電ファミ読者の皆さん、こんにちアバダ・ケダブラ(n番煎じ)。
以前『ハリー・ポッター』が大好きすぎるという理由だけで書かせてもらった、同作を題材にしたゲーム『ホグワーツ・レガシー』の記事、大変ご好評いただき感謝しております……!
筆者としても、この記事の反応はかなりチェックしていたのですが……、何気なく入れていたこちらの「トヨハシ・テング」に関する注釈が気になった方が多いようで、Twitter上では数多くの反応をいただきました。
驚きの声や詳細が気になるという声ももちろん見受けられたのですが、残念ながらその後に執筆した『ホグワーツ・レガシー』に関する記事でも「トヨハシ・テング」のこと書けていなかったんですよね……。
せっかく同作の教師陣のなかにマホウトコロ魔法学校出身の日本人教師「チヨ・コガワ」先生がいるのに、本当にこのことについて深く掘り下げる機会がなかったんです。
筆者のマニア知識出したろ!くらいのつもりで書いていたので申し訳ないなぁ……と思っていたら、気を利かせた編集部が連れていってくれました。わーい!
というわけで、せっかく豊橋に来たので謎のクィディッチチーム「トヨハシ・テング」の秘密に迫るドキュメンタリーのはじまりです!『ハリー・ポッター』と「豊橋市」に一体どんな関係があるのか考察していきましょう!
ちなみに……。ホグワーツに向かう生徒は9番線と10番線の間にある「9と4分の3番線」から汽車に乗って学校へと向かいます。しかし、豊橋駅には9番線と10番線のホーム“だけ”が存在しません。
こんなに都合よく、9番線と10番線だけが存在しないなんてことがあるでしょうか。いや、ない。
日本の魔法省が魔法の存在を隠すため、隠蔽しているに違いありません!【※】
※実際のところ、日本の魔法学校「マホウトコロ魔法学校」の生徒は、ホグワーツと違ってウミツバメの背中に乗って登校するので、「9と4分の3番線」は使いません。
※この記事は『ホグワーツ・レガシー』の魅力をもっと知ってもらいたいセガさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
「トヨハシ・テング」ってそもそもなんなの? 情報を整理する会
「トヨハシ・テング」についてお話しする前に、『ハリー・ポッター』の世界における“日本”に関する情報を整理しておく必要があるでしょう。ざっくりまとめると……。
・日本の南硫黄島という島の頂上に「マホウトコロ魔法学校」という魔法学校がある
・イギリスやアメリカ同様日本にも魔法省が存在する
・アジアでホウキは流行っていないが、日本だけクィディッチの人気が異常に高い
・ホグワーツの生徒をきっかけとして、今日の日本におけるクディッチが発展している
じつは、これでほとんど全部です。情報が少ないんですよね日本の魔法界……。
日本国内の魔法界に関する情報は非常に限られており、公式に存在する文献も片手で数えられるほどしか存在しないのです。
しかし、そのなかでも異彩を放つのが、日本におけるクィディッチの発展です。『ハリー・ポッター』シリーズの原作者であるJ・K・ローリングがポッターモア【※】にて公開した記事の中では、日本におけるクィディッチはイギリスから輸入されたものとされています。
※ポッターモア
シリーズの著者J・K・ローリングとソニーによる、『ハリー・ポッター』シリーズの世界が楽しめるウェブサイト。2015年ごろまでは日本語版が存在していたものの、リニューアルに伴い閉鎖されている。
ローリングによれば、ある無謀なホグワーツの生徒がホウキによる地球一周計画を敢行中ルートを反れ、最終的に近くで惑星の動きを観察していたマホウトコロ魔法学校の教職員に助けられたことがあったといいます。その後客人として日本に滞在していた際に、生徒らが伝えたのがクィディッチのルールだったようなのです。
クィディッチの日本人選手は皆、マホウトコロ魔法学校で厳しい訓練を積んでいるとされており、今回の記事の主題である「トヨハシ・テング」のメンバーも例外ではありません。「トヨハシ・テング」は、ホグワーツ魔法魔術学校蔵書「クィディッチ今昔」でも日本における最強チームとして記されているほか、2016年開催のチャンピオンズリーグでは優勝を果たしている強豪チームです。
……とバシバシ話を進めてしまいましたが、まだクィディッチがどういうゲームか知らないマグル(非魔法族)の方もいるかと思います。そこで今回はクィディッチ・ワールドカップでの「イングランド」対「日本」の試合映像を入手しましたので、特別にご紹介いたします。
※日本負けてるじゃねーか!という点については大人の事情ということで……。
実はトヨハシ・テングに関する情報もあまり多くなく、彼らが持つ習慣である「負け戦の儀式として自らの箒を焼く」という行為が、「木材を無駄にしている」という理由で国際魔法使い連盟クィディッチ委員会から難色を示されている……というのが一番大きな情報となっています。
それ以外の情報が全くと言っていいほど無いのにもかかわらず、我々に大きなインパクトを残す「トヨハシ・テング」という存在が、どうして『ハリー・ポッター』の世界に登場するのでしょうか?
