももが鉄のように硬い男てつじ』をはじめとする、野田さん自身がプログラムを手がけて作り上げたゲームは “野田ゲー” と呼ばれ、『R-1ぐらんぷり』以外でも、バラエティ番組やライブ、YouTubeチャンネルなどでたびたび披露され、お笑いファンの間で親しまれてきました。
そして、『R-1ぐらんぷり』での野田さんの優勝を受けて、野田ゲーを集めたパーティーゲーム『スーパー野田ゲーPARTY』の制作および発売が決定。野田さんが “おもしろ総監督” に就任したこちらのゲームは、クラウドファンディングにより出資を募って制作され、出資者には、製作スタッフに提供した素材をゲームに登場させることができる権利などの様々なリターンが用意されていました。
一般の人から集めた素材をゲームに使用するという、これまでに前例のないスタイルの作品であったため、「果たして審査を通過することができるのか?」という課題もありましたが、無事にこの壁を乗り越え、2021年4月29日にNintendo Switchで配信がスタートすると、本作はヒットを記録。ダウンロード数ランキングで『モンスターハンターライズ』と『New! ポケモンスナップ』に挟まれ2位という快挙を達成しました。
更に、野田ゲーの快進撃はこれだけに留まらず、『スーパー野田ゲーPARTY』のヒットと反響を受け、続編『スーパー野田ゲーWORLD』の制作があっという間に決定。再びクラウドファンディングが行われ、前作を大幅に超える3000万円以上の出資が集まると、2022年7月28日にNintendo Switchで配信が開始されました。
そして、『スーパー野田ゲーWORLD』もヒットを記録。ダウンロードゲームランキングで首位を獲得し、全体でもゼノブレイド3に次ぐ2位という好成績をマークし、再び大きな話題を集めました。
さて、ここからは非常に個人的な話になるのですが、実は私、それなりのお笑い好きでして、マヂカルラブリーの大ファン。もちろんゲーム好きでもありますので、生来の怠惰さを遺憾なく発揮し期日を逃してしまった『スーパー野田ゲーPARTY』のクラウドファンディングの雪辱を果たす意味も込め、少額ではありますが、今回の『スーパー野田ゲーWORLD』のクラウドファンディングに出資させていただきました。
そこで、本稿では、私が出資のリターンとして提供させていただいた素材をゲーム内で捜索しつつ、僭越ではありますが、『スーパー野田ゲーWORLD』の魅力、引いては野田ゲーの魅力をお伝えしていければと思います。
文/DuckHead
無理して集まらなくていいよ どうぶつの国
さて、それでは早速、本作に提供させていただいた素材を探しに出かけましょう。幸いなことに、その素材がどのゲームに出てくるのかは発売前の情報で既に分かっています。
そのゲームというのがコチラ。その名も、『無理して集まらなくていいよ どうぶつの国』。あえてタイトルを略すとするなら、 “あつ国” といったところでしょうか。
余談にはなりますが、本作には収録されていない野田ゲーには、“あつまってくるファンにモルックを投げつけるさらば森田” 、略して “あつ森” というゲームもあったりします。
少々脱線してしまいましたが、こちらのあつ国は、フィールドの中を自由に動き回りながら、そこに現れる “どうぶつ” たちを撮影してカメラに収めていくというストイックなゲームで、野田さん曰く「『PUBG: BATTLEGROUNDS』を意識した、世界で1番平和なFPS」とのこと。何%の方に伝わるかは分かりませんが、PS3初期に発売された『AFRIKA』を思い出すゲームコンセプトですね。
そして、このゲームに登場する撮影対象の “どうぶつ” は全て、“ペットが出演できる権”への出資者が提供したペットとなっています。
……そう、私が『スーパー野田ゲーWORLD』に提供させて頂いた素材というのは、ペットの写真。今回のクラウドファンディングでは、私と同じようにお笑い好きかつゲーム好きである妹たちにも声をかけたため、我が家からは合計で3匹のペットが、こちらのゲームに登場しています。
では、前置きはこれくらいにしておきまして、早速どうぶつたちを探しに出かけましょう。果たして、このゲームのプレイを通じて、無事に愛するペットたちを見つけることはできるのでしょうか……?
……自分たちのペット以前に、そもそもどうぶつが見つからねぇ……本当に全然集まってこねぇ……
どうやら、この国のどうぶつたちは無理をせずに自然体で生きているご様子。数分間歩き回ってみましたが、残念ながら1匹もどうぶつを見つけることができませんでした。このままただ闇雲に歩き回っているだけでは、彼らをカメラに収めることは難しそうです。
開始早々ペット捜索に暗雲が立ち込めて来てしまいましたが、何か効率のいい方法は無いのでしょうか?
