ゲームメディアとして、ゲーム業界を支える一員としてーー
「PlayStation VR2」を応援したい!
とは思っているものの、正直、さまざまな理由から「やりづらい」「魅力を伝えるのが難しい」というのが本音だったりする。
例えば、価格は74,980円とPS5本体よりも高額だし、以前からはだいぶ改善されてUSBケーブル1本とスマートになったとはいえ、「Meta Quest 2」のような完全ワイヤレスの機器に触れた後だと、「これぞ新世代!」という言い方も難しい。
「PS VR2」は、非常に真面目な正統進化したハードウェアではあるが、だからこそ、記事化や話題作りという意味では、なかなか切り口が難しい側面があるのだ。
そもそも、VR自体がすでに登場から数年が経ち、そこの目新しさだけで推すにも限界がある。
また、ソニーさんには大変申しわけないけれど、現状、「PS VR2」自体が大きな盛り上がりを見せているわけでもない。つまりは、頑張って(人員やコストを割いて)記事を書いても注目が集まりづらいというわけで、その意味でも、メディア(ビジネス)としての扱いづらさがあるのである。
ーーとはいえ。
「うーん、我々(ゲームメディア)はそんなことでいいんだろうか?」
「でも、PS VR2は本当に普及するのか?」
などなど、心配や葛藤の思いがグルグルと脳裏をよぎるなか、ある日、一人の男が電ファミニコゲーマー編集部に殴り込んで?来た。その名を、岸上健人という。VRゲームを専門で開発しているMyDearestというゲーム会社の社長をやっている人物だ。
電ファミ×MyDearestで「PS VR2」を盛り上げたい!
岸上:
うおおおおおお! 電ファミでは、どんなPS VR2の特集をやるんすか?電ファミ:
……。岸上:
うおおおおおお! 電ファミさんなら、インタビューとか! 対談とか! もちろんレビューもやるんすよね?電ファミ:
……。岸上:
あ、いっそイレギュラーだけど分解記事とかやっちゃうのはどうっすか? あるいはこれを機にVRゲーム開発のプログラミングについて語るとか、VR界隈の最新動向ーー例えば最近流行ってるゲームはこういうのがって、あーでこーでそーで……。電ファミ:
あのー、ですね。実は今のところ、そういう予定はなくて……。岸上:
ええっ? はあ? なんで!! くぁwせdrftgyふじこlp……!!!!!!!
というわけで(どういうわけ?)。
電ファミニコゲーマーでは、「PS VR2」の発売日となる本日から、「PS VR2」を応援する特集企画をやっていきたい。ぶっちゃけてしまうと、元々編集部としては、そこまで「PS VR2」を特集するつもりはなかったのだが、岸上氏(およびMyDearest)のたってのお願いーーVRを盛り上げたい!という熱意に押される形で、今回、実施の運びと相成った。
加えて言っておくと、結局、こういうのは「一番熱のある奴」が伝えるべきなのだが、その意味でも、今回の特集は、電ファミ編集部が書くだけではなくて、岸上氏(MyDearest)との共同企画としていることも、ご了承頂ければと思う。
「PS VR2」というプラットフォームの宣伝を、いちソフトメーカーのMyDearestが主導で行うという、ちょっとーーいや、かなり特殊な取り組みではあるが、「PS VR2」のため、あるいはVR業界全体のためにも、便利な特集ページに仕上げていければと思っている。
ちなみに、そういう趣旨の取り組みなので、この特集ページでまとめていく記事も、電ファミのものに限らず、広く他媒体のものも含めて、「PS VR2」に関心がある読者にとって有益なものをまとめていく予定。
PS VR2の基本情報はもちろんのこと、今後、電ファミニコゲーマーとMyDearestによって更新されていく様々な情報を格納していくので、ぜひ楽しみにしていただきたい。
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PSVR2を買うべき理由
そこに感動はあるのか?VR元年から7年、ついに新世代PSVR2の投入。