次の項では、実際に豊橋に伝わる「お祭り」や「風習」といった観点から、その秘密に迫ります。
豊橋は天狗が有名?天狗対オニを描く「鬼祭」に迫る!
豊橋について調べを進めると、「豊橋鬼祭」と呼ばれる毎年2月に開催されるお祭りがあるようです。
豊橋駅からそう遠くないエリアにある「安久美神戸神明社(あくみかんべしんめいしゃ)」に1000年以上継承される神事で、1980年には国の重要無形民俗文化財として指定されています。
現地に到着すると、鬼を象った顔出し看板を発見しました。……天狗だ!ついに天狗を発見しました……!
調べを進めると、お祭りのなかでは天狗VS鬼を描く「赤鬼と天狗のからかい」と呼ばれる演目が存在しています。
豊橋市が発行する「ふるさと再発見ガイドブック 知るほど豊橋(その10)春を呼ぶ、鬼と天狗とタンキリ飴 豊橋鬼祭」によれば、この神事に登場する天狗は天照皇大神から力を授かった武神で、その姿から日本神話に登場する猿田彦のイメージも重ねられがちと言われています。
さらにガイドブックの中では、「面をつける直前、潔済殿に緊張感がみなぎる」として「神に格る(いたる)」過程が紹介されています。
写真からも伝わる神聖さや緊張感は、なぜ「トヨハシ・テング」が天狗をモチーフとし、最強チームとして謳われるのかを体現していると感じさせます。
赤鬼と天狗のからかいの見どころは、手を変え品を変え天狗を挑発する赤鬼の存在だとされています。
赤鬼による挑発のあいだ、天狗はじっとしていてまったく動揺していない素振りを見せています。この両者の動きの差や、鬼の滑稽さが、争いという形の中でユーモアを感じさせるそうです。
また、「ふるさと再発見ガイドブック」では、鬼が持つ挑発ラインナップが紹介されています。同ガイドブック内で「むき出しの言葉に原始的エネルギーを感じます」と評される技の中に「金玉投げ」というものがあるのですが……。
「金の玉」といえば「金のスニッチ【※】」じゃないですか……!? これはもう関連性を感じずにはいられません……割と真面目に。
※金のスニッチ
自立した思考を持ち、フィールド内を縦横無尽に飛び回るクィディッチのボールのひとつ。このボールを捕らえたシーカーが所属するチームは150点を得ることができ、大抵の場合勝利する
負け戦の儀式「箒燃やし」に元ネタはあるのか?
2020年に日本国内のマグル向けに出版された『カラーイラスト版 クィディッチ今昔』では、1994年にトヨハシ・テングがリトアニアのゴロドク・ガーゴイルズに敗れた際に催された儀式の様子を描いた木版画が掲載されています。
2023年現在のトヨハシ・テングがこの儀式を実施しているかは不明であるものの、あまりにも強烈すぎるこの儀式。果たして、豊橋との関連性はあるのでしょうか。
木版画を参考資料とするのであれば、まるでお焚き上げのような火がヒントとなるのではないか?と考えたので、ひとまずここまで火が上がる行事がないのか探してみます。
すると、どうやら豊橋では「花火」が有名なようで、「炎の祭典」や「豊橋祇園祭」といったお祭りを見つけることができました。
「豊橋祇園祭」で実施される花火大会では、川に浮かべた台船から仕掛け花火や、川岸に設置された打ち上げ花火が打ちあげられるようなのですが……。「対岸から打ちあがる花火」という構図が、先ほどご紹介した木版画に似ているといえば似ている気がする……!