……あ、そういえば、ゲームスタート時に表示される、あそびかたの説明をちゃんと読んでいませんでした。ひょっとすると、そこに何かヒントがあるかもしれません。ちょっと覗いてみましょう。
なるほど。どうやら、画面右上のレーダーに、どうぶつがいる方向とその距離が表示されていて、おおよその位置が分かるようになっているようです。
フタを開けてみれば、基礎中の基礎を理解していなかっただけ。こんなことは最初に確認しておけという話なんですが、野田ゲーは操作やルールがとてもシンプルで、なんとなくのイメージだけで誰でもすぐに楽しめるものばかりなので、完全に流し見してしまっていましたね……。
こう言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、まさか、レーダーなんていうハイテクな機能が野田ゲーに登場するとは夢にも思っていませんでした。FPSというゲームジャンルが選ばれていることからも感じていましたが、今作は前作と比べて革命的な進化をしているようです。
……怠惰の言い訳はこの辺にしておきまして、兎にも角にもこれは大事な情報です。どうぶつたちを見つけるため、早速レーダーを使ってみましょう。
そして、レーダーを活用し始めてから数分後、先ほどまでの何の当てもなくさまよう遭難者プレイよりは段違いにどうぶつたちが見つけやすくなり、記念すべき最初のどうぶつの撮影に成功しました。チョロちゃんです。かわいい。
「うちの子がいきなり出てこなくて良かったなぁ」という浅はかな思いを抱きつつ、そこから更に数匹撮影したところで、ふと、とある疑問が頭に浮かびました。
「このゲームには、全部で何匹のどうぶつが登場するんだろう……?」
そんな素朴かつ重要な疑問を解決すべく、撮影を一時中断。ゲームタイトルから閲覧可能な、どうぶつ図鑑でその総数を確認してみることにしました。
……367!?
前作『スーパー野田ゲーPARTY』の反響の大きさや、マヂカルラブリーのお二人のご活躍、クラウドファンディングで実際に集まった金額などから、出資者がかなり多いことは感じていましたが、まさかここまでとは。同じ出資者の1人として、「我が家のかわいい子たちを、是非とも野田ゲーに!」という気持ちには共感しかありませんが、367とは驚きました。これは凄い数だなぁ。会えるかなぁ。会えるといいなぁ。
更に、野田さんによれば、「どうぶつをコンプリートするのには、1年かかる可能性もある」とのこと。先ほどとは違う意味でペット捜索に暗雲が立ち込め、不安は募る一方ですが、むしろこれくらいの難しさがあった方が、見つけることができた時の感動も一入というもの。探しがいがあるというものですね。気持ちを強く持っていきましょう。
……頼む、早めに出てきてくれ!最後の方だと大変だから!いや、早すぎてすぐに記事が終わっても困っちゃうから程よい塩梅で!ちょうどいい感じの所で!
ちなみにですが、前作『スーパー野田ゲーPARTY』では、『新・干支レース』というゲームにペットたちが操作キャラクターとして参戦していました。
そのため、“ペットが出演できる権”に出資した時には「今回も操作キャラクターとして使えるのかなー」と、かなり楽観的に考えていたのですが、干支レースに登場する操作キャラクターがペット以外も含めて62であるのに対し、今回は367。6倍近くに増加していることを考えますと、その全てを操作キャラクターとしてゲームに組み込むのはどう考えても無理ゲー。今回のあつ国のような形での参戦になるのも納得しかありません。
さて、その後もフィールド内を駆け回る動物たちを順調にカメラに収めてはいきましたが……うーん、どうにも写真を撮るのがヘタクソ。こちらが近づこうとすると、どうぶつたちが逃げ出してしまうという難しさがあるとはいえ、中々綺麗に撮影をすることができません。
そんな状況の中で役に立ったのが、フィールド内に落ちている望遠レンズ。これを拾うと望遠レベルが上がり、カメラをより遠くまでズームさせることが出来るようになるため、どうぶつたちの撮影がスムーズになります。超便利アイテムですね。
ちなみに、望遠レベルはゲームを中断するとリセットされるため、その点には注意が必要です。
望遠レンズの助けも借りつつ、その後もしばらく撮影を続けていきましたが、我が家のペットたちは見つかりません。367という数字を考えると、そう簡単に見つからないのも当然ではあるのですが。
さて、あつ国ではいくつかのフィールド(国)が用意されており、撮影したどうぶつの種類が一定数に達するごとに新たなフィールドが解放されるというシステムになっています。それぞれのどうぶつが出現するフィールドは固定されていますが、実際にそのフィールドがどこなのかを確認する術は、現環境では一度撮影を成功させてから図鑑を見る以外にありません。