2016年。それは、「VR元年」と呼ばれOculus Rift、HTC Vive、そしてPSVRが一般コンシューマー向けに発売された記念すべき年だった。
PSVRは売り切れ続出で体験した多くの人から「これが未来のゲームだ!」と沢山の声が溢れた。
しかし2016年にVR元年は来なかった。理由は様々だ。
そもそもPS VRで遊べるコンテンツが少なすぎて気づいたらヘッドセットが埃をかぶってしまっていた。配線が面倒で常に遊び続ける気が起きない、VRゲーム制作のノウハウが確立されておらず酔いやすいコンテンツが多い、などなど。そこから7年経ち、2023年。
ついに次世代ヘッドセットであるPS VR2が2/22に発売される。7年という歳月は、小学1年生が中学生になってしまう、途方もなく長い年月である。
7年という歳月はテクノロジーを大きく進化させただろう。
しかし、それだけでは絶対にダメである。
どれだけ技術的に進化しても、人はそこに体験する「感動」がなければ魅力には全く感じない。「PSVR2。7年もの期待を詰め込んだSonyの次世代ヘッドセット。そこに感動がなければ、VRゲームという市場は終わってしまう」
私はそんな途方もない不安を抱えて、2016年に会社を創業して7年間VRゲームを作ってきた立場として、PS VR2をプレイした。
杞憂だった。
体験の質が明かに違った。
息を止めるほど「感動」してしまった。
普段VRを常に体験している私が。競合で現在マーケットをほぼ独占しているMetaのQuest2はコスパも踏まえて素晴らしいヘッドセットだ。
しかし、価格に差があれどその差を正当化する以上の魅力がPS VR2にはあった。まだ確かに価格は高い。しかし、それでも期待を大きく超えたと言わざるを得ないPS VR2の魅力をここから語らせてほしい。
MyDearest 岸上健人
初心者向け入門解説マンガ
実際に開封してみた
初代「PlayStation VR」(以下、初代PS VR)が2016年10月の発売のため、実に6年半近い期間を経て、プレイステーションシリーズに新たなVR機器が登場する次第である。
本稿では実機を触ってのレビューをお届けしていくが、実際のゲームプレイにまつわる部分はふくまれない。少し詳しい「開封の儀」くらいのノリでお楽しみいただければ幸いです。
箱の正面にはPS VR2本体と、新たに登場した「PlayStation VR2 Senseコントローラー」(以下、Senseコントローラー)の写真がプリント。PS4の通常コントローラー「DUALSHOCK 4」の運用が基本であった初代PS VRと異なり、PS VR2では専用のコントローラーが付属品として用意された形となる。
開封していくと、付属コントローラーこそ存在するものの、周辺機器が初代PS VRと比べて大きく減っていることが分かる。初代PS VRでは必須だった「PS Camera」も必要なく、本体とPS VR2の接続はケーブル1本のみ。専用のプロセッサーユニットを介してつなげる必要があった初代PS VRから、セットアップの手間は大いに削減された。
ヘッドセットの外観に関して言えば、スコープ部分をはじめ、黒よりも白を多くデザインに取り入れていることが見て取れる。PS5本体もデフォルトカラーも白のため、プレイステーションの新世代を感じさせる雰囲気を放つ。
接続は上述した通り、PS VR2から伸びるケーブルをPS5につなげるのみ。安心感のある太めのケーブルはかなり長めなので、PS5からある程度離れた位置でも使用に差し支えはない。「PS Camera」が必要なくなったこともあわせ、モニターやゲーム機から離れ、部屋の空間を広く使ったゲームプレイが楽しめるようになったはずだ。
装着は初代PSVRに近い流れで、スコープを引き出し、リリースボタンを押し込みながらヘッドバンドを緩め、上からかぶるようなかたち。リリースボタンの周囲は調整ダイヤルとなっており、かぶってから締め付けを調整可能だ。付属のイヤホンはヘッドセットに固定できる構造になっているため、ケーブルの少なさも相まって配線周りのストレスは劇的に改善された。また、メガネをかけたままでも問題なく装着できる。