そして、「炎の祭典」と「豊橋祇園祭」の両イベントに共通して存在し、かつ豊橋で非常に有名な花火があります。それが「手筒花火」です。
動画をみるとさらに迫力が伝わると思うのですが、個人的にこちらのほうがイラストのイメージに近いような気がしています。
豊橋観光コンベンション協会の公式サイトによれば、手筒花火は豊橋が発祥の地とされています。巨大な火柱を噴出させることが大きな特徴で、東三河地域独自の花火として紹介されているほか、1500年代の時点で花火を揚げる祭事が存在していたようです。
こうした歴史的な側面を鑑みても、「負け戦の儀式」は手筒花火をモチーフにしていると考えることができるかもしれません。
『ホグワーツ・レガシー』に登場する“あの人”は何者!?日本の魔法界にもう少し近づける貴重な登場人物「チヨ・コガワ」
さて、ここまででなんとな〜く「トヨハシ・テング」についてや、日本における魔法界についてわかってきたんじゃないでしょうか。
ですが皆さん、今回この記事を書くにあたってもっとも忘れてはいけない人物がいるのです。そう、それが『ホグワーツ・レガシー』に登場するマダム・コガワこと、チヨ・コガワです。
作品中では、ウィーズリー先生から送られた手紙や、マダム・コガワ本人の口から彼女の過去について知ることができます。
なお、『ホグワーツ・レガシー』の公式アートブック『The Art and Making of Hogwarts Legacy: Exploring the Unwritten Wizarding World』にて、マホウトコロ魔法学校を卒業後に日本の魔法省に勤務していたことが紹介されていることから、今回は日本人としてご紹介しています。
マダム・コガワは、ウィーズリー先生が「呪い破り」として英・魔法省に勤務していた際に、横浜港で知り合ったことをきっかけとしてホグワーツで教職をとっているわけですが、“なぜクィディッチが大好きなマダム・コガワが魔法省にいるのか”気になりませんか?
じつは、ゲーム中で彼女自身が過去を語る会話が存在しており、過去にトヨハシ・テングの入団テストを受けていた事実が明らかになっています。
学生時代のマダム・コガワは、親友のアスカとともにトヨハシ・テングの入団試験を受けたといいます。しかし、極度の緊張からパニックに陥った親友・アスカの手によって、試験前に飲んだお茶に幸運の液体「フェリックス・フェリシス」を入れられてしまったといいます。
今までにないプレイが出来たことに違和感を感じたマダム・コガワは、アスカを問いただし事実であることを確認しました。その後彼女はチームに真実を話し、自分だけ入団を辞退する結果となったそうです。そして、最終的に彼女は恥を忍んで箒を燃やしたといいます。
……いや話が重いよ!!!濃すぎる!!やっと見れたと思った「マホウトコロ魔法学校」の新情報!!超・重い!!!
“恥を忍んで箒を燃やした”って律儀に入れ込むのヤバいよ!!!……にしてもこのゲーム、本編関係ないところまで作りこみエグいなぁ……、とつくづく思います。本当にすごいです。
まとめ
さて、「豊橋」と「トヨハシ・テング」について調べたこの記事も、そろそろお別れのお時間です。
トヨハシ・テングや日本の魔法界についての情報って本当に、本当に少ないんです。
でも今回実際に現地に赴いてお祭りについて調べたり、『ホグワーツ・レガシー』を改めてプレイしてみたことで、自分自身にとって新たな発見につながったのかなと思います。
ここ数年の「魔法ワールド」コンテンツは、『ファンタスティック・ビースト』シリーズを中心に今まで描かれなかった国と地域の魔法世界が描かれていることが多いように感じます。いくつかの作品では日本での魔法世界について触れられていることから、個人的にはマホウトコロ魔法学校を舞台とした新たな作品の展開にも期待したいところですね。
もちろん『ホグワーツ・レガシー』も例外ではありません。先に挙げた「マホウトコロ魔法学校」に関する会話や、ウガンダに存在する世界最大の魔法学校「ワガドゥー」からの転校生が登場するなど、国外の魔法世界に関する情報が数多く登場します。
『ホグワーツ・レガシー』は、PC、PS5、Xbox Series X|S向けに発売されていますが、5月5日には新たなプラットフォームとして、PS4、Xbox One版が登場しました。
もし、「トヨハシ・テング」や「マホウトコロ魔法学校」をきっかけとして、『ハリー・ポッター』の世界に興味を持ったなら、ぜひお好きなプラットフォームで手に取ってみてください。
どのハードを選んでも、駅のプラットホームのようにホグワーツ魔法魔術学校への入り口となってくれるはずです。
謝辞
本稿の作成にあたり、安久美神戸神明社の神主・平石雅康様をはじめとする関係者の皆様には多大なご協力をいただきました。この場をお借りして、深くお礼を申し上げます。