つまり、我が家のペットの撮影には、どのフィールドに出現するのかさえ全く分からないという、運ゲーの極みと言っても過言ではないこの状況を乗り越えなければならないのです。1匹も撮影できずに原稿を書き上げなければならなくなってしまう可能性も大いにあります。しかし、私にできることはひたすら粘り強く撮影を続けることだけ。目的とするどうぶつたちの撮影には、自然界の動物の撮影と同様、粘り強いアタックが求められるというわけです。
……ここはひとつ、保険をかけておくことにしましょう。
その保険というのが、こちらの “コレクション”モード 。これは本作の素材を好きなだけ鑑賞できるモードで、ここに収録されている素材は、主人公、ラスボス、マッチョ、ペットなどにジャンル分けされています。
しかし、ゲームをスタートした時点で閲覧できる素材は、ひとつもありません。これらの素材を鑑賞するためには、野田ゲーをプレイすることで集められる “クリスタル” を100消費し、各素材を解放していく必要があります。
……ということは、ペットの項目を全て解放することができるだけの数のクリスタルを集めて、順番にペットたちを閲覧可能にしていけば、いつか必ず我が家のペットたちに会えるに違いありません。
そして、あつ国に登場する動物は全部で367。つまり、野田ゲーをプレイして36700個のクリスタルを集めれば、“『スーパー野田ゲーWORLD』で、私(と妹)が提供したペットの写真を見つける” という当初の目的は達せられるというわけです!……かなり反則技に近いですが、運ゲーに立ち向かうためにはこれしかなさそうです。
無理して集まらなくていい動物たちの代わりに、私がクリスタルを無理をしてでも集めていくことにしましょう。
ということで、黙々とプレイに熱中できるあつ国ですが、それを文章に書き起こし、楽しさを共有しようとするとなると話は別。さすがにこのゲームだけを追い続けていてはかなり薄味な記事になってしまいますので、クリスタル収集も兼ねて、本作に収録されている野田ゲーを紹介していきたいと思います。
バラエティに富んだ野田ゲー
最初のゲームは、『つり革』の続編である『みんなのつり革』。
『つり革』とは、前作『スーパー野田ゲーPARTY』に収録されたゲームで、『M-1グランプリ2020』の2本目、いわゆる最終決戦においてマヂカルラブリーのお二人が披露した漫才 “つり革” を元にしています。
こちらのゲームは、お二人のM-1優勝を受けて急遽制作された(『スーパー野田ゲーPARTY』の制作自体は、M-1決勝戦前からスタートしていました)とのことですが、電車の中で左右に激しく揺られるキャラクターを画面内にキープし続けるという、そのルールの分かりやすさとシンプルな操作方法から、ゲームに慣れていない人でもすぐに楽しめる作品として様々な番組で取り上げられており、野田ゲーの看板と言っても過言ではないタイトルです。
シンプルなルールでありながら、揺れる車内で長時間耐え忍び、好記録を出そうとするのは意外と大変。気を抜くと、あっという間に画面外に放り出されてしまうため、高い集中力が求められます。
そして、いよいよ危ないという時には、つり革に捕まる事もできるのですが、これらのつり革は漫才と同じようにすぐ外れてしまい、一度外れるとそのゲーム中では二度と使うことができなくなってしまいます。そのため、このつり革をいかに上手く使うかが上位勢の嗜み、キモとなるのです。なんでも、つり革ガチ勢の中には、40分を超える記録を持つ方もいらっしゃるんだとか。2分超えればいい方というつり革エンジョイ勢の私からすると、人知を超えたとんでもない大記録です。
さて、私のしょうもない記録はさておき、『つり革』の続編である『みんなのつり革』は、『つり革』に様々な新要素が追加されたゲームとなっています。
それらの新要素の中でも特筆しておきたいのが、オンライン対戦の実装。本作では、対戦の結果でランクが変動するランクマッチと、友人と遊ぶフレンドマッチの二種類の方法でオンライン対戦を楽しめます。
そして、前作『つり革』に登場する路線(ステージ)は中央線のみでしたが、『みんなのつり革』では、プレイできる路線が大幅に増え、30を超える路線が登場します。これらの路線には様々なギミックが用意されており、
ゲームプレイにおける救済措置であるつり革が存在しない、“つり革縛り” を強いられる新幹線や、
画面全体が少し傾いている、上り坂を走る路線などが登場します。