重量は初代PS VRのヘッドセットが約600グラムであったのに対し、PS VR2は約560グラム。ヘッドセット自体に振動機能が組み込まれていることを考えれば、そのほかの部分で大きく軽量化がなされていると推察される。
本稿執筆時点では実際のゲームプレイに至っていないため、グラフィックや機能周りについては体感できていない点が多いが、初期設定の段階で「シースルービュー」の利便性は強く感じた。こちらを起動するとヘッドセットをつけたまま現実の世界を見ることができるようになり、周囲の確認をたやすく行える。VRを着けてからコントローラーを探す際などにも活躍してくれるだろう。
その「Senseコントローラー」も、PS VR2の目玉となる要素のひとつだ。オーブ型のお洒落な見た目だが、手首辺りに重なる部分は平面になっているので、平らな机に置けばきちんと安定してくれる。
機能面ではPS5の標準コントローラー「DualSense」と同様にハプティックフィードバックやアダプティブトリガーなどを備え、そのほかにもトラッキングや、触れるだけで指を認識するフィンガータッチ機能などがそろう。これらの機能をふんだんに活用したゲームが現れてくることにも期待したい。
持ってみた感触としては片手で持っても重くは感じず、手の小さい筆者でも苦も無く握れるサイズ感であった。ただしスティックの直系が「DualSense」などと比べて小さく、またボタンの配置が従来のプレイステーション系の標準コントローラーと異なるため、使い初めには少し違和感も覚えるかもしれない。
また「R1」と「L1」ボタンはコントローラーを握ったときに中指の腹で押せるくらいの位置に置かれている。こちらはゲーム中では主に「グリップ」するようなアクションに用いられるのだろう。「R2」と「L2」は従来通り人差し指で押し込める「トリガー」タイプだ。
さらに両手にPSボタンが搭載され、どちらのコントローラーからでもホーム画面へすぐにアクセスできる。右手側のオプションボタンは初代PS VRと同様、長く押し込むことで現在向いている方向をデフォルトに設定する機能を持つ。左手側のクリエイトボタンでは通常のゲームプレイと同じように、スクリーンショットの撮影や録画のオン・オフが行える。
なお「Senseコントローラー」は片方ずつ、別々に充電する必要がある。ケーブルやUSBポートが足りない、という方は別売りの「PlayStation VR2 Senseコントローラー充電スタンド」を購入すれば、PS5本体のUSB端子を使用することなく、両手分を同時にチャージできるようになる。
初期設定はPS VR2を接続して電源を入れるとすぐに始まり、ヘッドセットの着け方からレンズの調節までほとんどを画面上で解説してくれるので、迷うことなく進められるはず。メインとなるのはVR越しに部屋をスキャンし、プレイエリアをセッティングする工程だ。
プレイエリアはその名の通り「VRゲームをプレイ中に安全に遊べるスペース」を意味するもので、ゲーム中にプレイエリアから出そうになると警告表示が注意を促す。もちろん広いに越したことはないが、立って遊ぶ「スタンディング」スタイルならば1m×1mのスペースがあればOK。また、「Senseコントローラー」を用いて細かくエリアを拡張・縮小することもできる。
PS VR2でゲームを遊ぶ際の姿勢は上述の「スタンディング」のほか、座ってプレイする「シーテッド」、動き回ってプレイする「ルームスケール」の3種類となる。特に「ルームスケール」では2m×2mのプレイエリアが必要となるため、ソフトの購入時などにはどのプレイスタイルに対応しているかをしっかりと確認しておこう。なお、プレイエリアは初期設定を終えた後も、いつでも再調節が可能である。
以上で今回の開封&セッティングに関するレポートは終了となる。このほかにもPSVR2にまつわるさまざまなコンテンツが掲載されていく予定のため、ぜひそちらにもお目通しをいただきたい。