『つり革』は基本システムが非常にシンプルであるため、こういったほんの少しのスパイスが加わるだけで、その味、プレイ感が大きく変化。特に上り坂の路線は画角が変わっただけで大したことがないように見えますが、通常のステージとは比べ物にならないほど難易度が上昇しています。
そういったギミックの中でも、私が特に難しいと感じたのが、トンネルのある路線。このギミックは、トンネルに入ることで周囲が暗くなり、自キャラがどこにどのような体勢でいるのかが分かりにくくなってしまうというもの。
『みんなのつり革』では、固定された画面内にいるキャラクターの体勢を見て、どちらにどれだけ揺さぶられているのかを判断し、それに合わせてスティック操作をするため、自キャラの位置と体勢が分からなくなってしまうと、プレイに必要な情報の大半が遮断されることになってしまうのです。
そのため私は、上の画像のように窓にキャラクターのシルエットを映しつつプレイする形をとったのですが、この状態でも、体が傾けば割とすぐにどこにいるのかが分からなくなってしまいます。キャラクターのシルエットが消えるスピードや、つり革の傾き具合から車内の状態をおおよそ判断することもできるので、このギミックがあるステージでは、つり革経験やつり革勘の差が大きな鍵を握ることになるでしょう。
前作から様々な要素が追加されパワーアップした『みんなのつり革』は、シンプルかつ奥深いプレイ感である上にリトライ性が高いため、中々やめ時が見つからない非常に楽しいゲームとなっています。
友人や家族とやるオフライン対戦も激アツなので、かなりオススメです。
続いての野田ゲーは、『大乱闘ブロックくずして』。
こちらもまた、前作に収録されている『ブロックくずして』の続編ゲームです。
『ブロックくずして』は、ブロック崩しが行われているフィールド上で、「気づいちゃった、気づいちゃった、ワーイワイ」というフレーズを用いた『気づいちゃったマーチ』のネタで知られるピン芸人のデッカチャンを操作し、ブロック崩しを邪魔せずに無事にクリアさせてあげることが目的。要するに、ブロック崩しをしているボールを避け続けるゲームです。
このゲームは以前からYouTubeチャンネルやバラエティ番組などで度々披露されているため、クラシカルな野田ゲーとしてファンの間で親しまれています。
『ブロック崩して』シリーズでは、デッカチャンがボールに当たると、「デッカチャンだよ」のキラーフレーズと共に巨大化していき、最終的には画面を覆い尽くさんばかりのサイズに。
ルール上は4回までボールに当たることができるのですが、2回ボールに当たってしまうと動ける範囲が極端に狭くなってしまいます。そのため、一回の被弾、一瞬の気の緩みが致命的になるという、見た目のシンプルさとは裏腹にかなりシビアなゲームとなっています。
その上、中には1度ボールに当たってデッカくなってしまうとほぼ身動きが取れなくなり、いずれ訪れるであろう終焉の時を、ただいたずらに過ぎ行く時間とともに待ち続ける羽目になるステージも存在。何がなんでもブロック崩しはじゃましちゃいけないのです。
そして、『大乱闘ブロックくずして』には、新要素として “顔面パック” と “無敵” という二種類のお助けアイテムが登場。赤色のブロックが崩された時にたまに出現するこれらのアイテム、 “顔面パック” を取得すればデッカチャンが小顔になり、ボールに当たることのできる回数が増加し、 “無敵” を取得すれば顔が鉄のように硬くなり、ボールを打ち返すことができるようになります。
特に “顔面パック” は、ブロック崩しのボールと同じくらいの小顔になることも出来るため、出現しているのを見たら積極的に拾っていきたいアイテムですね。無理に取りに行こうとしてボールに当たってしまっては本末転倒なので、とっさの判断で取捨選択していくのも楽しいところ。
そして、『大乱闘ブロックくずして』もオンライン対戦に対応しており、ランクマッチとフレンドマッチの二種類で遊べます。一度ボールに当たるとほぼ雌雄が決してしまいますし、ステージ次第では初期位置から有利不利の差が如実に出ていることもあるのですが、それはご愛敬。そういうものと割り切って「おかしいだろ!」などと野次を飛ばしながら楽しみましょう。
続いてのゲームは『ナガイアス』。
この語感からすぐに分かる方もいらっしゃるでしょう。このタイトルは現在でもファンが多い名作シューティングゲームシリーズ『ダライアス』のパロディで、ゲーム本編もシューティングゲームとなっています。
さて、2Dのシューティングゲームには、大きく分けると、ステージを真上から見下ろした視点で自機が縦に進んでいく縦(スクロール)シューティングと、ステージを横から見た視点で自機が横に進んでいく横(スクロール)シューティングの二種類があります。どちらのシューティングも、背景が動くことでキャラの移動を表現していますね。
しかし、『ナガイアス』はそのどちらにも属さないシューティングゲームで、そのジャンルは、“層シューティング” 。
層シューティングとは一体全体どういうことなのかと言いますと、この『ナガイアス』は、ヨコにナガいステージが一画面に全て収められ層状に重なっているのです。普通であれば背景を動かして表現する自機の移動を丸々カットしている形で、ステージがナガくなればなるほど、ゲーム画面の全てが小さく、見えにくくなっていきます。
このゲームでプレイヤーは画面左上からスタート。敵に対処しながらステージを突き進み、画面右下に鎮座しているボスを撃破すればステージクリア。層の右端と次の層の左端は連結しているため、層から層へ機体を渡らせる場合には、自機のいる層の右端と次の層の左端を見て安全確認をする必要があります。これは他のシューティングゲームにはない、層シューティングならではの動きといえるでしょう。
その発想からして面白さが約束された神ゲー待ったなしのゲームとして、事前情報の段階から野田ゲーマーたちが色めき立っていた本作、実際にプレイをしてみますと、やはり素晴らしいタイトルでした。
色々な場所に注意を配らなければならない、集中力を持続させなければならない、目が疲れる等々、私がシューティングゲームを苦手とする理由を全て詰め込んだかのようなゲーム性ではあるのですが、層シューティングというゲームシステムそのものの面白さがそれらを凌駕してくるため、何度も何度もゲームオーバーを重ねつつも楽しめるのです。
更に、このゲームで操作可能な自機は、“シューティングゲームの自機の機体をデザインできる権”に出資した方々により提供されたもので、その種類は豊富。機体はそれぞれ攻撃方法やパラメーターなどの性能差がハッキリしているため、使いやすい機体を探し出すことも攻略の上で非常に重要なポイントであり、この過程もゲームの楽しみのひとつです。
そして、『ナガイアス』はオフライン・オンライン対戦も可能。対人戦を取り入れたシューティングゲームの名作としては『ティンクルスタースプライツ』シリーズが知られていますが、そちらが分割画面対戦であるのに対し、『ナガイアス』は同一画面。画面内に出現する敵や対戦相手を攻撃しあい、どちらかが被弾するまで勝負は続きます。
そして対人戦では、ステージの中心に配置されている “最強アイテム” を取得することで、層の垣根を越えた弾幕攻撃が可能となり、ゲームを非常に有利に進めることができます。しかし、この圧倒的な制圧力に胡坐をかいていると、画面外から突如として現れる敵機の何気ない攻撃にやられてしまったりもするので、決着がつくその時まで、気を抜くことは許されません。
かなり熱い戦いが楽しめる対戦モードではありますが、シューティング不得手勢同士での対戦となると、対戦相手と弾の撃ち合いができる間合いにすらたどり着けず、いかに雑魚敵の攻撃に当たらずに生き残るかという、持久戦の様相を呈することが多々あります。
しかし、それはそれで楽しいというのが、『ナガイアス』の凄いところですね。
出資者提供の素材が数多く登場する野田ゲー
さて、本稿のメインとしても据えていますし、ここまででも既にいくつか登場していますが、『スーパー野田ゲーWORLD』の大きな特徴のひとつは、作中に出資のリターンが数多く登場するということ。私はリターンとして “ペットが出演できる権” を選んだわけですが、その他にもさまざまなリターンが用意されていました。
例えば、“オープニング画面を自由にデザインできる権”。
これは文字通り、『スーパー野田ゲーWORLD』のオープニングタイトルで表示される画面をデザインすることができる権利で、出資者の方々が提供したイラストがオープニング画面として実際に使用されています。
そして、このオープニング画面の数がまた非常に豊富。ゲームを起動すると、「これ、初めて見る気がするな……」という画像が未だに出てくるので驚きます。
そういったオープニングイラストの中にはこんなものも。画面中央に大きく描かれているマスコットキャラクター、コロドラゴンからもお分かり頂けるかとは思いますが、こちらはコロコロコミックがクラウドファンディングに出資し、提供されたイラストとなっています。
『スーパー野田ゲーWORLD』には、コロコロコミック提供の素材がオープニングタイトル以外にもいくつかあるので、それを探してみるのも一興ですね。
コロコロコミックのオープニング画面イラストも衝撃的でしたが、私が最も衝撃を受けたオープニング画面イラストがコチラ。
「どこからどう見ても落書きにしか見えない」と思う方も多いかもしれませんが、実際こちらのイラストは、『0歳と2歳の芸術』というタイトルで、子供たちによる純度100%の紛うことなき落書きとのこと。
これまでにかなりの数のゲームタイトル画面を見てきたつもりではありますが、『野田ゲー』シリーズ以外でこのようなタイトル画面は見たことがありません。クラウドファンディングのリターンなので当然とも言えるかもしれませんが、来るもの拒まずのスタイルで素材を集めている『スーパー野田ゲーWORLD』では、こういった自由さが跳梁跋扈しているのも非常に楽しいポイントです。そして、これらの自由な素材たちが、シリーズの独特な世界観を演出する重要な要素のひとつともなっているのです。
そんな数あるリターンの中で、今回特筆しておきたいのが、BGM。
なんと『スーパー野田ゲーWORLD』では、作中で使用されているBGMも、ほぼ全て“〇〇のBGMをつくれる権”に出資した方々が提供したものとなっているのです。
これがまた『スーパー野田ゲーWORLD』の凄いところでして、本来であれば、ゲーム音楽は音楽が使用される場面ごとのイメージに合わせて作曲されていくものですが、本作の場合、出資者の皆さんが作曲した完成済みの楽曲をゲームに合わせて配置していくという、通常とは真逆のゲーム音楽の作り方になります。こういった作り方ですと、どうしても場面に合わない曲が出てきてしまいそうなものですが、本作のBGMにはそういった違和感がほぼ無く、まさに適材適所。
前作『スーパー野田ゲーPARTY』ですと、『つり革』で使用されている『産業スパイはひとりぼっち』が、私の中ではかなり大好きなBGM、いわゆる神曲というやつなのですが、本作も名曲・神曲の宝庫。
中でも特に好きなBGMが、ファンキーな曲調が特徴的な『みんなのつり革』の『Foolish』、東方シリーズのような曲調である『ナガイアス』の『戦闘!でっかいエビ』、パロディウスシリーズを彷彿とさせる『将棋Ⅲ』の『NODAGE CLASSICS!!』、野田ゲーの要素をこれでもかというほど詰め込んだリリックが素晴らしい『コレクション』モードの『子猫のモンタのクッキー屋さん(音楽:魔王魂)』。これらは是非一度聴いてみていただきたい楽曲です。
また、『大乱闘ブロック崩して』には『Are you still playing the game』というカッコよすぎるBGMが登場。そして、そんなBGMの作曲者は、DJ DEKKA。名前でピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、『大乱闘ブロック崩して』のメインキャラクターであり、DJとしても活動しているデッカチャンが制作したものとなります。
さて、これらのような出資者へのリターンが数多く登場するゲームが、『スーパー野田ゲーWORLD』にはいくつか収録されています。その中のひとつが『無理して集まらなくていいよ どうぶつの国』であり、撮影対象であるどうぶつたちが出資者から提供されたペットの写真であるのはもちろんのこと、それぞれのフィールドを取り囲む背景や自生している植物の多くも、出資者提供による写真が使用されています。
こういった形で、ゲームを構成するもののほとんどがリターンである “あつ国” は、大量に集まったリターンを出すために作られたゲームでもあるとのこと。通常のゲームではおおよそ考えられないような動機でゲームが作られて収録されるに至っているというのも、本作の面白い所ですね。
それではここからは、出資者が提供した素材が多く登場する野田ゲーをご紹介していきたいと思います。
まずは、『やせちゃうよ?』。マヂカルラブリーの鈴木……もとい村上さんを主軸に据えたこちらのゲーム、これまたルールは非常に単純で、放っておくとみるみる痩せていってしまう村上さんに、画面内に出現する食べ物を食べさせて痩せさせないようにするゲームです。
想定の斜め上を行く独特な「うまい〜!」ボイスは一聴の価値アリ。
画面内には食べ物以外のイラストも次々に出現し、これらを食べさせてしまうと、逆に痩せが加速。みるみる見違えるほどに痩せちゃいます。
そして、ゲームスタート時の姿など見る影もなく変わり果て、棒のようになってしまうとゲームオーバー。痩せさせないように忙しなく料理を食べさせ続けるこのゲームですが、口の前に料理が現れて勝手に食べて太ってくれるなんていうラッキーなことも。ただ、逆もまた然りでして、勝手に食べ物じゃないものを食べて痩せていってしまうアンラッキーパターンも頻発します。
そして、このゲームの鍵を握る料理とイラストが出資のリターン。ゲームが進んでくると次々と切り替わっていく背景もリターンであるため、ゲーム後半は、めくるめく移り変わる統一感のないイラストたちをバックに村上さんを必死に太らせ続けるという、奇妙奇天烈でカオスな状態に。自動痩せスピードが加速していく村上さんを太らせたいのに、背景が気になりすぎて集中できないのはざら。背景からその難易度を上げてくるゲームをプレイしたのは久々です。
また、本作には対戦モードも実装。自分の村上には食べ物を与えて痩せないようにしつつ、相手の村上に食べ物以外を与えて痩せさせるという1人プレイとは大きく異なる戦略性が求められます。
続いてのゲームは『回転めし』。スーパーファミコンソフト『星のカービィ スーパーデラックス』の名作ミニゲーム『刹那の見切り』に大きく影響を受けているという本作は、画面中央に表示される料理がレーンの上を流れてきたら、素早くボタンを押して料理をゲットするというルール。
反射神経が重要なこちらのゲーム、レーンの上を流れる料理が出資のリターンです。
ゲームを始めた最初のうちは料理の流れる速度もゆっくりで気楽に遊べるのですが、レベルが上がってくると、そのスピードが速くなるのはもちろんのこと、手前のレーンだけでなく奥のレーンにも料理が流れるようになり、レーンの方向に適したボタンを押す必要が出てきます。奥のレーンにまで視野を広げるのが意外と難しく、集中力と動体視力が試されます。
基本的にこのゲームにおいて使用するボタンは2つだけ。ルールも極めて単純なので、ほぼゲームをやったことのない人でもすぐに楽しめる優秀な対戦ゲームと言っていいでしょう。
ちなみに、静止画では全く伝わりませんが、対戦モードで選択可能なレベル99でプレイをしてみると、料理がレーンを流れる速度がとんでもないことに。常軌を逸しているとも言えるそのスピードの迫力は凄まじく、最早料理を認識することはほぼ不可能。色合いでなんとなくボタンを押してみるという高みに達し、完全に別ゲーと化します。
一発ネタとしては非常に優秀でスベリ知らずなレベル99ですが、実際に対戦で楽しみたいのならば、やりすぎはほどほどに。ちょうど良い難易度のレベルを見つけましょう。
続いては『スーパー音声衰弱』。『スーパー野田ゲーPARTY』に収録されていた『音声衰弱』の続編で、その内容は、トランプの定番ゲームである『神経衰弱』の音声版。『神経衰弱』が、裏になったトランプから同じ数字のペアを見つけていくゲームであるのに対し、『音声衰弱』は同じ音のペアを見つけるゲームで、本作に登場する台詞や音声が出資のリターンとなっています。
……野田ゲーもいよいよ文章と画像だけでは伝わらない領域へと突入してきましたが、このまま突き進むしかありません。やれるところまでやってみましょう。
さて、『スーパー音声衰弱』の1人プレイは、制限時間内に全てのペアを見つけ出すことが目的となります。
正直なところ、前作『音声衰弱』はそこまで難しくなく、初見でもスコアをカンストさせることができたのですが、それを踏まえてか『スーパー音声衰弱』では難易度が急上昇。恐るべきステージの数々がプレイヤーに襲い掛かってきます。
そんな高難易度ステージの代表格とも言えるのが、“絶対音感”。通常のステージでは、効果音や台詞など様々な種類の音声が用意されているのに対し、このステージに登場するのはピアノの音だけ。それぞれのペアには音の高さ以外の違いは存在せず、ステージ名が示すように絶対音感が試されるのです。
制限時間内に全てのペアを見つけることが目的の1人プレイでは、手当たり次第にカードをめくって音を聞きながらある程度の目星をつければ、なんとか攻略できる場合もあります。
が、このステージがその真価を発揮するのは対戦モード。自分以外のプレイヤーがペアを選んでいる間に、どこにどの高さの音があったのか完全に分からなくなってしまうのです。
神経衰弱の場合は絵柄なので、「ここにはハートのエース、あそこにはハートの女王」といった感じで覚えていくかと思いますが、違いが音階だけでは明確なタイトルのつけようがありません。すっごい低い音、そこそこ低い音、ちょっと低い音、低そうな音……対戦が長引くのは当然の理というわけです。もちろん、絶対音感があれば話は別なんですが、一般人にとってはかなりの難易度です。
続いては、“BKB”。これはその名の通り、登場する音声がBKBのみのステージです。
そもそもBKBとは何ぞやと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、BKBとは、略するとBKBとなる文章や言葉のことで、長年M-1グランプリなどの有名賞レースの前説を務め、ショートショート集『電話をしてるふり』を出版したことでも知られるピン芸人、バイク川崎バイクさんが行う “BKB漫談” に登場するフレーズです。
このBKBステージのどこが難しいのかというと、フレーズの聞き分けです。例えば、BKBのBK、つまり上Bと中Kまで同じ内容で、最後のB、すなわち下Bだけ違うということがあるのです。雑に言ってしまうと、神経衰弱の中にちょっとだけカルタの要素が入ってくるというわけ。
先ほどの絶対音感ステージとは逆で、制限時間のない対戦ではじっくりと聞くことができるためそこまで難しくはないのですが、1秒でも惜しい1人プレイでは意外と焦らされ、下Bまで聴いていると時間が足りなくなるだけでなく、聞き分けばかりに集中力を持っていかれて肝心のペアがどこにあるのか忘れてしまうこともしばしば。
注意深く聴けば下Bまで行かなくとも、上Bや中Kで内容を判断できるのかもしれませんが、生憎と絶対BKB感は持ち合わせていませんので中々の難易度です。ボケ防止に効果抜群かもBKBステージ。
そして最後は、“デッカチャン”。野田ゲープレイヤーにはおなじみ、先ほどもご紹介しました『ブロックくずして』の雄、デッカチャン。そんなデッカチャンの決めフレーズ「デッカチャンだよ!」の音声のみで構成されているのがこちらのステージです。
この説明だけを聞くと一発ネタの大したことないステージかのように思われるかもしれませんが、実はここ、個人的には絶対音感ステージと双璧をなすレベルの難易度の高さだと思っています。
絶対音感ステージではピアノの音階だけが違いましたが、このステージで違うのは「デッカチャンだよ!」の読み方のみ。プレイヤーは千差万別な「デッカチャンだよ!」を聞き分けて「デッカチャンだよ!」のペアを見つけ出さなければならないのですが、これらの「デッカチャンだよ!」の中にはほんの少しのニュアンスの差しかない「デッカチャンだよ!」も存在し、プレイヤーは「デッカチャンだよ!」の沼に両足を思いっきり突っ込む形となるため、異様な難しさを誇っているのです。こればっかりは、絶対音感があったところでどうにかできるものではないでしょう。
このゲームは1人プレイもかなり楽しいですが、やはり対戦が燃えますね。特に絶対音感ステージやデッカちゃんステージでは、「覚えられるか!」「何だこのクソステージ!」「ふざけんのも大概にしろ!」などと楽しくヤジを飛ばしながらプレイすることができました。
……まぁ、対戦を終えてからも、しばらくの間「デッカチャンだよ!」が頭の中で鳴りやみまず、普通の神経衰弱以上に神経が衰弱することになってしまったのですが。「デッカチャンだよ!」の過剰摂取は控えましょう。
さて、それではここで、あつ国のプレイがどうなっているのか見てみましょう。
どうやら、順調に撮影を進めて新たなフィールドを解放し、花の国へと足を踏み入れたようです。
こちらのフィールドは、今までのフィールドとは大きく違い、フィールド内を歩き回ってどうぶつたちを撮影するのではなく、フィールド中央に設置された巨大な岩の上から周囲を見渡して撮影を行います。
このような条件であるため、スタート時点から望遠レベルはマックス。かなーり遠くまでズームすることができます。
しかし、このフィールドでのどうぶつたちの動きはかなりのスピード。これまでとは比べ物にならないレベルの速さです。望遠レベルがマックスであっても、どうぶつを追いかけてカメラに収めるのが大変で、これまでの牧歌的な雰囲気はどこへやら、あつ国は別ゲーの様相を呈し、いよいよFPSじみてきました。
そして、その後もいつ訪れるか分からないチャンスを待ちつつ、シャッターを切り続けます。
最初のころは、中々どうぶつたちを撮るのが上手くなかったのですが、少しずつ慣れてきたのか、しっかりと中央で捉えられるようになってきました。これもやり込みの賜物といったところでしょうか。
……もうこっちの準備は整ってるんで、そろそろ出てきてくれてもいいんですよ?
しかし、私の願いも虚しく、この国でもうちの子たちは出てきてくれませんでした。
ゲン担ぎの意味も込めて、チケットの抽選から物の見事にハズれてしまった『マヂカルラブリーのオールナイトニッポンZEROII~でっかいフォーラムでーす~』の配信を見ながらプレイしたんですが、駄目でしたね……。そもそもチケットをハズしてる時点でゲンは担げていないということには、後から気が付きました。
ラジオイベントでもあつ国でも分からされましたが、どうやら、まだまだ撮影を続けていく必要がありそうです。
……ということで、再び『スーパー野田ゲーWORLD』に収録されている野田ゲーの紹介へ戻りたいと思います。